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1: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/01/26(木) 20:25:37.33 ID:SlAC4Vz/0
~大洗女子学園の場合~


みほ「それでは今日の練習を終了します。お疲れ様でした」

大洗勢一同「「お疲れ様でした!」」

優花里「いや~白熱した紅白戦でしたね」

華「ええ。張り切りすぎたせいか少々お腹が空いてしまいました」

沙織「じゃあこれからみんなでアイスでも食べに行く?」

麻子「行くぞ(即答)」スタスタ

みほ「麻子さん、急がなくてもアイスは逃げないよ」ニコニコ

梓「あの……すみません、お母さん――あっ」

みほ「あれ、澤さん?」

優季「あー梓ったら西住隊長のことお母さんって呼んでる~」

桂利奈「お子ちゃまだな~」

梓「も、もう~みんな茶化さないでよ!」

みほ「えっと……澤さん、何か私に用事かな?」

梓「あ、はい。さっきの紅白戦のことでいくつか質問したいことがあって……お時間いただけますか?」

みほ「うん、大丈夫だよ。着替えが済んだら中庭で待っててね」

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2: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/01/26(木) 20:26:44.08 ID:SlAC4Vz/0
沙織「みぽりん梓ちゃんにお母さんって呼ばれてたね」

麻子「そういえば以前にも呼び間違えられていた気がするぞ」

みほ「澤さん、私の前だとどうしても緊張しちゃうみたい。お互いもう少し気軽に話せればいいんだけど…」

優花里「何度もお母さんと言い間違ってしまうことにも何か理由があるかもしれませんよ。もしや深層心理的な…」

華「もしかすると澤さんのお母様とみほさんには、どことなく似た部分があるのかもしれませんね」

沙織「よし、なら今日はちょっとお母さんっぽく接してみようよ。うまくいけば距離を縮められるかもしれないし」

みほ「う~ん……うまくできるかわからないけど、沙織さんが言うならやってみようかな。それじゃあみんな、また後でね」


沙織「ファイトだよみぽりん。有望な後輩のためだもんね」

麻子「沙織……余計なこと言ったかもしれないぞ」

沙織「え? なんでよ」

麻子「西住さんがお母さんらしく振る舞うということが何を意味するか、お前はわかってない気がする」

優花里「西住殿の思うお母さん像……まさか」

華「……大丈夫でしょうか」

3: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/01/26(木) 20:28:04.15 ID:SlAC4Vz/0
――中庭


梓「西住隊長、さっきはごめんなさい。みんなの前でお母さんなんて呼んじゃって…」

みほ「ううん、いいの気にしないで。それより質問って何かな」

梓「はい。さっきの紅白戦で私たちがカメさんチームを倒したときのことなんですけど…」

みほ「確か、奇襲を受けて万事休すの状況だったのを河嶋さんが砲撃を外したことで難を逃れ、逆にその隙を突いて撃破したんだよね」

梓「そうです。本来なら負けていた場面だったので、その原因を有耶無耶にしたくないんです」

梓「だけど結果的に勝ててしまったことで、ウサギチームのみんなはすっかり浮かれちゃって…」

みほ「そっか。でも反省点を振り返る姿勢はとても大事だよ。澤さんもすっかり一人前の戦車道選手だね」

梓「いえそんな……でもやっぱり、西住隊長に褒められると嬉しいな」

みほ「じゃあ今から二人であのときの状況をできるだけ忠実に再現してみよっか」

梓「はい、お願いします! 私、ノートと小さいホワイトボードを持ってきたんで、これでコースと戦車を再現して――」

みほ「ううん。せっかくだから実際に戦車に乗ってやってみようよ。ヘッツァーの操縦と砲撃なら私が一人でするし」

梓「え?」

4: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/01/26(木) 20:29:13.24 ID:SlAC4Vz/0
みほ「他のポジションの子の気持ちを理解することも車長に必要なスキルだよ。あ、もちろん実弾を使うからね」

梓「わ、私が一人でM3を動かすんですか?」

みほ「大丈夫、澤さんならきっとできるよ。私も昔よくお母さんと一緒にこんな風に特訓してたから」

梓「そんな……」

梓(でも、せっかく西住隊長が直接教えてくれるんだから、期待に応えなきゃ)

