ライターの
赤坂です。
以前の
VR技術に関連した記事では、賛否数々のご意見を頂き、自分自身も浅学、短慮だった部分を見つめ直しております。今回もSFのお話です。
Credit: gamerfocus.coガンダムや他SFアニメで描かれた技術で、現在再現、あるいは近しいものは存在する?
古今東西、国内外に存在する「サイエンス・フィクション」の数々は、ガジェットの進化により伴う、人類の生活様式の思考実験だ。
読者の諸兄も十年前を振り返ってみて欲しい。例えば2008年にはソフトバンクモバイルにてappleのiPhoneが発売された。Androidを搭載したスマートフォンもたしかほぼ同じ時期に発表、発売されていたと記憶する。それ以前までは携帯電話と言えば、今で言う「ガラパゴスケータイ」だけがその象徴たり得ていた。
Credit: Wikipedia2004年頃、ネット接続や撮影機能を搭載したNokia6020が登場
丁度十年前の2007年は、VOCALOID2の初音ミクが登場した年でもある。2003年にVOCAROIDの第一弾としてMEIKOが発売されてはいたが、
初音ミク以前にはにはこうした「人間の声で歌うソフト」と言う物はほぼ夢物語と言われていた。
今回はこうしたガジェットの進化を予想していたSF作品と、現在の我々の世界がどれだけ近づいているのかの比較を幾つかご紹介しようと思う。
X線自由電子レーザー「SACLA(さくら)」とビームサーベルの最大出力は同じ!?
兵庫県播磨科学公園都市に存在するX線自由電子レーザー施設。ここで利用されているレーザー施設の最大出力はアニメ「機動戦士ガンダム」に登場するRX-78ガンダムの装備するビームライフルとほぼ同一である、と言われている。
詳細なカタログスペックは公表されてはいないが、以前アニメ監督・富野由悠季氏との対談の際には「小型化は日本の得意分野。今はまだ大きいが、いつかガンダムが装備出来るほどの小型化も可能でしょう」と言うお話もあった。
軌道エレベーターも夢じゃない!建築会社が実現を目指す
NASAによる軌道エレベーターのイメージ画像
数々の作品で描かれたSFガジェットではあるが、ここで読者諸兄にも分かりやすい形として提示するのは先程の機動戦士ガンダムと同じく、富野由悠季氏の近作である「ガンダム Gのレコンギスタ(以下、Gレコ)」であろう。ガンダムシリーズとしては、それ以前の「機動戦士ガンダム00」で描かれた物と比較すると、どこか構造物としては頼りのないGレコでの軌道エレベーターは、しかしより実現可能な存在として我々の目前に迫っている。アーサー・C・クラーク氏の作品『楽園の泉』でも提唱された方式に一部則り、地球の静止軌道上からケーブルを地上に下ろし、これをガイドレールとして次々と下ろして束にして行くと言った形だ。
この形であれば、現代でも十分に実現可能ではないかと言われており、例えば建築会社である株式会社大林組は「宇宙エレベーター」として2050年の実現を目指して数々の構想を報道している。また、宇宙エレベーター協会は毎年宇宙エレベーター技術競技会と言う形で、このケーブルを駆け上がるエレベーターツールの技術発展を様々なメーカーや研究チームが切磋琢磨を繰り広げている。
最大の難点となっていたケーブルの素材も「カーボンナノチューブ」の発見により、実現の可能性は極めて高くなっている。
海の上に浮かぶ都市―メガフロート
1980年代頃からSFに限らず構想された「海上都市」限りなく接近する物としては1975年に沖縄国際海洋博覧会において、漫画家・手塚治虫氏によるプロデュースにて建造された、半潜水型浮遊式海洋構造物「アクアポリス」が近いだろうか。古くはアニメ映画「AKIRA」のネオ東京、近年では籘真千歳氏の小説「スワロウテイル」シリーズやアニメ「ハイスクールフリート」などでも描かれているため、多くの読者諸兄にも想像しやすいだろう。古くは江戸時代に浅瀬を埋め立て、作り上げられた長崎の出島と構想は近い。 映画『AKIRA』(1988年)
だが本質は、限りある陸上ではなく海上に浮遊、ないしは半固定の構造物を建造し、住居問題などを解決する手段だ。海を埋め立てて、と言う物であれば東京の台場地区、あるいは東京湾アクアラインに存在する「海ほたる」が存在するが多くのSFガジェットが描いてきたのは埋め立てではなく「部分固定」、ないしは「完全浮遊」であろう。アクアポリス。半潜水型浮遊式という構造をなすことから「世界でも例を見ない」施設として当時注目されていた。
この実現には未だ多くの制約が存在するが、先にも上げたアクアポリスの成功は大きい。特に国土の多くが居住にあまり適さない山地が占め、海洋に囲まれた我が国にとって、この技術が発展すれば、住居問題への大きな対処になるだろう。おわりに
かつて描かれた「夢物語」の中の「未来技術」と言われた数々は本当に手が届く場所にまで到達している。小説家・伊藤計劃はSFを「社会とテクノロジーのダイナミクスを扱う唯一のジャンル」と言っていた通り、テクノロジーの進化は止まらず、夢が夢で終わらない時代を我々は歩いている。宇宙旅行や車が空を飛ぶ予定はまだしばらくなさそうだが、なら、予定の目処が立ちそうなこうしたガジェットを待つのも悪くはない過ごし方なのかもしれない。