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「シンギュラリティのポイントは攻殻機動隊的な超人間化」大学の教授4人による攻殻シンポジウム - Engadget 日本版

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「シンギュラリティのポイントは攻殻機動隊的な超人間化」大学の教授4人による攻殻シンポジウム

4人のDr.攻殻による公開ブレストです

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SF作品で見てきた未来の技術がリアルになりつつある現代。2029年が設定の都市とされている攻殻機動隊の世界に今どれだけ近づいているのか。2016 年11月26日に開かれた神戸ITフェスにて、「人工知能の研究と社会実装(現在・未来)」をテーマに「攻殻機動隊 REALIZE PROJECT presents 攻殻シンポジウム」が行われました。



登壇者は、神戸大学名誉教授の松田先生、九州大学名誉教授、公益財団法人九州先端科学技術研究所副所長の村上先生。電気通信大学教授 同大学人工知能先端研究センター長の栗原先生。神戸大学教授、NPOウェアラブルコンピュータ研究開発機構理事長の塚本先生。 モデレーターは、攻殻機動隊 REALIZE PROJECT事務局 統括顧問・コモンズ代表取締役の武藤博昭氏。最初のセクションは「電脳、人工知能、AI編」です。



武藤:お待たせしました。神戸市×攻殻機動隊REALIZE PROJECT第2部としまして、攻殻シンポジウムを1時間半にわたってお届けしたいと思っております。さっそく先生方にご登壇いただきましょう。トークイベントを始める前に、わたくしどものプロジェクトの説明をさせていただきたいと思っております。

攻殻機動隊REALIZE PROJECTは、原作士郎正宗先生のコミック発表以来25周年の節目に発表されたプロジェクトでございます。日本が誇るSF作品、攻殻機動隊に描かれた電脳、人工知能、義体・ロボット、テクノロジーの世界をリアルにしようという産学連携のプロジェクトになっております。

それではさっそく、攻殻シンポジウム「人工知能の研究と社会実装(現在・未来)」と題しましたセクション1に入ります。セクション1は「電脳、人工知能、AI編」です。人工知能の研究が日本国内でどこまで進んでいて、世界を見渡したときに我が国、日本はどこまで研究が進んでいるんでしょうか。またこの分野における国レベル、それから民間レベルでのわたしたちの課題などの話ができたらいいなと思ってます。まずはこの映像からご覧ください。

シンギュラリティのポイントは超人間化



武藤:今見ていただいたところに、とくにタチコマを中心としまして、電脳空間の中に入っていくシーン、それぞれが個に目覚めてしまうみたいなところがシーンが刻まれていました。そもそも電脳化といわれるものについてですが、どうも学術的には工学分野でブレイン・マシン・インターフェースなんていうふうに呼ばれていると。皆さんがお持ちのスマートフォン。いつからかわたしたちの記憶をスマートフォンに頼っている時代が来ているなんて感じます。

さて、松田先生、先ほど非常にエキサイティングなご講義をいただきました。この世界の中でのシンギュラリティについてというところで、今一度「シンギュラリティとは何か?」というところをお話しいただけますか。



松田:シンギュラリティというのは人によっていろんな定義があるんですが、未来のある時点で物事が非常に大きく変わってしまうということ。例えばレイ・カーツワイルは希望として、「人間の自分の精神、魂をコンピュータにマインドアップロードして自分が死ななくなる」と。わたくしは、そこはなかなか今の技術では難しいんじゃないかと思っております。

ただ、攻殻機動隊の世界みたいなことは比較的可能じゃないかと。つまり今おっしゃったブレイン・マシン・インターフェースですね。例えば、人間が眼鏡をかけるとか、義足とかの先にある義体化。電脳化、義脳化というのは、さっきおっしゃったようにiPhoneとかそんなのでやっとるわけで、それの究極的に進んだものが、巨大なスーパーコンピューターと人工知能です。これが人間と一体化するというようなことが2045年までには可能になる。わたくしはこの超人間化ということがシンギュラリティの一番のポイントだと思います。

武藤:さきほどの松田先生の講義では、超人類代表として塚本先生の顔がどーんと長い時間映っていました。

先生は昨年度も同じくこの神戸ITフェスティバルの会場でトークイベントにご登壇いただきました。塚本先生は「電脳化を真っ先にしたい」とお話しになっていますが、何を求めて電脳化をしたいのでしょうか?