梓「……わかりました。やります」

みほ「澤さんが私を撃破できるまでずっと付き合ってあげるよ。一緒に頑張ろうね」ニコッ


華「何やら雲行きが怪しいですね」

沙織「いくらなんでも一人で戦車を動かすなんて無茶だよぉ」

優花里「ですがこれが西住流家元直伝の教えなのでしょう……難しい状況ですが、一対一で特訓を受けられる澤殿が羨ましいです」

麻子「だが何かあってからでは遅い。一応私たちもⅣ号でスタンバイしておくぞ」

5: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/01/26(木) 20:30:08.45 ID:SlAC4Vz/0
みほ「どうしたの澤さん、そんなんじゃいつまで経っても終わらないよ」ドカーン ドカーン

梓「ふぇぇ……躱すだけでも精一杯なのに、隙を突いて砲撃なんて無理ですよ…」

みほ「私だって条件は同じです。弱音を吐く時間があるなら、どんどん反撃してきてください」

梓「うぅっ……こんなのいつもの西住隊長じゃないよ…」


沙織「はいそこまでだよみぽりん! 華、お願い」

華「ええ。失礼します、みほさん」ドカーン! シュパッ

みほ「はっ……あれ? みんなどうしてここに?」

沙織「どうしたもこうしたもないよ。梓ちゃんこんなに怖がってるじゃない」

梓「うぅ……武部先輩~」

みほ「あぁっ、ごめん澤さん。お母さんみたいにしなきゃって思ってたらつい…」

優花里「冷泉殿の言うとおり、Ⅳ号でスタンバイしておいて正解でしたね」

華「では次回は私がみほさんに代わって澤さんの特訓のお相手をしましょうか。気分転換に生け花でも楽しみつつ…」

麻子「それもやめておいた方が…」

6: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/01/26(木) 20:30:57.73 ID:SlAC4Vz/0
~聖グロリアーナ女学院の場合~


オレンジペコ(はぁ……今日の模擬戦はやけに発砲機会が多かったなぁ。さすがに筋肉痛が…)

ダージリン「お疲れ様だったわねペコ。疲れたあなたにこんな言葉を贈るわ」

オレンジペコ(……正直今は放っておいて欲しいな)

ダージリン「こころよき疲れなるかな 息もつかず 仕事をしたる後のこの疲れ」

オレンジペコ「石川啄木ですね。お言葉ですがお母様……あ、いえ失礼しましたダージリン様」

ダージリン「え……ちょっ、ペコ、今私のことをお母様って……」ソワソワ

オレンジペコ(しまった、また面倒くさいことになる)

ダージリン「いいのよペコ。疲れているなら無理をしてはいけないわ。さあ、私の膝の上でゆっくりお休みなさい」

オレンジペコ(どうしよう。ご厚意を無為にするわけにもいかないし、断ったらもっと面倒なことになりそう…)

オレンジペコ「わかりました。それではお言葉に甘えさせていただきます、ダージリン様」

ダージリン「あら、ダージリンではないわ。お母様でしょう?」

オレンジペコ「は? はい、お母様…(私何してるんだろう…)」

7: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/01/26(木) 20:31:53.31 ID:SlAC4Vz/0
ダージリン「うふふ、こんなとき子守唄とか歌えばいいのかしら」トントン

オレンジペコ(とりあえず誰にも見られずに済んで助かった。アッサム様がローズヒップさんの補習に付き合ってくれたおかげね)

ダージリン「Who killed Cock Robin? I, said the Sparrow~♪」

オレンジペコ(なんでよりによってそんな物騒な唄を……でも、本当に眠くなってきた…)ボンヤリ

オレンジペコ「……」スヤスヤ

コンコン ガチャ

ルクリリ「失礼します、ダージリン様――って、はぁ!? 何これどうなってるの!?」

ダージリン「静かになさいルクリリ。ペコが起きてしまうでしょ」トントン

ルクリリ「オホン、申し訳ございません。えっと……これは一体どういう状況でしょうか」

ダージリン「母親が娘を寝かしつけることに理由が必要かしら?」

ルクリリ「え……?」

オレンジペコ「ムニャ……はっ、ルクリリさん……!」

ルクリリ「ペコ……私は何も見ていないわ。そ、それではごゆっくりどうぞ」ソソクサ

オレンジペコ(うわああ絶対誤解されたあああ! 待ってえええええ)

