700 名前:雨の日だから700ゲトー![sage] 投稿日:02/12/21(土) 16:32 ID:dSVWeDZt [2/3]
 一昔前、私がアメリカに留学していたときのこと。
半年ぐらい経って、ホームシックにかかったのか鬱々とした日を送っていました。
うまく説明できないけど、すごい孤独感を感じたんですよ。
人ごみの中にあっても自分は一人ぼっち、というような。
心の中に壁ができて、外と付き合う自分と内面にこもる自分、というように
自分自身が二つに分割されてしまった気分になって落ち込みました。
外面はニコニコしていてちゃんと人付き合いもできるんですけど、
そうしている最中にも内面の自分は泣いている、と言えばわかりやすでしょうか。
多分、変に気張っていたんでしょうね。
 そんな情況のところに、日本の友人から手紙とカセットテープが届きました。
手紙の内容は「また喧嘩しちゃったよ」とか「飲み屋のおねーちゃんが
こっちを向いてくれなくて」とか「単車の調子が悪い」とか、そんな雑談めいた
ことばかりが書き連ねてあって、なぜか最後に血判が押してありました。
「なんで血判?」
と疑問だったんだけど、普段絶対に手紙なんか書かないような友人だったので
そこまで思いつめて(というか意気込んで)この手紙書いたのかな、と思って
嬉しくなるやら、笑ってしまうやら。

 同封されてきた7、8本のテープをひょいと見ると、タイトルも何も書いてなくて
何が録音されているのかわかりません。無作為に一本ケースから取り出して
デッキに入れると、聞こえてきたのはクレージーキャッツ、植木等の歌声。
「こいつ、受け狙いできたな」
と思って、その日は全部聞かずに寝てしまいました。
で、それからむちゃくちゃ忙しくなって、テープはほったらかし。


701 名前:雨の日だから701ゲトー![] 投稿日:02/12/21(土) 16:35 ID:dSVWeDZt [3/3]
 しばらくしてぽかっと暇ができて、家で鬱々としながら聞くよりは、と思って
テープを車に積んで、隣の州に意味もなくドライブに出かけました。
テープにはクレージーキャッツの他、演歌とか歌謡曲(当時はJ-POPなんて
言葉はありませんでした)とか童謡とかアニメソングとか、
なんかもう、どうしてこういうジャンルの選び方をするのかというぐらい統一性がなくて、
そういうのがいかにも友人らしくて笑ってしまいました。
 何時間走ったでしょうか、隣の州まで行ってUターンして、
夜になって暗くなって、車の通りも少なくなって、
それでもハンドルを握りながら車内一人カラオケ状態。
 カーステから流れてきたのは「うる星やつら」のメドレーで、テープがリバースすると
今度は「メガゾーン23」のメドレー。テープ終了間際に宮里久美の「風のララバイ」が
流れて、その次にタケウチユカの「淋しくて眠れない」が流れたあたりで、
どういうわけか滂沱の泪が……。
 もう全然泪が止まらない。唄も止まらないけど、最後は声も出なくなって嗚咽。
泪と唄に自分の内面が融け出していくような気がしました。

 そんなことがあって、鬱々とした気分からなんとか抜け出すことができました。

 その友人との付き合いは未だに切れていませんが、気恥ずかしくて
この話をしたことはありません。話しても、「くだらねえこと言ってんなよ」と
一笑に付されることでしょう。
 あ、そのときのテープはたまに取り出して聴いてます。
「淋しくて眠れない」を聴くと、あのときのことを思い出します。

 とりとめもなく長くてスマソ。