引用元: モバP「脱・響子宣言」

1: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/04(日) 18:49:56.10 ID:CKKfElqyo


響子「いいですか、冷蔵庫に食材一式を入れておきましたから」

響子「必要に応じてチンして食べてくださいねっ」

P「はい」

響子「ご飯も小分けにして冷凍してありますから」

響子「炊く時間がないときはこっちを食べてくださいね」

P「はい」

響子「Yシャツは洗ってアイロンをかけておきましたっ」

響子「シミも綺麗にとれましたよっ、ほらっ」

P「おー」



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2: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/04(日) 18:51:18.51 ID:CKKfElqyo

響子「あっ、あとこれ買ってきたんです」

P「?」

響子「シューキーパーっていうんですよ」

響子「革靴を保管するとき、中に入れて使うんです」

響子「靴が長持ちしますから、脱いだら必ず入れるようにしてくださいねっ」

P「うん」

響子「それと、洗剤が切れかけていたので」

響子「ストック用も含めて買い置きしておきました」

響子「常に予備をおいておくと便利ですよっ」

P「うん」




3: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/04(日) 18:52:28.98 ID:CKKfElqyo

響子「あっ、もうこんな時間!」

響子「それじゃあ私は学校に行きますから」

響子「Pさんもお仕事に遅れないようにしてくださいね!」

P「うん」

響子「そうだ、お鍋にお味噌汁が入っていますから」

響子「温めて食べてくださいね、それと……」

響子「はいっ、これ、お弁当ですっ」

P「うん」

響子「今日のは自信作なんですっ」

響子「あとで感想、聞かせてくださいね!」

P「うん」




4: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/04(日) 18:53:17.82 ID:CKKfElqyo

響子「ふふ、じゃ、行ってきますね」

響子「戸締まりとガスの元栓だけ、忘れないようにしてくださいね」

P「うん」

響子「しっかり朝ご飯、食べなきゃダメですよっ」

響子「それじゃまた、事務所で!」


ガチャ


バタン


P「……」




5: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/04(日) 18:53:47.95 ID:ikYaiIQ2o
ええ嫁さんや…




6: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/04(日) 18:53:49.45 ID:CKKfElqyo

P「……」

P「そうだ、味噌汁……」


カチッ


P「温めて……」


ズズー


P「……」

P「うまい」

P「でも」




7: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/04(日) 18:54:18.64 ID:CKKfElqyo


P「まずいよな、これは」







8: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/04(日) 18:54:54.32 ID:CKKfElqyo


―――

――――――





9: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/04(日) 18:55:24.50 ID:CKKfElqyo



美穂「脱?」


卯月「響子ちゃん宣言?」






10: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/04(日) 18:56:08.83 ID:CKKfElqyo

P「うん」

美穂「えっと……?」

卯月「どういうことですか?」

P「読んで字のごとく」

P「響子からの脱却を図ろうと思ってな」

卯月「だっきゃく?」

美穂「響子ちゃんと、何かあったんですか?」





11: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/04(日) 18:56:51.65 ID:CKKfElqyo

P「よく聞いてくれた」

P「二人ともうすうす感付いていると思うが」

P「最近の俺と響子はその、なんつうか……」

P「目に余るというかな、まあひどいもんだろ?」

卯月「?」

美穂「?」

卯月「ひどい、ですか?」

P「うん」

P「相談する相手、間違えたかな……」




12: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/04(日) 18:57:54.86 ID:CKKfElqyo

P「まあ、実際に見せた方が早い」

P「例えばこれだ」スッ

美穂「あ、お弁当」

卯月「Pさんのお弁当箱ですか?」

卯月「ちっちゃくてかわいいですね!」

P「ありがとう」

P「何を隠そうこれは、響子が作ってくれたものでな」

美穂「えっ! そうなんですか!」

卯月「へえー! 中見てもいいですか?」

P「いいよ」


パカッ


美穂「わあ~」

卯月「すごい、おいしそうです!」




13: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/04(日) 18:59:01.48 ID:CKKfElqyo

