響「ウラジオストクのヴェールヌイ」第10話~最終話
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なんかぁ
むかしぃ
ソ連にぃ引き渡されたりとかして友達ができてぇ
そんでみんな艦娘に生まれ変わったからぁ
演習とかもあるしぃ
現代でも会いに行ってみたらぁ
陰謀が渦巻いてたんすよねぇ
<横須賀鎮守府>
響……みんなのべるぬい フリーダムじゃない
暁……みんなのレディー かわいい
雷……みんなのおかん 怒るときは怒る
電……みんなの末妹 ぷらずまじゃない
提督……みんなの司令官 割とずる賢い
<ロシア太平洋艦隊・ウラジオストク基地>
トビリシ……嚮導駆逐艦 音楽好きの寂しがり
カリーニン……巡洋艦 愛国心旺盛なバカ
ラーザリ……巡洋艦 リアリスト気取りの弱虫
モロトヴェッツ……潜水艦 強くて危ういシスコン
潜水艦娘A~D……モブ 名前表記にするタイミングを掴み損ねた
長官……ロシアの司令長官 割と外道
―日本司令船 甲板―
ザザァン…
ザザァン…
乗組員D「……だいぶ晴れ間が差してきたな」
乗組員E「ああ……暁ちゃんたち、大丈夫かねえ」
乗組員D「なぁに、レーダーには引っ掛かったんだ。提督の話じゃ、すぐ――」
パシュッ… カッ
乗組員D「……何の音だ?」
乗組員E「あ?」
乗組員D「聞こえただろ? 何かこう、金属が引っ掛かったみたいな……」
カカッ! カカカカカッ!
ヒュンヒュンヒュンカカッヒュンヒュゥンカカッカキッカキッ!!
乗組員C「――!?」
ギィッ! グイッグイッギシッギィッ
ドタン! ドタンドタッドタタタッドタッ!!
潜水X『――――』
潜水艦部隊『――――』ザッ!
乗組員D「……な……ぁ……?」
乗組員C「か……艦、娘……?」
潜水X『――――』チャキッ
乗組員C「き、機銃……!?」
乗組員D「このっ……てめえら、どこから上がってッ――」チャキッ
ダダダダダッ!
乗組員C「ひ……っ!?」
乗組員D「ッ――! い、威嚇か……!」
潜水X『日本司令船、乗組員に告ぐ!』
潜水X『犯罪防止および治安維持のための良心的判断により、
これよりお前たち全員を拘束する!』
潜水X『命が惜しければそのまま動くな! 抵抗は無用のものと知れ!』
乗組員C「……? あ……?」
潜水C『あ、あの……通じてないから、別の言葉で……』
潜水X『命令するな。部隊長は私だ』
潜水C『め、命令なんて、そんな』
潜水D『え゛っ!? じ、自分ですか!? ええと……』
潜水D「ゆ、ユーアーヴェリーデンジャラス! ソーデンジャラス!
サムハプニング、ユーウィルダイ!」
乗組員C「――!?」
潜水D「ユーマスト、ソークワイアット! アンド、ウィーウィルノットキルユー!
