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「光の衝撃波」を初めて可視化。1000億FPSで捉えたフォトニック・マッハコーンはこんな形 - Engadget 日本版

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「光の衝撃波」を初めて可視化。1000億FPSで捉えたフォトニック・マッハコーンはこんな形

応用分野はなぜか生物学

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米セントルイス・ワシントン大学が超高速度カメラを用いた「光の衝撃波」の撮影に成功しました。衝撃波というと物体が音速を超えたときに発生する圧力波のこと。それが減衰して音に変化するとソニックブームと称する轟音となります。

一方、光の衝撃波とは、媒質中を進む光の速度が真空中での速度よりも遅くなる性質(例えば水中では光は3割ほど遅くなる)を利用し、それよりも高速で何らかのエネルギーが移動したときに発生するとされる現象。そして、光の衝撃波でも音の場合と同様、衝撃波が発生したときのような円錐形の「フォトニック・マッハコーン」を観測できると考えられていました。
 
戦闘機が音速を超えたときに発生する音の衝撃波

セントルイス・ワシントン大学は光の速度が、通過する媒質の屈折率によって低下する性質を利用して、レーザーパルスが通る道筋とその周囲の媒質の屈折率を変えることで、「光の衝撃波」を観測できると考えました。具体的には、ある媒質で満たされた中に「その媒質内の光速」以上で進む光を作り出そうとしたわけです。

まず、周囲を満たす媒質として酸化アルミニウムとシリコンゴムの粉末で満たしたプレート2つを作り、光の通路となるごくわずかな隙間を開けて配置します。そしてその通路にドライアイスの霧を充満させます。

次に通路の部分に緑色レーザーパルスを7ピコ秒(1兆分の7秒)だけ射出することで、レーザー光が擬似的に「プレート内の光速」を超えた速度で進む状況、つまり光の衝撃波が発生したとみなせる状況を作り出し、それを1000億FPSの性能を持つ超高速度カメラで撮影しました。このカメラは時間分解分光法の実験やLIDARシステムなどに使われる「ストリークカメラ」と呼ばれます。



ストリークカメラによって得られたのが冒頭と下の画像。

ご覧のとおり、ストリークカメラの画像には、超音速機が音速を超えたときに発生するのと同様の後退角が付いた光の伝播の様子が捉えられています。研究者は「この結果はシミュレーションによる理論的予測との一致性が高い」と評価しています。

意外なことに、研究者らはこの技術が生物学の分野で応用できると説明します。たとえば脳内でニューロンが信号としてつかう微弱な電位変化を追いかけることができれば、人が何かを考えているときに通信している部位がわかり、また心の病を持つ人の場合はどこの通信がどうなっているのかといった具体的な調査も可能になるとのこと。

もちろん、現状の装置をそのまま利用してできるわけではありませんが、研究者は「このシステムは脳内のトラフィックを見ることができるぐらいに高速であり、いつか脳の働きを解明する研究に応用できるようになることを願っている」としています。

ちなみに、衝撃波と言っても光の衝撃波の場合は音の衝撃波のような轟音は発生しません。また衝撃波の写真としてよく紹介される戦闘機の後方に白い膜のようなものが発生する現象はベイパーコーンと呼ばれ、空気圧の急激な変化によって瞬間的に水蒸気が可視化される現象です。
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