8: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/01/26(木) 20:32:29.77 ID:SlAC4Vz/0
~アンツィオ高校の場合~


アンチョビ「さーて練習も終わったし新刊の恋愛小説の続きをゆっくり読むとするか」

アンチョビ「えーと…幼馴染の男が部活の合宿でいない間に、金持ちイケメンがアプローチを仕掛けてきたんだったな…」パラパラ

アンチョビ「ちょっ、そんな……情熱的なのは好きだが、結構激しいな……はわわ」ドキドキ

ガチャ

ペパロニ「母ちゃーん! じゃなくて姐さーん!」

アンチョビ「わあーっ! いきなり入って来るなノックぐらいしろ! それに私はお前の母親じゃなーい!」

ペパロニ「まあまあ細かいことは置いといて……見てくださいこの新作パスタ! 早速姐さんに試食してもらいたくて――」

アンチョビ「ちょっと待て。お前顔が小麦粉だらけだぞ。タオル用意するからちゃんと拭いとけ。試食はその後だ」

ペパロニ「姐さんいちいち口うるさくてマジで母ちゃんみたいっスね~」

アンチョビ「あー床に小麦粉落ちてるじゃないか、雑巾雑巾…」

ペパロニ「あれ、姐さんまた恋愛小説読んでるんスか? 相変わらず乙女っスね~」

アンチョビ「だあああっ、それサイン本なんだから絶対小麦粉つけるなよ」

9: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/01/26(木) 20:33:21.55 ID:SlAC4Vz/0
ペパロニ「ちょ、姐さんこの作者のサイン会まで行っちゃうほどのファンなんスか。超気合入ってますね~」

ペパロニ「やっぱ姐さんは母ちゃんじゃなくて姐さんっスね。大人はこんな子供騙しの小説でキュンキュンしませんもんね」

アンチョビ「お前なぁ……まあいい。さっさとこのタオルで顔拭け」

ペパロニ「あざっす~……それで、新作パスタの味はどうっスか?」

アンチョビ「ふむ。相変わらず見事な出来映えだ。このセンスが戦車道にも活かされたら文句はないんだが…」

ペパロニ「あーこのタオル超柔らかいっスね。柔軟剤使ってるんスか?」モフモフ

アンチョビ「自分から尋ねておいて話聞いてないし……しっかりしてくれよ。来年はそれこそお前がみんなの母親代わりなんだぞ?」

ペパロニ「でもそういう母ちゃん的な役割はどちらかというとカルパッチョの方が似合ってますよね?」

アンチョビ「それは確かにそうだが」

ペパロニ「思ったんスけど、姐さんが卒業しちゃったら、あたしら姐さんのことなんて呼べばいいんスかね?」

アンチョビ「そうだなぁ。お前たちに役職を引き継ぐ以上、これまでどおりドゥーチェと呼ばせるわけにはいかないからな…」

ペパロニ「じゃあみんなの母親代わりであるあたしとカルパッチョの母ちゃんってことで、グランマンマってのはどうっスか?」

アンチョビ「なんでそうなる!!」

10: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/01/26(木) 20:34:13.93 ID:SlAC4Vz/0
~知波単学園の場合~


西「では次の練習試合に向けて作戦会議を始める。各員、ぜひ忌憚のない意見を出して欲しい」

玉田「やはりここは全車での一斉突撃しかないかと!」

細見「私も同意見です! みんなも同じだよな!」

池田・名倉・寺本・浜田「「もちろん! 突撃以外考えられません!」」


とーつげき! とーつげき! とーつげき!


西「……わかった。やはり次の試合も突撃で――」

ガタッ

福田「恐れながら申し上げますお母様!」

シーン…

西「はて? お母様とは??」

福田「……はわわっ、し、失礼致しました! この福田、なんたるご無礼を…」

11: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/01/26(木) 20:34:54.72 ID:SlAC4Vz/0
池田「福田ァ!」名倉「何を言っているんだ福田ァ!」寺本「そんな間違いする奴があるか福田ァ!」

福田「も、申し訳ございませんッ!!」

池田「かわいいぞ福田ァ!」名倉「天使か福田ァ!」寺本「その真っ赤に染まった顔をバッチリ収めてやるぞ福田ァ!」カシャカシャ

玉田「お菓子食べるか福田ァ!」

細見「玉子ボーロだぞ福田ァ!」


ふ・く・だ! ふ・く・だ! ふ・く・だ!


