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「人工知能、IoT、ビッグデータを前提にした医学の再設計を」大学の教授4人による攻殻シンポジウム - Engadget 日本版

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「人工知能、IoT、ビッグデータを前提にした医学の再設計を」大学の教授4人による攻殻シンポジウム

将来、医学部の偏差値は下がる!?

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SF作品で見てきた未来の技術がリアルになりつつある現代。2029年が設定の都市とされている攻殻機動隊の世界に今どれだけ近づいているのか。2016 年11月26日に開かれた神戸ITフェスにて、「人工知能の研究と社会実装(現在・未来)」をテーマに「攻殻機動隊 REALIZE PROJECT presents 攻殻シンポジウム」が行われました。

今回は「都市インフラと医療」の議論です。
第一回:「シンギュラリティのポイントは攻殻機動隊的な超人間化」大学の教授4人による攻殻シンポジウム
第二回:「人工知能は人間の脅威になり得るのか?」攻殻シンポジウムで大学の教授4人が意見をぶつけ合う

登壇者は、神戸大学名誉教授の松田先生、九州大学名誉教授、公益財団法人九州先端科学技術研究所副所長の村上先生。電気通信大学教授 同大学人工知能先端研究センター長の栗原先生。神戸大学教授、NPOウェアラブルコンピュータ研究開発機構理事長の塚本先生。 モデレーターは、攻殻機動隊 REALIZE PROJECT事務局 統括顧問・コモンズ代表取締役の武藤博昭氏。

未来の都市インフラへの取り組み

武藤:次のセクションは、攻殻機動隊の中に描かれた科学技術の可能性ということの、都市、インフラとあえて書きました。皆さんの暮らしにできるだけ身近なテーマにおける、人工知能についてのお話ができたらなと思ってます。それでは映像をご覧ください。



武藤:セクション1はSTAND ALONE COMPLEXシリーズからの引用でしたが、セクション2は攻殻機動隊ARISEシリーズから引用させていただきました。映像の中にはまさに自動運転が当たり前の時代、そんな時代に非常事態のときに中央からそれぞれのネットワークをコントロールしながら、何十年ぶりかに自動運転を解除して、手動で車を止めなきゃいけないっていうシーンが描かれていました。



スマート交通管理システム、都市インフラ、これらが人工知能を含めて便利な世の中になっているであろう2029年の世界。村上先生がまさに今研究をされていたり、福岡市で取り組まれている未来に向けた取り組みについてお話しいただけますか。



村上:ハード面もさることながら、これまでのわれわれのインフラのつくり方を見ていても、例えば車なら車、電車なら電車、あるいは電気、ガス等々の、一つの単目的と言いますか、一つのサービスに向けての最適化、効率化で進んできた歴史があると思います。

ただこれからはIT技術、デジタル技術、人工知能技術のおかげで、いろんなインフラ、単体インフラが結びついたコンプレックスとして都市を考えていく時代になってくる。

何を言ってるかというと、自動運転一つ取ったら、たぶん今の交通システムそのものも変わってくると思いますし、駐車の仕方、自動運転に加えてライドシェアだったり、駐車場のパーキングシステムも変わってくるわけです。

ただ、そういう時代になったときに「人間はなぜ移動するのか」という根源に立ち返ったら、もっと違うサービスとの組み合わせもありえます。例えば、今でも既に、わざわざ買い物に行かなくてもモノが届く時代になってくるわけで。「わざわざ車を運転して、あるいは自動運転の時代になってわざわざ買い物に行くんですか?」ということもあります。

いろんなサービスがコンプレックス、複合化されたときに、それぞれのインフラをどうしていくのか。要するに、全体最適化ですね。マクロな視点でそれぞれのインフラをつくっていく、設計していくという、そういう視点が大事かなと思います。たぶん行政とかに任せるというよりも、「われわれがどういうふうな価値のある生活をしたいか」ということで、将来の街について提案していかなくちゃいけない。

どうしてもスマートシティというと、ハードがおしゃれになったりとか、センサーや防犯カメラがいっぱいあって下手をすると監視社会になるんじゃないかとか、そういう恐怖心が生まれてくる。監視カメラで求めてるのは安全性なんだけども、同時にプライバシーというのも欲してるわけです。その二つの価値をどうトレードオフを取りながらバランスよく実現していきますかと。

