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CGが普及していなかった頃のホラー映画作品で使用されていた7つの技法 : カラパイア

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 1950年代後半から1960年代から1970年代初頭、サスペンス映画の神様とも称される、アルフレッド・ヒッチコック監督が大活躍した時代である。

 当時ホラー映画は低予算ながらも大変人気があった。映画監督は観客を呼び込む為、クリエイティブで斬新なギミック(技法)を次々と導入していったのである。

 それは技術にのみあらず。一種のマーケティング戦略ともいえるわけだが、当時はこれが非常に受けた。ここで紹介するのはその中でも当時反響の大きかったものである。
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1.My World Dies Screaming(1958年)
サイコ・ラマ技法(サブリミナル)



Subliminal Opening to "Terror In The Haunted House" IN PSYCHO-RAMA

 ホラー映画を真に怖くするためには表面だけでなく、深層心理にまで恐怖を植え付けなければならない。サイコ・ラマ技法とは、そういった事を可能にするサブリミナル効果の一種である。

 映画「My World Dies Screaming」は後に「Terror in the Haunted House (テラー・イン・ザ・ホーンテッド・ハウス)」と改名されたが、サイコ・ラマによるサブリミナル効果を映画に導入した事で有名となった作品である。

 Skulls(頭蓋骨)・snakes(蛇)・グールの顔(ghoulish faces)・Death(死)という文字が、1秒以下のフレームにサブリミナルメッセージとして多く使用されている。

 観客は何が描かれているのか判断できなかったかも知れないが、その恐怖を引き立てるには十分な技法であったと言える。サイコ・ラマは当時、思われていた以上に脚光を浴びる事は無かったが、その後ウィリアム・フリードキンは映画「エクソシスト」にて似たような手法を独自に開拓していったのである。


2.Macabre(マカブラ)(1958年)
顧客に生命保険をかけてもらうという手法



1958 Macabre William Castle Trailer Policy

 ウィリアム・キャッスル監督は人々をドッキリさせる映画を多く作り上げた監督であり、ホラー・グロ・恐怖・サスペンスで一流の技法を導入した事で有名だ。しかし彼の才能の本質はそのマーケティング手法にある。

 彼は映画「マカブラ」にて観客全員に「生命保険」をかけるマーケティング法を採用したのである。ロンドンのロイズ社と共に、観客に対して「もし映画の席で恐怖により亡くなった場合、1000ドル(当時)の保険金を家族に無条件で支払う」と約束したのだ。

 むろん、元から健康状態に問題のある人物や観客席での自殺の場合には支払われないが、こういったマーケット手法は斬新であり多くの人々の興味を引きつけた。


3.黒死館の恐怖(1959年)
ヒプノ・ヴィスタ技法(催眠術)



Horrors of the Black Museum (Arthur Crabtree, UK, 1959)

 よくあるホラー映画を他の映画よりも引き立てるにはどうしたらいいだろうか?アメリカ・インターナショナル・ピクチャーズ社のジェームズ・ニコルソン監督は映画「黒死館の恐怖(HORRORS OF THE BLACK MUSEUM )」の撮影にあたり、エミル・フランチェル博士の指導の下、映画に「催眠術」を導入したのだ。

 映画の冒頭13分にわたり、エミル・フランチェル博士は観客に「催眠術とは何か」を説明し、その後観客全員に催眠術を実際に行ってみせたのである。

 今では退屈してしまう人続出だろうが、1959年当時はこの手法が斬新だったのだ。作家ハーマン・コヘン氏によると、後にテレビで放送を禁止される事となったという。それはこの映画が実際に人々を催眠に陥れてしまうからだそうだ。


4.サイコ(1960年)
一度映画が始まったら、一切の入館を禁止する



Psycho Trailer (1960)

 技法とは言えないかもしれないが、アルフレッド・ヒッチコックは映画「サイコ」の上映開始にあたり「映画が始まったら、遅れた人々の一切の入館を禁止する」と映画館に指示した。

