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スーパーマリオの左右論(2) 言語・科学的プローチ
 

スーパーマリオの左右論(2) 言語・科学的プローチ


 なぜ『スーパーマリオ』は左から右へ進むのか。第2回目は「言語・科学的プローチ」をぶった切っていくよ!

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●プログラム座標説

 ファミコンのコントローラは1Pが左、2Pが右になっている。これはメガドライブもPCエンジン(マルチタップ)も同じだった。さらに言えば、一時代を築いた格闘ゲーム『スト2』の1Pも左側、なんならアーケードゲームの元祖的存在である『PONG』(1972年/ATARI)の1Pも左側である。
 なぜ若い数字は左側なのだろうか。その理由はおそらく“プログラムの座標”である。

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 たとえば当時、プログラマーが画面にキャラクターや背景などを配置するときはプログラム上で座標を指定していた。座標軸は下図のように左側が若い数字だったのだ。つまりプログラム的には常に左側が出発点だったため、マリオも左側が出発点になるのは、ごく自然な成り行きだったと言える。したがって、コントローラも左側を1Pとしたのだろう。

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 ファミコンの画面は256×240ドットであり、左上が(x=0, y=0)となる。X軸は右にいくほど大きくなり、Y軸は下に行くほど大きくなる。したがって「マリオが前へ進む=数字が大きくなる」と考えたほうが感覚的にもプログラミングしやすいのだ。
 要するにマリオが右へ進むのは、作り手側の事情によるものだと主張するのが、この説の最大の特徴である。しかし前述のとおり、Y軸に関しては逆になっているため(ジャンプするとマイナスになる)、若干の疑問は残る。




●逆転するA・Bボタンの謎

 少々話が逸れるが、左側が若い数字なら、ファミコンのボタンも左側が「A」なのか。調べてみたら、なんと違っていたのだ。

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 思い起こせばコナミコマンド「上上下下左右左右BA」は、なぜ最後だけ「BA」なのか、ずっと疑問に思っていた。日本語には「上下」「左右」なんて言葉があるように、上下と左右は何となく順番通りなのに、なぜBAだけ逆なのだろう。おかげで最後のボタン順だけ、いつも記憶があいまいだった。しかしその理由は単純だったのだ。ファミコンのコントローラが左から「B」「A」なので、コナミコマンドも「BA」なのである。(これが本当のBestAnswerだ)

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 このB・A配列は後続のGB、SFCなど任天堂ゲーム機にも受け継がれ、その影響を受けた国内の他ハードにも採用されていった。

 なぜファミコンのABボタンには「左側が若い数字の法則」が適用されなかったのであろうか。その背景について、ゲーム&ウオッチ時代に「右側のボタンのほうが押されやすかった」という経験が活かされたからという話がある。

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 そこで任天堂は右側を主要ボタンに定め「A」と名付けた。ここでもまた「体は内向きの動きが得意」の法則が成り立つ。Aボタンのほうが一見、外側だが、ボタンを押す行為自体は、手が内向きに動くので、右手に近い方のAが主要ボタンとなったのだ。

 しかしメガドライブの場合、左から「1」「2」「3」であった。こちらはちゃんと「左側が若い数字の法則」を守っている。これはゲーム&ウオッチの成功から独自の理論でコントローラをデザインした任天堂と、あくまでも伝統的な考えに基づいたSEGAとの違いであろう。海外のハードであるXBOXも左が「A」、「右」がBである。
 その影響なのか、プレイステーションの◯×ボタンについて、日本では◯が決定ボタンなのに対し、海外では×が決定ボタンとなっており、しばしば混乱を招いている。この原因については「海外では正解に対してレ点でチェックを入れる習慣があるため×が決定となったのではないか」とも言われている。

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 ついでに、主要な歴代ハードのボタンの位置関係についてまとめておく。なおファミコン以前のハードに関しては、表記がないか、ただ単に位置で「L」「R」となっているものが多かった。またMSXに関してはメーカーによってバラバラであった。




