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男「死なせてくれ」 幼女「あたしもしぬ」|エレファント速報:SSまとめブログ

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男「死なせてくれ」 幼女「あたしもしぬ」

1:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/24(土) 22:40:53.48 ID:v+qOhYE90

人里離れた山奥──


男「会社をリストラされ、女房に愛想を尽かされ──」

男「夢はついえ、残るのは悪夢ばかり……」

男「生きる気力もなくなった……」

男「せめて、この故郷の山で死のう」


枝にかかったロープの輪に、首を通そうとする。


幼女「だめよ、おじちゃん!」

男「!?」

幼女「だめだよ!」

男(な、なんだこの子は……)



3:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/24(土) 22:42:53.76 ID:v+qOhYE90

男「君はこんなところで、何をしてるんだい?」

幼女「あたし、いつもこの山であそぶの」

男(くそっ、けっこう奥深くまで入ったつもりだったが……まさか子供とは)

男「おじちゃんはね、これから大事な用があるんだ。だから、向こうに──」

幼女「しぬ気でしょ?」

男「!」

幼女「だめだよ、しんじゃ」

幼女「しんじゃったら、おわりじゃない」

男「おじさんはね、疲れちゃったんだ。生きるのにね」



4:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/24(土) 22:44:21.67 ID:v+qOhYE90

幼女「だめだめだめだめだめ!」

幼女「ぜ~~ったいダメ!」

男(なんてデカイ声だ……! 大人が来るとまずいな)

男「頼むよ、死なせてくれ。おじさんのことを思うなら」

幼女「どうしても、しぬつもり?」

男「ああ」

幼女「じゃあ、あたしもしぬ」

男「!?」



5:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/24(土) 22:45:54.67 ID:v+qOhYE90

男(どういうつもりだ!?)

男「君は死ぬ必要はないだろう。見たところ、楽しそうだ」

幼女「え~……でもじさつをとめられなかったから、むねがくるしい」

幼女「だから、いっしょにしにます」

男「た、頼むから……ほっといてくれよ!」

男「せめて死ぬ時はだれにも迷惑かけずに、ほっとかれて死にたいんだ」

男「君みたいな子供を巻きぞえにしたら、あの世でも苦しみそうだ」

幼女「──そう」

幼女「そこまでいうのなら」

男(気配が変わった……!)



8:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/24(土) 22:48:19.12 ID:v+qOhYE90

幼女「おじちゃんには、しんでもらうしかないね」ザッ

男(あの構え──まさか仏滅拳!?)


<仏滅拳(ブツメツケン)>

いしにえの時代より伝わる、半ば伝説化した拳法。
予測不能の軌道を描く拳に、釈迦すらも恐れを抱いたという──


男「どうやら、子供だからといって手加減をしていては──」

男「おじさんの命が危ういようだ!」ス…

幼女(このおじちゃん……。さいやくけん、のつかい手!?)


<災厄拳(サイヤクケン)>

開祖は妖怪変化ともいわれる暗殺拳。
時の権力者の中には、この拳で命を絶たれた者も多い──



9:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/24(土) 22:49:33.09 ID:v+qOhYE90

幼女「いくよ、おじちゃん!」

男「来い!」

幼女「えいっ!」回し蹴り。

男(おいおいこの子、パンツ黒かよ!?)

男「!?」


ゴッ!

回し蹴りから変化したカカト落としが、男の肩にめり込む。


男(つっ、右肩が……)

幼女「まだまだぁっ!」



12:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/24(土) 22:50:27.37 ID:v+qOhYE90

男は幼女の拳をかろうじてとらえ、上空に投げた。


幼女「あわわっ!」スタッ


なんとか着地。


男(ほう、いい身のこなしだ)

男「今度はこっちから攻めるぞ!」


眼球、頸動脈、心臓、股間。

迷いなく急所を的確に狙う突きの嵐は、まさに災厄。


幼女「わっ、あぶっ、わっ!」

男「(体勢が崩れた!)もらった!」



13:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/24(土) 22:51:30.12 ID:v+qOhYE90

男の突きは、寸止めだった。


男「チェックメイト」

男「……ふぅ、だいぶ腕を上げたな」

幼女「えへへ、すごいでしょ!」

男「だが、防御がお粗末すぎる。あれじゃ一流どころには勝てん」

幼女「ごめんなさい……」

男(攻撃力は満点だがな。ヘタすると右肩、ヒビ入ってるかも……)

男「一年前、老師に二人そろって破門されて以来だな」

幼女「なつかしいねぇ」



14: 忍法帖【Lv=29,xxxPT】 2011/12/24(土) 22:52:08.79 ID:/DwgCJPLi

ほう



19:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/24(土) 22:53:31.20 ID:v+qOhYE90

男「老師……お元気だろうか?」

幼女「もういないよ」

男「いない……!?」

幼女「うんっ♪」

男「亡くなられたってことか!?」

幼女「うんっ♪」

男「な、なぜ!? ご病気かなにかか!?」

幼女「ううん」

男「──ということは、まさか!」



21:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/24(土) 22:54:50.65 ID:v+qOhYE90

男「犯人は、君か!」

幼女「うふふ。しょーこもないのに、いいがかりやめてよね」

男「証拠なら、あるよ」

幼女「なんですって?」

男「あの日、老師はぐっすり眠っていた」

男「おまえは寝ている老師に近づき、凶器でガツンと殴った!」

幼女「きょーき? きょーきってなんですかー」

男「これだよ」


ガサッ

男はカバンから、血痕がついた広辞苑を出した。



22:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/24(土) 22:56:20.10 ID:v+qOhYE90

幼女「な、なんでそれを……」

男「老師を殺した君は、あろうことか凶器である広辞苑を──」

男「ブックオフに売った!」

幼女「!」

男「凶器は処分できる。金も手に入る。一石二鳥の作戦のつもりだったんだろうが──」

男「それがかえって君の首を絞めることとなった」

幼女「ど、どういうことよっ!」

男「店員はちゃんと覚えていたよ。血まみれの広辞苑を売りにきた君をね!」

幼女(しまったーっ!)



26:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/24(土) 22:58:08.52 ID:v+qOhYE90

男「店員の証言と、おそらくは老師の血と君の指紋だらけの広辞苑」

男「これでもまだシラを切るつもりか?」

幼女「うぅ……」

幼女「うっ、く」

幼女「うわぁ~~ん!」


事件の取り返しのつかなさを象徴するような、冷たい風が吹く。


男(弟子が師を殺すとは……なんという悲しい事件だ……)

幼女「ごめんなさい……自しゅします」

男「いや、君を警察に突き出すつもりはない」

幼女「えっ?」



30:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/24(土) 22:59:25.92 ID:v+qOhYE90

男「おじさんは、君を買っているんだよ」

幼女「どーいうこと?」

男「老師ほどの達人を殺害した君と、それを暴いたおじさんの頭脳」

男「二つがあれば、怖いものなしだ」

男「極端な話、日本を牛耳ることも可能……!」

幼女「うーん、おじちゃん。それはどうかしらね」

男「どういうことだ?」

幼女「さすがのあたしも、自えいたいにはかてないわ」

幼女「うまくいったとしても、すぐクーデターされるのがオチよ」

幼女「きじょうの空ろんだわ」



32:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/24(土) 23:01:01.23 ID:v+qOhYE90

男が幼女の首に手をかける。


男「なんだとぉー! おじさんをバカにするな!」グググ…

幼女「や、やめ……く、くるし……!」

男「いっつも無能どもはそうやって!」

男「もっともらしい逃げ口上を並べ!」

男「挑戦から遠ざかる!」

幼女「うぅぅ……」

男「おじさんを学会から追放した奴らもそうだった!」

男「空想だ、机上の空論だ、とおじさんの研究を認めなかった!」

幼女「ぅ、うげ……」

男「ちっ、つい力が入っちまった」



35:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/24(土) 23:02:37.00 ID:v+qOhYE90

幼女「はぁ、はぁ、くるしかった……」

男「だが、ついにおじさんの研究は完成した──」

幼女「え?」

男「人型殺戮兵器(ヒューマンウェポン)の第一号、が君なのさ」

幼女「うそでしょ……」

男「本当だとも。実はね、君の両親は両親でもなんでもない」

男「おじさんの部下なんだよ」

幼女「うそよ……」

幼女「うそよォッ!」

男「嘘じゃないよ~! だってゼロから作られた君に親なんていないんだから!」

幼女「あああ~~~~~っ!」

男「ハッハッハ……!」



36:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/24(土) 23:03:17.84 ID:v+qOhYE90

幼女「──なら、おじちゃん!」

男「!」

幼女「あたしが、ひゅーまんなんちゃらの一ごうなら……」

幼女「おじちゃんが、あたしのぎせいしゃ、だい一ごうよ!」

男「なっ──よ、よせっ!」


幼女は怪力で、男を顔面から地面に叩きつけた。

ドゴッ!


男「ゴボォッ!」

幼女「どう、おじちゃん、いたい? あたしの心はもっと、いたいけどね!」

男「く、くく……」

男「すばらしい……すばらしいよ」



38:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/24(土) 23:04:54.24 ID:v+qOhYE90

男「すばらしい味だ!」ガツガツ


男は土をむさぼり始めた。


幼女「ど、どうしたの? おじちゃん」

男「いいから君も食べてみろ!」

幼女「うっ……こ、これは!」


二人は号泣した。


男「うまい、うますぎる! 土を掘る手が止まらない!」

幼女「これまでたべたどんなごはんよりも、おいしいわ!」

男「大地に含まれる“歴史”がそのまま“味”となったような、なんと濃厚な!」

幼女「ああ、もうあたし、ほかのものたべられないかも……」



40:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/24(土) 23:05:59.49 ID:v+qOhYE90

二人はたらふく土を食べた。


男「ふぅ~食った食った。胃がはち切れそうだ」

幼女「ごちそうさま~♪」

男「腹ごなしに、少し走るか」

幼女「うんっ」


タッタッタッ


男(速い…まったく息切れせずついてくる)

男「なぁ、君」

幼女「ん?」



42:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/24(土) 23:06:39.95
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    コメント一覧

      • 1. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
      • 2017年02月03日 18:17
      • 本田が紙ね
      • 2. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
      • 2017年02月03日 19:08
      • ※1が死ぬんやで彡(^)(^)
      • 3. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
      • 2017年02月03日 19:40
      • みおちゃんは神です 紙ではありません
      • 4. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
      • 2017年02月03日 20:28
      • ミツボシ教爆誕
      • 5. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
      • 2017年02月03日 21:11
      • ハイセンス過ぎる。是非とも筆者の頭を開いて見てみたい

    はじめに

    コメント、はてブなどなど
    ありがとうございます(`・ω・´)

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