【呪文】「アブラカダブラ」とかいう知名度あるけど元ネタ謎な呪文の起源【魔法】

2016年12月12日：22:00

科学技術に支配された現代でも、かろうじて残っているオカルト知識はある。
たとえば一般人でもわかるような、有名な呪文だ。

「アブラカダブラ」
「エロイムエッサイム」
「テクマクマヤコン」

最後は冗談だが、「エロイムエッサイム」は最近ではアニメ『四月は君の嘘』でも主人公が呟いており、これで知ったという方も多いのでは。また、『悪魔くん』世代の方は「懐かしいなぁ」と感じることだろう。

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『悪魔くん』OP　Credit: breakingnews800.com

実は「エロイムエッサイム」の元ネタは意外と本気だ。
グリモワール(フランス語で「魔術書」)からの出典で、「Eloim, Essaim, frugativi et appelavi.」の省略版である。神、または悪魔など何らかの神格を意味する言葉だそうだ。(出典: タネタン)

Credit: jessica mullen

しかし、ここで注意したいのは、「スペル(呪文)」や「マジック(魔法)」といった言葉は、現在と過去では違う意味を持っているということだ。今ではこれらの言葉は笑いと嘲りをもって扱われ、人を惑わす奇術師のトリックやしばしば詐欺師のペテンを連想させるものでもある。

一方過去においては、魔術師やシャーマンという役割は、彼らが見えない力をコントロールしたり神の意思を解釈したりすると考えられて以来、多くの文化で高く尊敬されてきた。その上、彼らは王や家族の力を守り、帝国の安定を与えることができた。

分析に入る前に、呪文がどのようなアプローチで研究されてきたかを明確にする必要がある。これは真剣な人類学的研究であり、錬金術などの魔術や占いや複雑な天文学は、歴史的にはエンターテインメントや純粋な娯楽のためではない。それは全ての人に開かれた知識ではなく、実践者の世代を通じて受け継がれた秘伝的な規律の一部だったのだ。

さて、前置きが長くなったが、それでは史上最も一般的な呪文は何だろうか？日本では「エロイムエッサイム」の方が馴染みがあるかもしれない。ただ、世界的には、タイトルにもある「アブラカダブラ(Abracadabra)」が有名だ。では、「アブラカダブラ」とはどこから生まれたのだろうか？

「アブラカダブラ」の起源

おそらく最も一般的な魔法の言葉「アブラカダブラ」だが、実は明確な意味はない。これは民間伝統に由来する、幻想的で高尚な魔法の言葉として使われていた。

過去において、この言葉は熱や感染症にかかった時に効果がある呪文だと考えられていた。アブラカダブラという言葉に言及する最も古い文献は、西暦3世紀にローマ皇帝カラカラの侍医だったクィントゥス・サンモニクス・セレヌスによって書かれたLiber Medicinalis (De Medicina Praecepta Saluberrimaとしても知られる)だ。この文献によると、サンモニクスが皇帝に、「逆三角形この言葉を書いたアミュレットを常に身に付ける」ように指示したことがわかる。

アブラカダブラについて知られている最初の言及は西暦３世紀の本Liber Medicinalis。この言葉は逆さまに書かれて体につけられた時に回復力を持つと考えられた。

患者がこのアミュレットを身につけると、病気が緩和すると信じられていました。古代メソポタミア医学でさえ病気の悪魔を払う儀式があり、儀式と天文学的な慣行は先史時代にまで遡る。

クィントゥス・セレヌス・サンモニクスによって書かれたDe Medicina Praecepta Saluberrima。1662年。

邪悪な力を未然に防ぐため魔術の実践を選択したのはカラカラだけではない。ゲタやセウェルス・アレクサンデルという皇帝たちも同様に、サンモニクスの助言に従い、同じ目的のためにこの呪文を使っていた。

名前の謎

いくつか仮説があるが、主要な理論も少なからずあるので、研究者たちは『アブラカダブラ』という言葉の語源を理解することが可能だと考えているようだ。

一つ目は『私が言うとおりになる』または『魔術師の言葉は現実となる』を意味するアラム語の表現『Avrah KeDabra』だとするものだ。他の研究はこの言葉が、病気にかかった場合の『それを破壊せよ』を意味するアラビア語『Abra Kadabra』に由来していると報告している。アラム語の文は呪いではなく、病気の治癒という意味で使われたというわけだ。

二つ目は、アブラカダブラがヘブライ語で「アブ」(ab、父)、「ベン」(ben、子)、「ルアッチ・ハカドシュ」(ruach hacadosch、聖霊)を示すことができるという理論だ。

そして最後の理論は、この言葉が「タリスマンとして使われた石や宝石に見られる用語であるアブラクサスに由来する」としている。アブラカダブラは人間と太陽神の間に起こる調和を表現していたのかもしれません。

アブラクサスが彫られた宝石原石の表と裏

アブラカダブラと太陽の力

アブラクサスの石の彫刻。ミトラ教では、ミトラ神とアブラクサスの名の絶対値は、占星術や数秘術によって合計365となっている。 Credit: Wikipedia

この言葉は365の球の王子であり、『崇高な統治者』を意味する『メガス・アルコン』と関連していたと考えられる。西暦２世紀から３世紀に誕生した哲学的・宗教的運動を代表するグノーシス主義の派閥であるアレキサンドリアのバシレイデースのカルトにおける宇宙論では、この言葉を構成する７つの文字がそれぞれ７つの惑星、太陽・月・水星・金星・火星・木星・土星を表している。

アブラカダブラと太陽の治癒力の間にある関連の重要性は、悪の力を追放するために厄除け目的で言葉が書かれたいくつかのアミュレットや宝石に表されている。考古学者はアブラカダブラという言葉が書かれた三角形のアミュレットを多く見つけた。この言葉はおまじないで、三角の上から下にある最後の『A』まで歌われていたという。唱えている間に病気は減退し、最終的に消えると信じられていた。

15世紀のタロットに描かれた『マジシャン』のカード

この言葉はグノーシス文書『the Holy Book of Invisible Spirit』にも見られ、魔術について語るいくつかのギリシャ語パピルスにも現れている。

要約すると、「『アブラカダブラ』は信じるものにとって強力な治癒力を持ち、その力は民間伝統に残っている」ということになる。実際、1665年から1666年に疾病がロンドンを破壊した時にはアブラカダブラという言葉が彫られたアミュレットがあった。

現代英国文学の父と考えられているダニエル・デフォーは『The History of the Plague in London』の中で、「自暴自棄になった人々の中には『アブラカダブラ』と書かれたサインをドアに貼り付け始めた人もいた」と書いている。