P「だろ?」

P「俺のオススメはこれだ」

P「うずらの卵をベーコンで巻いたやつな」

P「爪楊枝に刺してあって、非常に食べやすくてグッドだ」

P「ベーコンをわざわざ焼いてくれてるのもポイントが高い」

卯月「いいなあ~」

美穂「こっちのハンバーグもすごい手が込んでますよね」

P「これソースがな、お手製なんだよ」

P「肉も粗挽きだし、冷えててもすっごい美味いぞこれ」

美穂「お腹すいてきちゃいました……」

卯月「これ全部響子ちゃんが?」

P「うむ」

P「おかしいだろ?」

美穂「えっ?」

卯月「おかしい、ですか?」

P「……」

P「おかしいだろ! どう見ても!」

P「どこの世界にプロデューサーに手作り弁当を差し入れるアイドルがいるんだよ!」




14: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/04(日) 19:00:20.16 ID:CKKfElqyo

美穂「といわれましても……」

卯月「響子ちゃん、料理得意ですもんね……」

P「(得意不得意の問題か?)」

P「まあいい、これでもまだ序の口だ」

P「ここ最近は輪をかけてひどくてな」

P「なんと、休日になると家にあがり込んできて」

P「炊事洗濯家事掃除と、全部やってくれるようになったんだ」

P「信じられるか? ありえんだろ!」

P「若干15歳のアイドルが、男やもめの、家にだよ!」

美穂「……」

卯月「……」

P「薄いな、反応」

卯月「いえ~……その、実はですね」

美穂「私たち、響子ちゃんから全部聞かされていたので……」

P「え」




16: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/04(日) 19:01:55.41 ID:CKKfElqyo

卯月「響子ちゃんがPさんのおうちに通うようになったのも」

卯月「毎日お弁当作っているのも、全部知っていましたよっ」

P「知っててあんな白々しいリアクションしたんか」

卯月「い、いえっ、実際に見たのは初めてだったので」

美穂「シ、シャツを洗濯している姿も見ましたっ」

美穂「同じ寮なので、色々お話ししてくれるんです」

P「……」

P「それで、問題があるとは思わんのか、君らは」

卯月「でも、響子ちゃん楽しそうですし……」

美穂「毎日献立考えるのが大変だとは、聞きましたけど」

美穂「響子ちゃん、以前と違って最近すごく笑うようになったんです」

美穂「だから、よかったねって卯月ちゃんと話してて……」

P「ふむ……」

卯月「Pさんは、その、嫌なんですか?」

卯月「響子ちゃんがおうちに来るの……」

P「まさか、嫌なわけないよ」

P「でもな」





17: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/04(日) 19:02:40.17 ID:CKKfElqyo

P「少し、歪んでる気がしてな」






18: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/04(日) 19:03:07.92 ID:CKKfElqyo


―――
――






19: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/04(日) 19:03:37.98 ID:CKKfElqyo

P「……」フムフム

P「豚ひき肉」

P「キャベツ」

P「ニラ……と」カキカキ…


響子「何見てるんですかっ?」ヒョコッ


P「わっ」

P「きょ、響子、いたのか」




20: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/04(日) 19:04:24.80 ID:CKKfElqyo

響子「ふふっ、驚きました?」

響子「学校が終わって急いできたんです」

響子「やっぱり事務所のみんなといるのが一番落ち着きますから!」

P「う、うん、そうか」

響子「それで、何見ていたんですか?」

P「あー、いや……」

響子「……くっくぱっど?」




21: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/04(日) 19:05:04.77 ID:CKKfElqyo

P「うん」

P「いろんなレシピが載っててな」

P「眺めてるとちょっと面白いんだ、これが」

響子「へえー……あれ?」

響子「Pさん、まだ冷蔵庫に食べるもの残ってますよね?」

P「まだあるよ」

P「食べきれないくらい」

響子「ですよね! よかったです」

響子「てっきりもう無くなっちゃったのかと思いました」

P「あー、えと、大丈夫だよ」

P「今週いっぱいはもつよ、きっと」

響子「はいっ、足りなくなったらまた言ってくださいね!」

響子「すぐに作って持っていきますから!」




22: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/04(日) 19:05:50.52 ID:CKKfElqyo