西「なんてことだ。福田の言い間違いによってみんなの母性が覚醒してしまったというのか」

福田「ふええ……西隊長、どうすれば…」

西「なるほど……これは戦術に応用できるかもしれないぞ」

福田「え?」

西「よし。次の試合のフラッグ車は福田車に担当してもらう。総員、極力突撃を控え全力でフラッグ車を守るように!」

12: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/01/26(木) 20:35:34.80 ID:SlAC4Vz/0
――そして練習試合


西「3時方向より敵襲! 各車応戦せよ!」

細見「おのれ、フラッグ車には絶対に触れさせんぞ!」

玉田「しかしこの距離では敵車輌の装甲を貫くことはできない。やはり距離を詰めてから弱点を射抜くしか…」

ドガーン!

池田「池田車、左右履帯破損! しかし砲塔はまだ生きています。西隊長、皆に後退的前進の指示を…!」

西「池田……ダメだ。正面からの撃ち合いだというのに、仲間を見捨てて敵に背中を向けるなどできない…!」

池田「いいえ。今フラッグ車と共に後退すれば、敵が前進し我々の射程に入ります。そのわずかな可能性に賭けたいのです」

名倉「西隊長、我々も池田車と共に残ります。どうかフラッグ車を……福田をお願いします」

池田「福田、勝って喜ぶお前の姿を間近で見届けたかった…」

名倉「良い物書きになれよ、福田…」


池田・名倉「「うおおおお我らが愛すべき後輩福田万歳!!!」」ドカーン!

13: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/01/26(木) 20:36:22.34 ID:SlAC4Vz/0
西「池田、名倉……」

細見「ぐっ、なんてことだ……」

玉田「いや待て……敵2輌から白旗が上がっている。池田車と名倉車が道連れにしたんだ」

西「なんと、あの状況からこれだけの戦果を挙げるとは……これで相手は残り5輌、うち1輌がフラッグ車か」

細見「味方の健闘を無駄にはできませんね」

玉田「ああ。ここは行くしかないな」

西「玉田、細見……まさか」

玉田「私と細見で突撃を敢行します。池田たちが1輌ずつ倒したのです。私は最低でも2輌は倒してみせましょう」

細見「そうすれば敵は残り3輌……護衛が薄くなったフラッグ車に私が接近し、この身に代えてでも勝利の一撃を見舞います」

玉田「さあ、泣くな福田。かわいい顔が台無しじゃないか」

細見「目を閉じれば、美味しそうに日の丸弁当を食べるお前の笑顔が浮かぶ……それだけで私は幸せだ」


玉田・細見「「うおおおお大学選抜戦のときのプラウダの人たちってこんな気持ちだったのかなあああああ」」ドカーン!

14: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/01/26(木) 20:37:04.11 ID:SlAC4Vz/0
審判「マジノ女学院、隊長の体調不良により降伏! よって知波単学園の勝利!!」

エクレール「何あのクサい茶番……おろろろろろ」トシャァァ


西「う~ん、なんだかんだでやはり火力が足りなかったか」

名倉「私が突撃した際にマジノの2輌が白旗を揚げたのも、急な突撃に驚いて同士討ちしたのが原因みたいですよ」

玉田「なら結局戦果は序盤に倒した3輌だけか。士気はかつてないほどに高まっていたんだがなぁ」

細見「いやでも士気だけならいつも高い気が…」

寺本「あっ確かに」


ワハハハハ…


福田「……」スッ

ハ号砲手「どうしたの福ちゃん、眼鏡外して髪もほどいちゃって」

福田「もう誰にも頼らないであります。司馬遼太郎の名に誓い、すべての馬鹿に突撃を」

15: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/01/26(木) 20:37:45.79 ID:SlAC4Vz/0
~継続高校の場合~


――石川県某所の森


ミッコ「なあお母さーん……あっ」

ミカ「……」ポロローン

ミッコ(ヤバい。ミカのこと間違えてお母さんって呼んじゃった。絶対いじられる。どうしよう)

