【モバマス】松山久美子「オナラソムリエのススメ」
一応メインはマツクミさんですがアイドルがオナラをしますので注意です。
きらびやかなアイドルたちのたむろする346プロダクション事務所の一角で
何とも間の抜けた放屁音が鳴った。
屁主である松山久美子は表情を変える事なく、落ちた手鏡を拾い上げて机の上に戻した。
彼女の尻の向こうにはプロデューサーがいる。
しかし彼は久美子に対して眉をひそめる事なく作業を続けた。
「プロデューサー、今度のライブについてだけど……」
小室千奈美が反対側からプロデューサーに企画書を差し出す。
ここでは他のアイドルユニットとは違い、事務員すらも配置されていないため
プロデューサーと待機組のアイドルが事務員の仕事も兼ねている。
「ああ、これか」
小室千奈美はプロデューサーの前で隠す事なく大きく弾む放屁をした。
プロデューサーはそのまま企画に目を通してなるべく千奈美を見ないように努めた。
「プロデューサーさぁん、お茶うけ、どうですかぁ?」
千奈美の後で松原沙耶がお茶と和菓子を持ってきた。
「ありがとう、沙耶」
「いいですよぉ」
ぶぶっ。
プロデューサーに背を向けた後、沙耶はややその小尻を突き出して屁をした。
プロデューサーは少し事務所内を見回して言った。
「ええ」
アイドルたちに仕事を任せた後、プロデューサーは
年期の入った古臭い長椅子に寝転がった。
「……」
彼が寝息を立てているのを見ると
槙原志保、伊集院惠、間中美里がそれぞれ立ち上がり、彼の周りに集まった。
「誰から行く?」
「あの、私が行って良いですか? 漏れそうで……」
志保はそういうとプロデューサーの頭の上に大股で跨がり
そのショーツで隠し切れない豊かなお尻を
出来るだけ鼻に近づけるように突き出し、スカートを捲った。
ぶっぶぶぶぅぅ!
涙ぐむほどの快屁を放った志保は、真っ赤になった顔を隠してその場から離れた。
朝から出そうな屁を我慢しずっと腸内で転がしていたので
思いの外大きな屁音が出てしまったようだ。
それからも所属アイドルたちは屁臭漂う部屋の中で
代わる代わる寝ているプロデューサーの顔に跨がり、その鼻先に熱のこもった屁をこいた。
「……」
プロデューサーは目を閉じたまま
アイドルたちが一通り屁を終えるのを待っていた。
起きているが、彼はこの事を笑う事も咎める事もしなかった。
それは全て、担当アイドルたちの想いの籠った屁だったからだ。
部屋はアイドルの放った天然の屁(アロマ)で満ちていた。
その匂いはドアの隙間から廊下まで漏れた。
「こんな屁コキアイドルだらけのユニットなんて
次のプロジェクトで解散させればいいのにね」
部屋の外では他部署の社員たちがそんな暴言を呟いているのが聞こえてくる。
だが、誰も放屁をやめようとしなかった。
例え屁コキアイドルの汚名を着せられようとも
彼女たちはプロデューサーを助ける一心で屁を毎日放ち続けているのだ。
(ありがとう、皆。皆の熱い屁吹(いぶき)を糧に、きっと勝ってみせるよ……!)
始まりは極めてささやかな口論だった。
美城専務は先立つ会議でアイドルたちのリストラを発表した。
アイドルが二百人に増えた346プロダクションは慢性的な人手不足で
一人のプロデューサーが十数人ものアイドルをプロデュースする事は普通だった。
アイドルグループを一括してという事ならともかく
アイドルを個別にプロデュースする人数としては業界最多の人数である。
専務はプロデューサー陣の負担とアイドルたちへの綿密な指導を徹底させるべく
今いるアイドルの人数を段階的に三分の二に減らし
プロデューサー陣を増やしていく方針を発表した。
アイドルはCD売り上げなどの貢献度によって選別され、下から順に解雇通告が来る。
プロデューサーは、重役だけで決められたその方針に憤りを覚え
プロジェクトの推進者である美城専務相手に直訴した。
ただ、今回の件は乱暴過ぎると、そう申し上げたいのです」
プロデューサーは十五人のアイドルをプロデュースしていた。
今回の通告で彼の担当アイドルの半数以上が解雇通告を受けている。
「多種多様なアイドルが在籍している事は
346プロダクションにとって大きな強みです。
それを自ら捨てるという決断は……!」
「無策でしている事ではない」
専務は言った。
「その長所は三分の二に在籍数が減っても十分に保てる。
今は可能性を持つアイドルを集めるより、次代を担うアイドルの選別と
きめ細かな育成に力をかけようというのだ。
運良く事務所に潜り込んだ無芸大食の者に
施しを与えるほど、私は慈悲深くも愚かでもない」
「……! ですが……っ!」
プロデューサーは声を荒げた。
自分の大切なアイドルが無芸大食と言われては憤るのも無理もない。
土下座をしてでも手持ちのアイドルたちを
食い繋げたい思いだが、つい感情的になってしまった。
全てのアイドルの能力を把握しているつもりだ。
君は私より所属アイドルたちを把握している自信はあるのか?」
「ありますっっ!」
プロデューサーは強い口調で言い切った。
「……そうか。ならばそれを見せてもらう」
「見せる、ですって?」
「ああ、私よりアイドルの事を把握できているのであれば、私も考えを改めよう」
「! 本当ですか!? ……しかし、どのような方法が」
「……話は変わるが、君は『ペートソムリエ』について知っているか?」
専務は足を止めて、プロデューサーの方を振り向いた。
「はい。オナラによって放屁した人間の特徴、心理、健康状態を把握するスキルです。
