狐娘「家に転がり込んでやったわ」
- 2016年12月08日 21:40
- SS、神話・民話・不思議な話
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青年「うむ。じゃねぇよ」
狐娘「くっ……ここはもう持たん!わしに任せて逃げるんじゃ!」
狐娘『なっ……お前!一緒に生きて帰ろうと約束しただろう!』
狐娘「……そんな約束、わしの記憶には無いの」
狐娘『っ…!お前……』
狐娘「わしより、ぬしが生き残る方がよい」
狐娘『……お前の骨なんて拾いたくないからな…!』グス
狐娘「わしも、ぬしの骨を拾いたくはないからの」
狐娘「さぁゆけ!わしのことは気にせ―――――んがっ?!」ゴスッ
青年「お前は何をやってるんだ」
狐娘「いったた……ぬしは知らんのかや?犠牲ごっこを」
青年「犠牲…?」
狐娘「古くから続く因縁……その犠牲じゃよ」
青年「犠牲……」
青年「って。その犠牲ごっことやらをするのは構わん、だがな」
青年「しかも一匹二役とか無理があるだろ」
狐娘「ちっちっち。わしはこれでも、‘‘恥辱の化け狐’’と言う異名を持つんじゃぞ?」ニヤ
青年「それバカにされてるだろ」
狐娘「ば、バカになどされておらん!」
青年「はいはい。洗面所で籠城してないで、風呂に入るぞ」グイ
狐娘「うぎぎ……嫌じゃぁ…!」グググ
青年「なんでだよ!オレの言うこと聞くって言っただろ!」
狐娘「……ぬしとは、その……恥ずいのじゃ///」
青年「元はと言えば、おめーがいつもフザケて風呂に入るからだろ」
青年「この前だって―――
狐娘『ククク……見よ!力がみなぎってくるわ!』ニヤリ
狐娘『余りの大きさに、わしの力が白く具現化しておる……』ホカホカ
狐娘『ぬしよ、しかとその目に焼き付け―――
狐娘『む?…にゃ、にゃんでしょこに……』ボンッ
狐娘『み、見るな!!』
青年『いや見ろって言ったのお前じゃん』
―――
青年「なんて風呂上がりに鏡の前でフザケて、何度もお湯を浴び続けてたやつが何を恥ずかしがってんだよ」
狐娘「わしだって乙女じゃからの」
青年「オレより何倍も歳が上とか威張ってた癖に、どの口が言ってんだ」
狐娘「歳は上じゃが、心と体は……オ ト メっ じゃよっ」
青年「ふんっ」ズムッ
狐娘「ぅごっ……乙女の腹を殴るとは……」
狐娘「つまるところ、わしはこの家の大狐柱じゃな」フンス
青年「じゃな。じゃねぇよ、意味わからんわ」
狐娘「……」パクパク
青年「『あ』『ほ』ってそれはお前がだっつの!喋れよ!」
狐娘「こんこんっ♪」ウワメ
青年「媚びても風呂は入ってもらうからな」
狐娘「ちっ、小童の癖に図に乗りおって」
狐娘「う"っ!」ガク
青年「っ!どうした!?」
狐娘「う"ぅっ……」
青年「ど、どこか痛いのか!?どうすれば……狐のことなんてオレ―――
狐娘「う……ぅ……ぅ」
青年「う、う…?」
狐娘「産まれるぅ……なんつっての―――
ドガシャァ!!