そういうトータルデザイン、マクロなデザインが求められているのかなという気がします。福岡では、まだそこまでトータル的な話はないんですけども、個別のいろいろなサービスとして課題を洗い出すということで、実証実験が始まっています。

武藤:首都圏に住んでると、こうした新しい技術を実験していくような、そういう環境ってつくりづらいなと正直思います。ですので、ここ神戸市ならびに村上先生いらっしゃる福岡、飛びぬけてこのあたりは特区をお取りになって、いろんなことをやっていくぞという話があります。

村上:東京のインフラをがらがらぽんして新しいものにするというのはまず不可能です。ここもビジネスの世界における破壊的イノベーションの考え方で、福岡・神戸くらいの150万人くらいの中小都市の規模でまずはスモールスタートをして、それがいつの間にか全国に展開されるという破壊的イノベーションのアプローチをインフラでもやっていく必要があるのかなと思います。

武藤:栗原先生、人工知能をいろんな分野で研究されているかと思うんですけど、都市インフラのテーマの中において、なにか取り組まれていたりすることはありますか。



栗原:僕のところだと交通ですね。「渋滞どう減らしましょう」という話があったりもしますし。自分たちのテーマだと、シミュレーションです。リアルで東京を改善するのは難しいので、大規模なシミュレーションをするわけですが、われわれがつくっていたりします。

武藤:例えば、鉄道なんかのあの過密なダイヤをコントロールするのには、すごく人工知能って向いてるんじゃないかなって素人ながら考えたりするんですけど、もうすでに社会実装されてるような例ってあるんでしょうか?

栗原:鉄道なんかは、熟練さんの人たちがされてますよね。攻殻機動隊の世界でも全自動化すればいいなと思うんだけどできていなかったりします。現実的に難しいんだなというのはそういうところでも実感しています。



塚本:社会実装の話じゃないんですけども、自動運転の話で、IoTを使って交通システムを制御する話はすごく流行っています。数年前にちょっと話題になったのが、自動運転で車の交差点の制御をするときに一番いい制御の仕方は高速で突き抜けることだと。人工知能とかで制御して、全ての車が全ての車の動きを見て、プラスマイナス10パーセントぐらいの速度コントロールで全車が際どくすり抜けが一番最適だと。

武藤:一方、テスラモーターズ製の電気自動車が引き起こした事故が大きなニュースにもなりました。いわゆる社会実装というテーマで、ぜひ村上さんにお答えいただきたいです。

村上:無人運転の社会実装、いろいろ進んでいると思います。その話のちょっと前に、先ほど栗原先生のシミュレーションの話もございました。塚本先生の高速でこともありましたけども、要はモデル駆動かデータ駆動かという話なんですけど、人間って両方うまく組み合わせてやってるんです。

なかなか形式知にできないんですけど、暗黙知的に、いろんな経験に従って運転の判断をしている。それは単に視覚で入ってきている映像だけでブレーキを踏んだりアクセルをふかしたり、ハンドルを切ってるだけではないモデルがあるんです。モデルと言っていいのかどうかわかりませんけども、そういうアプリオリで、もともと与えられているモデルと、それから今現場で入ってきているデータに基づいての判断と、両方うまく結び付けていると。

それが両方合わせて人工知能と呼んでいるかもしれませんし、データ駆動だけを取り合わせていわゆる機械学習になるかと。ですから、今の無人運転にも暗黙知なりをモデル部分が必要ではないかなと思っています。

社会実装となりますと複数の乗客を乗せての無人運転はニーズが高まってきています。なんにしても、下手な人間が運転するよりも無人運転のほうが安全だという仮説の証明が必要です。そのときに、例えばレーンのつくり方であったり、もちろん信号制御であったりとか、いろんな課題が出てくると思います。

あと、歩行者と無人運転車との間でのインタラクションと言いますかインターフェースの問題もあります。これまで、身振り手振りなどで「俺渡るよ、渡らないよ」みたいなアイコンタクトができてたんですけども、無人運転に対しては難しいのかなと。そういった、さまざまな課題を洗い出していくことが重要かなと思ってます。九大の伊都キャンパスが、複数人が乗るような車の無人運転、の実験が始まっているところです。