P「……そのことなんだけど、響子」

P「あの、別に無理して毎日弁当とか作ってくれなくてもいいんだぞ?」

P「今はこうやって、手軽にレシピやら何やら検索できる時代なんだし」

P「簡単な料理なら、俺にだって……」

響子「そんな、全然無理なんてしてないですよ!」

響子「私、好きなんです、誰かのためにお料理したりお洗濯したりするのが」

響子「全部私が好きでやっていることなんですから、遠慮なんていりませんよっ」

P「いや、遠慮というか」

響子「それに私、少しでもお役に立ちたいんです」

響子「いつも遅くまでお仕事してくれているPさんのために」

響子「せめてご飯くらいはちゃんとしたものをと思って……」

P「う」

響子「だから、心配しなくても大丈夫ですよ」

響子「明日もおいしいお弁当、作ってきますから!」




23: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/04(日) 19:06:39.57 ID:CKKfElqyo

P「……」

響子「ささっ、お弁当箱、回収しますからねっ」

響子「ふふっ、味の感想も聞かせてくださいねっ♪」

P「あ、ああ」スッ

パカッ

響子「あっ、すごい! 全部食べてくれたんですね!」

響子「これ、どうでしたか? 私、ちょっと味が濃いかなって不安だったんですけど」

P「や、ちょうどよかったよ」

P「おいしかった」

響子「本当ですか? ふふ、ありがとうございます」

響子「あ、そうだ、ここにあった里芋なんですけど……」

P「これな、俺これ好きだわ、すごい好きな味」

響子「やっぱり! Pさん好きだろうなって思ったんです」

響子「えへへ、じゃこれは当たりですね、次も入れておきますね」

響子「そうだ、明日の献立案、考えてきたんです、ほら――」

P「……」

P「(うーん……)」




24: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/04(日) 19:07:08.58 ID:CKKfElqyo

P「(無理してない、か)」

P「(これは、本腰入れる必要がありそうだ)」






26: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/04(日) 19:08:04.43 ID:CKKfElqyo


――――

――週末





27: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/04(日) 19:08:40.74 ID:CKKfElqyo

響子「♪~~」


ピンポーン


P「はーいっ」


ガチャッ


P「あ、響子」

響子「はいっ、響子ですっ」

響子「今週もお世話になりますっ」

P「おう」

P「まああがってくれ」




28: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/04(日) 19:09:26.34 ID:CKKfElqyo

響子「失礼します」

響子「ふふっ、今日もいろいろ買ってきましたよ」

P「ん?」

響子「卵が安かったんです、だから鶏肉と合わせてですね」

響子「オムライスなんかいいかなって――」

響子「――あれ?」

P「ああ、買い物してきてくれたのか」

P「悪いことしたな、そりゃ」

響子「Pさん、あの」

響子「それは……」

P「これか」

P「これはニラだ」

P「みじん切りにしてやった」




29: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/04(日) 19:10:12.32 ID:CKKfElqyo

響子「ニラ?」

P「これからキャベツも刻む」

響子「キャベツ?」

響子「えっと……」

響子「Pさん、ひょっとして料理、するんですか?」

P「うん」

P「なんでまあ、響子は適当にくつろいでいてくれ」

P「また少ししたら呼ぶからさ」

響子「え、あ」

響子「あ、あの、私、手伝いますよっ」

響子「というか、言っていただければ私が作りますっ!」

響子「だって私、そのために来たんですから!」

P「ありがとう」

P「でも俺はそうは思っちゃいない」

響子「え?」




30: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/04(日) 19:11:13.02 ID:CKKfElqyo

P「響子は俺のお手伝いさんじゃないからな」

P「あくまで俺の友人であり、客人だ」

P「客人に夕食を作らせるやつはいないよな」

響子「え? で、でも」

響子「今までは……」

P「そう」

P「だから今までがおかしかったんだな」

P「これからは無しにしよう、そういうのは」

響子「」

P「とは言っても俺は料理なんて慣れてないからさ」

P「そばで見ていて、いろいろと口出ししたくなるとは思うけど」

P「とりあえずは何も言わず、見守っていてくれないか?」

響子「えと……」

P「そうしてくれると、俺も嬉しい」

響子「……」




31: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/04(日) 19:12:08.51 ID:CKKfElqyo

P「……」

響子「……」


トントントントン……


P「……」

響子「……あの、もしかしてご迷惑、でしたか?」

響子「私がおうちにお邪魔したり」

響子「お料理、作ったりするの」

P「まさか」

P「そう思ったことはない」

響子「じゃあ……」

P「あと、豚ひき肉を……」

響子「あ、ここに……」スッ

P「お、ありがとう」

P「かきまぜて……」


カチャカチャ……


響子「……」




32: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/04(日) 19:12:58.93 ID:CKKfElqyo

