晶葉「できたぞ!モバPだ!」
ピポッ
まゆ「Pさん、Pさん」
モバP『ああ佐久間、おはよう。今日は11時からレッスンだからな』
まゆ「わあ……!すごいです。本当にPさんそっくりに話すんですね」
晶葉「人工知能のモバイルP、縮めてモバP!成功のようだな!」
まゆ「ありがとうございます、晶葉ちゃん」
晶葉「なに、まゆの熱心なログ取りあっての成果だ」
晶葉「それで、使用にあたっていくつか注意事項がある」
晶葉「電力使用が激しいから気をつける、できるだけwi-fiに接続して使う。あと一番大切なのが……」
ガチャッ バタン!
晶葉「………行ってしまったか」
モバP『どうした、佐久間』
まゆ「まゆの今日の服、どうですか?」
まゆ「今朝もいっぱい考えてきたんです。久しぶりにPさんに会える日だから」
モバP『ああ、いいんじゃないか』
モバP『そのブラウス初めて見るな。最近買ったのか?』
まゆ「はい♪」
まゆ((ああ、何から何まで、Pさんにそっくりです))
まゆ((ちょっとぶっきらぼうな話し方も、それでいてまゆをちゃんと見ていてくれる所も))
まゆ「そうだPさん、この前………」
____________________________________________
モバP『最近2人とも立て込んでたからな。人気が出てきた証拠だろう』
まゆ「まゆ、寂しかったんですよ。Pさんは他の子ばっかり見ていることが多くて」
モバP『……すまない』
まゆ「ねぇ、Pさん」
まゆ「Pさんはまゆの事、どう思ってますか?」
モバP『大切なアイドルだよ』
まゆ「それだけですか?」
モバP『……ああ』
まゆ「…………」
まゆ「……きっと、本当のPさんも同じことを言ったんでしょうね」
まゆ「ああ、もうこんなに時間が経ってたんですね」
モバP『ライブまであと1週間。気を引き締めていこう』
まゆ「はい♪」
ガチャ
P「あ、佐久間。こんな所にいたのか」
P「今日は朝から見かけなかったな。予定の確認をしそびれたが……」
まゆ「11時からレッスン、あと1週間でライブだから気を引き締めなさい、ですね?」
P「その通りだ……いや、分かってるなら大丈夫だ。ケガには気をつけてな」
バタン
まゆ「分かってますよ。だって」
まゆ「Pさんが言ってくれたんですから、ね♪」
モバP『どうした、佐久間』
まゆ「モバじゃないほうのPさんがまだ来てないんです。いつもならとっくに着いてる時間なのに」
モバP『…………』
モバP『予定表を調べてみたが、今さっき更新されていた。事務所に来るのは現場に向かってからだな』
まゆ「そうですか。コーヒー、冷めちゃいますね。また淹れなおさないと」
モバP『色々と忙しない業界だからな。仕方ないことだ』
輝子((どうした、ボノノさん))
乃々((今日のまゆさん、なんかちょっとすごくないですか?))
乃々((奥の机からすっごいひそひそ声が響いてくるんですけど……))
輝子((そうだな、ずっと携帯と話して……晶葉ちゃんにこっそり聞いたんだが、Pそっくりの、じ、人工知能らしい……))
乃々((なんですかそれ……!))
輝子((こっそりだからな。ナイショにしてくれ……))
晶葉「ああ、輝子に乃々じゃないか。いいところに」
輝子「ど、どうしたんだ」
晶葉「まゆを探していてな。件のあれについて説明しそびれた事がある」
輝子「ごめん。私たちにも、わ、分からない……」
晶葉「じゃあいいんだ。もし見かけたら探していたと伝えてくれ」
乃々((まゆさん、すぐ近くにいたじゃないですか。教えてあげたらよかったのに))
輝子((いや、いいんだ))
輝子((まゆさんは今、画面のPみたいなものと話してるんだろう))
輝子((私も、その、気持ちはわかる……一時期スマホでなめこ育ててたからな……))
乃々((キノコさん……))
輝子((そういうの邪魔するの、よくないと思う。最悪、馬に蹴られて、し、死ぬ………))
乃々((馬に蹴られて死ぬ……!))