ミカ「ミッコ、君は今、私をお母さんと呼んだね」ポロローン

ミッコ「は、はあ? 呼んでないし。風の読み間違いじゃないのか?」

ミカ「風は言っているよ。ミッコは私をお母さんと呼んだ。そしてそのことをとても恥ずかしがっている、とね」

ミカ「でも別に恥ずかしがる必要なんてないんじゃないかな。ミッコは無意識に私に母性を見出していた。それでいいじゃないか」

ミカ「ほら聞こえるかい? 風も木も小鳥たちも言っているよ。甘えん坊さんなミッコかわいい、とね」

ミッコ(ぐぬぬ……なんたる屈辱。しばらくこの調子でいじられ続けるのか……)

アキ「二人とも、ご飯出来たよ~」

ミッコ(そうだ。こうなったらこの手を使うしかない)

16: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/01/26(木) 20:38:35.54 ID:SlAC4Vz/0
ミッコ「お、おいしそうだな~。ありがとうお母さん」

アキ「え?」

ミッコ「残念だったねミカ。あたしがお母さんと呼んだ相手はアキだったんだよ」

アキ「ちょっと、どういうことよ」ボソボソ

ミッコ「ごめん。実はかくかくしかじかで……ほとぼりが冷めるまで付き合って欲しいんだ」ボソボソ

アキ「もーう。くだらないことで世話かけさせないでよね…」ボソボソ


ミッコ「まあアキはいつもこうしておいしいご飯を作ってくれるわけだから、実質お母さんみたいなもんでしょ」

アキ「その点については否定しないけど…」

ミッコ「じゃあもうそういうことにしといてよ。ね、お母さん」

アキ「勝手なことを言う子供ね」


ミカ「……」モグモグ

ミカ(これはこれでアリだね)ポロローン

17: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/01/26(木) 20:39:37.99 ID:SlAC4Vz/0
~プラウダ高校の場合~


カチューシャ「というわけで今説明したとおりの隊列で前進し、逐次私の指示で進行方向を変えるから、しっかり着いてきなさい」

プラウダ勢一同「Да」「んДа」

カチューシャ「それじゃあ何か質問がある人」

ニーナ「はい、かっちゃ」

カチューシャ「え?」

ニーナ「え?」

アリーナ「ちょっ、ニーナ……嘘だべ?」プルプル


「おいおいニーナがちびっ子隊長のことさかっちゃ(お母さん)って呼んだべ」「あんら~」「ほんにドジだなぁ」ザワザワ クスクス

「いぐらニーナでもその間違いはちょっと…」「カヂューシャ様、4歳なのに…」「ママは4歳」ザワザワ クスクス


ニーナ「」

カチューシャ「ちょっとあなたたち笑ってるんじゃないわよ! それから私は今年で18歳! 4歳じゃないって何度言えばわかるのよ!」

18: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/01/26(木) 20:40:25.54 ID:SlAC4Vz/0
クラーラ「なるほど。これが世に言う『バブみ』という感情ですか(ロシア語)」

ノンナ「同志クラーラ、また余計な日本語を覚えましたね(ロシア語)」

クラーラ「失礼しました。ですが見てください。お母さんと言われてちょっと嬉しそうなカチューシャ様のお姿を(ロシア語)」

ノンナ「ええ。気恥ずかしさとまんざらでもない感じの入り混じった複雑な表情……素晴らしいです(ロシア語)」

クラーラ「ニーナのドジっ子ぶりもたまには役に立つものですね(ロシア語)」

ノンナ「こんなとき日本語ではこのように表現します『グッジョブベリーナイス』と(ロシア語)」

クラーラ「覚えておきますが、それ発音がカタカナなだけで本来は英語ですよね(ロシア語)」

カチューシャ「だからあなたたちは日本語で話しなさいよ!!」


カチューシャ「もういいわ。ニーナ以外みんなシベリア送りよ! もちろんノンナもクラーラもね!」

ノンナ「そうですか」

クラーラ「残念ですが仕方ありませんね」

19: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/01/26(木) 20:41:25.85 ID:SlAC4Vz/0
ニーナ「あ、あのぉカヂューシャ様……みんなシベリア送りってごどは、今日の練習はどうするんですか?」

