【艦これ】磯波「どうしちゃったの? そのカッコ!?」
磯波「サンタさんだよね?」
江風「……」
磯波「……」
江風「……傷ついた」
磯波「え!ち、違うの!?」
江風「……喜ばしい日とおめかしと、満を持してその後からやって来るは、親友の潔さすら感じる裏切り……」
磯波「ご、ごめんね! でも他に思いつかなくて……」
江風「……ホレ! この頭に付けた、クリスマスの権化みたいな角を見なよ!」
磯波「……トナカイ?」
江風「ん! 大当たり!――そうさ!トナカイさ!」
磯波「(じゃあ、この紅白の衣装は? 発注ミス?)」
磯波「へ、へぇ~。じゃあ江風ちゃんも、鈴谷さんや漣さんみたいに今夜のパーティで着ていくんだね」
江風「いんや、パーティは普段着だよ」
磯波「着てかないの?」
江風「がっつりラフな格好さ」
磯波「じゃあその浮かれた格好は何のためなの?」
江風「このアホみたいな格好は、深夜に真価を発揮するのさ」
磯波「?」
江風「つまりこのバッチリした格好で、皆の枕元にプレゼントを配ろうって訳さ!」
磯波「へぇ~! サプライズだね!気が利くね江風ちゃん!」
江風「いや~、そう褒めなさんなって! そんな君にもきっと夜更けに気の利くトナカイが来るだろうねぇ!んん!来るだろうねえ!」
磯波「(すごい照れてる……一般的なトナカイさんは多分、サンタさんのお仕事中は外待機だと思うけど……)」
磯波「でも全員に配るの?何十人もいるよ?」
江風「いや、配るのは4,5人だね。」
磯波「え?」
江風「3,4人」
磯波「あ、そんな内々な感じでやるんだね」
江風「全員なんて無理無理」
磯波「それじゃあ、ちょっと不公平になっちゃわないかなあ。貰えた子と貰えなかった子と……」
江風「心配しなさんな! その疑問ならとっくにやっつけちまってるよ」
磯波「どうするの?」
江風「小さい子には配らない!」
磯波「へえ~それなら大丈夫そうだね。誰に配るの?」
江風「ここに候補者の名前を書いた割り箸がある」
磯波「あ、抽選なんだね、江風ちゃん」
磯波「それじゃあ引くね――えいっ!」
江風「一気に3本いくかあ。そういう所が好きだなぁ――ん~?どれどれ?」
磯波「利根さん、秋津洲さん、木曾さん……だね」
江風「よっしゃ! じゃあ早速、何を欲しがってるか3人に聞いてきてくれ!」
磯波「やっぱり見切り発車だったんだね、江風ちゃん」
江風「トナカイの下りで気づくべきだったねぇ」
磯波「百も承知だよ、江風ちゃん――でも、私が訊くの?」
江風「どした?ひょっとしてこの後予定でもある?」
磯波「ううん。だって――江風ちゃん分かるでしょ? 3人ともあんまりお話したことないし……私おしゃべり苦手だし……」
磯波「江風ちゃんが訊いた方が、きっと上手くいくんじゃないかな?」
江風「上手くいくかどうかはじゅーよーじゃない。君がやることに江風は意味を見出したいんだよ。そうだろ?」
磯波「……予定があるの?」
江風「那珂ちゃんサンのイベントがあって、――決して数合わせって訳じゃないけど――とにかく呼ばれてんだよね。賑やかしで。川内さんに」
磯波「……」
江風「すまんな」
磯波「……分かった! やってみる」
江風「ん! そういうとこだぞぉ!」
磯波「あの、すいません舞風さん」
舞風「うん? なになに?」
磯波「えっと、利根さんを探しているんですけど――どこかで見ませんでしたか?」
舞風「うん、見たよ! さっき食堂で!」
磯波「ありがとうございます!」
磯波「(……いた! 利根さんしかいないみたい……)」
磯波「(どうしよう……コーヒーにすごいたくさん砂糖入れてる最中だし……今声かけたら失礼かなあ)」
磯波「(あ、どうしよう……今度は一口飲んだ後に、なんとも表現できないような顔で舌を出して咳き込んでる……やっぱり迷惑かなぁ)」
磯波「(ううん! こんな弱気じゃ、いつまで経っても話かけられないし、話しかけよう!)」
磯波「(よし、ここだ! 利根さんがすごいたくさん牛乳を入れてるこの瞬間! この瞬間なら大丈夫!)」
磯波「あ、あの……すみません。今お時間大丈夫でしょうか」
利根「!?」
磯波「(どうしよう……利根さんカップに口をつけたまま固まっちゃった)
磯波「ご、ごめんなさい! 後ろから話かけたら驚きますよね! 本当にごめんなさい!」
利根「……う、うむ! い、いかな我輩と言えども、一心地ついている時分に、背後から不意打ちを食えばこうもなろう」
磯波「ごめんなさい……」
利根「いやいや、ちょっと驚いただけじゃ! ……それより、その……見たのか?」
磯波「えっと……何をでしょうか?」
利根「うむ! いや! 良い! それなら良い! それで、何用じゃ?」
磯波「えっと……(いきなり「今、何が欲しいですか?」なんて聞いても答えづらいよね……どうしよう……えっと……)」
利根「?」
磯波「(そうだ! “今身近にあるものを話題にしろ”って江風ちゃんがくれた本に書いてあったっけ!よぉし……)」
磯波「コーヒーお好きなんですか?」
利根「!? と、当然じゃ!! 朝昼夕と、一日の節目にコーヒーは当然欠かせないものじゃ! 吾輩は……吾輩は……ええっと……」
磯波「(コーヒーと私を交互に見てる……これは……)」
利根「……そう! 飽きないように“あえて”砂糖を入れてみたり、“あえて”牛乳を入れてみたりと、それぞれの味の違いを楽しむほどじゃ!」
磯波「(これは……間違いない……きっと、利根さんは……利根さんが好きなものは……コーヒー!」
磯波「(きっとそうだ! 好きなことをお喋りする時は皆ちょっと饒舌になったり、「!」マークが多くなるような喋り方になる……!)」
磯波「(しかも、このコーヒーに対するこだわり具合……江風ちゃん! 私、掴みました! 『利根さんにはコーヒーを!』」
磯波「あの……ありがとうございます!」グッ
利根「へ?」ポカン
磯波「お聞きしたいことは正にそのことでした! ありがとうございます! それでは失礼します!」ダッ
利根「……征ってしまったか」
磯波「(廊下の向こうに秋津洲さんがいる!……行きます!)
