提督「秘書艦の大井さんはいつも不満顔」
重雷装巡洋艦の大井さんはこの鎮守府の秘書艦です。
毎日提督のお仕事のお手伝いをしています。
けれど大井さんの提督はつい最近着任したばかり。
大井さんもお手伝いしますが、なかなか上手くお仕事が進みません。
思うようにいかない提督の姿に、大井さんは今日も不満顔です。
そんな時は鎮守府の仲のいい艦娘達につい愚痴を零してしまうのでした。
「作戦が悪いのよ」
艦娘達の怪我を治す入渠ドック。ここには毎日たくさんの艦娘がやってきます。
大井さんも今日はその一人。 けれどそのお肌は綺麗なままです。
今日は出撃の日。提督の指揮の下海へと飛び出しました。
ひとつ、ふたつと、少しずつ目的地へ近づきます。
そうしてみっつめ。敵からの砲撃が少しだけ肌をかすめました。
「これくらいなら大丈夫」
そう思っていた大井さんでしたが、待っていたのはこのお風呂。
まだまだ進撃するつもりだった大井さんはとっても不機嫌です。
「この程度何ともないのに。 何ですぐ退きかえしちゃうのかしら」
「まあまあ。無理に進撃するのはよくないですから」
そう大井さんをなだめるのは 一緒に着任した駆逐艦の吹雪さん。
大井さんと一緒に出撃していた彼女も 一緒にお風呂に入っています。
「まだ私達の練度も高くないですし。慎重を期すのはいいことですよ」
次は頑張りましょう!そう吹雪さんはむんと気合をいれますが、大井さんはため息をついてしまうのでした。
「私には、あいつが臆病なだけにしか思えないわ」
秘書艦の大井さんは今日も不満顔。
この日は姉妹艦の球磨さんに文句を言っていました。
「まったく……こんな時間までかかるなんて」
そう言って大井さんは少し遅めのお昼ご飯を頬張ります。
秘書艦である大井さんは海へ出撃しなくともたくさんのお仕事があります。
そのなかで一番大切なお仕事は提督のお手伝い。
遠征部隊の見送りや出迎え、書類のチェックもしています。
けれど提督はまだ着任したばかりでまだまだ上手く出来ません。
終わったのはお昼も大分過ぎた頃。大井さんのお腹はペコペコです。
「長い時間お疲れ様だクマ」
そう言って球磨さんは 大井さんを労うのでした。
「何回も何回も同じところ間違えて。あの人、物覚え悪すぎなのよ」
資材の数を間違える、申請書類の書式を覚えない。
たくさんの不満を口にしながらご飯を食べる大井さんですが、一緒にいる球磨さんは何だかニコニコしてお話を聞いています。
「でも大井、最後まで提督に付き合ってたクマ」
大井さんは提督が終わるまでずっと待っていてくれたのです。
言葉は厳しくとも、最後まで丁寧に提督のお手伝いをしていたことを球磨さんは知っていました。
「なんだかんだ優しいクマね。流石球磨の妹だクマ」
「ちゃんとしてくれないとみんなが迷惑するじゃない。仕方なく、よ!」
秘書艦の大井さんはいつも不満顔
この日もぶつぶつと不満を零しています。
「少しくらい自分で勘付けないのかしら」
髪を梳きながら大井さんは呟きます。
「大井さんが毎日不満を言っているらしい」
そう誰かから伝え聞いたのでしょうか、提督はこの日、大井さんに一つ言い渡しました。
『何か思うことや不満があれば包み隠さず言って欲しい』
突然のことに眉をひそめる大井さんに、提督は続けます。
『これは命令です』と。
「提督なんだから少しくらい自分で考えて欲しいのに、もう」
けれど提督から命令された以上、従わない訳にはいきません。
「こうなったらお望み通り 何でも言ってやるんだから」
皆からの要望や日頃の不満、提督へのお小言などなど。話の種はたくさんあります。
何を言ってやろうかと考える大井さんはとても楽しそうです。
「程々にしてあげてにゃ。提督は不器用なだけにゃ」
やんわりと多摩ちゃんが提督をフォローします。
そんな言葉に、大井さんは「わかってるわよ」、そう返しました。
「ま、こんな形でも考えようとするだけマシかもね」
いつもは不満顔の大井さん。
ですが今日はなんだかとても嬉しそうです。
「北上さんと会えるなんて、いつ以来かしら?」
球磨さんと木曾さん、三人で部屋の中を掃除しながら、大井さんが嬉しそうに話します。
重雷装巡洋艦の北上さんは大井さんの大親友です。
これまではそれぞれ別の鎮守府に所属していましたが、この度北上さんがこの鎮守府に着任することになりました。
「これで球磨型5隻、全員鎮守府に揃うんだな」
「妹たちを呼んでくれるのはお姉ちゃんとしても嬉しいクマ~」
「提督もやればできるってことね。ちょっと見直したわ」
「そう言えば、提督はどこ行ってるんだ?大井姉は今日休みみたいだが……」
「別の鎮守府へ研修です。今回の事についても話をするみたいよ」
いつもなら提督がお出かけするときは大井さんも一緒について行きます。
けれど北上さんをお迎えする準備が必要とのことで、今回は特別に大井さんはお休みを貰っていました。
「大井。北上が来て嬉しいのはわかるけど、程々にするクマよ?」
大好きな北上さんと一緒にいたい気持ちはわかるけど、秘書艦としてのお仕事はキチンとやること。
そう球磨さんは念押しします。けれどそこは大井さんも承知の上です。
「心配しなくても大丈夫よ。やることはちゃんとやるから。それに―――」
「天下無敵の重雷装艦が二隻もいるんだもの。どんな奴だって、目じゃないわ!」
北上さんと一緒なら、どんな敵が相手でも大丈夫。
大井さんはそう信じて、部屋をピカピカに磨くのでした。
秘書艦の大井さんはいつも不満顔。
けれど今日はなんだか様子が違います。
大井さんが今いるのは入渠ドック。
