fcd5a585819acb433b886834ed32c624

善子
385e8988b2f1bd34d68fe348f8b20171 (1)

5: 名無しで叶える物語(あら)@\(^o^)/ 2016/12/20(火) 21:11:46.80 ID:VYwNu7LS.net
善子「……」

ペラ――ペラ――

私以外に誰もいない部室に、本を捲る音だけが響く。
今読んでいるのは、最近流行りの異世界転生もののライトノベル。

主人公はお姫様に転生した女子高生。
今読んでいるシーンはまさに物語の終盤で――

善子「『君の為なら僕は何を失ってもいい』だなんて!!ありきたりだけど女の子なら心にくるものがあるわよね!」

そう、悪の手によって囚われてしまった主人公をキラッキラ眩しいイケメン騎士が助けに来るシーンなのだ。
ベタだけどやっぱり面白い。

善子「いつか私もこんなこと言われたいわー……」

……いいじゃない別に憧れたって!

6: 名無しで叶える物語(あら)@\(^o^)/ 2016/12/20(火) 21:15:10.21 ID:VYwNu7LS.net
善子「それにしても暇ー!」

当たり前だ。
他の皆はそれぞれ用事があるから練習はお休み。
私は何も無かったから部室で買ったばかりの本を読んでいた……ってわけ。

善子「ふわーぁ……眠い……」

読書に集中し過ぎて疲れちゃったみたい。
時間は――まだ大丈夫ね、少し寝よう……。

善子「うーーーん」ノビー

善子「お休みー」

7: 名無しで叶える物語(あら)@\(^o^)/ 2016/12/20(火) 21:19:26.08 ID:VYwNu7LS.net
――

善子「はっ!今何時!?」

慌てて目が覚める。
と、同時に周りの景色が目に入る。

善子「……は?森の中?」

森の中って……Why?

善子「つねってみましょう」

ぐいーっとほっぺたを思いっきり引っ張ってみる。

善子「痛くない……これは夢ね!白昼夢ってやつかしら」

どうやら夢の中で森に入り込んじゃったみたい。

22: 名無しで叶える物語(あら)@\(^o^)/ 2016/12/20(火) 22:45:56.47 ID:VYwNu7LS.net
>>7
×白昼夢
〇明晰夢

8: 名無しで叶える物語(あら)@\(^o^)/ 2016/12/20(火) 21:22:19.67 ID:VYwNu7LS.net
善子「何でまた森の中に……」

ギャオーン

ケッケッケッ

ケキャー

善子「うぅっ……何よぉ、不気味な音出すんじゃないわよ……」

怖い……なんかわかんないけどこの森怖い。
早く抜け出したい――けどどうやって?
ここは森の中、しかもそれは夢の中……

善子「うん、分かるわけないわ。とにかく歩き続けるしかないのかなぁ」

怖いけど、どうせ死んでも夢だし大丈夫!
鞠莉さん風に言うと『No problem!』ね!

9: 名無しで叶える物語(あら)@\(^o^)/ 2016/12/20(火) 21:29:14.16 ID:VYwNu7LS.net
とは言え怖いものは怖い。
早く抜け出さなきゃ。

善子「取り敢えずこっちの方向ですす――」

グルルァァァァァ!!!

善子「」

熊!でっかい熊!しかもなんか赤い模様入ってるんだけど!?

善子「ど、どうも……」

ガァァァァッ!!

善子「すいませぇん!!」ダッ

逃げる。
そりゃもう必死で逃げる。
あれを目の前にしてのんびりいられるわけが――

ドゴォォン!

善子「えっ何!?火!?火の玉!?」

もうやだ、あれ熊じゃないよ……

10: 名無しで叶える物語(あら)@\(^o^)/ 2016/12/20(火) 21:34:52.47 ID:VYwNu7LS.net
あれはあの化物が放ったのよね。
なら魔法ってとこかしら?
……もしかして私にも使える?

善子「ふっふっふっ、今こそ私の真の力を見せる時が来たようね!」

クルリと振り返り化け物と対峙する。

善子「『我が内に眠る邪悪なる炎よ!その力をもって彼の敵を討ち滅ぼせ!堕天流奥義"黒炎渦"!』」

シーン

善子「で、ですよねー」

ガァッ!

善子「ちょっと魔が差しただけなんですゴメンなさぁぁい!!!」

11: 名無しで叶える物語(あら)@\(^o^)/ 2016/12/20(火) 21:39:39.38 ID:VYwNu7LS.net
――

善子「ひぃっ!」

近くの木が倒される――と共に私の体力も尽きる。

善子「夢の中くらい体力無限だっていいじゃない!」

グルルル……

善子「OK!話し合いましょう!ほら、私って食べても美味しくな――」

グォォ!

あっ、これ死ん――

「ファイアランス!」

グァァァァ!

あれっ?急に苦しみ始めて……しかも今聞こえた声は――

「あなた大丈夫!?立てる?」

「元気に叫んでたし大丈夫でしょー?」

「またそんな事言って!もし何かあったら!」

「はいはい」

この声は……

善子「梨子さん!?」

「え、誰ですか?その人」

……違うんかい!

12: 名無しで叶える物語(あら)@\(^o^)/ 2016/12/20(火) 21:46:23.74 ID:VYwNu7LS.net
梨子「私はリ――フランよ。あとこっちのちいさいのが――」

善子「鞠莉さん!?」

鞠莉「マリ?惜しいわね!私の名前はマリーよ!」

ちょっと待って、フランとか言ってるけどどう見ても梨子さんだし。
梨子さんの周りを飛び回ってる妖精?みたいなのは鞠莉さんだし、ってかマリとマリーってほぼ一緒じゃないのよ!!

善子「うがぁぁ!!!」

梨子「ど、どうしたの?大丈夫?」

善子「いやごめんなさい、私が知ってる人によく似てたから」

梨子「そ、そう?」

鞠莉「それはwonderfulね!」

もう完全にマリーは鞠莉さんよ……

13: 名無しで叶える物語(あら)@\(^o^)/ 2016/12/20(火) 21:49:03.95 ID:VYwNu7LS.net
※名前は元のままでいきます

14: 名無しで叶える物語(あら)@\(^o^)/ 2016/12/20(火) 21:54:28.74 ID:VYwNu7LS.net
それにしても……梨子さんの見た目が完全に魔法使いね!
白いローブを着て、珠の付いた杖を持って……。
この夢は私の知ってる人が出てくる、魔法ありのファンタジー世界なのかしら?

鞠莉さんは……うん。
フェアリーね。

善子「とにかく、助けてくれてありがと」

梨子「困ってる人がいたら助けるのは当たり前でしょ?」

鞠莉「あ、そう言えばあなたの名前は何ていうの?」

善子「……ヨハネよ!ヨハネと呼んでちょうだい!」

鞠莉「ヨハネね。よろしく!ヨハネ!」

梨子「ヨハネ……ヨハネ」ブツブツ

善子「?」

17: 名無しで叶える物語(あら)@\(^o^)/ 2016/12/20(火) 22:07:08.16 ID:VYwNu7LS.net
梨子「"よっちゃん"!ね!」

善子「えっ?」

梨子「ヨハネだから、よっちゃん」

善子「あぁ、うん」

ヨハネって名乗った意味ないじゃないのよ!

