神谷奈緒「箱の中にいる」
──中庭──
テクテク…
奈緒「はぁー。寒ー」
奈緒(とっとと事務所に行って暖をとりたいぜ)
奈緒「……ん?」
?「こんっ」
奈緒「……!?」
?「こんこんっ」タタッ
奈緒「あ、ちょ!」
奈緒「……行っちゃった」
──事務所──
奈緒「でさ、中庭を突っ切ってここに来る途中、珍しい動物に出会ったんだよ」
加蓮「珍しい動物?」
奈緒「あれは多分、狐だった!」
加蓮「狐……」
未央「狐ってこの辺りに生息してるんだ」
奈緒「そうだと思う。色が狐っぽかったし、私も信じられなかったけど、こんって鳴いてたし」
加蓮「……だと思うとか、っぽいとか、随分と曖昧な言い方だね」
未央「寝ぼけてたんじゃないの、かみやんー?」クスクス
奈緒「そんなこと……多分、ないよ」
加蓮「怪しー」フフッ
奈緒「し、信じられないっていうなら、今から探しに行こうぜ!」
未央「探しにって、中庭に狐を?」
奈緒「おう!」
ガチャッ
凛「おはよー」
未央「しぶりん、おはよー」
奈緒「いいタイミングで来たな凛。今から中庭に行くぞ!」
凛「中庭? いや、雪積もってたよ?」
奈緒「ああ、だからこそだ。足跡が残ってるかもしれない今がチャンスなんだよ!」
タタタッ
加蓮「……別に信じてないとは言ってないのに。奈緒ったら猪突猛進なんだから」
未央「てなわけで今から私たちは狐捜索隊だよー。出発だ、しぶりん!」
凛「どうやら私は最悪なタイミングで来ちゃったみたいだね」トホホ…
──中庭──
奈緒「いないなー」
未央「こっちのもいないですぜ、かみやん隊長」
奈緒「凛の方はどうだ?」
凛「足跡の1つもない、キレイな雪景色だね」
奈緒「そうか……うーむ、この辺りに逃げ込んだと思ったんだけどなぁ」
加蓮「狐って警戒心が強い生き物だって聞いたことあるよ。人間に見られて、もう中庭から出て行ったのかも」
奈緒「でもあたし、確かに見たんだぜ?」
加蓮「それはわかってるよ。……さっきのはちょっとからかっただけ。信じてないとは言ってないでしょ?」
奈緒「……」
加蓮「気にしたなら謝るから、事務所に帰ろ?」
奈緒「うん」ショボン
加蓮(……そんな顔しないでよ、もう)
凛「……あと少しだけ探そうか」
奈緒「え?」
加蓮「凛……」
凛「まだ10分も探してないじゃん。私も狐、見てみたい」
未央「うんっ、私も狐見たい! 見つけたらゆっくり近づいて、捕獲して事務所のペットにするの!」
凛「それは狐がかわいそうでしょ」コツン
未央「てへへっ」
加蓮「……しょうがない、探すよ奈緒。でも探すと決めたからには全力だからね。狐が見つかるまで探し続けるんだから」クルッ
奈緒「みんな……うん! 頑張って狐を見つけよう!」
ガサガサ…
未央「うーむ。見つからないねぇ」
凛「そろそろ仕事の時間だから、今日のところは一旦事務所に戻ろう」
加蓮「続きはまた明日だね」
奈緒「ありがとうな。私のわがままに付き合ってくれて」
凛「私は私が狐を見たいから探すだけだよ。みんなもそうでしょ」
未央「そうそう!」
加蓮「早く帰ろう。事務所に誰もいなくて、プロデューサーさん困惑してるかもしれないし」
奈緒「ああ、そうだな。急いで戻ろうっ」
タタタッ
奈緒「……あれ」
奈緒(そういえば、卯月の姿を見てないな)
──事務所──
凛「まだプロデューサー来てなかったね」
加蓮「もうすぐ来るでしょ。座って待ってよ」
奈緒「……」キョロキョロ
未央「かみやんどうかした?」
凛「事務所の中でも狐探し?」クスッ
奈緒「いや、なんでもない」
──帰り道──
凛「お疲れさま。明日もトライアドでレッスンあるよね?」
加蓮「うんあるよ。それに狐探しもね?」
凛「ふふ、忘れてないよ。何時に集合すればいい?」
奈緒「朝早めってだけで特に時間は決めてないなぁ。未央にもそう伝えてあるんだ」
凛「そっか。じゃあそこらへんは各自適当にってことで。じゃあね、また明日」
奈緒「1人で帰るのか?」
凛「うん。なんで?」
奈緒「いや、別に……」
凛「お疲れさま、加蓮、奈緒」フリフリ
──翌日──
奈緒「よう加蓮。おはよう」
加蓮「おはよう。もう来てたんだ。ふふ、随分早いね?」
奈緒「はっはっは。なんたって未央いわく私は隊長だからな! 隊長が遅れをとるわけにはいかないぜ!」
加蓮「あはは、よく言うよ」
奈緒「えへへ……」
テクテクテク
凛「お待たせ、2人とも」
未央「私たちも相当早く来たつもりなんだけどな~」
奈緒「凛、未央……よし、これで全員揃ったな! 今日も捜索を頑張っていこう!」
オーッ!