塚本:私はいつかみんなが電脳化するんじゃないかと思っています。みんなするんだったら一番乗りしたいなと。



そして、電脳化することによって人類が今の人類を超えて、今の人類にできないような能力を身に付けることができると思うので、電脳化を目指すのは人間として当然の欲求じゃないかなと思っております。

人間の不得手なものを人工知能がカバーする未来

武藤:作品の中では、莫大な数の小型の機械、マイクロマシンを脳に埋め込むというお話があります。そうすることで、遠隔にロボットなどを直接操作するようなことや、インターネットと同じく、ネットワークに接続して、いろんな情報をリアルタイムに検索したり共有したり、そんなことができるという世の中のようです。いかにこの技術を使っていくのかというところはとても大事になってくるなと改めて思っています。村上先生、ここについてはいかがでしょうか?



村上:人間を超える超えないというお話もあるんですけれども、そもそも人間もいろんな知能を持っています。多重知能という考え方があって。それと今の人工知能と、オーバーラップするところもあるし、オーバーラップしないところもある。

たぶん人間と人工知能を合わせると、八つ九つ十、もしかしたらそれを超える知能が定義されるのかな、という気がしております。人間もいろんな複数の知能を持っていても、全員が等しく同じようにそれらの知能を活用、発揮しているわけじゃなくて、得手不得手があるといわれてます。

得手のところは自分自身でどうにかなるけれども、不得手のところを例えば人工知能でカバーしてもらうとか。あるいはもともと人間が不得手なところ、例えば大量のデータに対するさまざまな分類であったりとかは不得手な人が多いので、人工知能でカバーする。

そのときの人と機械とのつながりをどうするか。松田先生がおっしゃられたように、脳にレースを注射して埋め込むとか、非常にショッキングなお話がありましたけども、そういうのも含めて、たぶんわれわれは今コンピュータと付き合うときにはなんらかの言語に落としてるわけです。

言語でなければ音楽であったりとか絵を描いたりとか、なんらか表現をしないとコンピュータとインターフェース取れないんですけども、これが近未来的には、そういう言語、あるいはなんらかの表現を取らなくても、コンピュータとインターフェース取れる。そういう時代が来るのが非常に楽しみです。

まとめると、一つは人間にもいろんな知能があるけれども、不得手なところを人工知能でカバーしてほしい。2番目はわざわざそういう言語に書き直さなくても、インターフェースが取れるような、そういう技術というのが欲しいなと思います。

国の研究費の問題

武藤:栗原先生は国立大学で初めて人工知能の研究所として人工知能先端研究センターを設立されてセンター長をおやりになられてます。同時にドワンゴさんの人工知能研究所も客員研究員をおやりになられていると思います。研究機関としてのものと、民間企業に設立された人工知能研究所というところの二つの役割の中で、日本の研究と、社会実装に関して、どんなふうにお感じになれていますか?