作戦が終わり大好きな北上さんと一緒に入渠しています。
しかし今日の大井さんはどこか暗い表情です。
「いやー。大変だったね、大井っち」
そうお話してくれる北上さんへの返事もありません。
何か思いつめたように水面を見つめるばかり。
「作戦が、悪いのよ」
そう時折呟いて、きゅっと唇をかみしめています。
「まあしょうがないよ。こんな時もあるって」
大井さんは、何も答えません
「今回は相手の方が上手だったんだよ。また次やり返しちゃおうよ」
大井さんは、何も答えません。
「そういえば提督は大丈夫かな。今回の件で呼び出されたみたいだけど……」
「…………何で」
北上さんには答えず、大井さんは口を開きました。
「何であいつは、何も言わないのよ!」
今回の作戦では大井さんと北上さん、それぞれ別の敵を狙うはずでした。
しかし大井さんは、北上さんと一緒の敵に合わせて狙いを定めたのです。
その方が相手の数を確実に減らせる。そう考えての行動でした。
けれどその打ち漏らした敵からの攻撃で大井さん達は撤退せざるを得ませんでした。
「ごめんなさい、大井さん。僕のミスです」
ただ一言そう言って、提督は大井さんを責めることはありませんでした。
「これは提督のミスじゃない、私のせいなのに」
「なのに……なんであいつは 何も言わないのよ!!!」
「まー、提督らしいと言えば提督らしいよねー」
「ホント、馬鹿みたい。命令違反した艦娘を庇うなんてありえないわ」
「じゃあさ。もう一つ命令違反、しちゃう?」
そう言って北上さんが取り出したのは 高速修復剤。
大井さん達艦娘をすぐに直してくれる優れもののバケツです。
「着任したばっかりだけどさ。提督があたしたちのこと考えてくれてるのは何となくわかるよ」
「けど大井っちも心配してるならちゃんと言ってあげなきゃ」
「別に私は心配なんて……」
「それに命令されてたんでしょ?『思うことがあれば何でも言うように』って」
「……でも、どんな顔して行けばいいか」
俯く大井さんのほっぺたを、北上さんがつつみます。
「だいじょぶ、大井っちはすっぴんでも綺麗だから」
ほんわか笑う北上さんをみて、ようやく大井さんも顔をほころばせるのでした。
「ほら、早く追いかけてあげて。提督、行っちゃうよ?」
大井さんは北上さんからバケツを受け取ると、少しだけ考え込みます。
けれどすぐに中身を被ると入渠ドックを飛び出しました。
「提督も大井っちももうちょっと素直になればいいのにね」
大井さんが走り去った後にそっとそうつぶやいて、北上さんはお風呂に浸かるのでした。
秘書艦の大井さんはいつも不満顔
今日も忙しそうに海の上を駆け抜けます
「お疲れ様です、大井さん」
ようやく休憩に入った大井さんを、間宮さんが労います。
大きな作戦を前にして鎮守府は大忙し。艦娘は出撃や演習、遠征に追われています。
秘書艦の大井さんはそれに加え、提督のお手伝いもしなければなりません。
今日も朝からずっと働きっぱなし。流石の大井さんもクタクタです。
「こうもやることが多いと、ゆっくりお茶も飲めないわ……」
折角の美味しい間宮羊羹も、こう時間に追われていてはゆっくり味わえません。
コメント一覧
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- 2016年12月11日 22:23
- これが※1、後の大北不阿であった(本名:井上知武)
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- 2016年12月11日 22:25
- あま〜いw 提督が倒れて心配で心配で仕方無い大井っちもみてみたいな
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- 2016年12月11日 22:26
- 大井っちはボイス変更される前はれっきとした提督LOVEだった思い出
ある意味で真の初期艦でもあったし
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- 2016年12月11日 22:28
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うちのクレイジーサイコレズと交換してくれませんかねぇ……
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- 2016年12月11日 22:48
- 北上だけが好きなレズ大井嫌い
提督も好きなバイ大井好き
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- 2016年12月11日 22:51
- やっぱり大井っち好きだわ。文句ばかり言ってるけど、ちゃんと世話を焼いてくれるし、絶対いい奥さんになれる。
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- 2016年12月11日 22:57
- 事前登録提督かな?
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- 2016年12月11日 23:26
- 軽巡の大井っちは提督LOVE勢だと聞いた
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- 2016年12月11日 23:50
- これが大井っちだよ!
北上も嫌い
不知火好き
阿武隈好き