ガサガサ ザクザク
加蓮「未央。霜柱を踏む音、なるべく立てないようにして。狐は物音に特別敏感らしいから、怖がって逃げちゃうよ」
未央「あ、ごめん。つい無意識で」
加蓮「狐の聴覚を侮っちゃいけないよ。イヌ科なのに、嗅覚より聴覚の方が鋭いくらいなんだから」
未央「へぇ~……かれんって狐に詳しいね」
加蓮「ふふ。そりゃあ昨日の夜にネットで調べたからね」
凛「狐ってイヌ科なんだ。これはますます見たくなってきたよ」ワクワク
奈緒「さすが凛。そこに食いつくんだな」
凛「……未央の案、悪くない気がしてきた。事務所のペットにして、いずれはうちのハナコとツーショットを撮って……」
未央「ちょ、ちょっとしぶりん! 昨日の私のあれは冗談だからね?」
凛「ふふ、わかってるよ。私のも冗談」
奈緒「目が本気だったぞ……」
加蓮「みんな。しゃべってないで狐を探すよ。時間は限られてるんだからねっ」
キョロキョロ
奈緒「……」
未央「かみやん、何か見つけたの? 門の方を見つめてたみたいだけど」
奈緒「……いや、今日も見かけないなって思ってさ」
未央「見かけないって狐を?」
奈緒「いや、卯月を」
未央「……ん?」
奈緒「卯月っていつもあの門からやってくるよな。そろそろ来てもいい時間だし、気になっちゃってさ」
未央「……いや、かみやん。しまむーは」
凛「未央」タタタ
未央「どしたのしぶりん、そんなに急いで?」
凛「あっちで動物の毛みたいなものを加蓮が見つけたんだ。未央、虫眼鏡持ってきてたよね?」
未央「うん、あるよ!」
凛「奈緒も一緒にこっちに来て。もしかしたら、すごい手がかりかもしれないよ」
タタタッ
奈緒「どの毛だ?」
加蓮「これ。一本だけだけど、少なくとも人間の毛じゃないから」
未央「未央ちゃんに貸してみなさい! どれどれ、ふむふむ……」
凛「どう?」
未央「さっぱりわからん。ていうか拡大しただけじゃ、素人の私に判別なんてできない!」キリッ
凛「……じゃあなんで虫眼鏡なんて持ってきたの」
未央「そっちの方が探索隊っぽいから!」
加蓮「子供か!」
未央「そりゃあ15歳ですし」フフッ
凛「……奈緒、見てわからない? これが狐のものかどうか」
奈緒「うーむ。はっきりといたことは言えないが……でもこれは、違う動物の毛のような気がするな」
奈緒「この毛は少し黒くて長すぎる気がする。あたしが見た狐はもっと薄い色をした小さいやつだったはずだから」
加蓮「そっか……」
凛「重要な手掛かりだと思ったんだけどねぇ」
未央「ま、でもさ、中庭に野生動物がいてもおかしくないことの証明ではあるんだし、成果なしってわけじゃないでしょ」
奈緒「……ああ、そうだな!」
凛「いいこと言うじゃん未央」
未央「えっへっへ。もっと褒めてくれてもいいんだよっ」
加蓮「ちょっとちょっと。動物の毛を見つけたのは私なんだけどー?」
未央「バレたか」
加蓮「バレバレ!」
アハハ…
凛「今日の探索はこのぐらいにして、そろそろ事務所に行こうか」
未央「そうだね。私もう指がかじかんじゃって!」
加蓮「先に行ってヒーターの前取っちゃおーっと」タタッ
未央「あ、ずるいよかれん!」タタタッ
奈緒「……」
奈緒(卯月、今日も来ないみたいだな)
凛「私たちも急ごう、奈緒」
奈緒「……ああ」
タタタ…
──帰り道──
凛「じゃあね、また明日」
スタスタ
加蓮「レッスンは順調そのもの。狐探しも動物の毛を発見できたし、昨日よりは前進できてる。うん、いい感じだ」ニコニコ
奈緒「へへ。本当に真剣に狐探しをして
コメント一覧
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- 2016年12月17日 23:25
- 動物系かと思ったらホラーじみてきて震えた
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- 2016年12月17日 23:37
- 病み村鬱月さん
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- 2016年12月17日 23:49
- すまん誰かまじで解説頼む
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