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日本国内版Android Payを技術面で掘り下げる:モバイル決済最前線 - Engadget 日本版

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日本国内版Android Payを技術面で掘り下げる:モバイル決済最前線

現状ではまことに残念な仕様

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Googleのモバイル決済サービス「Android Pay」が12月13日に日本国内でもスタートした。Apple Pay上陸間近といわれた今年2016年夏ごろからすでに噂が存在し、年の瀬も近付いた師走に入り「そういえばまだ上陸していなかったの?」という声もちらほら聞こえてきていたところだが、当初の予想からは「かなり斜め上」な内容での国内ローンチとなった。簡単に概要に触れつつ、この"日本国内版"Android Payを技術面から少し掘り下げてみる。

Android Payが日本でも使えるようになりました

利用の方法は簡単だ。Google Playで「Android Pay」のアプリをインストールするだけ。電子マネーの追加メニューが現れるので、「楽天Edy」を選択するだけでいい。カードが端末内に作成されて、あとは楽天Edyの利用できる店舗で「タップ&ペイ」による支払いが可能になる。初回特典として400円分のクレジットが加算されているので、ぜひ買い物に活用してほしい。


▲まず最初に楽天Edyのカードを作成する。初回のみボーナスで400円のクレジットが加算される

......と、実はこの日本国内版Android Payでできるのはここまでだ。通常であれば、ここでさらにクレジットカードを追加して店頭での「タップ&ペイ」に利用したり、さらに電子マネーの楽天Edyにオンラインチャージを行ったりするわけだが、残念ながら原稿執筆時点ではこれ以上のカード追加は行えない。

Google WalletなどGoogleアカウント上にクレジットカードを追加している場合には、このカードを使ってオンラインチャージができるようなのだが、筆者の場合はなぜかエラーが出て先に進めなかった。ただ、JCBブランドの楽天カードではオンラインチャージできたという報告もあり(しかも米国Googleアカウントの状態で成功しているという)、必ずしもダメというわけではないようだ。


▲登録済みクレジットカードを使ってオンラインチャージを試みるが......


▲筆者の環境ではなぜかエラーが出てオンラインチャージできない

オンラインチャージできないだけで、通常の楽天Edyの非接触ICカードと同じように利用はできるため、店頭でのチャージを試してみた。今回はファミリーマートを利用したが、楽天Edyを利用可能な店舗などでは都度チャージも受け付けているので、これを利用すればいい。

また、今月中にもPOS入れ替えが発生してシステム更新が行われるが、ローソンではおサイフケータイに対応したスマートフォンなどを非接触の読み取り機にかざしておくと「現在利用可能な電子マネー一覧」が表示されるが、おサイフケータイ側では設定していない「楽天Edy」が一覧に表示されるようになっており、扱いとしてはおサイフケータイと一緒なようだ。実際、NTTドコモ製端末に標準で入っているおサイフケータイのアプリを起動すると、残高一覧で楽天Edyの利用状況が確認できる。


▲ローソンPOSでの店頭決済とファミリーマートでのオンラインチャージにチャレンジ


▲Android Payのアプリで利用状況を確認したところ


▲楽天Edyアプリをインストールして利用状況を確認しようとしたが、利用地域制限に引っかかったので、標準のおサイフケータイアプリで残高を確認。FeliCa SE内の楽天Edyカード情報は複数のアプリで共有されているようだ

イレギュラーな日本国内仕様

現時点での日本国内版Android Payは「楽天Edyが利用できるだけ」のサービスで、しかも前述のように使い勝手はあまりよろしくない。Apple Payがそうであったように、「クレジットカードを追加して店頭やオンラインでの決済がすぐに行える」というサービスにはなっていない。

Googleでは「今後も使える電子マネーの種類を増やしていく」と説明しており、噂通りであればおそらくSuica対応による交通系ICカードサービスの利用のほか、三菱東京UFJ(MUFG)との提携によるクレジットカード登録サービスなど、メニューを拡充してくるだろう。ただ、現状では仮にSuicaが新たにサービスに追加されていたとしても「機能限定版おサイフケータイ」の域を出ることはなく、なぜこのタイミングにあえて中途半端な状態でサービスインしたのか疑問が残る。このあたりは追加取材で追いかけていきたい。

この国内版Android Payについて、もう少し技術的側面から見ていこう。すでにお気付きかもしれないが、このAndroid Payは国内版Apple Pay同様に国内のFeliCaインフラに相乗りする形でサービスインが行われている。楽天Edyによるサービスが利用できるAndroid端末は「おサイフケータイ対応」でFeliCaのセキュアエレメント(SE)が搭載されているモデルのみであり、仮にFeliCa SEを搭載していない海外のAndroid端末にAndroid Payアプリを入れても楽天Edyのような国内電子マネーサービスは利用できない。

本来、Android Payがバージョン4.4以上のAndroid OSを要求するのは、このバージョン以降で利用可能になった「Host Card Emulation(HCE)」を決済サービスの中核技術として用いているためだ。HCEは決済サービスで利用されるハードウェア的なセキュアエレメントを必要とせず、この部分をホストCPUと呼ばれるAndroid OSが動作するプロセッサが肩代わりすることで動作する。

Android Payの場合、決済に利用するクレジットカードの実体はクラウド側にあり、トークナイゼーションの仕組みで生成されたトークンを適時本体側に格納することで、セキュアエレメントを使った決済の仕組みを擬似的に再現している。ただ、Suicaのようにレスポンスがシビアな用途では必ずしも動作が保証されないほか、そもそも「バリュー」と呼ばれる電子マネーの利用状況や残高情報を記録する安全なストレージがHCEには存在せず、このままでは日本国内のFeliCaを利用した電子マネーの仕組みには転用しにくいというのは以前にも解説した通りだ。


▲Android Payが利用するHCEの仕組み(左)。ただし今回の国内版ローンチにあたってはFeliCa SEを利用する従来型の右の方式が採用された

もし国内にAndroid Payが投入された場合、「HCEを使うAndroid Payでこのあたりの問題をどう解決するのか」という部分が非常に注目されていたのだが、結局今回の国内上陸では「FeliCa SEを使う」という方式に落ち着いており、「Android 4.4 KitKat以上であればだいたい利用できた」という特徴はなくなり、「国内のおサイフケータイ対応端末限定」ということになった。まだ複数パターンをテストしただけだが、FeliCa SEを搭載したおサイフケータイ対応機種であればSIMロックフリーモデルも含め国内版仕様として楽天Edyの登録メニューへと誘導されるようで、Android Payアプリの挙動がこの部分をスイッチとして切り替わる仕組みだとみられる。

日本国内で発行されるカードを登録することでType-A/Bによる非接触決済が可能になり、少なくとも対応の決済端末のある海外での利用が行えるのであれば、「国内ではFeliCaの電子マネー、海外ではType-A/Bのクレジットカード決済」ということで非常に便利になるのだが、現時点ではそれは難しい。しかも、この仕組み自体はすでに現状のおサイフケータイでも利用できるもので、Android Payの強みは「オンラインでのカード情報を直接相手に渡さないでの決済」のみということになる。これまでタップ&ペイの仕組みが国内でまったく利用できなかったApple Payと比較するとインパクトが弱く、正直なところ「(現時点では)残念」という感想を抱いている。いずれにせよ、今後少しずつ国内向けにもブラッシュアップが進められると思うので、しばらく経過を観察していきたいところだ。
Source: Google
関連キーワード: android, androidpay, edy, felica, google
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