鞠莉「さてと、早くこの森抜けましょ?」

善子「あ、私迷ってて……近くの村までお願い出来る?」

梨子「いいよ!」

善子「ありがと、梨――フランさん」

梨子「むぅ……さんは要らないの!呼び捨てで!さん、はい」

善子「ふ、フラン」

梨子「よく出来ましたー」

梨子さんに向かってフランって……鞠莉さんはマリーなのに何でフランなのよ。
関係性一切無いじゃない。

18: 名無しで叶える物語(あら)@\(^o^)/ 2016/12/20(火) 22:15:26.85 ID:VYwNu7LS.net
――

梨子「よっちゃんは何であんなところにいたの?」

善子「ふっ、闇の力に導かれて――」

鞠莉「さっき迷子って言ってたじゃない」

善子「……そうね」

梨子「駄目だよ、この森の深部は危ないんだから。誰かから聞いてない?」

そんなの知らないわよ!
目が覚めたらこの森の中よ!?
ここが危ないって知るすべある!?
そして抜け出せる!?

善子「(って言いたい……)そう言えば聞いたかも」

梨子「なら用心すること」ムフン

善子「かわいい」

りこまり「えっ?」

善子「何でもないわ!」

19: 名無しで叶える物語(あら)@\(^o^)/ 2016/12/20(火) 22:28:32.25 ID:VYwNu7LS.net
あまり前に立たない梨子さんがムフンって!ムフンって!!
果南さんがやっても可愛いでしょうね。
うん、けどかわいい、かわいいわ~。

善子「ところで近くの村まではどのくらい?」

梨子「このペースだと1時間くらいかな?私達だけだともっと速いけどね」

善子「へぇ~、早いの?」

鞠莉「ほぼ一瞬で行けるわよ」

善子「」

チートよ……!
わたしの夢の中なら私にチートくれたっていいじゃない!
神よ!私にも力を与えたまえーー!!

善子「むむむ……」

梨子「急に黙っちゃった……どうしたのかな?」

鞠莉「さぁ~?」

――無理でした。
ですよねー!

21: 名無しで叶える物語(あら)@\(^o^)/ 2016/12/20(火) 22:39:46.65 ID:VYwNu7LS.net
――

鞠莉「着いたわ!ここがウチウラ村よ!」

ウチウラ……うん、分かってはいたわ。
多分そんな感じだろうって。

善子「ここまでありがとうね」

梨子「困った時はお互い様だから」

善子「そうね」

鞠莉「ヨハネはどこに泊まるの?」

善子「……ぁ」

りこまり「?」

慌てて自分の持ち物を漁る。
……私の服って制服じゃない!よく突っ込まれ無かったわね……。
それはそうと持ち物持ち物。
何か神様的なアレから贈り物が――

善子「無い!何も無い!」

23: 名無しで叶える物語(あら)@\(^o^)/ 2016/12/20(火) 22:54:46.78 ID:VYwNu7LS.net
梨子「何も?」

善子「その……お金も何も……」

鞠莉「無い?」

善子「うん……」

梨子「……」

鞠莉「……」

善子「……」

きまずい!きまずいわよ!
しかもこれ完全にたかってるじゃない。

善子「あ、あのぉ……」

梨子「こ、困ってたらお互い様だから!」

鞠莉「そ、そうね!」

善子「ごめんなさい、本当にごめんなさい」

いやほんと、ごめんなさい。
所持金ゼロで放り出すなんて酷い奴もいたもんだわ。
あ、これ自分の夢だった。

25: 名無しで叶える物語(あら)@\(^o^)/ 2016/12/20(火) 23:06:03.91 ID:VYwNu7LS.net
梨子「だからちょっとだったら貸すよ?」

善子「お願いします。色を付けてお返しします」

梨子「そんな!そのまま返してくれたら充分だから!」

鞠莉「フランは甘いわねー」

梨子「もう!マリーだってそうするでしょ?」

鞠莉「それはそうだけど」

なんということでしょう、フランとマリーが女神に見えます。
おぉ、神はここにおられたか!

善子「……」ジー

梨子「……よっちゃん?」

善子「な、何?」

梨子「宿はお任せして貰ってもいい?」

善子「えぇ、何も知らないから」

梨子「じゃあオススメの宿屋があるからそこに行きましょう」

26: 名無しで叶える物語(あら)@\(^o^)/ 2016/12/20(火) 23:14:06.05 ID:VYwNu7LS.net
―宿屋"タカミー"―

梨子「ここがその宿よ!」

うん、これも大体予想が出来るわ。
宿の看板娘は――

「あれっ?フランちゃんまた来てくれた!」

梨子「久しぶりね。センちゃん」

千歌さんですね、はい。
宿屋の名前がタカミーって安直過ぎないかしら?
せめて原形は留めていて欲しかったわ……

千歌「マリーちゃんも久しぶり!こっちの子は?」

善子「ヨハネよ!」

千歌「ヨハネちゃんだね!よろしく!」

梨子「1週間、2部屋取れる?」

千歌「う~ん、今空いてるは二人部屋が1部屋だけだね」

27: 名無しで叶える物語(あら)@\(^o^)/ 2016/12/20(火) 23:23:30.26 ID:VYwNu7LS.net
善子「まぁ……いいわよ」

どうせ梨子さんと鞠莉さんだもの、ユニットメンバーだから気兼ねく居れるわ。

千歌「じゃあ1週間だね。部屋は2階の一番奥、鍵どうぞ」

梨子「ありがと」

千歌「夕食の時間は7時~9時だよ。その時間内に下に降りてきてね」

鞠莉「分かってるわよー」

千歌「一応仕事だから」アハハ

今気づいたけど千歌さんの名前はセンなのね。
千歌……セン……千歌……セン……
はっ!千と千尋じゃない!
我が夢ながら安直だわ……

28: 名無しで叶える物語(あら)@\(^o^)/ 2016/12/21(水) 00:09:38.50 ID:8GH9NWFJ.net
一旦止め

33: 名無しで叶える物語(あら)@\(^o^)/ 2016/12/21(水) 22:23:36.55 ID:8GH9NWFJ.net
―部屋―

梨子「よっちゃん、これからどうするの?」

善子「どうって……」

鞠莉「まぁお金は稼がなきゃ駄目よねー」

善子「うっ」

何故夢の中に来てまで働かなければならないのか、軽く小一時間は問い詰めたい。
私でも出来る仕事って言ったら……何があるのかしら。

梨子「あ、よっちゃんは剣とか使える?」

善子「使えません」

梨子「魔法は――」

善子「無理です」

梨子「……」

善子「……」

34: 名無しで叶える物語(あら)@\(^o^)/ 2016/12/21(水) 22:42:31.44 ID:8GH9NWFJ.net
鞠莉「よくもまぁそれで森の中に入ろうと思ったわね」

