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小室千奈美「高峯のあの事件簿・コイン、ロッカー」|エレファント速報:SSまとめブログ

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小室千奈美「高峯のあの事件簿・コイン、ロッカー」

1: ◆ty.IaxZULXr/ 2017/01/15(日) 19:13:57.74 ID:ruzwwM+J0

あらすじ
ライブハウスのコインロッカーから白骨遺体が見つかる事件は、まだ起こっていない。

前話
鷺沢文香「高峯のあの事件簿・爆弾魔の本心」

あくまでサスペンスドラマです。
設定はドラマ内のものです。

それでは、投下して行きます。



2: ◆ty.IaxZULXr/ 2017/01/15(日) 19:16:54.47 ID:ruzwwM+J0

メインキャスト

高峯探偵事務所
探偵・高峯のあ
助手・木場真奈美
助手2・佐久間まゆ

塩見周子
涼宮星花

木村夏樹
多田李衣菜
松永涼
篠原礼

結城晴
星輝子
白坂小梅
二宮飛鳥

小室千奈美



3: ◆ty.IaxZULXr/ 2017/01/15(日) 19:17:32.49 ID:ruzwwM+J0



『コインロッカー』というフレーズがある。

古ぼけたライブハウスに染み付いた、古ぼけたフレーズ。

それは、小銭しか稼げないロッカーを揶揄する言葉でさ。

コインロッカーの方が稼いでるんじゃないか?

壁に染み付いた、タバコの臭いみたいな言葉。

隣のダーツ場なんて、全面禁煙だってのに。

このライブハウスの空気だけが、過去に取り残され続けてる。

それを好きだと言ってくれるのは、物好きだけだ。

物好きは、アタシの未来なんて保障してくれない。

『コインロッカー』のまま、好きだって言われても受け入れられない。

このままは、イヤだ。

歌った。仲間と共に。調和の力を信じて。

歌い続けて、心も声も枯れて来た。

今は壊れず、アタシは『コインロッカー』のままだった。

そして、現実はアタシを攻撃してくる。



4: ◆ty.IaxZULXr/ 2017/01/15(日) 19:18:21.26 ID:ruzwwM+J0

歌う場所は、なくなることになった。

タバコの臭いが染み付いた、時代遅れのライブハウスだとしても、アタシの大切な場所なのに。

大切な場所だから、諦めきれなかったからこそ。

仲間が諦めるには、最適のタイミングだった。

アタシの場所は、なくなる。

アタシは、『コインロッカー』ですらいられない。

アタシのポッカリと空洞を見つけたかのように

ソイツは、現れた。

「何のために、歌っていたのですか?」

何のため……仲間のため?ファンの、数少ないけどよ、ファンのため?

「違います」

自分のため、かもしれないな。歌が好きなんだ。もっとたくさんの人に聞いてほしい。

「それも、違いますよ」

穏やかな口調をした、ソイツは言った。

短いフレーズだった。ソイツは人の心を掴み取る術を知っていた。

「誰かの未来を照らすため、ではありませんか」

今思えば陳腐だった。だが。

売れること、続けることを捨てきれないアタシの頭を真っ白にするには、充分だった。

使命という言葉が刺さる。

「でも、失ってしまうのですね」

ああ、と短い言葉が漏れた。

「代わりを差し上げましょう。未来の歩き方は、幾らでもあります」

どうして、アタシはそれを受け入れたのだろう。

薄暗いライブハウスで会った、顔も覚えていない女の言葉を、どうして。

「ここへ、行ってみてください」

とある住所が印刷された、一枚の紙きれ。

「あなたのすべきことが、見つかります」

代わりなんて、ないことを知っていたのに。

序 了



5: ◆ty.IaxZULXr/ 2017/01/15(日) 19:21:00.02 ID:ruzwwM+J0



6/16(火)