カチューシャ「人数が足りなさすぎるし、お休みにするしかないわね」

ニーナ「そんじゃわだすはもう帰っていいんですか?」

カチューシャ「いいえ。優秀な隊員であるあなたには私がこれからご褒美をあげるわ」

ニーナ「え?」

カチューシャ「ニーナ……あなたは寮生活でご家族に会えない寂しさをずっと胸に抱え込んでたのね。心が広い私にはよくわかるわ」


「隊長も寂しいんだ」「寂しいんだべ」「だはんで毎日ノンナさんに甘えてんだな」「んだなぁ」


カチューシャ「というわけで今日は私があなたのママになってあげるわ」エッヘン

ニーナ(ええーーっ)


「おままごとか」「おままごとだじゃ」「まあ4歳だし当然だじゃ」「んだなぁ」

20: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/01/26(木) 20:42:05.28 ID:SlAC4Vz/0
カチューシャ「戦車道のことなら何でも教えてあげるし、夕食も作ってあげるし、寝る前には子守唄も歌ってあげるわ」

ニーナ「そ、そこまでする必要ねぇですよ。だってわだすもう高校生ですし…」

カチューシャ「そういえばあなた、シャンプーハットを被らなきゃ頭を洗えないんだったわよね。なら私が洗ってあげるわ」

ニーナ(しまった、痛いとこ突かれたべ――!!)

カチューシャ「さあニーナ、今日は私を“かっちゃ”だと思ってうーんと甘えていいのよ?」ナデナデ

ノンナ・クラーラ「……」ゴゴゴゴゴ

ニーナ「ひぃっ!」ビクッ

クラーラ「こんなの不公平です。私もカチューシャママにバブみを感じてオギャりたいのに(ロシア語)」

ノンナ「まあ決まってしまった以上は仕方ありません。同志ニーナ、せいぜいカチューシャの母性をいい感じに引き出してください」

ノンナ「もしも途中で逃げ出したり、カチューシャの機嫌を損ねるようなことをすれば……わかっていますね」

ニーナ(うぅ、シベリアよりこっちのが罰ゲームだべ…)

21: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/01/26(木) 20:42:59.52 ID:SlAC4Vz/0
――日の当たらない教室(通称シベリア)


アリーナ(……かつてこらほどシベリアが盛り上がってたごどがあっただろうか)

カチューシャ(監視カメラ映像)『ボルシチを作ったわよ。さあ、たんと召し上がれ♪ お味はどうかしら?』

ニーナ(監視カメラ映像)『はい。おいしいです、かっちゃ……(うえっ、なしてボルシチに南部せんべいが入ってるだか…)』

カチューシャ『良かった。せんべい汁風に仕上げてみて正解だったようね』

アリーナ(ニーナは下北の子だからせんべい汁にはさほど思い入れねぇはずなんだがなぁ…)

ノンナ「見てください。我が子の好みに合わせて料理をアレンジするとは、さすがカチューシャです(ロシア語)」

クラーラ「なんと温かな母性でしょう。こんなに真心込めた料理をいただけるなんて、ニーナは幸せ者ですね(ロシア語)」

ノンナ「慈愛に満ちた優しい微笑み……新鮮です。ニーナに独占させるにはもったいないです(ロシア語)」

クラーラ「しかもこの後一緒にお風呂に入って髪を洗ってもらえるんでしょう?(ロシア語)」

ノンナ「憎らしいですね。私もカチューシャが思わず母性を覚醒させてしまうような容姿であったなら…(ロシア語)」

クラーラ「ええ。我々がカチューシャ様をうっかりママと呼んだところで結果は知れていますからね(ロシア語)」

ノンナ「背が高くて得したことなんて一つもありません。ああ、小さくなりたい。あなたもそう思いますよね、アリーナ」

アリーナ「え? あ、はい……」


注:アリーナはチビではない(重要な情報)

22: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/01/26(木) 20:43:43.52 ID:SlAC4Vz/0
~サンダース大附属高校の場合~


アリサ(ふぅ~……徹夜での資料作りもようやく終わりそう。しかしケイ隊長も人使い荒いなぁ…)カタカタ

アリサ(だけど来年は私が隊長なんだから、この程度でへこたれてもいられないわ。ちゃんと期待に応えなきゃ…)カタカタ

コンコン ガチャ

ケイ「Hey アリサ、明日のブリーフィングに使う資料出してくれた?」

アリサ「イエスマム、もうすぐ終わります。このくらい私にかかれば楽勝ですよ」カタカタ

ケイ「Wow! エクセレントね。ならついでに、この書類も全部追加で電子化しといてもらえる? どうしても必要なのよね」ドッサリ

アリサ「えっ……わかりました(嘘でしょ…)」

ケイ「それじゃあよろしくね。Bye~(チュッ」

バタン

アリサ「ガッデム…」ガクッ

アリサ「もうダメだわ……やっぱり私、隊長なんて向いてないのかな」

23: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/01/26(木) 20:44:26.85 ID:SlAC4Vz/0
ケイ「Hi ナオミ」