P「……このままだと良くないと思った」

P「このままだと、きっといずれ依存してしまうことだろう」

P「だから、そうなる前になんとかしようと思ってな」

P「えーと、にんにく、ごま油……」


カチャカチャ……


響子「依存だなんて、そんな……」

響子「私はほんの少し、身の回りのお世話をさせてもらっているだけで」

響子「それにPさんは、ちゃんとお仕事だってこなしているじゃないですか」

響子「私に依存なんて――」

P「ちがう」

P「逆だ」

響子「え?」

P「俺が響子に依存することを危惧しているんじゃない」

P「逆だ」




33: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/04(日) 19:14:01.06 ID:CKKfElqyo

響子「逆?」

響子「えと、それってつまり」

響子「私がPさんに、ってことですか?」

P「……」

P「ここで蓮根を入れる」

P「シャキシャキしておいしいらしい」


トンットンットンッ…


響子「……」

P「……おかしいと思った」

P「どうしてこんなにあれこれ世話を焼いてくれるんだろうって」

P「俺が響子のプロデューサーだから? まさか」

P「流石にそこまでうぬぼれちゃいない」

P「色々考えると、一つだけ思い当たる節があった」

P「前に響子の、鳥取の実家に行ったときのことだ」

響子「……私の、実家ですか?」




34: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/04(日) 19:14:39.39 ID:CKKfElqyo

P「あのとき響子、言ったよな」

P「東京だとなんでも一人分なんです、って」

響子「一人分……」

P「料理も、洗濯も、掃除も、買い物も」

P「こっちでは自分一人のためだけにしかやらない」

P「でも、実家は違う、両親がいて、弟妹がいて、……一人じゃなくて」

P「誰かの為に家事をする事ができて」

P「余計なことを考える時間もない」

P「それが例えようもなく嬉しいんです、と」

P「そう言っていたこと、俺は覚えてる」

響子「……」




35: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/04(日) 19:15:12.01 ID:CKKfElqyo

P「あのとき、俺はいくつかの質問をすべきだった」

P「"東京の生活はもう慣れたか?"」

P「"新しい高校に友達はできたか?"」

P「"女子寮のみんなとは仲良くしているか?"」

P「"卯月や美穂とは、どうか?"」

響子「……」

P「俺は鈍感に過ぎたな」

P「何も疑問に思わなかったんだから」

P「響子がうちに上がり込んでくる、そのときまでな」


カチャカチャ……


P「……もう、混ざったかな」




36: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/04(日) 19:15:55.00 ID:CKKfElqyo

響子「……つまり、Pさんはこう言いたいんですか」

響子「私は寂しさを紛らわすために、Pさんの家にきていると」

響子「一人でいたくなくて、誰かのお世話がしたくて、Pさんに依存している、と」

P「何言ってんだって思うよな」

P「さんざん飯やらなんやら作ってもらっておいてさ」

P「もちろん、これは俺の勝手な推測でしかない」

P「聞いた限りじゃ、卯月や美穂とも仲良くやってるみたいだし」

P「俺の勘違いってことも、十分にあるだろう」

P「でも、たとえ俺の杞憂だったとしても」

P「やはりこのままでいるのは問題だと思う」

P「だから――」

響子「……そうですか?」

P「え?」

響子「問題なんて、ありますか?」

P「へ?」




37: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/04(日) 19:17:04.71 ID:CKKfElqyo

響子「い、いいじゃないですか、別に」

響子「Pさんのおうちに行く理由が何であっても」

響子「だってPさん言ってくれましたよね?」

響子「私がこうすること、迷惑じゃないって」

P「いやまあ、それは」

P「確かに助かってはいるけどな」

響子「だったら、何も問題ないじゃないですかっ」

響子「よく言いますよね、Win-Winの関係って」

響子「私たち、きっとそれだと思うんです」

響子「私がお世話することで、Pさんの負担が軽くなる」

響子「私は家事したい欲を満たせて、一人でいる時間がなくなる」

響子「まさに、理想的な関係じゃないですか」

P「Win-Win……」

響子「その結果、私がPさんに依存することになったとしても」

響子「私、それはそれで、いいかなって」

響子「ちょっとだけ思うんです、あの、ちょっとだけ、ですけどね」

P「……」




38: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/04(日) 19:17:49.45 ID:CKKfElqyo