磯波「あの、こんにちは。秋津洲さん」
秋津洲「……あ、磯波ちゃん、こんにちは!……はぁ~かも」
磯波「(どうしたのかな? ちょっと元気がないみたいだけど……)」
秋津洲「今日は良い天気で良かったかも!」
磯波「そ、そうですね」
秋津洲「はぁ~かも」
磯波「(どうしよう……すごく何か言いたがってる)……あ、あの、何かあったんでしょうか?」
秋津洲「鋭いかも! 実はさっき提督に頼まれて七面鳥を焼いてたの――そしたら、厨房にふらっと来た瑞鶴がやいのやいの言い出して、大変だったかも!」
磯波「へ、へえ……大変でしたね」
秋津洲「顔を赤くさせたり青くさせたりして、わーきゃー言う瑞鶴を、20分くらいかけて秋津洲と翔鶴がなだめて……なんだかどっと疲れたかも」
磯波「お疲れ様でした」ペコリ
秋津洲「ありがと! でも、これからかも! まだまだお料理たくさん作って、それに飾り付けもお手伝いして、パーティをうんと豪勢にしなきゃね!」
磯波「わぁ、腕が鳴りますね! 夜までずっとお忙しいんですか?」
秋津洲「そうかも! 忙しすぎて大艇ちゃんの手も借りたいくらいかも! ……あ! “手”で思い出したかも!」
磯波「あの、どうしたんですか?」
秋津洲「どこかで、方っぽだけの手袋見なかった? どっかに落としちゃったかも~」
磯波「えっと、う~ん……すみません、見ませんでした……」
秋津洲「残念かも~……お気に入りだったのに~……」
磯波「お役に立てなくて、すみません」
秋津洲「ううん、謝らないで! もし何処かで見かけたら教えてほしいかも!」
磯波「はい、分かりました。注意して歩いてみますね」
秋津洲「ありがとうかも!それじゃね~」
磯波「はい! あの……パーティ、楽しみにしてます!」
磯波「(手袋かぁ……頑張って見つけられたらいいけど……)」
磯波「(最後に見たのが何処かとか、いつ失くしたのかとか聞いておけば良かったなあ……)」
秋津洲「ねえ」
磯波「(木曾さんに聞く前に探してみようかな)」
秋津洲「ねえねえ」
磯波「(でももうあんまり時間もないしどうしよう……)」
秋津洲「聞くかもー!!!」
磯波「きゃあっ!?」
秋津洲「あ、ご、ごめんなさいかも!驚かすつもりはなかったかも!」
磯波「いえ……こちらこそ、ごめんなさい……えっと、なんでしょうか?」
秋津洲「……」
磯波「……あの?」
秋津洲「……磯波ちゃんは時々思い出すことない?」
磯波「えっと……何を……でしょうか?」
秋津洲「……秋津洲も上手く言えないかも。すごく奇妙で、ほとんど忘れちゃった昔の感触……」
秋津洲「あの時、瑞鶴が言ってたことはちんぷんかんぷんかも。でも、意味はちょっと分かってたかも」
磯波「……」
秋津洲「何十年も前に、どこかにしまい込んだまま忘れちゃったものを、何かの拍子に思い出すような感覚……」
秋津洲「でもそれなのに、それが何のことか見当もつかないかも……知りたいのにどこにあるかも思い出せないかも……そういうの磯波ちゃん分かる?」
磯波「……」
秋津洲「でも本当は……」
秋津洲「……ごめんね! せっかくのクリスマスにこんなお話する必要はないかも! 失くした手袋が相当に惜しいだけかも!じゃあね!」
磯波「あの!」
秋津洲「?」
磯波「どこかで見つけたら、お知らせしますね」
秋津洲「……うん! ありがとうかも!」
コメント一覧
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- 2016年12月27日 20:23
- 天龍ちゃんの反応が気になる
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- 2016年12月27日 20:40
- クリスマスに間に合ってない・・・。
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- 2016年12月27日 22:36
- ※2
ここのサンタは慌てん坊なのさ。362日程早かっただけ。