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リアル店舗はいかにAmazon.comと戦っていくのか、年末商戦を経ての反転攻勢:モバイル決済最前線 - Engadget 日本版

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リアル店舗はいかにAmazon.comと戦っていくのか、年末商戦を経ての反転攻勢:モバイル決済最前線

テクノロジーの進歩がリアル店舗の追い風に

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トランプ大統領による新政権がスタートした2017年。米国の小売業界はどこへ向かうのか。写真はセキュリティのために周辺エリア封鎖の続く米ニューヨーク5番街のトランプタワー

米Amazon.comを中心とした新しいオンライン小売事業者の躍進が続くなかで、従来の「ブリック&モルタル」と呼ばれるリアル店舗を構える小売業態の苦戦が続いている。昨年2016年末はこのクリスマス商戦での不振を受け、Macy'sなど百貨店大手らが店舗の大量閉店や業態転換を発表したことが記憶に新しい。

とはいえ、依然として小売業界は「消費社会」と呼ばれる米国を支える大きな柱だ。全米小売協会(National Retail Federation:NRF)会長のKip Tindell氏によれば、全米の雇用の4分の1を小売業界(この場合は流通など関連業務も含む)が担っており、その影響力を誇示しつつ、ここでの動きが全米の消費動向を左右する点に言及する。

だが状況が厳しくなりつつあるのは確かであり、その存在力が健在なうちに新しい利用者動向や技術トレンドを取り込みつつ、より良い店舗体験と顧客満足度を目指して自らを変えていこうという機運が盛り上がっている。ここでは2016年のホリデーシーズン商戦を振り返りつつ、いま小売業界で起きつつある変化について、米ニューヨークで1月中旬に開催されたNRFの「Retail's Big Show」でのトレンドを紹介する。

リアル店舗を価値あるものに

筆者の目から見たAmazon.comの特徴は、とかく効率化を推進する一方で、ユーザーを極力エコシステムの内側で活動するよう誘導し、規模を拡大していく点にあると考えている。かつて「パラノイア(偏執狂)」と呼ばれた往年のIntelや、競合を追い詰めてシェアを奪いにかかるイケイケ時代のMicrosoftにその姿が被る。調達力を武器に不利な条件をのむ必要のあるパートナーや、激しいコスト競争にさらされるライバルからすればたまったものではないが、その姿勢は究極的にはユーザーのためであり、メリットになっている。ユーザーがAmazon.comを利用し続け、さらにその比率が伸び続けていることからもわかるだろう。

この強敵に既存の小売店はどう立ち向かえばいいのだろうか。Deloitteのリテール、ホールセール&ディストリビューション担当リーダーのRod Sides氏が近年の小売動向をまとめ、そのヒントを示している。昨年2016年末に市場調査会社のNPD Groupが同年のホリデーシーズン商戦でのリアル店舗への顧客の来店状況報告を行ったが、客足は前年同期比で10%ほど減少したと説明していた。

これはSides氏も同様のデータを示しており、来店客の減少傾向は年々加速していることを紹介している。またAmazon.com圧勝の印象の強い同期のホリデーシーズン商戦だが、小売店全体の売上でみれば、Amazon.comを含むオンラインでの小売売上比率はまだそこまで大きくない。つまり、1つの店舗として見た場合のAmazon.comは非常に大規模で、実際にオンライン小売での売上の多くを占めているのだが、小売業界全体でみればまだ比率はそこまで大きくないというわけだ。リアル店舗の影響力はまだまだ大きいことの証左となる。


Deloitteのリテール、ホールセール&ディストリビューション担当リーダーのRod Sides氏


実際に米リアル店舗への来店率は減少が続いているが......


オンライン購入の比率は増えているものの、いまだリアル店舗での購入額には及ばない

だが注意点として、"リアル"と"オンライン"は別々の存在ではなく、不可分な関係にもあることを知っておく必要がある。前述のように小売の売上全体に占めるオンライン比率はそこまで大きくないものの、これが「デジタルの影響を受けた売上比率」となると話が異なる。

ユーザーのニーズは多様化しており、実際の来店前に店舗や商品情報をチェックすることは少なくないだろう(その逆もある)。さらにユーザーを来店させるために、DMやオンライン広告、SNS、モバイル端末経由のプロモーションなどを仕掛ける小売店もあるだろう。もしリアル店舗の価値を最大化したいのであれば、こうした技術やトレンドをうまく取り込み、少しでも多くの利用者のニーズをつかむ必要がある。


リアル店舗での購入額は大きいが、そこに関わるデジタル技術(マーケティング誘導や購入前の下調べなど)の影響も次第に増えている


主要小売の2006年と現在の時価総額の比較。10年間で業界は大きく変化した

ユーザーのニーズの変化に合わせ、店舗改良に取り組む企業も増えている。サプリなどの健康グッズを販売するVitamin Shoppeでは、従来の米国のサプリショップではお馴染みの棚に商品がずらりと並んだスタイルではなく、入り口を全面ガラス張りとし、棚を逆に極力排除して商品を実際にテストしたり店員に相談できる専門スペースを用意したオープンスタイルの店舗の展開を始めた。

一言でいうと「Apple Store」のサプリ版なのだが、それだけ小売業界におけるApple Storeの評価が高いことを現れだろう。実際の効果はこれから同社の売上が証明することとなるが、既存の枠を飛び出て新規顧客開拓とリピーターの満足度向上の両方を目指す点で、小売業界で何かが変化しつつあるのかもしれない。