響子「それに、もとからこういう性格なんですよ」

響子「いつも考えちゃうんです」

響子「誰かの役に立ちたいって」

響子「誰かのお手伝いをしたいって」

P「……」

響子「好きなんです、人のため、みんなのためっていうのが」

響子「きっと私がアイドルをしているのも、その延長線なんだと思います」

響子「ファンの人に笑顔を届けるのが、アイドルのお仕事ですもんねっ」

P「……」

響子「そうです、これもトップアイドルになるための修行のひとつなんですよ!」

響子「だからやっぱり、Pさんは遠慮なんかしなくていいんですっ!」

P「……」

P「なるほど、やっとわかった」

P「本当の問題が何か」

響子「……え?」

P「響子は、多分」

P「与えることに慣れすぎてる」




39: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/04(日) 19:18:35.46 ID:CKKfElqyo

響子「与えることに……?」

P「ここ数週間、一緒に過ごしてきて」

P「俺は一度も響子のわがままを聞いたことがなかった」

P「食べるものでも行くところでも」

P「常に俺の意思を優先してくれたよな」

P「俺は思ったよ、すげえいい子だなって」

P「でも同時にこうも思った」

P「あまりに一方的すぎるな、って」

P「俺はいつも受け取る側で、響子はいつも与える側にいる」

P「さっき言ってくれたように」

P「響子はいつも誰かのために動いてる」

P「それが少し、歪んでるように見えたんだろうな」




40: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/04(日) 19:19:16.71 ID:CKKfElqyo

響子「私が……?」

P「さて、もういいだろう」

P「タネは完成したから、後はあっちの机でやろう」

響子「え」

P「新聞紙ひいて……」

ガサガサッ

響子「あ、あの」

P「あと薄力粉、水、皮だな」

P「ここからは響子にも手伝ってもらうぞ」

P「なんせ引くほど不器用だからな、俺は」

響子「これって……」

P「もう気づいてると思うし、今更だけど」


P「餃子、作ろうぜ、一緒に」




41: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/04(日) 19:19:53.60 ID:CKKfElqyo

―――
――


P「このな、皮を包むのがどうも不慣れなんだ」

P「まず具を乗せるだろ」

P「そんで皮の周りに水をつける」

P「で端からひだを作るように閉じていって……」

グチャ

P「……失敗しました」

響子「……はみ出てますね」

P「というわけで、響子さん、教えてください」

響子「は、はいっ、それはいいんですけど」

響子「あの、さっきの話は……」

P「まあ、それは作りながらでいいじゃないか」

響子「え、あ」

P「さ、はじめからやり直すぞ」

響子「は、はいっ」




42: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/04(日) 19:20:42.69 ID:CKKfElqyo

P「まず具を乗せる……」

響子「あんまり乗せすぎない方がいいんです」

響子「そして全体的に平べったくしてですね……」

P「ふむふむ」

P「こんな感じか」

響子「周りは1センチくらい余らせるようにするんです」

響子「それでこれは私のやり方なんですけど」

響子「端からじゃなくて真ん中から閉じていくんです、ほら、こんな感じに」

P「ほお」

響子「それから左右にひだを作っていって……」

響子「はいっ、完成ですっ!」

P「すげえ」

P「超きれい」

響子「えへへ……そうですか?」




43: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/04(日) 19:21:35.27 ID:CKKfElqyo

P「俺もやるぞ」

P「中央から閉じるんだったな……」

響子「はい」

響子「そして両側を交互に閉じていって」

響子「三日月型になるよう意識してくださいね」

P「うむ」

P「こう……こうか」

響子「あっ、いいじゃないですか」

P「できた」

P「比べるとだいぶ不格好だが、どうだろう?」

響子「ふふっ、おいしそうですよ」

P「よし、ちょっとコツが分かったかもしれん」

P「この調子でばんばんと……ん?」

響子「?」




44: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/04(日) 19:22:10.32 ID:CKKfElqyo

P「響子、それ、何個目?」

響子「ええと、1、2、……これで4個目ですね」

P「……」

P「俺が1個作る間に、か?」

響子「えへへ」

響子「慣れてますからっ」

P「……」

P「うおおっ」バババッ

響子「あっ、駄目ですよ! 形が崩れちゃいますって!」






45: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/04(日) 19:22:45.72 ID:CKKfElqyo