善子「何も言えません」

梨子「それならお手伝いとかになるのかな?」

善子「お手伝い?」

梨子「例えばセンちゃんにお願いしたらタカミーで雇ってもらえるかもしれないよ」

善子「その手があったか……」

梨子「じゃあ後でお願いしてみるね」

善子「お手数お掛けします」

鞠莉「フランは相変わらず甘いわね~」

梨子「マリーだってホントは優しいじゃない」

35: 名無しで叶える物語(あら)@\(^o^)/ 2016/12/21(水) 22:49:13.20 ID:8GH9NWFJ.net
鞠莉「マリーそんな子じゃありませーん。ワルでぇす」

梨子「悪い子にはご飯は無しです」

鞠莉「嘘です!マリー良い子!めっちゃ良い子!」

梨子「……ぷっ」クスクス

鞠莉「やってくれたわねー!」ポカポカ

梨子「ちょっ、やめてよマリー」

鞠莉「ふん」

仲が良さそうで何よりです。
そんな2人を慈愛に満ちた目で見ていると――

梨子「よっちゃんから憐れみの目で見られてる……」

鞠莉「酷い……ヨハネってそんな人だったのね……」

善子「何言ってんの!?」

36: 名無しで叶える物語(あら)@\(^o^)/ 2016/12/21(水) 22:58:17.64 ID:8GH9NWFJ.net
その後無事にタカミーで働くこととなった私。
迷惑なんじゃないかと思ったけど、千歌さん――もといセンさんは『人手が増えるのは嬉しいよ!』って笑顔で言ってくれた。
お給料から宿代は天引きされるけどそこそこのお金は貰えるみたい。

―なんだかんだで1週間後

梨子「よっちゃん、私達暫く行かなきゃいけない所があるんだ」

善子「行かなきゃいけない所?」

鞠莉「そ、定期的に行かなきゃならないのよ」

善子「ふぅん、そこって遠いの?」

梨子「私達には距離なんて関係ないのよ」フフン

善子「あ、そっか瞬間移動出来るんだったわね」

そう、この前の『ほぼ一瞬で』という言葉通り、2人は瞬間移動が出来るのだ。
数箇所しか場所は登録出来ないみたいだし、消費魔力もバカ高いらしいけど、正直羨ましい。

37: 名無しで叶える物語(あら)@\(^o^)/ 2016/12/21(水) 23:07:20.56 ID:8GH9NWFJ.net
あ、この世界はテンプレ的なファンタジー世界みたい。
何故か眠っても普通に起きたけど。
この夢は夢じゃないのかしら……

善子「いひゃくない」ムニー

梨子「何してるの……」

善子「ちょっとした状況の再確認よ」

梨子「そ、そうなのね」

善子「それなら数日で帰ってくるってことかしら」

鞠莉「そっ、だからその間大人しくしてなさいよぉ?」

善子「するに決まってるじゃない」

38: 名無しで叶える物語(あら)@\(^o^)/ 2016/12/21(水) 23:10:54.74 ID:8GH9NWFJ.net
鞠莉「厨房でボヤ騒ぎを起こしたのは?」

善子「ぎくっ」

鞠莉「あぁ、剣を借りてきてから振り回して窓を叩き割った従業員もいたわね」

善子「大人しくしてます」

鞠莉「よろしい」

梨子「じゃあ行ってくるね」

善子「行ってらっしゃい」

ヒュン

善子「消えた……瞬間移動良いなぁ。せめてちょっとくらい魔法が使えたら良いのに……」

マリーに調べてもらったところ、私は魔法が使えないらしい。
悲しい……

40: 名無しで叶える物語(あら)@\(^o^)/ 2016/12/22(木) 00:16:03.26 ID:9Uac6GDN.net
善子「」ボケー

千歌「ほら、ヨハネちゃん!仕事仕事!」

善子「分かってるわよ……」

千歌「むむむ……さてはフランちゃんとマリーちゃんが恋しいな?」

善子「……まぁそうだけど」

千歌「あっさり認めた!?」

善子「楽しいからね」

千歌「おーおー、お熱いですなぁ」

善子「そんなんじゃないから」

千歌「そうなんだ」

善子「そうよ」

みとねぇ「セーン!ちゃっちゃと片付けなさい!」

千歌「やばっ!急ごう、ヨハネちゃん!」

44: 名無しで叶える物語(あら)@\(^o^)/ 2016/12/22(木) 22:20:50.02 ID:9Uac6GDN.net
宿の仕事は、掃除・食事の準備・皿洗い・シーツ等の交換……などなど。
普段は3人でやっていて、人手は足りてるから私が入ったことで4人になった今だと時間が余る。
しまねぇさんは『この仕事って休みが無いから丁度いいのよ』って言ってくれた。
だけど――

善子「……」ボ-

千歌「またぼーってしてる」

善子「センさん」

千歌「なぁに?」

善子「……あの、私も戦えるようになりたいの」

千歌「ヨハネちゃん魔法は使えないんだよね?」

善子「うん」

千歌「じゃあ剣とか槍とかになるけど……この前の動き見た限りじゃ無理だよ」

善子「あ、あの時は本気を出してなかったのよ!」

千歌「わかってますわかってます」ウンウン

善子「むぅ……」

45: 名無しで叶える物語(あら)@\(^o^)/ 2016/12/22(木) 22:29:48.80 ID:9Uac6GDN.net
千歌「まぁそんなに修行したいんなら一応アテはあるけど……」

善子「ほんと!?」

千歌「う~ん、けどスパルタだからなぁ……」

善子「スパルタでもなんでも構わないわ!だからお願い!」

千歌「……分かった。今日聞いてみるね」

善子「ありがとうセンさん!!」ダキッ

千歌「よ、ヨハネちゃん!」

嬉しさのあまり抱き着いちゃった。
センさんがアタフタしてて可愛かったわ!
けど教官役の人は誰なのかしらね……。
またAqoursメンバーかしら?

46: 名無しで叶える物語(あら)@\(^o^)/ 2016/12/22(木) 22:40:14.82 ID:9Uac6GDN.net
―翌日―

千歌「許可貰えたよ~」

善子「やった!」

千歌「その変わりというかやっぱり『スパルタでいくよ!』って……」

善子「問題無いわ、このヨハネの手にかかればそんな修行なんて余裕よ!」

千歌「お~言うねぇ……ぁ」

善子「うん?」

「その意気や良し!」

善子「ん?」

この声はまさか……

曜「ヨーソロー!!」

善子「曜さんね!」

47: 名無しで叶える物語(あら)@\(^o^)/ 2016/12/22(木) 22:45:36.80 ID:9Uac6GDN.net
曜「よう……?」

千歌「ヨーナちゃんだよ。冒険者の中でも若手のホープなんだ」

曜さんかぁ……まぁ果南さんか曜さんだろうなとは思っていたけど。
これは厳しくなりそうね。

善子「ヨーナさんね。宜しくお願いします」

曜「タメ口でいいよ!あまり歳かわらないと思うし」

善子「……そう?じゃあそうさせてもらうわ」

曜「うむうむ。じゃあ早速だけど始めようか」

千歌「あっ、じゃあ私はこれで。ヨーナちゃん、無茶させたらダメだよ」

曜「善処します」

さてさて、これからどうなるのやら……

48: 名無しで叶える物語(あら)@\(^o^)/ 2016/12/22(木) 23:00:46.10 ID:9Uac6GDN.net
曜「そう言えば名前は?ヨハネちゃんだっけ?」

善子「えぇ」

曜「魔法が使えないんだったよね。となると武器が――」

そう言うと曜さん――ヨーナさんが腰に下げた袋から様々な武器を取り出し始めた。
もしかして魔法袋とか言うやつかしら……欲しいわ!