ナオミ「やあケイ。そんなにお菓子抱えてどうしたの。さすがに一人で食べるわけじゃないよね?」

ケイ「アリサへの差し入れよ。かわいい顔に隈作って頑張ってくれてたから、ご褒美にと思って」

ナオミ「隈って……まさかアリサの奴、また徹夜したの? 重要な資料の作成とはいえ、働きすぎじゃない?」

ケイ「うん。それは私も気になってたんだけど、さっき様子を見に行ったとき声聞いたら元気そうだったのよね」

ナオミ「なら差し入れついでに私もちょっと顔出すよ。おせっかいだって追い返されるかもしれないけど」

ケイ「もちろん大歓迎よ。追い返されるくらい元気なら、私も安心できるし」

コンコン

ケイ「アリサ、差し入れ持ってきたわよ」ガチャ

ナオミ「アリサ?」

アリサ「」

ナオミ「アリサ! ちょ、どうした――」

アリサ「スヤスヤ…」

ナオミ「なんだ。寝てただけか。脅かさないでくれよ…」

24: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/01/26(木) 20:45:07.30 ID:SlAC4Vz/0
ケイ「ごめんねアリサ。ちょっと頑張らせすぎちゃったわね」

ナオミ「まったく、本当にキツいときは無理せず素直に言えっていつも注意してるんだけど…」

ケイ「でもそこがアリサのかわいいところよ」

ナオミ「仕方ない。残りの作業は私たちで手分けしてやろうか」

ケイ「明日の演習には、久しぶりにコピーした紙の資料を使うことになりそうね」

ナオミ「たまにはいいさ」

アリサ「……ママ」

ケイ・ナオミ「え?」

アリサ「ムニャ……ママ…」

ナオミ「…寝言か」

ケイ「アリサ、マムのことを思い出してるのかしら」

ナオミ「みたいだね」


注:アリサは父子家庭

25: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/01/26(木) 20:45:55.64 ID:SlAC4Vz/0
ケイ「ねえナオミ、アリサの好物って確かミートボールスパゲッティだったわよね」(←注:これは事実)

ナオミ「ああ。ダディの得意料理みたいだけど、元を辿ればマムの懐かしの味らしいよ」(←注:これは想像)

ケイ「なら善は急げね」ピッピッ

ケイ「ハロー私よ。悪いんだけど、今すぐ家庭科室を借りられるよう手配してもらえないかしら――」


アリサ「ムニャ……はっ、いけない。私ったら寝ちゃってたのね」

アリサ「あれ? 資料が全部紙でコピーして積んである。しかも一人分ずつホチキスで留めてあるし。だけどこの留め方雑じゃない?」

アリサ「誰がやったかはだいたい想像つくけど、それよりこの匂いは……」


メモ
〈お疲れ様。私からの出前よ。ゆっくり召し上がれ☆chu KEI〉

〈届けてあげたわ NAOMI〉


アリサ「……フフッ、何これ。挽肉はバラバラだしトマトは多すぎだし……これじゃあ全然ママの味には及ばないわね」

アリサ「まったく、今度は私が直々にアドバイスしてやらなきゃ」モグモグ

アリサ「……ありがとう、マム」

26: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/01/26(木) 20:46:43.07 ID:SlAC4Vz/0
~黒森峰女学園の場合~


まほ「では小隊全速前進。川岸に達したら副隊長の指示の下砲撃を開始するように。頼んだぞ、エリカ」

エリカ「了解です。お母様!」

まほ「は?」

エリカ「あっ///」


「うわぁまた副隊長の悪い癖が」「お母様はさすがにないでしょ」「模擬戦の最中に何考えてるんだか」「しょんなかたい」ザワザワ


エリカ「コラ! あなたたち黙りなさい! 副隊長命令よ!」

小梅「でもエリカさん、言っちゃったことはもう取り消せないし、覚悟を決めて思う存分隊長に甘えてみたらどうですか?」

エリカ「なんでそういう発想になるのよ!」

ダージリン「聞きましたわまほさん」

カチューシャ「あなたもママになったなんて、奇遇ね!」

エリカ「あんたらどこから湧いて出た!」

27: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/01/26(木) 20:47:21.22 ID:SlAC4Vz/0
ダージリン「まほさん、わたくし以前からあなたは隊員に対して少々無愛想すぎると思っていたのよ」