―――
――


響子「お水を入れて……」

P「うん」


ジューー


響子「しばらく蒸し焼きにします」

P「よし、ふたをして……」


カポッ






46: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/04(日) 19:23:40.35 ID:CKKfElqyo


ジューー


P「……」

響子「……」

P「さっきの話な」

P「俺はどっちに偏っていてもいけないと思う」

響子「……偏る、ですか?」

P「世の中ギブアンドテイクで回ってるなんていったら」

P「単純な奴だって鼻で笑われるかもしれない」

P「でも俺は割とそれを信じていてさ」

P「どっちが多くてもいけないって思ってる」

P「誰かから受け取ったら、その分誰かに与えてやる」

P「誰かに与えたら、その分誰かから受け取るようにする」

P「そうやって世の中バランス取ってんじゃないかって感じるんだ」

響子「……私は、みんなに与えることを考えすぎだと」

響子「そう、仰りたいんですよね?」




47: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/04(日) 19:24:25.94 ID:CKKfElqyo


ジューー


P「……あと何分かな」

響子「……3分くらいですね」

P「そうか」

P「……ここは鳥取じゃない」

P「響子が家事をする必要もない」

P「だからもう少し、肩の力を抜いてもいいんじゃないかと思う」

P「もっと、自分のために時間を使っていいんだ」

P「卯月や美穂と遊ぶのでもいい」

P「うちに来て、何をするでもなくぼんやりしているのでも構わない」

P「もっと誰かに寄りかかって、誰かに甘えて生きても」

P「誰も文句は言わないって、そう思う」

P「誰かを頼ることは、依存することとは全く違うからさ」

響子「……」




48: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/04(日) 19:25:26.89 ID:CKKfElqyo


ジューー


響子「……私、こっちにきてから一人の時間が増えたんです」

P「……」

響子「実家だと毎日忙しくて、特にご飯のときなんててんやわんやで」

響子「料理を運んだり弟たちのお代わりをよそったりで」

響子「私自身、ろくに食べる暇もありませんでした」

響子「それがこっちに来ると、まるで逆で」

響子「自分で作って、自分で食べて、自分で片づけて……」

響子「本当に、自分のためだけの時間が増えたんです」

響子「私、いつもそわそわして落ち着きませんでした」

響子「こんなことしてていいのかなって罪悪感すらわいてきました」

P「……」

響子「でも、今ならその理由も分かります」

響子「私きっと、慣れていなかったんですね」

響子「変な話ですよね、誰かに何かしてあげることは得意なのに」

響子「自分自身を甘やかすのは、大の苦手だなんて」

P「……そういう人も世の中にはいる」

P「自分に厳しくて、他人にやさしい人も」

P「それを変えるかどうかは、その人次第だけどな」




49: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/04(日) 19:27:10.61 ID:CKKfElqyo


ジューー


響子「……Pさん、私、いいんでしょうか?」

P「ん?」

響子「何もしなくても、Pさんのおうちに来てもいいんでしょうか?」

響子「料理をしなくても、家事をしなくても、何の用が無くても」

響子「ただ私が行きたいからという理由で来ても、いいんでしょうか?」

P「……もちろんだ」

P「今までずっと、受け取る側だったからな」

P「これからは全力で与える側にまわってやるさ」

P「精一杯おもてなししてやるからな、覚悟しろよ」

P「……といっても、餃子すら満足につくれない男だけどな」

響子「Pさん……」




50: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/04(日) 19:27:49.07 ID:CKKfElqyo

P「それに、俺だけじゃない」

P「響子には卯月や美穂、それにファンのみんながいる」

P「そいつらにもたくさん迷惑かけてやりゃいい」

P「大丈夫、みんなきっと自分が喜ぶことよりも」

P「響子が喜ぶことを優先してくれるはずだよ」

P「少しくらい甘えたって、罰は当たらないさ」

響子「……」

響子「ふふっ」

P「ん?」

響子「いえ、よかったって思って」

P「よかった?」

響子「Pさんが私のプロデューサーさんで、よかったって」

響子「今、そう思ったんです」

P「……」

P「それは、その」

P「ど、どういたしまして」

響子「はいっ、ふふふ」




51: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/04(日) 19:28:49.79 ID:CKKfElqyo


