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言語からは、ある社会の文化、生活、進化、移住パターンなど、様々なことを知ることができる。また古代人の考え方や遠い過去の時代の物語についても教えてくれる。
だが中にはまったく矛盾する事実を突きつけ、謎に包まれたまま煙に巻いてしまうようなものもある。ここでは海外サイトでまとめられていたそんな期限不明な10種の古代言語を見ていこう。
カラパイアを見ている人の中には有識者も多いので、補足説明をしていただけるとうれしい。
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10. 北ピケネ語
image credit: Corbis
紀元前1千年紀にイタリア北東部に住んでいたとされるピケネ人の言語。南ピケネ語はよく研究されおり、オスク・ウンブリア語群に連なるイタリック語派に属するとされている。しかし北ピケネ語はそれとは大きく異なり、正確に分類することができない。
イタリアのノヴィララで発見された石碑から見つかった。エトルリア文字に似ているが、子音にはギリシャ文字を含むものがある。文法にもよく分からない点が多い。
9. エトルリア語
image credit: Wikimedia
ローマ帝国が成立する前、イタリアのトスカーナ地方に存在したエトルリア文明の言語。エトルリア文明は強大かつ洗練された文化を有しており、地中海西部では最古の主要文明である。現在知られる古代の知識は古代ローマ語から判明したものであるため、それ以前の社会は謎めいたものとして見られることがしばしばだ。
エトルリア語には他の言語には見られない特徴があり、孤立した言語と考えられることも多い。屈折した複雑な言語で、格を多用する。起源は不明であるが、ティレニア語族の一種とする説もある。
8. バスク語
image credit:Wikimedia
スペイン北部ならびにフランス南西部の一部に住むバスク人が話す言語。これまでの研究からは、世界のどの言語とも関連性が見出されていない。
他のイベリア語が滅んでしまった中、ローマ語以前の言語として現代まで生き残った唯一の言語である。バスク語、イベリア語、アフロ・アジア語族との関連性を示した説はいくつもあるが、いずれも一般的な支持は得られていない。現存する言語としてユニークな地位にあり、かつてイベリア半島で暮らしていた古代人の言語的多様性を伝えてくれる。
7. シュメール語
image credit: Schoy Collection
くさび形文字で有名。紀元前2千年紀にメソポタミアで話されていた。文字は表意文字、象徴、抽象図形の組み合わせで、特定の単語や音ではなく概念を表す。解読されたものもあるが、新しい説明がその後も登場しており、文法や構文についての議論は続いている。
他の古代言語と同じく、こう着語である。別個の語尾と接尾辞で単語を形成し、意味を伝える。起源は不明であり、その候補についてすら一貫した説はない。
6. アイヌ語
image credit:Wikimedia
現在、北海道島や本州島北東地域やロシア極東地域等に居住するアイヌ民族(アイヌ)の言語である。
アイヌ民族は、大和民族と文化的・言語的に異なり、紀元前14,500年頃に日本に移住した縄文人の子孫と言われている。大和民族と地理的に近い位置で話され、古くから交流があったにも関わらず、日本語とそれほど共通点が見いだせない。
アイヌ語を話す者は一握りしかおらず、消滅が懸念される危機に瀕する言語である。日本語の仮名文字で記されてきたが、本来は文字を持たない。それゆえに非常に保存が難しい。
5. シケル語
image credit: BenAveling
イタリア、シチリア島にはかつてシクリ人という民族が暮らしていた。当時のシチリア島に存在した3先住民の一つで、インド・ヨーロッパ語族の言語を話していたと言われている(ただし証拠に乏しいためはっきりと結論は出されていない)。
シクリ人はイタリアのリグーリア地方あるいはラティウム地方に起源があると言われている。土着の信仰があり、多数の神々を奉じるなど独自の文化を有していたが、やがてギリシャ人によってもたらされたギリシャ文化に同化した。ギリシャ文化以前に記されたものが少なく、わずかな碑文しか残っていない。
4. ヴィンチャ語
image credit:Wikimedia