ドゥ……ドゥ―ユーアンダスタン!?」
乗組員D「……い、イエース」
潜水D「センキュー!」
乗組員C「センキューじゃねえよ……」ガタガタ
эп.10
Него слезам не верит
―奴は涙を信じない―
長官『――指令В、作戦行動開始』
その言葉を合図に、ハッチの外で水しぶきが立つ。
何かが飛び跳ね、格納庫へと入ってくる。
潜水艦部隊『…………』ザッ
モロトヴェッツ『――! あ、あなたたち……』
潜水Y『動くな!』チャキッ
潜水B『…………』チャキッ
響『……! マクレル……!?』
提督「いかん、ハッチを――!」
潜水Y『動くなと言っている、日本人!』チャキッ
提督「ッ……!」
跳び出してきたのは、ロシアの潜水艦たちだった。
手には機銃を携え、背中にはバックパック状の装備を身に着けている。
腰に巻かれたベルトの左右には、小さな錨がくっついていた。
艤装を身にまとっている。完全な戦闘態勢だった。
響「っ……!」
雷「なっ……なんなのっ、これ……!」
提督「…………」
相手の言う通りに、雷たちを促して格納庫の中央に集まる。
司令官は、しきりに通路へつながる扉の方を気にしている。
「…………」
「……はぁっ……はぁっ……」
響「――!」
提督「…………」
少しだけ開いた扉の陰から、誰かが息をひそめて、格納庫の様子を窺っていた。
きっと、さっき司令官と話していた、銃を持った水兵さんたちだ。
艤装をまとった艦娘はともかく、
生身の長官や随伴兵には、普通の銃が十分な脅威になる。
上手くいけば、この状況を打破できるかもしれない。
響(……でも、今は……)
けれど、今飛び出してきたとしても、
周囲を警戒している潜水艦たちに、すぐに気付かれてしまう。
きっと司令官も、合図を出す機会をじっと待っているのだろう。
長官【国に害なす者を捕らえただけだ。何の問題があるものか】
長官【貴様らには、ロシア連邦刑法典、第276条違反……スパイ行為の疑いがある】
提督【……明確な証拠があるとでも?】
長官【白々しいことを。我々を謀ろうとしたはずだ。モロトヴェッツを抱き込んでな】
提督【…………】
長官【疑わしきは逃さず、だ。
犯罪防止と治安維持のための良心的判断により、貴様ら全員を拘束する】
提督【何が良心だ……! あんたらに逮捕権なんぞ!】
長官【逮捕などしない。ただ、身動きを謹んでもらうだけだ】
提督【こ、このッ……!】
ゴルコヴェッツ『…………』
潜水B『……! ゴーシャさん!? その傷は――』
長官『その2隻も拘束しろ。スパイどもに身売りした反逆者だ』
潜水B『!?』
潜水Y『……了解』チャキッ
潜水B『そ、そんな……!』
見覚えのない潜水艦が、モロトヴェッツたちに近づいていく。
他の潜水艦たちも、倒れているモロトヴェッツを複雑な目で見ている。
――私たちから、注意が逸れていた。
提督「…………」コクン
「――っ!」ダッ
司令官が、扉に向かって小さくうなづく。
ライフルを構えた2人の水兵さんが、勢いよく扉を蹴り、声を上げた。
乗組員B【動くな! 全員、床に伏せ――】
ド ゴ ッ …
乗組員B「ぁ……――」ドサッ
響「……!?」
肉がひしゃげたような、鈍い音が響く。
声を上げようとした水兵さんが、うめき声を上げて倒れ伏した。
潜水Z『…………』
乗組員C「ひ……!」
扉の奥に、新手の潜水艦が立っていた。
いつの間にか、音もなく通路を進み、水兵さんたちの背後に迫っていたんだ。
乗組員C「こ……このアマっ!」チャキッ
提督「! よせっ、青島!」
潜水Z『…………』スッ
乗組員C「ッッ!」ダダダダッ
恐怖にひきつった表情を浮かべて、水兵さんが引き金を引く。
空気を震わせるような銃声。そして、弾けるような金属音。
潜水Z『…………』シュゥゥゥ
乗組員C「……っ……!」
相手は、艤装を身につけた艦娘だ。普通の銃など効くはずもない。
鉛玉を難なく跳ね返し、煩わしそうに身体を払った。
乗組員C「……ちくしょう……!」
潜水Z『……ふん!』ドゴッ!
乗組員C「ぁぐ……っ……――」
機銃のストックで、水兵さんの頭を殴りつける潜水艦。
そして、虫の息の水兵さん2人を、
襟首から強引につかみ、格納庫の中へ無造作に投げ入れた。
乗組員B「…………」ドサッ
乗組員C「が……っ……」ドサッ
提督「田宮……青島……っ!」
雷「いや、いやぁっ……!」
潜水Z『他の乗組員25名も、全員を拘束完了。甲板に集めて監視しております』
提督「……!」
長官『非常信号の類は?』
潜水Z『発信は確認されておりません。まず司令室を叩きましたので』
長官『……いいだろう。甲板の奴らから目を離すな』
潜水Z『はッ!』ビシッ
響『なんて……なんてことを……!』
長官『何を言う。兵器とは本来、この用途が正しいのだ』
長官『化け物との戦いにしか使えないなど……
貴様らが恣意的に決めた、勝手な条約のルールに過ぎん』
長官『初の対人作戦……多少は不安もあったが、予想以上の成果と言える』
長官『……ここまで相手が脆弱とは、少々計算違いだったがな』
提督「……