カチューシャ「隊長なら隊長らしく、あなたに甘えたがっているエリーシャの気持ちをしっかり受け止めてあげるべきよ」

ダージリン・カチューシャ「「ほら、こんな風に」」ナデナデ

オレンジペコ「お母様……私お母様の子守唄が大好きです(白目)」

ニーナ「かっちゃ……おらシャンプー怖ぇじゃ……優しく洗ってけろ…(白目)」

エリカ(ヒィィこいつら何してるの馬鹿じゃないの)

みほ「そうだよ、お姉ちゃん。勇気を出して」

まほ「みほ……!」

エリカ「ゲッなんであんたまで」

みほ「大丈夫。私にだってできたんだから、お姉ちゃんにもきっとできるよ。ね、梓ちゃん♪」

梓「……お母さん、ごめんなさい……私、良い子になるから……戦車道頑張るから、怒らないで……(光のない黒目)」フルフル

エリカ(ギャアアアアアアアアアアアアア!!!)

28: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/01/26(木) 20:48:08.26 ID:SlAC4Vz/0
まほ「みほ……今のお前はなんだかお母様そっくりに思える。すっかり先を越されてしまったようだな」

カチューシャ「今からでも遅くないわよ」

ダージリン「さあまほさん、私たちとママ友になりましょう」

まほ「そうだな。西住流に逃げるという選択肢はない。全力で邁進するまでだ」

まほ「というわけでエリカ、今日から私はお前を娘だと思って鍛え上げる。容赦はしないぞ」

エリカ「や、やめて……ああ助けてママ」

まほ「何を言っている。ママは私だ。あとママではなくお母様と呼べ。軟弱な精神は西住流には不要だ。猛省しろ」

エリカ「」

ダージリン「良かったわねペコ、お友達ができたわよ」

カチューシャ「さあニーナ、挨拶してらっしゃい」

オレンジペコ・ニーナ「エリカちゃんいっしょにあそびましょ(白目)」グイグイ

エリカ「いでででででで思考が退行しても腕力はそのままってわけ!?」

梓「わあっ、エリカちゃんってボコみたいでかわいいね、お母さん!(光のない黒目)」

みほ「そうだね、梓ちゃん♪」

29: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/01/26(木) 20:48:45.56 ID:SlAC4Vz/0
ミカ「ごらん、母性というものをはき違えると、子供も母親自身も決して幸せにはなれないのさ」ポロローン

アキ「とかなんとか言って、この混乱に乗じて戦車を拝借しに来ただけのくせに」

ミッコ「いやぁ大漁大漁、キングタイガーおまたせー」ギュラギュラギュラ

ミカ「やあミッコ。一仕事終えて疲れたろう。これをお食べ。さっき長崎から風に乗って運ばれてきたものだよ」

ミッコ「わぁミートボールスパゲッティじゃないか! いっただっきまーす♪」

ミカ「待った。ここは私があーんして食べさせてあげよう」

ミッコ「やだよ! そんな恥ずかしいことできるわけないじゃないか!」

ミカ「そうだね。ではアキにしてもらえばいいさ。アキはお母さんみたいなもの――先日ミッコ自身が言っていた言葉だよ」

ミッコ(う、しまった…!)

ミカ「さあアキ、どうぞ」

アキ「言われるがまま受け取ってしまった」

30: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/01/26(木) 20:49:22.29 ID:SlAC4Vz/0
ミッコ「な、なあアキ……別にやりたくないなら、やらなくていいんだぞ」フルフル

アキ(……嫌がってるミッコ、ちょっとかわいいかも)キューン

アキ「ほらミッコちゃん、あーん」

ミッコ「だああああやだああああああああ」

アキ「こらっ、ちゃんと座って食べなきゃダメでしょ。めっ!」

ミッコ「放してくれえええ」


ミカ「……」

ミカ(これは完全にアリだね)ポロローン




おわり