古ヨーロッパ語ともいう。ヨーロッパ南東部で発掘された出土品の印に基づく、仮説上の言語である。印は世界最初期の文字と考えられており、シュメールのくさび形文字やエジプトの象形文字より数千年も古い可能性がある。
印が発見されたのは、紀元前6,000〜3,000年頃にヴィンチャ人が暮らしていた、現在のルーマニア西部のドナウ川沿いに当たる地域である。暮らしや社会については謎に包まれた文化であるが、発見された記述はいずれも短文であるため、解読されることは決してないだろう。
3. フルリ語
image credit:Wikimedia
ヒッタイト帝国が支配した地域で話されていた、今では死語となった古代言語。フルリ語を話す部族は元々アルメニアの山岳地帯で暮らしていたが、紀元前2千年紀にメソポタミアやアナトリアに移住してきたと考えられている。アッシリアに征服される以前は、ミタンニ王国で話されていた。
他の言語と結びつけられる形で分類されてはいないが、アルノー・フルネとアラン・R・ボンバードは、著書の中でインド・ヨーロッパ語族の特徴が見受けられると主張している。
2. エラム語
image credit:Wikimedia
メソポタミアではシュメール語とアッカド語のほかにもエラム語が使用されていた。解読は不完全であるが、一部文法の理解が進んでいる。象形文字と表語文字を含む原始的な文字だったが、くさび形文字に取って代わられた。
こう着語で、ヨーロッパや中東で話されていた他の古代語に似た文法的要素がある。名詞、動詞、代名詞には複雑なバリエーションを持つ形態素や接尾辞が付与される。語順はSOV型であり、動詞が文末に置かれるという他の言語には見られない特徴がある。
1. ラエティア語
image credit:Wikimedia
現在のイタリア北部、オーストリア西部に当たる東アルプス地域で使用されていた。紀元前500年頃のアルプス先住民の言語。
起源については、エトルリア語やリムノス語と同じティルセニア語族とする説、インド・ヨーロッパ語族から派生したとする説など、いくつか説がある。エトルリア語の影響を受けた孤立した言語という説もあるが、真実が明らかになることはないだろう。
via:10 Ancient Languages With Unknown Origins/ translated hiroching / edited by parumo
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コメント
1. 匿名処理班
STVラジオでは、アイヌ語のラジオ講座を放送してるよ。興味ある人は、radikoのエリアフリー、あるいはポッドキャストで聞いてみて。
2. 匿名処理班
前に「アイヌ語口承文芸コーパス」を紹介してたね。
みんなにも一度は聞いて欲しい。
3. 匿名処理班
エラム語は全く知らなかった!膠着語ということで日本語にも似てそうで、二重の驚きです!
4. 匿名処理班
認証だと萎える
5. メイスター
古代バリリア語やドスラク語は?
6. 匿名処理班
>フルリ語
フルリ人キックリが世界最古の馬術書を残しており、粘土板のおかげで現存(一部にフルリ語を使用している)するのに。
その人物の母語がよく分からないというのは皮肉だな。
7.
8. 匿名処理班
起源が謎な言語と言えばなんと言っても「日本語」ではないだろうか。
他の言語からの影響は受けつつも、他のどんな言語にも分類されていない。
9. 匿名処理班
エラム語の粘土板に書かれた文字の点が
粘土板にズボッと突き刺す快感が想起できる様な
深々とした穴で実に良い。
10. 匿名処理班
知里真志保著の「アイヌ語地名辞典」の復刻版文庫は持っている。
ただアイヌ語と一口に言ってもいわゆる「標準語」という物がないので慎重に研究しないと或いは研究する人によって解釈が違っていてどっちも正しくはある、と言う事になりやすい。
因みに日本語としての「川上・川下」はアイヌ語では逆で河口付近が頭、源流側を足とする。
これも知里真志保の辞典よりだからあるひとは違うと声を上げるかも知れない。
11. 匿名処理班
ロンゴロンゴとインダス文字が思いついたけど
まだ解読されてないしなあ
12. 匿名処理班
もし第二次大戦時の暗号でアイヌ語使われたら連合軍に
解析不可能となり、現在の歴史も変わってただろうな
13.
14. 匿名処理班
津軽語は?
15. 匿名処理班
酔っ払った状態で思い付いたデザインとその説明文を書いたノート…それが後に大きな物議を呼ぶ事になろうとは。
つい六時間前に書かれた物なのに、誰一人として解読不能…
そう、書いた本人ですら…一体これは何なんだ?