将来的には医学部の偏差値は下がる



武藤:ありがとうございます。もう一つ、神戸市ならではというところで、医療について。医療現場における人工知能というところのお話ができたらなと思っています。これたまたままた8月に東大の医科研究所のお話がありました。ワトソンが60代の女性患者の正確な白血病の病名をわずか10分で見抜いて、適切な治療法によって患者の命を救ったという発表が世界にかなり波紋を及ぼしたようです。松田先生は、神戸大学でそういった医療とテクノロジーみたいなところを積極的にお入れになっているとお聞きしました。



松田:僕は、医者の会から「医者の将来どうなるか?」という講演を頼まれてやっています。医者って分厚い本に書いてあることを全部覚えないといい成績取れないし、いい医者にはなれないわけです。だけどそんなことはね、もう将来みんな機械に覚えさせればしまいえばいいのであって。ワトソンなんか、人間よりもはるかにそのへんの記憶力がいい。ですから、そういうところで医者はワトソンにかなわないだろうと。

だけど、じゃあ例えばワトソンを備えたPepperくんが医者になったほうが人間が満足するかというと、たぶんそうじゃないのね。だから将来の医者のある姿としては、お医者さんは塚本先生みたいにウェアラブルでバイルをかけていて、そこにワトソンが出てくる。自分が診断したような顔をしながら、実は書いてあることを読むというふうなことになっていって。

だから将来の医者にとって重要な資質は何かと言うと、意識とか頭の良さじゃなくて、人の良さですね。患者に対してにこやかに応対する。この人格力というのが問題になってきて。

大きく変わるのは、医学部の偏差値が下がる。ものは覚えなくてもいい。ですから、今から医学部を目指すのは考え直したほうがいい。いや、金もうけをしようと思ったらですよ。

村上:わたしもこれから10年以内であれば、松田先生のお考えに賛成ですけども、たぶん10年以上、もっと20年先とか30年先は、医学の考え方が変わってきてると思います。というのは、今あるサービスとか今あるシステムを人工知能で置き換えようとすると、どうしても狭い視野での話になります。

今あるものというのは、それができたときの技術レベルでつくられています。ですから、今の医療というのもおそらく17世紀とか18世紀ぐらいの技術レベルでつくられたのが持続的イノベーションで改善されてきたわけです。

ところが、人工知能がある前提、IoTがあるとなると治療という考え方が変わってくる。今後はウェアラブルなセンシングでもって、バイタルなデータは常に取られている。そうなってくると、わざわざワトソンを出さなくても、もっと違う形で解決できるし、より予防のほうに医学というのはシフトしてくる可能性があると思います。ですから、ウェアラブル、IoT、人工知能、ビッグデータを前提にした医学全体のあり方をもう1回再設計しないといけない。そういうタイミングで来るんじゃないかなと思っています。

松田:賛成ですけど、お医者さんの既得権と衝突するからね、なかなか難しい。

栗原:僕、ワトソンの話、中身の話を聞いたことがあって。最初はやっぱりしょうもないことを言ったんだそうです。医者のほうも、しょせんこんなもんかよと。ところが、ある段階から言うことが変わってきて、もしかしたら可能性があるなと医者の見る目が変わったと言ってました。つまり、いきなり正解できたんじゃなくて、チューニングしながら使っていったので、どっかで変化があったみたい。

あと、僕が1番言いたいのは、ワトソンを使って症例を出したのはIBMの技術者であって医者ではないんです。例えば現在も、CTスキャンの画像を使ってがんの早期発見ができるようになりました。あれも、単に画像処理をする学生が見つけたんです。学生はがんの仕組みも医学の知識もない。現状はやっぱりその知識を説明する役という意味においては、医者はいる。 だけど、それもさっき言われたようにどんどん進んで予防になってくれば、別に医者がいなくても大丈夫になるかもしれません。

武藤:そろそろ時間が迫ってまいりました。ある日突然、人工知能を組み込まれた都市インフラが完成するわけでもない中で、まず1歩を踏み出す場所として神戸がどこまでできるかも期待しているところであります。

皆さま、攻殻シンポジウムにお集まりいただきありがとうございました。

第一回:「シンギュラリティのポイントは攻殻機動隊的な超人間化」大学の教授4人による攻殻シンポジウム
第二回:「人工知能は人間の脅威になり得るのか?」攻殻シンポジウムで大学の教授4人が意見をぶつけ合う

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