高峯探偵事務所

高峯探偵事務所
高峯ビル3Fにある探偵事務所。防音でクライアントのプライベートをお守りします。

木場真奈美「帰ったぞ。のあはいる、な」

高峯のあ「きゃー!みくにゃん、こっち向いてぇー!にゃあ、にゃあー!」

高峯のあ
前川みくの熱狂的ファン。仕事場が防音なことをいいことに、ライブ映像で盛り上がっている。職業は探偵。

木場真奈美
高峯探偵事務所で助手を務めている。熱狂的ファンを生み出した原因でもあるので、強くは言わない。

真奈美「映像はこっちを向かないだろう……帰ったぞ!」

のあ「あら、止めるとしましょう。お帰りなさい、真奈美」

真奈美「防音はしっかりしているが、はしゃぎすぎるな」

のあ「はしゃぎ過ぎてはいないわ」

真奈美「声を聞く限りはそうとは思えん。さっきの声、どこから出てるんだ?」

のあ「私からよ」

真奈美「残念なことに知ってる。普段の声から想像できないだけだ」

のあ「女は化けるもの、そう古来から言われてるわ」

真奈美「こういう場面で使うのは一般的じゃないと思うがな」

のあ「何といっても、今日はみくにゃんの日だもの。テンションも高ぶるわ」

真奈美「6月16日のどこが、だ?雨も続いたジメジメな時期はイメージとも合わない」

のあ「真奈美もまだまだね。教えてあげましょう」

真奈美「……聞いておくとしよう」



6: ◆ty.IaxZULXr/ 2017/01/15(日) 19:22:22.63 ID:ruzwwM+J0

のあ「みくにゃんの誕生日は?」

真奈美「2月22日、にゃんにゃんにゃんで猫の日だ」

のあ「正解。よく知ってるわね」

真奈美「あれだけ聞かされればな。なんで、ラジオ音源をCD化してるんだ……」

のあ「みくを数字に直すと?」

真奈美「39か?」

のあ「つまり、2月22日、2+2+2=6。39、3×13、3+13=16。今日はみくにゃんと縁が深い日よ」

真奈美「こじつけが過ぎる」

のあ「はぁ……」

真奈美「どうした?」

のあ「一時停止して、眺めるみくにゃんもいいわね」

真奈美「はいはい。1時も過ぎてるが、お昼は食べたか?」

のあ「まだよ」

真奈美「チャーハンとパエリアなら、どっちがいい?」

のあ「ふむ……パエリアにしましょうか」

真奈美「佐久間君がレシピを教えてくれた。チャレンジしてみるとしよう」

ピンポーン……

真奈美「お客さんのようだ。お昼はまだでいいか?」

のあ「問題ないわ。真奈美、出て来てちょうだい」

真奈美「その前に」

のあ「何かしら」

真奈美「居間と兼用だが、ここは事務所だ」

のあ「それで?」

真奈美「法被を脱げ、ネコ耳をはずせ、サイリウムは隠せ」

のあ「そうね。片づけるてくるわ」

真奈美「のあ、もう一つ」

のあ「なにかしら」

真奈美「尻尾をつけるのは、やめておけ」

のあ「……」



7: ◆ty.IaxZULXr/ 2017/01/15(日) 19:23:13.59 ID:ruzwwM+J0



高峯探偵事務所

のあ「探偵の高峯です、はじめまして」

小室千奈美「小室千奈美よ。最初に確認してもいいかしら?」

小室千奈美
事前連絡もなく訪れた依頼人。趣味はダーツ。

のあ「金額の目安はこの票の通りよ。依頼内容を受けるかどうかは、相談ね」

千奈美「ネットで見た通り、この部屋の防音はしっかりしてるかしら?」

真奈美「さっき、下のカフェに寄っていたそうだ」

千奈美「13時過ぎ待っていたけど、余計なお世話だったかしら」

のあ「お気遣いは感謝するわ。真奈美が来てからで良かった」

真奈美「本当にな」

のあ「それで、上の階から音は聞こえたかしら?」

千奈美「いいえ。静かで良い喫茶店だったわ」

のあ「それが証明になるわ。防音性なら、保障する」

真奈美「カメラや録音機もない」

のあ「秘密にしたいのであれば、私と真奈美以外に漏らさないわ」

千奈美「それならいいわ。あと、金額は気にしてないわ」

のあ「糸目はつけないのかしら?」

千奈美「違うわ。私は話しをするだけよ」

真奈美「話をするだけ?」

千奈美「探偵さんに解決しようとしてもらおうとも思ってないの。私がしないといけないことは、自分でするわ」

のあ「事情がよくわからない」

千奈美「私はコインロッカーから白骨が見つかる事件が起こるから、見て来て報告しなさいと依頼されただけよ?」



8: ◆ty.IaxZULXr/ 2017/01/15(日) 19:24:36.33 ID:ruzwwM+J0

