ダラプリムといえば、チューリングを買収したマーティン・シュクレリがその独占力を利用して、550%もの値上げを敢行、1錠あたり約9万円というとんでもない価格に設定したことで知られるエイズ・マラリア治療薬。
当然、この値上げには反発の声が上がり、後にシュクレリは価格を下げることとなりました。といっても完全にもとに戻したわけではなく、2016年8月時点でも、ダラプリムは1錠375ドル(約4万3000円)もします。これは当初価格の28倍の値段となります。
高校生たちは、この「社会的に問題のある薬」に取り組むことに意義を感じ、1年間にわたって研究を継続してきたとのこと。なお研究ではチューリングが所有するダラプリムの特許には抵触しないよう、すでに知られているダラプリムのレシピを使うのではなく実物の成分を分析し、別の化合物として再構成しました。
ただ、新しい薬を精製するためには、学校の化学実験室で実行するには少々危険なプロセスも含まれました。この部分に関しては、新しい薬の作り方をGithubに公開、オープンソース化することで、ビル・ゲイツが支援するオープンソース・マラリア・コンソーシアム(OSM)の協力を得て解決。ダラプリムの薬効成分であるピリメタミン3.7グラムの精製に成功しました。これは米国ダラプリム価格で言えば約11万ドル(約1250万円)相当の価値になるとのこと。
@nedavanovac lol how is that showing anyone up? almost any drug can be made at small scale for a low price. glad it makes u feel good tho.
— Martin Shkreli (@MartinShkreli) 2016年12月1日
一方高校生たちの薬をまったくの新薬として世の中に出そうとすれば、こんどは臨床試験から効果確認といったプロセスが必要となってしまいます。
とはいえ、たとえそれが販売できないにしても高校生たちの成果は立派なものです。このニュースが世界に流れることで、世の中の人々がマーティン・シュクレリとチューリングがやっていることを知り、患者よりも製薬会社のほうを向いている米国のシステムへの批判が再び巻き起こるかもしれません。OSMはオープンソース・ダラプリムの作り方を記した記事をインターネット上に公開しました。世界のどこかに、オープンソース・ダラプリムを作ろうと思った企業または個人がいれば参考にすることができます。
ちなみにダラプリムの価格吊り上げ張本人のマーティン・シュクレリは、オープンソース・ダラプリムのニュースを受けてYouTubeに祝福のコメントをアップロードする一方、ツイッターでは「どんな薬でも少ない量なら低価格で作れるよ」「薬を作るぐらい誰だってできる。簡単というよりez(イージー)だね」「薬の合成を学ぶだけではイノベーションにならない」などとツイートしています。