16. 匿名処理班
イタリア半島とか欧州ばっかりじゃないか!
もっとシベリアあたりとか、中央アジアとか、黒海東湾とかあたりも紹介してくれたらいいのに、、、
17. 通りすがり
そこそこメジャーなくせに起源のよく分からない日本語も入れて良いのでは
18. 匿名処理班
STV ラジオのアイヌ語講座さんはユーカラとかも流してくれたりするからかなり貴重よね
19. 匿名処理班
最初にできた言語が地方に広まる途中で訛りがひどくなって分からなくなったんだろうね。
20. 匿名処理班
※14
津軽語というか津軽弁は、かなり独特だし難解ではあるけどあくまで日本語が母体の変化系でしかないけど、アイヌ語は日本語からみたらほぼ別言語だしね
平安時代に朝廷と敵対関係だった蝦夷の言語が、あるいは現代アイヌ語の先祖にあたったりしてと言う妄想
21. 匿名処理班
大陸の少数民族は生き残れない感じだなぁ
其れは兎も角現存してる言語もリストアップされてるなら、他の人も言ってるけど日本語(大和)だって結構謎めいてるよな
漢字利用してる点が外された理由か?
22. 匿名処理班
たまたまここ数千年ヨーロッパに文字文化が普及したから系統が推定できるだけで
言語なんて単純な系統図が書ける代物じゃねーべ。
23. 匿名処理班
エスペラント語ってまだ存在してるの?
24. 匿名処理班
>語順はSOV型であり、動詞が文末に置かれるという他の言語には見られない特徴がある
なんで謎の言語なのに、この単語は動詞とかが分かるの?
スプリガンみたいな人がこの世にはいるの?
25. 匿名処理班
日本語がウラル・アルタイ語説は根拠のない古臭い説なんだってね。
26. 匿名処理班
アイヌ語ってシベリアにいたD系統の人々が元(モンゴル)から追い出されて、
北海道に逃れて乗っ取ったみたいな話があるよね。
27. 匿名処理班
シューメール語のやつは記号っぽいし洗濯マークみたいなもんだろ
28. 匿名処理班
※14
へがれぼっこ
29. 匿名処理班
※17
琉球語という親戚があるから日本語は「日本語族」として他の語族と横並びになってるからでは
アイヌ語については故村山七郎の著作だとオーストロネシア語族(マレー語、タガログ語、などの東南アジアの言語や
太平洋のパプア諸語やマダガスカルまで広く分布している言語)の一種ではないかと書いてるな
アイヌ語:ku(私の)-ape(火)
マレー語:api(火)-ku(私の)
タガログ語:apoy(火)-ko(私の)
のような例をいろいろ挙げてる
30. 匿名処理班
※17
琉球語という親戚があるから日本語は「日本語族」として他の語族と横並びになってるからでは
アイヌ語については故村山七郎の著作だとオーストロネシア語族(マレー語、タガログ語、などの東南アジアの言語や
太平洋のパプア諸語やマダガスカルまで広く分布している言語)の一種ではないかと書いてるな
アイヌ語:ku(私の)-ape(火) マレー語:api(火)-ku(私の) タガログ語:apoy(火)-ko(私の)
のような例をいろいろ挙げてる
31. 匿名処理班
※12
映画「ウィンド・トーカーズ」では連合軍の暗号がネイティヴアメリカンの言語を更に暗号化した物でしたね。
32. 匿名処理班
イタリア周辺だね
33. 匿名処理班
そもそも日本語の起源すら明らかになってないのもロマン
34. 匿名処理班
バスク語は調べると結構謎が深くて面白いです
35. 匿名処理班
※17
話者数では比較的メジャーな朝鮮語も文法は日本語とほぼ互換性がある(どっちかと言えば朝鮮語のほうが複雑)。アイヌ語もそうだが、過去に古代東亜語みたいなベースがあったんじゃないかと思う。
なのに奇妙なのは、音声的には日本語・朝鮮語・アイヌ語に(古代から交流はあったのに)共通点が少ないこと。これはとても不思議に思う