曜「片手剣・両手剣・ナイフ・双剣・片手槍・両手槍・細剣・曲剣・メイス・ハンマー・アックス・太刀・弓……あとはナックル?」

善子「どれだけの武器を持ち歩いてるのよ……」

曜「私は基本何の武器でも使えるからね!」

善子「凄いわね」

曜「体を鍛えるのが趣味だからね。趣味が好じてって感じかな」

49: 名無しで叶える物語(あら)@\(^o^)/ 2016/12/23(金) 00:19:45.87 ID:Nb/yo33F.net
曜「一つずつ持って構えてもらってからヨハネちゃんに適した武器をみつけようか」

善子「構えただけで分かるの?」

曜「まぁ……それが私の特技かな」エヘヘ

善子「やっぱり凄いわね……」ボソッ

曜「よーし、じゃあまずは片手剣から――」

――

その後1時間ほど武器を代わる代わる持たされた。
最初の20分で武器の種類を決め、残りの時間で細かい違いのある武器を……。

善子「腕が……腕が……」

曜「体力無いんだねぇ、明日からは基礎体力作りだね」

善子「うぅ……」

50: 名無しで叶える物語(あら)@\(^o^)/ 2016/12/23(金) 00:29:02.66 ID:Nb/yo33F.net
そんなこんなで決まったのは――

善子「結局何なのこれ……」

曜「フランベルジュのツヴァイヘンダーだよ」

善子「呪文?」

曜「フランベルジュは、この剣みたいに刀身が波打って炎が揺らめいているみたいになってるんだ。そしてツヴァイヘンダーは大型両手剣。つまりヨハネちゃんに適した武器は"両手持ちの刀身が波打った大剣"ってとこ」

善子「ホントにこれが合ってるのかしら……」

曜「最初は馴染めないだろうけどね~、多分いずれ1番手に馴染むのはそれだよ」

51: 名無しで叶える物語(あら)@\(^o^)/ 2016/12/23(金) 00:32:20.05 ID:Nb/yo33F.net
善子「ふむふむ。……この剣って銘はあるの?」

曜「私は名前とかには無頓着だから……」アハハ

善子「名前は大事でしょ!」

曜「なら後で作った人に聞いておくよ」

善子「そうしなさい」フフン

曜「あ、偉そうに言って~、私は師匠だぞ!このぉ~!!」コチョコチョ

善子「ひゃははは!やめて!ヨーナさん!……ちょっ、やめ!あははは!!」

千歌「ヨーナちゃん……」ジトー

曜「せ、センちゃん……違うんだよ!これは師弟の絆を深めるコミュニケーションと言うか何というか」

千歌「いや、そうじゃなくてヨハネちゃんが死にそう」チョイチョイ

あ、これもう駄目……

善子「」チーン

曜「ヨハネぇぇぇ!!??」

55: 名無しで叶える物語(あら)@\(^o^)/ 2016/12/23(金) 20:16:13.00 ID:Nb/yo33F.net
――

曜「大丈夫?」

善子「えぇ、誰かさんのせいで酷い目にあったけど」

曜「ホントにごめん!」

善子「別に良いわよ。恨んでなんかいないわ」

千歌「ヨハネちゃんも無事復活したみたいだし今日はこれで終わりかな?」

曜「そうだねー。あ、この剣はどうする?持っとく?」

善子「……いや、まだ良いわ」

曜「分かった。じゃあまた明日!」

そう言ってヨーナさんは去っていった。
明日から修行か……しかも体力トレーニング……。

善子「私明日から生きていけるかしら……」

千歌「あはは……ヨーナちゃんでもさすがにそこまでは無い……と思うよ?」

善子「フォローは有難いけど目をそらして言わないでくれない!?」

どうしよう……物凄い不安しか感じられない。

56: 名無しで叶える物語(あら)@\(^o^)/ 2016/12/23(金) 20:56:16.37 ID:Nb/yo33F.net
――

曜「ヨーソロー!ヨハネちゃん行くよ!」バァン!

千歌「扉は静かに開けること」

曜「アッハイ」

善子「じゃあ行ってくるわ」

千歌「行ってらっしゃーい。死なないでね~」

善子「不吉な事言わないでよ!」

曜「あははは!大丈夫大丈夫、私が10歳くらいの時のメニューだから」

ふむふむ、それなら大丈――

千歌「え、それ普通の人だと死ぬじゃん」

善子「」

曜「レッツゴー!」

善子「いやぁぁぁぁ!死にたくないわぁぁぁ!!!」

64: 名無しで叶える物語(あら)@\(^o^)/ 2016/12/25(日) 21:39:32.28 ID:MrQ3qXNh.net
――

善子「もう無理……動けない……」ピクピク

曜「ヨハネちゃん体力無いねぇ。まだメニューの半分だよ?」

善子「もう無理だから!センさんも言ってたけど一般人は無理だから!」

曜「う~ん、メニューだから変えなきゃなぁ」

善子「是非」

曜「それじゃあ座学の時間だよ!」

善子「」

え、終わってなかったの?
寝ちゃいそう……。

65: 名無しで叶える物語(あら)@\(^o^)/ 2016/12/25(日) 21:46:43.17 ID:MrQ3qXNh.net
曜「ヨハネちゃんは冒険者になりたいの?」

善子「ん~、そういう訳じゃないのよね」

曜「というと?」

善子「私も戦う力が欲しいと思ったのよ。守られてばかりじゃ駄目だってね」

曜「ふむふむ……なら野宿とか食べられるものとかの説明は要らないかな?」

善子「……時間が余ったら教えて欲しいわ」

曜「分かった!じゃあまずは立ち回り方とかなんだけど……」

善子「だけど?」

曜「ヨハネちゃん」ジー

善子「な、何?」

66: 名無しで叶える物語(あら)@\(^o^)/ 2016/12/25(日) 22:13:00.29 ID:MrQ3qXNh.net
曜「ヨハネちゃんに適した武器はフランベルジュって言ったよね」

善子「え、えぇ」

曜「フランベルジュはね――」













曜「肉をグチャクチャに引き裂く剣なんだ」




え……?

67: 名無しで叶える物語(あら)@\(^o^)/ 2016/12/25(日) 22:20:33.05 ID:MrQ3qXNh.net
善子「どういうことなの?」

曜「このフランベルジュは肉を引き裂き、止血しにくい傷を作るんだ」

善子「……」

曜「だから"死よりも苦痛を与える剣"って言われてるんだ」

善子「そう……なのね」

曜「だからこの剣は嫌われている。それでも君はこの剣を握るかい?」







私……私は……!