●言語由来説と視線の動き

 そもそもの話。プログラムの座標が→方向なのは、英語が左から右の横書きだからである。コンピュータ自体が英語圏の発明品であり、プログラム言語がそれに従っているのは当然だ。したがってマリオを始めとする多くのゲームが、その流れに沿っているのも当然なのである。

 また、この方向であれば視線の動きも→となり、ゲーム中に現れる「1000」などの数字や、「1UP」などの文字が違和感なく読める(先頭の文字から見える)というところも大きな理由であろう。

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 上図のように視線の動きとマリオの方向が一致していると文字が認識しやすい。

 しかしながらそれは極めて西洋的な考え方なのかもしれない。我が日本語の場合、縦書きのときの視線の方向は←である。それは古来、日本では中国に倣い、木簡に一行ずつ文字を書いたためだと言われている。そして、横書きのときも戦前・戦中までは←だった。皆さんは以下のような古い看板を目にしたことはないだろうか。

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 これは古い任天堂の看板である。「堂天任内山」と右から読みになっていることがわかるだろう。ただし、このような表記は横書きではなく1文字ずつの縦書きだとされることもある。しかし事実上、横書きであることには変わりなく、あまり意味のある指摘だとは思えない。
 正真正銘の←方向文字としては、アラビア語やヘブライ語が有名だ。これらの文字が←方向になった理由は石版に文字を掘る際に、のみを左手で持ちハンマーを右手に持ったからだと言われている。(=体は内向きの動きが得意の法則)

 したがって、この説が正しい場合、もしコンピュータがアラビアの発明品だったなら、マリオは←方向へ進んでいたということになるのではないだろうか。




●脳の好み説 

 言語と脳には密接な関係がある。2015年、アメリカの心理学者がスーパーマリオの進行方向について興味深い説を発表した。被写体が動いている写真や絵画をGoogleで検索し、何千枚と分析した結果、ほとんどの作品が→の向きなのを突き止めたという。その結果から人間の脳は、動いている物に関して→方向を好む傾向がある可能性が示されたのだ。
 出典:Why Super Mario runs from left to right(LancasterUniversity)

 そのような方向性は文字にも見られる。たとえば強調や注意喚起などを表すイタリック体(≠斜体)は→へ傾いているが、これは英語など→へ読む文字だけでなく、アラビア語やヘブライ語など←へ読む文字の場合でも同じなのだという。

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 ※アラビアといえばこの2本!

 なるほど。でも、それってマリオと関係あるの?
 残念ながら私オロチの翻訳が下手なのか、よくわからなかった。ただマリオって言いたかっただけなのかもしれない。




●脳科学的アプローチ 

 マリオの進行方向と人間の脳の関係については、社長が訊く『NHK紅白クイズ合戦』にて元NHKアナウンサーの鈴木健二さんと、故・岩田元社長が以下のようなやりとりを交わしていたのが印象深い。

NHK紅白クイズ合戦

鈴木
いや、人間の大脳生理はですね、まず、自分から向かって左のものを先に見るんです。それから右のほうを見るようになっているんです。歌舞伎の花道は必ず左側にあります。あれ、右側にあったら、歌舞伎を裏から見てるようでちっとも面白くないんですね。それに、ロマン派から印象派までの絵を見たら、画面の向かって左側に動きの元があるんです。右は必ず止まっているんです。

岩田
じゃあ、『マリオ』も理にかなっているんですね(笑)。


 このような脳科学的アプローチは一見、説得力があり彼のようなインテリ層にはウケが良いかもしれないが、いかんせん話が飛躍しすぎるきらいがある。

 なぜならこのインタビューにおいて鈴木氏は「右からマリオが出てきたら半分の人はできない」とまで断言しているが、前述のファミコン通信「ゲーム・アカデミー」の検証によると、ゲームに慣れている人間ほど←方向へ進むゲームにやりにくさを感じた一方で、まったくゲームをやったことない人間は→方向でも、←方向でもプレイ内容に差が見られなかったという結果が出ているのだ。

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 ※検証には毛利名人、千葉麗子、一般OLの方が参加した

 したがって私は今から非常につまらないこと
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