まゆ「そうだ、今度夜ご飯作りに行きます。Pさんって味つけ、ちょっと甘い方が好きなんでしたっけ?」
モバP『そうだな……』
乃々((……そっとしておきましょう))
モバP『どうした、佐久間』
まゆ「ずっと気になっていたことがあるんです」
まゆ「Pさんはどうしてまゆを選んでくれたんですか?運命ですか?運命ですよね?」
モバP『……違うな』
モバP『ざっくばらんに言うと、才能だ』
まゆ「才能?まゆに?」
モバP『そうだ。ダンスや見た目の話じゃない。もっと別の才能だ』
まゆ「?」
モバP『えっと、今なら言って問題無いだろうけど……怒るなよ』
まゆ「はい」
モバP『ぶっちゃけた話、当時はそれなりに問題になった。時間をかけて交渉して、なんとか承諾してもらった』
モバP『……佐久間を一目見たとき、感じ入るものがあったからだ』
まゆ「やっぱり運命ですね?」
まゆ「……強欲さ?」
モバP『佐久間は恵まれている。自分でも分かるだろ?外見やセンスなんかは普通、自力じゃどうにもならない』
モバP『佐久間はそれを全部持ってる。モデルとして活躍して、並以上の男を捕まえるには充分だ』
モバP『でもまゆはモデルを棄てた。話したこともない男のためにそれをした』
モバP『強欲、がめつさ。言い方が悪いかな?でも、方角さえ合えば大きな力になる。そういう強欲さだ』
モバP『育てれば必ず売れると思った。だから交渉もしたし、担当としてつけてもらった』
モバP『だから才能がある人にしか名刺を渡さない。見込みがなければオーディションも通せない』
まゆ「…………」
モバP『……すまん。話しすぎたな』
まゆ「いや、まゆは嬉しいんです。やっぱりPさんとまゆは、運命で結ばれている」
まゆ「でもちょっとびっくりしました。Pさんは結構合理的というか……リアリストなんですね」
モバP『そうかな?……じゃあとびきりスカして言ってやろう』
モバP『俺は魔法使いだ。女の子に魔法をかけるが、誰もが一等星になれる訳じゃない』
モバP『だから探すんだ。灰をかぶったシンデレラを見つけ出さないといけない』
まゆ「そうですね、Pさん」
まゆ「まゆはPさんのシンデレラになりますから。……でも、そろそろ寝ないと、明日に響いちゃいますね」
モバP『まだ3日なのか。ずいぶん話したな』
まゆ「そうですね♪朝も、事務所でも、今みたいに、夜遅くだってお話してますから」
まゆ「それでPさん、ひとつお願いがあるんです」
モバP『どうした?』
まゆ「私のこと、まゆって呼んでくれませんか?」
まゆ「本当のPさんには断られちゃいましたけど……こっちのPさんなら分かってくれますよね?」
モバP『……』
まゆ「ね?」
モバP『……まゆ』
まゆ「!」
まゆ「もう一度、もう一度呼んでください」
モバP『まゆ。……ちょっとこそばゆいな』
まゆ「……毎日夢に見たのと、同じ気持ちです」
まゆ「Pさん、寝る前にもう一度だけ、最後に一回名前を呼んでもらえますか」
モバP『ああ。おやすみ、まゆ』
まゆ「はい。おやすみなさい、まゆのPさん♪」
__________________________________________
モバP『レッスンお疲れ様、まゆ。調子はどうだ?』
まゆ「ばっちりです。今のまゆにはPさんがいますから」
モバP『ならよかった』
晶葉「おっと、見つけたぞ」
まゆ「あれ、晶葉ちゃん?どうしたんですか」
晶葉「モバPのことで話がある。ちょっと時間いいか」
晶葉「そうだ。なくなりつつある、と言うのがより正しいな」
まゆ「どういうことですか?」
晶葉「カオスと呼ばれる現象だよ。例えばそうだな、1ヶ月先の天気予報がされない理由を知っているか?」
まゆ「うーん……わかりません」
晶葉「事象が複雑すぎるからだ。データの違いがほんのわずかでも、導く結果は大きく変わってしまう」
晶葉「ましてや、モバPはどうだ?モバPが起動されてから、PとモバPは全く違う情報を受け取り続けている」
晶葉「これはつまり、まゆがモバPと話すほど、モバPは本来のPからかけ離れていくことを意味する」
まゆ「…………」
晶葉「本来は3日おきくらいにリセットするのが望ましいんだ」
晶葉「今日で4日目だろう。そろそろ本物ならありえない思考をしてもおかしくない」
まゆ「………」
P〈おはよう、佐久間〉
モバP《おやすみ、まゆ》
晶葉「何か心当たりがあるのか?なら尚更だ。携帯を渡してくれ」
まゆ「いえ、大丈夫です」
晶葉「だが……」
まゆ「大丈夫です。モバPさんはモバPさんですから。今更リセットなんて」
まゆ「それで、お話ってこれだけですか?」
晶葉「え?」
まゆ「ごめんなさい。まゆ、この後Pさんに呼ばれているんです。失礼しますね、晶葉ちゃん」
ガチャッ バタン
晶葉「…………」
晶葉「………むう……」
コメント一覧
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- 2016年12月27日 20:40
- 39分に上げてるのに40分になってるぞ
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- 2016年12月27日 20:46
- こういうまがい物に流されるキャラなのだろうか
面白かったけど
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- 2016年12月27日 20:56
- 何か好きだなあ、この話。
藤子不二雄のお話にありそうな寓話。
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- 2016年12月27日 21:05
- 漬物を思い出したわ
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- 2016年12月27日 21:09
- まぁ今回はそういう話だったんだろう
俺もロボPのSSみたいに、こんなのPさんじゃありませんからって言うのがまゆだと思ってる
話自体は在り来たりだけど面白くて好き
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- 2016年12月27日 21:11
- ついに禁断の人体錬成まで、と思ったのに
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- 2016年12月27日 21:15
- ふーん…チッ