善子「私に適した武器が人を痛めつける剣?上等よ!今はなりふり構っていられないの!守るべき人を守れるなら何でもいいわ」





善子「覚悟は……決めた!」

曜「……そう、それがヨハネちゃん自身の決意なんだね。分かったよ!私も全力で教えるから!」

善子「あ、全力は私が死ぬから勘弁を」

曜「えぇっ!?」

72: 名無しで叶える物語(あら)@\(^o^)/ 2016/12/26(月) 22:11:10.81 ID:PZXEsGSr.net
――

朝起きる。宿の手伝いをする。

お昼過ぎにヨーナさんが連れ去りに来る。

体力作りに励む。

無事死ぬ。

座学を聞く。

体力が回復してきた辺りで素振りの練習をする。



数日後にはフランとマリーも帰ってきてこの修行に参加した。

2人揃って私を殺したいのだろうかと本気で考えた。

1ヶ月ほどそんな生活を繰り返し、最後の1週間は実際に打ち合ったりもした。
加減をしたり、ハンデ付きでやったりはして貰ってるんだけど一撃も入れられない。
そう落ち込んでいると――

曜「そりゃあほぼ素人のヨハネちゃんに負けたらAランク冒険者の名が泣くよ!」

って言ってたの。
Aランクってどれくらいなの?って聞いたら

曜「単独でドラゴンとか討伐出来るくらい?」

善子「」

聞いた私が馬鹿だったわ……

73: 名無しで叶える物語(あら)@\(^o^)/ 2016/12/26(月) 22:16:45.18 ID:PZXEsGSr.net
――

そこから数ヶ月間、私はヨーナさんから色々な技術を教わった。
フランとマリーはやっぱり、1ヶ月おきに数日間消えていた。
何をしてるのか聞いても答えてくれない……。
きっと何か事情があるのよね。

それとヨーナさんが『実戦も経験しないとね!』とか言って色んなところに連れていかれた……。





大量発生した魔獣の群れからの村の防衛戦だとか……
とある港町を襲っているクラーケン討伐だとか……
山の頂上に居着いているドラゴン討伐だとか……




今考えてみても何で私生きてるんだろう。

74: 名無しで叶える物語(あら)@\(^o^)/ 2016/12/26(月) 22:18:08.22 ID:PZXEsGSr.net
ヨーナさんに同行する為に、いつの間にか私もギルドに登録させられてたわ。
ヨーナさんはAランク、私は驚異の早さでCランクに。
……まぁヨーナさんはわずか三ヶ月でAランクに上がったらしいけど。
あの人ホントに頭おかしいわよ!

の前に何で夢がこんなに続くのよ!長すぎよ!

……でも、まぁ、この世界もなんだかんだ言って好きなんだけどね♪

――

あ、それと実戦練習に行くようになる前の話なんだけど……

75: 名無しで叶える物語(あら)@\(^o^)/ 2016/12/26(月) 22:21:08.31 ID:PZXEsGSr.net
――

善子「ヨーナさんヨーナさん」

曜「んー?」

善子「ハッキリとは言われてないんだけど、この剣ってくれるの?」

曜「そのつもりだけど?」

善子「……結局この剣の銘って何?」

曜「……ぁ」

善子「『あ』って!今『あ』って言った!」

曜「いやぁ忘れてたよ」テヘペロ

善子「おぉぉい!」

76: 名無しで叶える物語(あら)@\(^o^)/ 2016/12/26(月) 22:28:28.48 ID:PZXEsGSr.net
曜「じゃ、行きますか」

善子「どこに?」

曜「この剣作った人の所」

善子「鍛冶師ってやつかしら!」キラキラ

曜「そうだね。見た目は可愛いけど腕は確かだよ」

善子「見た目可愛いのにこんなえげつない武器造るのね……」

曜「これは私が依頼したやつだから」

善子「よく受けてくれたわね」

曜「まぁ昔から知ってるからね~。センちゃんとも仲良いよ?」

ん?センさんとも?
曜さん千歌さんと仲がいいと言えば……
果南さん?

77: 名無しで叶える物語(あら)@\(^o^)/ 2016/12/26(月) 22:37:24.37 ID:PZXEsGSr.net
けど果南さんってどっちかと言うとお姉さんタイプだから、可愛いよりか綺麗の方があってるわよね。
う~ん……

曜「よーし、行くよ!」

善子「あ、待って!」

――

曜「ここだよ」

善子「ここが……鍛冶屋?」

曜「やっぱ驚くよね~」アハハ

目の前にある建物は……どう言えば良いのだろうか……
お人形さん遊びで使うようなフワッフワした建物?って言えば分かるかしら。

78: 名無しで叶える物語(あら)@\(^o^)/ 2016/12/26(月) 22:43:30.56 ID:PZXEsGSr.net
つまり、何が言いたいのかと言うと――

善子「嘘でしょ?」

曜「それが本当なんだなぁ。入るよ?」

えぇ……こんな店構えにするとなると――

曜「ルゥちゃーん!来たよー!」

善子「ルゥ……絶対ルビィでしょ」

ルビィ「わぁー!曜ちゃん久しぶりだね!」ヒョコッ

ほらやっぱりルビィ――って!

善子「ルビィちっさ!!」

ルビィ「」ビクッ

曜「ヨハネちゃん、いきなり大きな声出したら駄目だよ?それにこの子はルゥちゃん」

善子「そ、そう。ルゥね……」

ルビィ――ルゥの身長が1mも無いんだけど!?
何でこんなにちっちゃいのよ!

81: 名無しで叶える物語(あら)@\(^o^)/ 2016/12/27(火) 21:27:20.49 ID:U3TYypNv.net
善子「それで、この子がこの剣を?」

曜「うん」

ルビィ「ぅ……」

曜「ルゥちゃん、心配しなくていいよ。この子はヨハネちゃん。いい子だから仲良くしてね?」

ルビィ「」コクリ

曜「ヨハネちゃんも」

善子「勿論よ!」

ルビィ「」ビクッ

曜「ヨハネちゃん声が大きい。ルゥちゃん怯えてるよ」

善子「ご、ごめんなさい」

82: 名無しで叶える物語(あら)@\(^o^)/ 2016/12/27(火) 22:34:59.41 ID:U3TYypNv.net
ルビィ「」ジー

善子「な、なんか見られてるんだけど」

曜「あら、どうしたの?」

ルビィ「」コショコショ

曜「ふんふん、なるほど」

善子「ちょっと、どうしたのよ」

曜「ヨハネちゃん魔法は使えないんだよね?」

善子「え?えぇ」

曜「だけど魔力は持ってるみたいだよ。しかもかなりの量の」

善子「……ホント!?」

85: 名無しで叶える物語(あら)@\(^o^)/ 2016/12/28(水) 21:50:27.89 ID:q2StUYkV.net
ルビィ「」コクコク

善子「……って、魔力あっても使えなかったら意味無いじゃないの」

曜「ちっちっち、それが違うんだなぁ」

善子「……どゆこと?」

曜「見れば分かるよ。ルゥちゃん、今魔石剣はある?」

ルビィ「ある……けど、ヨハネちゃんの属性とは合わないよ」

曜「ヨハネちゃんの属性は?」

善子「ふっ、闇に決まって――」

ルビィ「水」

善子「何でよっ!」

86: 名無しで叶える物語(あら)@\(^o^)/ 2016/12/28(水) 21:56:37.67 ID:q2StUYkV.net
曜「水の魔石剣も無いの?」