ジューー


響子「……楽しみですね、餃子」

P「うん、しかし」

P「中で破裂したりしてないよな……」

響子「ふふっ、大丈夫ですよ」

響子「絶対おいしくできてますっ」

響子「絶対、今までで一番おいしい餃子ですよ」

P「……響子が言うのなら、そうなのかもな」

P「さて、もういい頃だろう」

P「響子、皿持ってきてくれるか」

響子「はいっ」

P「さて――」




52: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/04(日) 19:29:23.32 ID:CKKfElqyo


P「メシに、しようか」







53: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/04(日) 19:30:04.51 ID:CKKfElqyo


―――――

―――

――





54: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/04(日) 19:30:37.35 ID:CKKfElqyo

―――
――

一週間後



アリヤトザイシター



P「……久しぶりに買い物したはいいが」

P「野菜、高えな」

P「響子は今までどうやってやりくりしてたんだ……」

P「……来週、聞いてみるか」




55: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/04(日) 19:31:18.20 ID:CKKfElqyo


――――――――――――――


響子「すみませんっ! Pさんっ!!」


響子「今週は卯月ちゃん家でお泊まり会することになって」


響子「Pさんのおうちには行けなくなっちゃいました!」


響子「あの、でも、暖かくして栄養のあるものをとってくださいね?」


響子「カップラーメンとかハンバーガーじゃ駄目ですよ?」


響子「なんならレシピを渡しておきますねっ、これ煮込むだけで簡単にできて――」


――――――――――――――





56: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/04(日) 19:31:52.11 ID:CKKfElqyo

P「……寂しい限りだが」

P「まあ、これが健全なあり方なんだろうな」

P「響子が他の人に頼るようになれば」

P「そのうち家にも来なくなるだろう」

P「これにて脱・響子宣言も達成か」

P「……」

P「久々のソロ週末だ!」

P「今日は浴びるほど飲んだらあ!」

P「いくぜー! 帰宅だあーーっ!」




57: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/04(日) 19:32:22.71 ID:CKKfElqyo


ガチャ


P「あれ?」

P「え? 俺鍵してなかった?」

P「なんで開い――」


響子「あっ、Pさん!」

響子「おかえりなさいっ!」

P「」






58: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/04(日) 19:34:07.17 ID:CKKfElqyo

P「き、響子?」

P「おま、何でうちに、って」

P「今日は卯月の家に行ったんじゃ……」

響子「あ、いえ、それがですね」

卯月「え、えへへ……」

美穂「あ、あの、お邪魔してますっ」

P「卯月、美穂っ」

P「……こりゃ、どういうわけだ?」

美穂「あの、これは、その~」

卯月「あのですね、私の部屋があまりに汚くて~」

卯月「お母さんに、こんな部屋にお友達をあげるわけにはいきません!って」

卯月「怒られちゃってですね……えへへ」

響子「それで私が提案したんですっ」

響子「じゃあみんなでPさんのおうちにいこうって!」

P「なん」

P「でやねんっ」




59: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/04(日) 19:35:06.34 ID:CKKfElqyo

響子「ふふっ、だってPさん、言ってくれましたよね?」

響子「"用が無くても、うちに来ていい"って」

P「いや、それは」

P「言ったけど、そうじゃなくて――」

響子「あっ、Pさん、野菜買ってきてくれたんですね!」

響子「ちょうどよかった、Pさんも手伝ってくれますか?」

響子「今日はお鍋にしようと思ってるんです! 材料を刻んでほしくって」

P「あ、えっ?」

響子「ささっ、一緒に下拵え、しましょうっ!」

卯月「あっ、私たちもやりますよ! 私、ネギ切りますっ」

美穂「は、はいっ、えーっと、お鍋どこかな? 出汁は――」



ワイワイ

ガヤガヤ



P「……」

P「はあ」


P「脱・響子宣言、か」





61: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/04(日) 19:35:46.89 ID:CKKfElqyo


P「まだまだ先は長そうだ」




終わり





62: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/04(日) 19:36:28.74 ID:CKKfElqyo

今夜は餃子だ!


html依頼してきます





63: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/04(日) 19:37:13.88 ID:hFBx9e9YO

相変わらず嫁力高いわ響子ちゃん




64: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/04(日) 19:39:15.50 ID:jMpzxDv2o

本当嫁に欲しい




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【SS速報VIP】モバP「脱・響子宣言」




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