のあ「なら、自分で行ってくればいいじゃない」

千奈美「探偵さん、悪の組織とか興味ないかしら」

のあ「……どういうことかしら」

千奈美「事件は幾らでも起こるでしょ。でも、偶然の積み重ねとは思えないような」

真奈美「……」

のあ「例えば」

千奈美「事故じゃないんでしょう?」

のあ「何が」

千奈美「西園寺のお嬢さん」

真奈美「のあ」

のあ「報道は事故だと聞いたけれど。陰謀論に傾倒するのは危険よ」

千奈美「それを認めようが、どうか構わないわ。依頼された話を聞いて」

のあ「依頼者は誰かしら」

千奈美「わからない」

のあ「わからない?」

千奈美「依頼書はこれよ」

真奈美「便箋か?」

のあ「開けてもいいかしら」

千奈美「どうぞ」

のあ「真奈美、開けてちょうだい」

真奈美「了解」

のあ「どこでこれを?」

千奈美「行きつけのダーツ場があるの。そこで借りてるロッカーに入ってたわ」

真奈美「印刷されてるな」

のあ「真奈美、読んで」

真奈美「『白骨死体がコインロッカーに遺棄されている』」



9: ◆ty.IaxZULXr/ 2017/01/15(日) 19:25:49.98 ID:ruzwwM+J0

のあ「それだけ?」

真奈美「それだけだ。次の連絡があるのか?」

千奈美「続きはこっち。メールよ」

のあ「知り合いかしら」

千奈美「違うわ。どこから漏れたのかしらね」

のあ「幾らでも経路はあるわ。怪しいのは、そのダーツ場」

千奈美「問いただしたけど、犯人は従業員にはいなそうね」

のあ「部外者かもしれないわね」

真奈美「差出人は、明らかに捨てアドレス」

千奈美「内容は単純よ」

のあ「場所、報酬金額、連絡先、それと時間」

真奈美「場所、P/FOR/E?」

のあ「コインロッカーがあるような場所だとしたら」

千奈美「ライブハウスよ。ダーツ場の隣で、私も出入りしてるわ」

真奈美「報酬金額は」

千奈美「しばらくは遊んでいられそうな額ね」

のあ「連絡先は、このメールアドレス」

真奈美「時間は」

のあ「今週末まで、どういうことかしら?」

千奈美「ライブハウス、今週末で閉めるらしいわ。それまでに見つかるんじゃないかしら」

真奈美「最初から言っている通りか。事件は起こってないのか?」

千奈美「ええ。事件が起こる前に知らせないと意味ないじゃない」

のあ「つまり……」

千奈美「私は依頼者じゃないわ。犯人でも目撃者でもない」

のあ「事件は起こっていないなら、探偵の出る幕はないわ」

千奈美「だから、話をしに来ただけよ。私からして欲しいこともないわ」



10: ◆ty.IaxZULXr/ 2017/01/15(日) 19:27:06.90 ID:ruzwwM+J0

のあ「起こってる事件はある」

真奈美「君の件だ」

のあ「メールアドレスの送信元も警察なら、突き止められるでしょう」

千奈美「ふふっ、どうして警察関係者を信じれるの?」

のあ「……」

千奈美「いるらしいわよ、警察の中に内通者が」

真奈美「その情報、どこから仕入れた?」

千奈美「このメールアドレスから。直接は教えてくれないけれど、根も葉もないウワサを教えてくれるの」

のあ「つまり」

千奈美「警察には話さないで」

真奈美「だから、ここに来たのか」

千奈美「助手さんは察しが良くて、助かるわ」

のあ「話はわかったわ。だから、疑問があるの」

千奈美「どうして、私が話したか?」

のあ「そうよ。あなたに利益はないじゃない」

千奈美「私は大人しく従うような女じゃないの。依頼する相手を間違えたわね」

のあ「単なる天邪鬼」



11: ◆ty.IaxZULXr/ 2017/01/15(日) 19:28:29.21 ID:ruzwwM+J0

千奈美「私は、命令されるのが嫌いなの。偉そうに言わないで欲しいわ」

のあ「あなた、出世しないわよ。もしかしたら、早死にするわ」

千奈美「探偵さんみたいに?」

真奈美「不吉なことを、言うんじゃない」

千奈美「冗談よ。私は、報酬分ぐらいは仕事をしようと思ってるの。ダーツ用具も新調したいし」

のあ「こちらに任せると?」

千奈美「どうぞ。あなたがいようがいまいが、事件はそのうち起こるから」

のあ「……」

千奈美「話はおしまい。相談料、幾らかしら?」



12: ◆ty.IaxZULXr/ 2017/01/15(日) 19:29:39.47 ID:ruzwwM+J0
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