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ノルウェーの病院でレントゲン技師をしているアン・ボーゲンホルムさん(46)は、17年前に奇跡を起こした。職場の仲間たちとスキーをしていたところ事故にあい、凍結した氷の中に80分間閉じ込められた。
発見時の彼女の体温は13.7℃。臨床学的にほぼ死んでいる状態だったという。ところがその状態から生き返ったのだ。
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スキー中に転落し凍った川に閉じ込められてしまう
1999年5月の朝、ナルヴィク病院での仕事を終えたボーゲンホルムさん(当時29歳)は、友人たちと共にスカンディナヴィア山脈にスキーに出かけた。
その日のコンディションは最高で、白夜は夜になっても雪上を照らしてくれていたという。しかしその事故は起きてしまった。
ボーゲンホルムさんのスキー板が思わぬ方向を向き、転落の衝撃でスキー板を失ってしまった。そのまま山を転がり続け、彼女は凍り付いた川の上に。氷の板は彼女の体重を支えきれず割れてしまい、自然の力は彼女を問答無用で下流へと押し流した。
友人たちが駆けつけ、彼女のブーツを掴み水辺から救い出そうとしたが、持ち上げることができなかったという。
水面に吊り下げた状態になっていたボーゲンホルムさんは、氷の下で必死に息を吸える場所を探したという。運よく氷の下にちょっとした歪みを見つけた彼女は、その小さな穴から呼吸を行い、酸素を確保した。しかしそうしている間にも彼女の服は水を吸い、重さは増していったという。彼女の体温は徐々に低下していき、彼女の目の前は真っ暗になったという。
低体温状態が続くとどうなるのか?
人間の体温は摂氏37度弱で保たれるのが最適だ。しかし低体温状態が続くと、身体は生命を守る為に両手足の血管を収縮させ、血液を全て身体中の臓器など「中心部」へと集めていく。これにより生命が保たれる事もあるが、両手足や耳などの末端部分は血液が行き届かず凍傷になる場合がある。
こうした状態から更に体温が低下すると身体は筋肉を使って熱を生み出す。寒い時に身体ががたがた震えるのはこの為である。この震えは基本的に胸部から始まり、徐々に両腕と両足が震え始める。だが人体が一時的に熱を作り出すこのシステムは、身体中のエネルギーを使い尽くしてしまうため、心臓発作や脳梗塞の可能性を格段に上げてしまう。
体温が摂氏35度を下回ると低体温症になる。血圧は下がり、呼吸も浅くなり、徐々に脳へ送られる酸素が少なくなっていく。これにより低体温症独特の症状である言語障害、意識障害などが引き起こされるのだ。
そして酸素が脳に送られない状況が続くと、脳は不思議な行動に出る。低体温状態の人間が服を脱ぎ始めたり、雪に穴を掘ってそこに埋まったりするのはそういった奇怪な行動の一つである。更に司令塔である脳を失った臓器は徐々に死を迎える。
80分間氷漬け状態で、心肺停止で発見された1時間後に病院に到着
ボーゲンホルムさんはそういった意味では「死にとても近かった」と言えるだろう。レスキュー隊が駆け付けた時には彼女は氷の下に80分もの間浸かっていたのだ。
心肺停止状態で、皮膚は白く、瞳孔は拡大していた。レスキュー隊のヘリコプターに搭乗してから病院まで更に1時間もの時間があり、レスキュー隊はその間CPRを怠らなかったという。
大学病院にボーゲンホルムさんが到着した時、マッズ・ギルバード医師は愕然としたという。「彼女の皮膚を触った時、氷のように冷たく、死んでいるようにしか見えませんでした。心電図は心臓の動きが無い事を示しており、定規をそこに置いたように真っ直ぐな線を描いていました。生命の存在が無かったのです」とギルバード医師は語った。
この時のボーゲンホルムさんの体温はおよそ摂氏13.7度であり、通常ならここから体温を元に戻しても生命が活動を取り戻した例がなかったのである。
だが最悪の事態を想定した上でギルバード医師とそのチームは「私たちは決して諦めるべきではない。彼女を温めつづけよう」と決意したという。
奇跡的に息を吹き返す
ボーゲンホルムさんは何の前触れもなく氷水の中にまず頭が浸った。彼女の脳が水に浸かった瞬間に身体の機能を一旦停止させ、そのまま低酸素状態でも生きられるように指令を出していたのであれば、生き延びられる可能性があるかもしれない。
ギルバード医師はボーゲンホルムさんを手術室に運び、人工心肺に繋げ、人体から冷たい血液を引き抜き、暖かい血液を戻して行った。
1時間近くをかけて行われた救急治療の措置は完璧で、彼女の体温はみるみる上がって行ったという。心臓はゆっくりと不規則に動き始め、午後4時にはボーゲンホルムさんの心臓は息を吹き返したのだ。
12日後に目覚める
12日後彼女は目を覚ましたが、彼女がまともに動いて歩けるようになったのはその翌年からである。
「死というものは即座に起こるものではなく、ゆっくりと数分をかけて行われるプロセスなのだ。彼女の場合、即座に氷水に浸かった事で死というプロセスが遅延され、脳死を免れたのだと考えられる。」と生理学者のケヴィン・フォング氏は語った。
死の淵で彼女は死後の世界を見たのだろうか?
あきらかに臨死状態にあった彼女だが、現在は回復し、トロムソの大学病院ででレントゲン技師として、多くの患者のMRIやCTスキャンを見ているという。
via:cbsnews・alchetron・atlasobscuraなど/ translated riki7119 / edited by parumo
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コメント
1. 匿名処理班
山登りをやっていた頃、同じパーティーの仲間が悪天候で服がびしょ濡れのまま行動していて低体温症になった。意識が混濁して体が動かなくなって、顔も血の気がなくて「死相が出ている」というのはこういうことかと思った。(実際、テント内の気温を上げるくらいではどうにもならなくて、診療所に担ぎ込まなかったら危なかったらしい)
この方は死相が出るどころか心臓も動いてなかったのか。彼女自身もすごいけれど温めて蘇生させる決断をしたお医者さんもすごい。
2. 匿名処理班
極低温で意識なくしても、脳の酸素使っちゃうからダメージあるんだね
3. 匿名処理班
ドクターKでプロフェッサー朝倉が成し遂げてる
4. 匿名処理班
よかった!
素晴らしいね
5. エッド
俺の知り合いのジョン・スノウなんかは、深夜遅くに胸を数カ所刺されて心肺停止状態だったけど、半日したら生き返って刺した奴らを縛り首にしてたぞ。