ルゥ「あるにはあるんだけど……ヨハネちゃんの魔力量には耐えられないかなぁ」

善子「水……水……」ショボン

曜「水かぁ……あ!それならこれが使えるかな……」ゴソゴソ

曜「あった!クラーケンの魔石!これならどう?」

ルゥ「……」ジッ

ルゥ「これなら大丈夫そう!」

曜「良かった。あのフランベルジュを鍛え直して作れるかな?」

ルゥ「あれ私が作ったやつだよね……それなら大丈夫かも」

87: 名無しで叶える物語(あら)@\(^o^)/ 2016/12/28(水) 22:05:54.70 ID:q2StUYkV.net
曜「ヨハネちゃん」

善子「何よ」ブスー

曜「もぉー、そんなに闇属性じゃ無かったのが嫌なの?」

善子「当たり前よ!この堕天使であるヨハネには闇がお似合いじゃない!」

曜「はいはい、堕天使堕天使」

善子「むかっ」

曜「ところでね、その剣だけど、暫く預けて」

善子「へ?」

曜「ルゥちゃんに鍛え直して貰うから」

善子「……さっきの魔力云々と関係あるの?」

曜「それは出来てからのお楽しみ」

善子「はぁ、分かったわよ」スッ

ルゥ「……ありがと」

曜「どれくらいかかるかな?」

ルゥ「んと……今依頼無いから明日取りに来て」

曜「りょーかい。ほら、ヨハネちゃん!今日は素振り出来ないから体力作り行くよ!」ガシッ

善子「え、待って!いや!いやぁぁぁ!!」ズルズル

ルビィ「ふぁ、ふぁいと!」

89: 名無しで叶える物語(あら)@\(^o^)/ 2016/12/28(水) 22:18:55.06 ID:q2StUYkV.net
―翌日―

曜「おはヨーソロー!」

善子「おはよ……」

ルビィ「2人ともおはよう」

善子「私の剣は?どこ!?」

曜「落ち着け」ペシッ

善子「あうっ」

ルビィ「ここにあるよ」スッ

善子「おぉぉぉ!ありがと!」

剣を受け取った私は鞘から引き抜いた。
ん?今までのとなんか違う……。

善子「青みがかってる?」

曜「正解。これは魔石剣って言って、魔石が剣の中に含まれてるんだよ」

90: 名無しで叶える物語(あら)@\(^o^)/ 2016/12/28(水) 22:34:54.33 ID:q2StUYkV.net
善子「それがどうゆう……?」

曜「んー……何て言えばいいのかな、こう、体の奥底にある力をうをぉぉー!って出すみたいな」

善子「は?」

曜「とにかくやってみて」

善子「え?こ、こう?うをぉぉー!」

見様見真似で力を入れると、体の中から何かが流れ込んでいくのが分かった。

善子「何……これ」

曜「おぉ!1発で成功とはやるね!」

善子「なんか剣が光ってるんだけど!?」

ルビィ「それが魔石剣の本当の姿」

善子「ルゥ?」

ルビィ「各魔石剣に合った属性の魔力を流し込めば、剣の威力、切れ味、頑丈さが上昇するんだ」

善子「へぇ……」

ルビィ「それと各属性で違う効果が出るんだけど……水の場合は治癒能力」

91: 名無しで叶える物語(あら)@\(^o^)/ 2016/12/28(水) 22:43:22.05 ID:q2StUYkV.net
善子「治癒……」

善子「あははははは!!」

曜「ど、どうしたの!?」

善子「いや、人を傷つける為の剣を握ってるのに、私が持ってる力は治癒能力だなんておかしくて笑っちゃうわ」

曜「……」

ルビィ「けどその力は1度きりだよ。ヨハネちゃんの魔石剣に使った魔石の大きさと、ヨハネちゃんの魔力量なら、死んだばかりの人なら蘇らせることは出来そうだけど……」

善子「え?」

ルビィ「あと、多分ヨハネちゃんの体が耐えきれないと思う」

善子「……」

ルビィ「その力を使わなくても充分名剣の部類に入ると思うから……。今のは忘れて……」

善子「……ありがとう」ボソッ

92: 名無しで叶える物語(あら)@\(^o^)/ 2016/12/29(木) 00:08:00.59 ID:rICp6WwM.net
――

善子「結局この剣の名前って何なのよ」

曜「ルゥちゃんはヨハネちゃんが決めてって言ってたよ」

善子「私が?」

曜「うん、ずっと使うだろうしって」

善子「……」

折角だからフランベルジュからもじった名前で……。
私の魔力は水、私の所属しているグループ名はAqours。

よし、決めた!

善子「今からこの剣は"アクアベルク"よ!」

曜「アクアベルクね……良い名前じゃん!」

善子「えぇ……」

宜しくね、アクアベルク……

94: 名無しで叶える物語(あら)@\(^o^)/ 2016/12/29(木) 00:24:09.46 ID:rICp6WwM.net
それっぽい名称が思いつかなかった故
とりあえずここまで

97: 名無しで叶える物語(あら)@\(^o^)/ 2016/12/29(木) 21:28:23.88 ID:rICp6WwM.net
――

善子「ヨーナさんの魔石剣って何なの?」

曜「私?私のは魔石"拳"だよ」

善子「そうじゃなくて、剣の種類よ」

曜「だから魔石"拳"だって」

善子「だーかーらー!」

曜「嘘嘘、分かりにくかったね」

善子「もぉー」

曜「私のは"拳"の方の"けん"なんだ」スッ

善子「ナックル?」

曜「そ、あとこれは特別製でね……ちょっと見てて」

善子「?」

98: 名無しで叶える物語(あら)@\(^o^)/ 2016/12/29(木) 21:33:21.40 ID:rICp6WwM.net
ヨーナさんがすっ――と構えて息を吐く。

曜「はぁっ――!」

気合を入れる――すると

善子「嘘……7色!?」

赤――火属性

青――水属性

緑――風属性

橙――地属性

黒――闇属性

黄――光属性

白――無属性

7色に光り輝いている。
つまりヨーナさんは――

曜「実は全属性持ちなんだ」

善子「凄すぎ……」

99: 名無しで叶える物語(あら)@\(^o^)/ 2016/12/29(木) 21:50:54.28 ID:rICp6WwM.net
曜「と、言っても」

善子「ん?」

曜「私は土と火だけの適正が極端に高くて他が低いんだよね」

善子「それでも充分じゃない」

曜「いやいや、合計魔力量ではヨハネちゃんの方が上だよ」

善子「……は?」

曜「それこそ1000年に1人の逸材レベル?」

善子「ふっふっふ、やはりこの堕天使ヨハネこそ最強の――」

曜「あ、クラーケンの魔石代は払ってね」

善子「」

100: 名無しで叶える物語(あら)@\(^o^)/ 2016/12/29(木) 21:55:24.47 ID:rICp6WwM.net
曜「ん~、大体1千万くらい?」