プロデューサーとしてアイドルの体調を
把握管理する一環として私はその資格を取ろうとしています」
しかし『ペートソムリエ』というイタリア語を知る者は少ないに違いない。
ペートソムリエ、俗称ではオナラソムリエと称されるこの資格は
まだ日本で一般的に普及していない。
そもそもオナラソムリエの起源は十一世紀まで遡る。
南イタリアの一都市サレルノは、西洋最古の医学校発祥の地として知られている。
十一世紀末、そこには衛生学の読本『サレルノ養生訓』なる古典が存在した。
それは生活習慣に関する事柄を予防医学の視点から解説し
民衆に広く知らしめたものだった。
それには今のソムリエにつながるワインに関する基礎知識も載っていた。
そして、放屁によってその人間の健康状態を図る指針もまた解説されていた。
中国では、元代にオナラソムリエの基となった考え方が
シルクロードを通って伝えられた。
高僧・空彩(くうさい)は波斯人から
サレルノ養生訓の写本を受け取り、翻訳した。
そして時の皇帝・仁宗アユルバルワダにそれを献上した、との記録が残っている。
また、清代の文人・袁枚は、自らの書「随園食単」に
料理を食べた後の放屁から健康を知る事が出来る事を記していた。
これらの思想は、現在において屁から大腸がんの傾向を
把握するための研究に確かにつながっているのである。
「話?」
「ああ、君との議論の決着をつけるのにな。
オナラソムリエの二次試験で、君は私と競い合ってもらう。
幸い、オナラソムリエ協会会長、ウッツ・ヘーデル氏は知り合いだ。
公式に沿った問題を作成してもらい、便宜を図ってもらう」
「言っておきますが、私は……」
「安心しろ。二次試験は実技、出された屁のみで
どれだけ早く多くの問題を当てられるか競うだけだ。
君が勝てば今回の件、私が至らなかったと認め、計画は白紙に戻そう。
だが、私が勝てば……今後社内における
君の場所は保証出来ない、とだけ言っておこう」
「……利き酒対決ならぬ、利きナラ対決、という訳ですね……。
……分かりました。そのお誘い、お受けいたします」
そこにいた小室千奈美、相原沙耶、松山久美子
伊集院惠、槙原志保、並木芽衣子、江上椿は彼を温かく出迎えた。
彼女たちの笑顔こそ、彼を戦いに駆り立てた動機だ。
彼女たちはいずれもこのリストラプロジェクトにおいて
槍玉に挙げられている成績不振アイドルだ。
もしあのプロジェクトが推し進められたなら
プロデューサーは担当アイドルを全て失ってしまう。
恐らくプロデューサー自身も能力を問われて更迭されるだろう。
平社員の自分がどうこう言ってどうにかなるものではない。
かといってプロジェクトまでに全員Aランクにあげる事は不可能だ。
望みがあるとすれば、そう、提案されたオナラソムリエの試験バトル
それしか残されてはいない。
「……実は」
プロデューサーは今回のリストラと専務と交わした撤廃条件を包み隠さず話した。
彼女たちは驚いたが、プロデューサーが自分達を救うために
自らの進退も賭けていると知り、胸が熱くなった。
「プロデューサー!」
「久美子……」
プロデューサーは久美子を見た。
久美子はこの部署の古株で、プロデューサーとは付き合いが非常に長い。
というより、この事務所に長居するアイドルはほとんどいない。
スカウトしたものの、一向に奮わないアイドルは皆ここに放り込まれた。
そしてやっと芽が出てきた頃には異動を通告され
他のプロデューサーの下に派遣される、そんな部署だった。
かつてここには相川千夏というアイドルがいた。
だが彼女は、大槻唯とのデュオがブレイクすると唯と同じ部署へと異動された。
木村夏樹も、松永涼も、ここでアイドルバンドをしていたが
同じような理由でそれぞれ多田李衣菜・白坂小梅の所に異動された。
そのためブレイクしたユニットのないアイドルのみ残るここは
弱小アイドルの掃き溜めと上層部から後ろ指を指されている。
コメント一覧
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- 2017年01月01日 21:48
- 放屁すると大腸菌も一緒にガスとなって放出されるらしいがそれを顔で受けるのか...
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- 2017年01月01日 22:43
- 元旦からこんな素晴らしいSSに出逢えるなんて
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- 2017年01月01日 22:59
- 良い年になりそうだ
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- 2017年01月01日 23:08
- 僕は顔面騎乗されたいです(大声)
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- 2017年01月01日 23:24
- Pっていうのはどうしてこう頭が狂っているのか
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- 2017年01月01日 23:34
- 久美子さん主演の新年初めのssが何か変だw
しかし、良いかな~
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それじゃあこずえちゃん。俺の顔に跨がろうねー