Vitamin ShoppeのCEO兼主任健康支持者のColin Watts氏


従来型のVitamin Shoppeリアル店舗から大きくリニューアルした新型店舗形態


新型Vitamin Shoppeでは従来のようなひたすら棚に商品が並ぶ店舗形態を見直し、オープンな空間に相談スペースなどを設けた


健康グッズとしてのお茶の試飲スペースも用意されている

同様の試みはゲームショップのGame Stopなどにもみられる。米国、英国、オーストラリアなどで店舗を国際展開する同社だが、最近では各種イベント開催や、特定のコアゲームファン向けのテーマショップ開設、そしてゲーム関連グッズの販売など、ゲーム機やゲームソフト販売が中心だった業態から離れつつある。

特に関連グッズ販売は急成長中で、少し前までは「携帯やタブレット販売」がビジネスの一角を占めていた状況から大きく変化している。すでにGame Stopは「ゲーム」のテーマショップといえるかもしれない。

オンライン小売が伸びるなか、依然としてポーションの大きいリアル店舗での売上に着目し、リアル店舗をいかに有効な顧客との接点の場にするかに注目が集まっている。Amazon.com自身は「Amazon Go」というリアル店舗の実験スペースを本社のある米ワシントン州シアトルに設置して話題を集めたが、リアル店舗の活用研究が今後数年で一気に進んでいくことだろう。

パーソナライズとカスタマイズが鍵に

「小売売上減少とリアル店舗の閉鎖」というNRFにとっては逆風が吹いていた今年のBig Showにおいて、講演や会場で何度も聞こえてきたのが「パーソナライズ」と「カスタマイズ」というキーワードだ。パーソナライズは、個々の客に最適化されたサービスや商品を提供することを意味する。

ただ、既存の小売ではあり合わせの商品を並べてお勧めするくらいしかできなかったのだが、近年では技術向上により「個々の要求に応じた商品のカスタマイズ」を可能にする技術やサービスが出てきており、これらを組み合わせて顧客満足度の向上や差別化につなげることが狙いとなる。

例えば、同イベントの基調講演のステージに登場したShoes of Preyは、カスタマイズが必要な理由を説明する。足のサイズが33センチを越えている筆者は痛感しているが、快適に履ける既製品の靴というのはこの世に存在しない。痛くないように少し大きなサイズを選んでブカブカなのを我慢したり、見た目を重視して窮屈な形状の靴で我慢するかだ。

その意味では靴のカスタマイズというのはサービスとして登場すべくして登場したものだとよくわかる。こうした実用面以外でも「別の色がほしい」「他人とまったく同じ靴というのは嫌」「気に入った靴があっても(シーズンが終わって)すでに生産が終了している」といった不満や要望は少なからずあり、こういったニーズを満たすのがShoes of Preyのサービスだという。


カスタムメイドの靴を提供するShoes of Prey


なぜカスタマイズの需要が存在するのかを説明する

技術の発展により可能になったこともある。コラボブランドやカスタムグッズの展開を行うスタートアップのStrypesでは、バッグをカスタマイズするWebアプリケーションの提供で、ユーザーオリジナルのバッグを制作できるサービスを用意している。

同社によれば、過去20年でユーザーのインターネット利用率は18%から89%まで拡大しており、利用可能なテクノロジーも増え、これをうまく活用するのがユーザー満足度の向上や付加価値の提供につながると説明する。技術を使った低コストでの付加価値の追加は差別化ポイントでもあり、同時に利益率向上にもつながるだろう。


コラボブランドやカスタムグッズの展開を行うスタートアップのStrypesによれば、過去20年でユーザーのインターネット利用率は18%から89%まで拡大しており、利用可能なテクノロジーも増え、これをうまく活用するのがユーザー満足度の向上や付加価値の提供につながると説明する


バッグのカスタマイズ例その1。色やデコレーションを簡単に変更できる


バッグのカスタマイズ例その2。バッグは回転しながら内容をチェックし、自由にオリジナルネームタグを入れることも可能

こうしたカスタムメイドのアクセサリを提供する店舗の1つがThursday Finestだ。手袋や靴下など、毛糸の編み上げアクセサリが中心のようだが、オンラインで作成したデータを基に編み上げ機で1つのアクセサリを出力するまでにかかる時間は20-40程度。価格的にもGAPなどの著名ブランドが市販している製品とそこまで大差ないとのことで、十分競争力があると同社では説明する。

中小の小売店がこうしたテクノロジーを組み合わせてユーザーの細かいニーズをすくい上げることで、既存の百貨店やディスカウントストアでの大量販売に十分競合できると考えているようだ。


カスタマイズアクセサリを提供するThursday Finest。個々のアクセサリの編み上げにかかる時間は20-40分程度だという

True Fitもカスタムメイドの靴や服を提供するサービス事業者だが、このカスタムメイドの靴の作成にあたってはIntelのRealSense技術を使って3Dモデルを作成し、足に最適な靴を作ることができるようになっている。

これ自体はセンサー技術の進化と呼べるが、同社本来のビジネス的な強みは「レコメンデーションエンジン」にある。これは、昨今の流行やユーザー個人の好みの情報を入力することで、カスタムメイドの靴を作成する際に足に完全にフィットするだけでなく、デザイン的にもより好みにマッチしたものを提案できるという。つまりパーソナライズとカスタマイズの両方の特徴を兼ね備えていることになる。


靴や服をオーダーメイドするサービスを提供するTrue Fit。IntelのRealSense技術を使って3Dモデルを作成し、足にフィットした靴を作ることが可能。だが同社の説明によれば、この3Dモデリングセンサーを使ったサービスはあくまでオプショナルで、本来はレコメンデーションエンジンを利用して個々のユーザーに最適なファッション提案を行うサービスが中核だという

NRFのBig Showではこの他にもいろいろ興味深い話題が散見されたので、本連載で何回かにわたって紹介していきたい。きっと今後数年の日本の小売や決済シーン変革のヒントが隠されているはずだ。
関連キーワード: amazon, fintech, junyasuzuki, payment
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