善子「無理よ!」

曜「ほっほぅ、それなら体で払ってもらおうかな」ニヤニヤ

善子「え、何言ってんの」

曜「ほら来るのだ」グイグイ

善子「え、まさか、ホントに?」

曜「良いではないか良いではないか」

善子「良くないわよ!」

曜「ええいうるさい!少し静かにせんかい!」シュッ

善子「うっ……」ドサッ

私はヨーナさんの手刀で気を失った。

101: 名無しで叶える物語(あら)@\(^o^)/ 2016/12/29(木) 21:57:50.29 ID:rICp6WwM.net
――

善子「んぅ……ここは?」パチッ

曜「港町」

善子「ん?」

曜「港町」

善子「はい?何で?」

曜「言ったでしょ?体で払ってもらうって」

善子「言ったわね」

曜「だから、クラーケン討伐」

善子「話が飛躍し過ぎでしょぉぉぉ!?」

その後頑張ってクラーケンを狩ったわ。
ほとんどヨーナさん1人のおかげだったけど……

102: 名無しで叶える物語(あら)@\(^o^)/ 2016/12/29(木) 22:01:29.88 ID:rICp6WwM.net
――

善子「そういや何でルゥってあんなにちっちゃいの?」

曜「言ってなかったっけ?ルゥちゃんはドワーフなんだよ」

善子「初めて聞いたわよ!」

曜「そうだっけ」

善子「ドワーフか……つまり、合法ロリッ――!」

曜「ルゥちゃんはまだ未成年だから合法もなにも違法だよ」

善子「なぁんだ」ボソッ

少しがっかりしたのは内緒だ。

106: 名無しで叶える物語(あら)@\(^o^)/ 2016/12/30(金) 23:58:08.37 ID:/RoY9Ntf.net
――

千歌「そう言えばヨハネちゃんは教会に行った?」

善子「教会ってこの村の?」

千歌「そーそー」

善子「行ったことないわね。そもそも何するのよ」

千歌「それはね――」

梨子「行ってからのお楽しみの方が良いんじゃないかな?」

千歌「フランちゃん!」

善子「フランじゃないの」

鞠莉「はぁい、私もいるわよ~」

善子「マリーも」

107: 名無しで叶える物語(あら)@\(^o^)/ 2016/12/31(土) 00:02:20.58 ID:xFGYEk2H.net
梨子「私が案内するよ」

千歌「お願い出来る?」

梨子「任せて」

善子「む……何があるのか気になるわね」

鞠莉「それはさっきも言ったけどお楽しみよ♪」

善子「はいはい」

―教会―

善子「そういや、前を通ったことはあったけど入ったことは無いわね」

梨子「ちょっと待ってね。今の時間はいるはずだけど…マルちゃーん?」

善子「マルっ……ずら丸か」

119: 名無しで叶える物語(あら)@\(^o^)/ 2017/01/04(水) 21:19:51.21 ID:yk9zwkp6.net
花丸「フランちゃん?久しぶり!」ヒョコッ

善子「ですよね」

梨子「マルちゃん久しぶり。こっちの子はヨハネちゃん」

善子「初めまして、ずら丸」

花丸「オラの名前はマルずら!」

梨子「今のひっくりかえすとずら丸になるよ?」

花丸「うっ……けどマ!ル!だからね!」

善子「分かってるわよマル、宜しくね」

花丸「うぅ~……」

120: 名無しで叶える物語(あら)@\(^o^)/ 2017/01/04(水) 21:24:46.70 ID:yk9zwkp6.net
善子「それで?何で教会に?」

梨子「それは……マルちゃん、ちょっと」チョイチョイ

花丸「ん~?」

梨子「あのね――」コソコソ

花丸「ふむふむ」

何の話してるんだろ。
マリーと一緒に疎外感を感じる。

花丸「ヨハネちゃん、神様って信じる?」

善子「神様ぁ?……まぁいるんじゃない?」

花丸「そのテキトーさは何ずら……」

善子「その神様がどうしたのよ」

花丸「この教会では神様からのお言葉を授かることが出来るずら」

善子「ふぅ~ん」

鞠莉「もうちょっと興味持ちなさいよ……」

121: 名無しで叶える物語(あら)@\(^o^)/ 2017/01/04(水) 21:29:38.44 ID:yk9zwkp6.net
善子「で、私も出来るってわけ?」

梨子「そーゆーこと」

この世界の神ってダイヤさんかな?
今まで出て来てないのはダイヤさんと果南さんだし。

善子「なんか面白そうだしやってみるわ」

花丸「それがいいずら」

善子「何すればいいの?」

花丸「最初にお供え物をするんだよ」

善子「……私持ってきてないわよ」

鞠莉「ご安心くだされー!ここにあるわ!」

善子「ありがと――ってこれ何よ!」

花丸「何ってパンずら」

善子「いやそれは分かるけど!」

122: 名無しで叶える物語(あら)@\(^o^)/ 2017/01/04(水) 21:35:02.64 ID:yk9zwkp6.net
花丸「何か問題ある?」

善子「アンタが食べたいだけでしょ!」

花丸「失礼な!マルが一番欲しいのはのっぽパンずら!」

善子「」

花丸「これはランチパックだよ?マルも好きだけど、のっぽパンには遠く及ばないずら」

善子「そうね……うん、そうね」

花丸「じゃあ早速やるずら」

善子「どうするの?」

花丸「まずは祭壇にお供え物を置いて」

善子「はい」スッ

花丸「次にお祈りするずら」

善子「何て?」

花丸「特に決まってないよ。『神様ー!』とかでもいいと思うずら」

善子「ず、随分フレンドリーな神様なのね」

123: 名無しで叶える物語(あら)@\(^o^)/ 2017/01/04(水) 21:40:10.08 ID:yk9zwkp6.net
善子「じゃ、じゃあ神様ー!出てきなさぁい!」

鞠莉「それはちょっと危ないんじゃ――」

『おっ、元気がいいねぇ!』

善子「!?」

善子「えっ、これ直接頭の中に!?」

『そうだよー、あとついでに君以外の人の時間も止めてるよ』

善子「嘘っ!」

あたりを見回すと、フラン、マリー、マルの3人ともが微動だにしていなかった。

善子「なんで止めたの……?」

『こーゆー会話形式にするのは珍しいからね。普通は何か言葉言って終わりだから』

善子「なるほど……」

124: 名無しで叶える物語(あら)@\(^o^)/ 2017/01/04(水) 21:45:20.72 ID:yk9zwkp6.net
善子「で?何でわざわざ会話形式に?それに貴方は元の世界では誰よ」

『最初の質問は君も分かってると思うけど、この世界が君の夢の中だから話したかっただけ』

善子「……」

そうなるとますますこの神様の存在自体が謎に……

『二つ目はねー、答えられないかな』

善子「……どういうこと?」

『この世界は君の夢とは言え、君の知らない人は沢山いるでしょ?』

善子「まぁそうね」

そうじゃないととても世界が成り立たない。

『私はその中の1人だから、君が知らない人の名前を言っても無駄でしょ?』

善子「そうね」

何で神様とかいう大事な立場の役の人が、私の知らない人なのよ!!