狐娘「」
青年「今度フザケたら叩き出すからな」
狐娘「ぬしよ、上がったぞ」ホカホカ
青年「おーう。ちゃんと入ってきたみたいだな」
狐娘「うむ。じゃから、はよぅ乾かせ」ススッ
青年「へいへい。そこ座ってくれ」カチ
狐娘「ほーぉ……この温風は心地がよいのぅ」ボォォー
青年「ドライヤーくらい自分で―――使わせたら火傷しそうだよなぁ……」
青年「ってお前、髪ビチャビチャじゃん」
狐娘「こうやって頭を振れば……」フルフル
ビチチチッ
青年「バカヤロッ!周りに散りまくるからやめろ!」
狐娘「わしの物は無いぞ?」
青年「オレの物があるだろ!」
狐娘「全く、オスの癖して細かいやつじゃな」
青年「あーもう怒った」
狐娘「ふん。ぬしが怒ったところで、たかが知れておるわ」
青年「へー、そういうこと言うんだ」
青年「保健所に引き取ってもらう」
狐娘「やめい」
青年「そろそろ電気消すぞ」
狐娘「本当に消してもよいのか?」
青年「何が言いたい」
狐娘「ふっ……まだわからぬのか?」
青年「……」
狐娘「くくっ。ぬしはその明かりの中でしか生きられぬのではないか? と言っておるのじゃよ」ニヤリ
青年「……」
青年「それお前じゃん」
狐娘「頼むぅ……消さないでおくれ……」ガバッ
青年「はぁ、一番小さいのつけといてやるよ」
狐娘「まっ、それが妥当じゃな」
青年「こいつ……」イラッ
青年「……」パッ
狐娘「ぐすん」
青年「……」ピカ
狐娘「おほーっ」
青年「……」パッ
狐娘「……ぐすん」
青年「あほらし、寝よ」
狐娘「せめて小さいのを点けてから寝てくれんか……」
狐娘「わしにそんなものは無い」
青年「オ レ が!なの!」
青年「もう寝るからな」モゾモゾ
狐娘「……」
狐娘「……」ペシンペシン
青年「……」
狐娘「……ぐすん」ペシン
青年「わかったわかった、布団に入っていいから尻尾で叩くのやめてくれ」
狐娘「この線からこっちがわしの領地じゃな!」ゴソゴソ
青年「人様の布団に入り込んでおいて、領地とか言い出したぞこの狐」
狐娘「むっ!わしの領地に侵入しおったな」
青年「だったらなんだよ」
狐娘「そうじゃな……何か罰を与えんとのぅ」
青年「罰?」
狐娘「……そうじゃ。ぬしよ、片腕を差し出せ」
青年「お、お前……侵入しただけで片腕もぎ取るのか!?」
狐娘「何を言っておる、ただ少しこちらに出せと言っておるだけじゃ」
青年「…?こう、か?」スッ
狐娘「うむ。…なかなかよい枕じゃな」ギュ
青年「……」
青年「……まぁ、いいか」
「ちゅんちゅんっ」
青年「う、ん…?もう、朝か」
狐娘「ちゅんちゅんっちゅんっ」
青年「お前かよ。てっきり鳥かと思ったわ」
狐娘「腹が減った」
青年「……まだ四時かよ勘弁してくれ……」モゾモゾ
狐娘『ぐーぐー』
狐娘「むむ?どうしたんじゃ、わしの腹よ」
狐娘『お腹減ったのぅ、野垂れ死にそうじゃぁ』
狐娘「これはいかん!……しかし、ここに食い物は無くての……くそぅ」
狐娘『えーんえーん、お腹減ったよぉママー』
狐娘「すまんのぅ、すまんのぅ…………ちらっ」
青年「はいはい、作れば良いんだろ作れば」
青年「つーか、何で途中から子供っぽいのが出てきたんだよ。ていうか腹が喋るってなんだよ」
青年「ったく。放っておいたらずっと一人コントしだすし、寝ようにも寝れないっつーの」
狐娘「ほほぅ、コンと狐をかけたんじゃな。こんこんっ♪」
青年「飯作るから、ほんともうマジで黙ってて……」
狐娘「……」パクパク
青年「『め』『し』って、わかっとるわ!」
*
青年「ほらよ、きつねうどん」コト
狐娘「おほーっ!いただくぞっ」ズルル
狐娘「うまうま……美味じゃわ!」
青年「朝からよく入るなぁ。あと、本当に油揚げ好きなんだな」
狐娘「同族には、コレが嫌いな者も居るぞ」
狐娘「ま、わしは好きじゃがな」ハムハム
青年「さいですか」
狐娘「ところで、なにゆえコレは‘‘きつねうどん’’と言うのじゃ?」
青年「それはな……」
狐娘「それは…?」
青年「狐の肉から取ったスープ、狐の肉をすり潰して作った油揚げ、そして狐をふんだんに使ったその麺で作るからだよ」ニヤ
狐娘「」カラン…
青年「オレはきつねうどんを作るのが好きでな」
青年「今度はもっと美味いのを作ってやるよ。そのきつねうどんの前に、お前が居るかはわからないけどなぁ?」ニヤ
狐娘「き、狐殺し……」グス
青年「オレが何でお前にこうやって飯を食わせてるからわかるか?」
狐娘「……」ゴクリ
青年「お前を良い感じに太らせて、肉を美味くする為さ」
狐娘「は、はは……またまた、ぬしは冗談が上手いの……このきつねうどんのようにな」ガタガタ
青年「そうだな。今度は超美味いきつねうどんが作れそうだ」
狐娘「わ、わしを殺すと末代まで呪うからの!」
青年「ノロいお前が呪いなんて高度なことできるとは思えないが」
青年「せいぜいオレの為に肥えてくれよな」
狐娘「くぅ……わしは負けん!抗ってみせる!」
*
青年「じゃあオレは仕事行ってくるからな」
青年「絶対置いてある物に触るなよ!絶対にだぞ!」
狐娘「わかっておる……フリじゃろ?‘‘てれび’’とやらでわしは観たぞ」
青年「フリじゃねーよ!マジで触んなよ!」
狐娘「くふふっ……わかっておる、わかっておる」ニヤニヤ
青年「……」
狐娘「どうした?はよ