 サスペンスの神である彼のこのもくろみは、マーケティング手法と言うよりも、実際に映画を見ている人々の気分を害さないように行った配慮だ。

 もちろん「サイコ」の肝である冒頭シーンで殺される「ジャネット・リー殺害シーン」を見ていない、遅れて来た観客への心遣いでもあると言えるだろう。

 この方法は決して新しいものではない。1955年のフランス産ホラー映画「レ・ディアボリクス」は似たようなポリシーを導入していた。

 当時の人々は人々は好きな時に映画に入り、好きな時に映画館を後にしていた。これは映画を「芸術」として人々に届ける巨匠には許しがたい事であったのだ。


5. 第三の犯罪(1961年)
途中休憩時間を設け会場を立ち去ることができる。チケット代返却可



"Homicidal" Fright Break

 マカブラの生命保険の件に続き、またしてもウィリアム・キャッスル監督が作った技法は「映画の上映中に休憩時間を設ける」という物である。

 これは映画「第三の犯罪(HOMICIDAL)」に導入された技法で、ラスト間近で徐々に緊張が上がるシーンで突如として映画に時計が現れ、観客は45秒間の休息をとる事が出来た。

 実はこの休憩中に会場を立ち去り、チケット代を返してもらうオプションが選択できる。だがこのオプションを選ぶ場合は、ある条件を満たさないといけない。

 「第三の犯罪」上映中は映画館の隅に「腰抜けコーナー」と書かれた小さな黄色いブースが設置された。映画を途中で離れる人々は一旦ここで「私は骨の髄まで腰抜けです」と書かれた用紙にサインをしなければならず、その後初めてチケット代を返してもらう事が出来るのだ。

 むろん多くの人は、こういった辱めを受けるのであれば、と苦虫をつぶしながらホラー映画を最後まで見たと言う。


6. Mr. Sardonicus(ミスター・サルドニクス)(1961年)
顧客の会場投票でキャラクターの宿命が変わる



The Punishment Poll from Mr. Sardonicus

 またしてもウィリアム・キャッスル監督作品なのだが、彼は観客とのコミュニケーションを意識した作品が多い。

 映画「ミスター・サルドニクス」では、観客が登場するキャラクターの宿命を投票によって決める事が出来るのだ。観客は映画館に入る前、蛍光塗料の塗られた親指が描かれた紙を渡される。投票の時間が来ると観客はその親指を上か下のどちらかに立てるように指示される。観客の過半数の親指が上であった場合、映画の中のミスター・サルドニクスはおとがめなしとなるが、親指が下の場合ミスター・サルドニクスは処罰を受けるのだ。

 しかし実際の所上映された記録によるとミスター・サルドニクスが救われるエンディングが世に出回った事は無く、その存在すら危ういという。


7. 残酷!女刑罰史(1961年)
観客に無料で嘔吐用の袋が配られる



Domain Of Death (Mark of the Devil)

 ホラーマニアは究極のマゾなのかもしれない。彼らは恐怖を感じる事に快感を覚えるのである。1970年に後悔された映画「残酷!女刑罰史(Mark of the devil )」では、グロテスクな描写のため観客に無料の嘔吐袋が配られた。


ウィキッド・ウィキッド(1973年)
二つの視点(画面分割法)



Wicked, Wicked - Original Theatrical Trailer
 1973年の映画「ウィキッド・ウィキッド(Wicked, Wicked)」は当時画期的で、二つの視点を同時に見る事が出来た。映像には被害者と加害者、二人の視点が描かれており、観客は二つの視点を同時に見る事が出来るのだ。

 この二つの視点は映画の随所で起きる物ではない。95分の映画中ずっと続けられるのである。二つの視点を使うテクニックは他の映画でも使用され、ブライアン・デ・パルマ監督の1973年作「Sisters(シスターズ)」でもこの手法が用いられている。

 しかしこの手法が大きな脚光を浴びる事は無く、その後たびたび映画で見かける程度である。

via:8 Haunting Horror Movie Gimmicks/ translated riki7119 / edited by parumo

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コメント

1

1. 匿名処理班

  • 2017年01月14日 21:57
  • ID:i4cy19bC0 #

演出や特撮のテクニックかと思ったら ほとんど変わった宣伝方法か、

2

2. 匿名処理班

  • 2017年01月14日 22:05
  • ID:dE1vAEEA0 #

CGの普及何も関係無くて草

3

3. 匿名処理班

  • 2017年01月14日 22:09
  • ID:Z..A8WdY0 #

チケット代は返してもらわなくてもいいから、腰抜けコーナーでサインをしたいw

4

4. 匿名処理班

  • 2017年01月14日 22:52
  • ID:Lc7HyzPj0 #

関係ないけどWicked, Wickedの歌は伴奏と全然合ってないな…。

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