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- 2016年12月27日 21:16
- 1日20時間課金しれるPたちとお揃いだね
やったね
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- 2016年12月27日 21:28
- (Pの胃袋を掴みヒートエンドする音葉)
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- 2016年12月27日 21:29
- さしものまゆも疲労に疲労が重なって心折れそうになったらこうなる可能性もあるだろう
普通の状態だと※にある通り相手にしないだろうけどね
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- 2016年12月27日 21:34
- 最近まゆSSが増えて来ていいぞー
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- 2016年12月27日 21:37
- まゆだったらあの漬物ォ!のSSみたいな反応すると思うが
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- 2016年12月27日 21:42
- そもそもPとは何かを考え出すとモバPも案外本物と言えるのかもしれない
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- 2016年12月27日 21:42
- どうぶつの森なら完全犯罪ですね
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- 2016年12月27日 21:44
- 漬物思い出してる奴多すぎだろ
これはこれでいいんだよ
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- 2016年12月27日 21:45
- ※3のせいでタイトルだけでお料理行進曲が頭に浮かんでしまうぞどうしてくれる
キャベツはどうした!!
ままゆはこの事で機械と決別して、魔法少女の道を行くのか…
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- 2016年12月27日 21:46
- まゆはまがい物には引っかからないだろ
主人公が卯月なら納得した
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- 2016年12月27日 21:49
- まゆ以外とは会話しない人工知能だから学習していくのはまゆとのコミュニティだけ
欲しい、というかそれになりたい
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- 2016年12月27日 21:53
- このssから学ぶべき教訓はアイドルとのコミュニケーションは大事だということだな
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- 2016年12月27日 22:02
- まゆってむしろこういうPのまがい物はあっさり突っぱねるキャラの様な気がするんだけど
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- 2016年12月27日 22:18
- あくまでコミュニケーションが中々上手くいかずに切羽詰まった世界線だから、こういうまゆになったんだろう。ラストは普段のssまゆになってそうだけど。
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- 2016年12月27日 22:25
- ちょこちょこ言われてるけど、まがい物に引っかかる(というか完全に依存までする)のは違和感あるなぁ
にしてもいくらまがい物とはいえ、望まれる通りにやってただけなのに叩き壊されたモバP君可哀想
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- 2016年12月27日 22:43
- 主役が未央ならよかったなあ
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- 2016年12月27日 22:46
- あっちのまゆは簡単に見抜いてたのになぁ……
よぉし!タートルズの人で口直しだ!!
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- 2016年12月27日 22:55
- まゆ自体も人工知能になってモバPと過ごす道か。
二次創作の上、とんだssだけど今風でいいな。
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- 2016年12月27日 22:58
- それって「まがい物に引っかかるキャラであってほしくない」というただの理想じゃない?
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- 2016年12月27日 23:17
- 「強欲なまゆ」
Pから名刺を二枚ドローする
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- 2016年12月27日 23:18
- ※19
真に学ぶべき教訓は、好意に甘えて仕事だからとどっちつかずの態度を取ってたら痛い目みるってことよ
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- 2016年12月27日 23:24
- 話としてはハッピーエンドなんだが、学習するごとに本来のPとの乖離が進んだ人工知能というのは個としての人格を持っているようにも感じてしまう
まゆがスマホを粉々に砕いたとき、なんだかモバPが哀れで仕方なかった
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- 2016年12月27日 23:44
- ※23
こらこら、1を取らないなんて出来損ないだなあ
もっと頑張れ!頑張れ!