栗原:今、自分たちが研究サイドから見ていて、ある危機感があるんです。最近のAI系のベンチャーさんとかすごい元気ですが、でもなんか見ていると、AIのベンチャーさんでやってるような研究テーマと、僕ら大学がやっている研究テーマがあんまり違いがないような気がしていて。これは非常によろしくない。

というのは、ディープラーニングというのはいくつかのいろいろな指標があるんだけれども、悲しいかな全部Made by GoogleとかMade by USAです。ですので、いろんなパーツを組み合わせても結局似たものになる。

大学とか基礎研究をやるところは、新しいパーツをつくんなくちゃいけないんだけれども、ディープラーニングまでいくと、そのパーツをつくるのもなかなか簡単ではないしお金もかかります。なので、国が研究費を出すことがよいですが、国から来る研究費であっても最近は数年後には具体的な成果を望まれてしまっていて。

そうすると、成果がちょっと見えにくいものを国ではやりにくいところがあって。これが突き進んでいってしまうと新しいパーツもできません。このままいくと一番肝なところでどんどん日本がなおざりになってしまうかもしれません。

盛り上がってるのはいいんですけれども、全てUSAから来るもので盛り上がっているのはよろしくないので、Made in Japanで盛り上げるようにしなくちゃいけないかなっていうのがすごく今逆に感じているところです。

そういうときにこういう作品というのが、日本が出てきてるというところが、ある意味唯一の救いでもあるのかなと。

村上:今の栗原先生の、わたしも同じことを思っています。もともと企業は近視眼的というか、成果が短期で求められる。企業はそれで仕方なくて...。以前は大学はもうちょっとロングレンジで研究ができたと思うんです。ご承知の通り、国立大学も法人化したのがもう10年以上前でして、それから研究費が全部競争的資金で、ある意味いいんですけども、どうしても競争的資金だと流行りのテーマをやらないとなかなか研究費が取れないというジレンマもあって。

なかなか5年先とか10年先にものになるかならないかわかんないような研究をするというのが非常に難しくなってきている。栗原先生のお話もそういうことじゃないかなと思ってて。ですから、競争的資金でやる以外のもう一つ別のチャネルみたいなもの、あるいはスキームをつくるのがよろしいのかなと。

アメリカってものすごく近い将来を見て研究してますけれども、もちろんそれも必要なんだけども、もうちょっとロングレンジで研究が必要じゃないかなと思っています。

塚本:それが攻殻機動隊REALIZE PROJECTじゃないですか。これに100億ぐらいのお金付けてもらえたら、「われわれ、これを目指してやります!」っていう言い方ができてとてもうれしい。

武藤:そうですね。本当にそういう近未来が来ることを目指します。われわれの役割はまさにそういう一つのプラットフォームになることだなと考えてます。

GoogleやMicrosoftに立ち向かうには

松田先生、GoogleやMicrosoftなどは人工知能分野においても強い威力があると思っていますが、そこに勝つためには、もしくは勝負するために、僕たちは何を国と学校と民間とを掛け合わせて、どこからスタートしたらよいのか、考えをお聞かせください。



松田:なかなか難しいですね。幕末で明治維新になったときに、黒船というのが来て危機感を感じて志士が立ち上がった。われわれも、第2の維新を起こさんといかんだろうと。志士は、若い人ですね。だからわれわれのやることは、触媒。つまり、若い志士を集めて一つの運動にしていくということ。わたくしと塚本先生はシンギュラリティサロンというのをやっておるんですが、これも一つの活動です。ちなみにお金は全然ありませんけどね。

武藤:さきほど産総研さんのスーパーコンピューターに対する国からの研究資金の話がありました。アメリカと比べるとどうしても桁が違うように感じてしまったんですけれどもどうなんでしょうか?

松田:産総研の件はえらく思い切って190億。これは日本としては画期的ですね。

武藤:多いんですね。

松田:いや、多いでしょう。スパコン1台で190億というのは、日本としては思い切ってますよね。それまではさっきも言いましたように、産総研の人工知能研究所の予算が8億ですよ。理研の人工知能が14.5億ですからね。そこから比べれば思い切ったでしょう。

栗原:その190億という金額なんですけども、参考までなんですけど、文部科学省が大学のスパコンセンター、それから国立の研究所のスーパーコンピューターの年間予算が約200億なんです。それとほぼ匹敵する金額が、産総研の今回新規ですので、それは非常に大きいと思います。
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