『あ、一応この世界は普通の夢だから安心して。なんか神が干渉してこの世界を作ってるとか無いから。ただちょっと長いけど』

善子「長過ぎるわよ!もう寝る前何してたかもあやふやになるくらいにはね!」

125: 名無しで叶える物語(あら)@\(^o^)/ 2017/01/04(水) 21:50:57.16 ID:yk9zwkp6.net
『まぁ私のことは気にしないで、唯一この世界が夢だって知ってるだけだから』

善子「アンタは知ってんのね」

『なんか知ってたんだぁ。テへ♪』

善子「キモッ」

『酷い!酷いよ善子ちゃん!』

善子「あぁ、名前も知ってんのね」

『もう良いよ!終わり!何か聞かれたら"頑張ってね"って言われたって言っとくんだよ!』

善子「おーい?」

善子「消えた……」

梨子「……終わったの?」

善子「えぇ、多分」

鞠莉「多分?」

126: 名無しで叶える物語(あら)@\(^o^)/ 2017/01/04(水) 21:54:46.59 ID:yk9zwkp6.net
善子「なんか『頑張ってね』って言われた」

花丸「よくおっしゃられる言葉ずら」

善子「テキトーかよ」

梨子「あははは、いいんじゃない?」

善子「まぁ珍しい体験ではあったわね」

鞠莉「じゃあ今日は帰るわよ!」

梨子「早くない?」

鞠莉「寝たいの!」

善子「一狩り行くわよ」

鞠莉「やだぁー!マリー寝るもん!」ジタバタ

善子「フラン、置いてきましょ」

梨子「そうね。マルちゃん、世話お願いできる?」

花丸「任せるずら」

鞠莉「え?2人共、え?」

よしりこ「じゃあ」スタスタ

鞠莉「置いてかないでぇぇ!!」

――

138: 名無しで叶える物語(あら)@\(^o^)/ 2017/01/06(金) 22:02:57.63 ID:QSE4ZDDa.net
――

夕暮れ時、広場の噴水の縁に腰掛けて私は考え事をしていた。

善子「」ボー

梨子「わっ!」

善子「うわっ!びっくりした!」

梨子「よっちゃんボーっとしてたから驚かそうと思って」

善子「なによぉ、心臓止まっちゃうかと思ったじゃない」

梨子「あはは、ごめんね」

善子「ふん」

梨子「何してたの?」

善子「あぁ、フラン達と出会ってから数ヶ月も経つんだなぁって考えてたのよ」

139: 名無しで叶える物語(あら)@\(^o^)/ 2017/01/06(金) 22:10:17.59 ID:QSE4ZDDa.net
梨子「そうだね。最初よっちゃんは自衛も出来ないのに森の中にいて」

善子「あれには事情があったのよ」

梨子「はいはい」

善子「それから――」

今まであったことを色々と話した。
途中から段々とマリー、ヨーナさん、センさん、ルゥ、マルの今まで出会ったAqoursメンバーが加わり、更に熱中して語り合った。

善子「――ってもう日が暮れてるじゃない!」

ついつい話し込んでしまった。

曜「ホントだね。夜も遅いしここでお開きにしようか」

千歌「あぁっ!こんな時間まで仕事ほっぽってた!お姉ちゃんに怒られる!!」

140: 名無しで叶える物語(あら)@\(^o^)/ 2017/01/06(金) 22:13:12.68 ID:QSE4ZDDa.net
善子「あ゛」

花丸「もうヨハネちゃんは働いてないんでしょ?」

善子「そうだったわ」

今ではヨーナさんのおかげで、一人前の冒険者として活動出来ている。

ルビィ「私も仕事溜まってるし……」

花丸「オラものっぽパン食べなきゃ」

善子「関係ないでしょ」

鞠莉「じゃあ皆!See you again!」

マリーの言葉で解散。
フラン、マリー、センさんと一緒にタカミーに帰る。
何かの縁だ、と、今でも泊まっているのだ。

まぁ……フランが泊まってるからってのもあるんだけどね。

141: 名無しで叶える物語(あら)@\(^o^)/ 2017/01/06(金) 22:20:34.37 ID:QSE4ZDDa.net
梨子「ちょっと先に行ってて」

善子「どうしたの?」

梨子「ちょっと用事思い出して」

鞠莉「着いて行く?」

梨子「私1人で大丈夫だから。じゃあ」タッタッタッ

千歌「行っちゃったね。先に行っとこう」

鞠莉「そうね~」

善子「……」

鞠莉「今日のご飯は何?」

千歌「なんと~……ステーキなのだ!」

鞠莉「Very goooooood!! よ!」

千歌「待ちきれないよねぇ」ジュルリ

鞠莉「えぇ」ジュルリ

142: 名無しで叶える物語(あら)@\(^o^)/ 2017/01/06(金) 22:22:32.81 ID:QSE4ZDDa.net
善子「……2人とも先に行ってて」

千歌「え?」

善子「私ちょっと心配だから見てくるわ」

鞠莉「でもフランは――」

善子「じゃあ」タッタッタッ

千歌「行っちゃった」

鞠莉「う~ん……まぁ大丈夫なんじゃない?それよりもmeatよ!」ジュルリ

千歌「はっ!そうだよ!えっへっへ」ジュルリ

143: 名無しで叶える物語(あら)@\(^o^)/ 2017/01/06(金) 22:27:07.21 ID:QSE4ZDDa.net
なんだか胸騒ぎがする。
フランは大丈夫だって言ってたけど……

「――めになって下さい!」

善子「ん?」

女性が言い合っている声が聞こえた。
フランかもしれない。

「いやよ!また閉じ込めるんでしょう!?」

フランの声。
何か事件に巻き込まれたのか――と思いかけたが、どうやら知り合いのようだ。

「そうです。この国を守るのと同時に、貴女のことも守る為ですよ」

しかしどこかで聞いたことのある声。

「知らないわよ!今まで通り月一で戻ってくればいいんでしょ!」

「魔王の妹が各地で目撃されているのです!」

魔王!?
魔王って数十年前に討伐されたんじゃ!

144: 名無しで叶える物語(あら)@\(^o^)/ 2017/01/06(金) 22:30:07.35 ID:QSE4ZDDa.net
「それはっ――」

「さすがに貴女でも無理ですわ"リリー姫"」

「――!その名前では呼ばないで"ダイヤ"」

ダイヤさんか、納得――じゃないわよ!
フランじゃなくてリリー?
しかも姫ぇ!?

ダイヤさんとどういう関係なのよ……

善子「戦闘には……ならないみたいね」

それならもう少し話を――

「……はぁ、分かりましたわ。ですが、余り時間はありませんよ?」

「……えぇ、私も無理言ってるのは分かってるから」

「では」

終わっちゃった。