写真家のパイオニア、ルイ・マリー=オーガスト・ボータンが1899年に撮影したこの写真は、まぎれもない世界初の水中写真だと言われている。
この写真に関する詳細を正確に突きとめるのはかなり難しい。確かなことは、写っているのはルーマニアの海洋学者で生物学者のエミール・ラコヴィツアで、前述のルイ・ボータンによって、1899年に南フランスのバニュルス=シュル=メールで撮影されたということだ。
今から118年前のことである。
スポンサードリンク
水深50メートルで、海洋学者がプラカードを持ち撮影
※画像クリックで拡大表示 image credit:reddit
撮影されたのは水深50メートルの地点だったという。
ルイ・ボータンは1893年に初めて水中カメラを発明した。この年に彼が何枚か水中写真を撮っていることは間違いないので、これも1983年に撮影されたという説もあるが、この水中写真は彼が水中用ストロボ装置を開発した後のものと思われるため、やはり1899年の撮影だろう。
露出に30分、窒素酔いに苦しんだカメラマン
なんとも皮肉なことに、適切な光の量を取り込むために、露出には乾板を使って30分間も作動させなくてはならない。そのため、ボータンは爆弾のようにパッと光を放つストロボ装備を開発して、簡単に光が倍になるよう工夫した。
酸素を充満させた樽の上にアルコールランプを置いて、ゴムのバルブで炎の上からマグネシウム粉末を吹き込んで、フラッシュを発生させる。それを繰り返して、撮影の精度を上げていった。
カメラマンもそれだけの時間、水中にいなくてはならないため、ルイ・ボータンは窒素酔い(潜水時の血中窒素過多による人事不省)に苦しんだという。
このようにして撮影されたポートレートは比較的鮮明で、この写真でもダイバー(海洋学者)が持つプラカードの文字、“Photographie Sous Marine”(水中撮影)がなんとか読めるし、ダイバーの足元の草もはっきり見える。
バルセロナ水中フェスティバルで実演された、基本的なフラッシュ発生のやり方を次の動画で見ることができる。
TRIBUTE TO LOUIS BOUTAN - HISTORICAL REENACTMENT IN THE AQUARIUM OF BARCELONA - THE FIRST UNDERWATER PHOTOGRAPH - BCN UW FEST
世界初の水中カラー写真は?
1926年、ナショナルジオグラフィックのカメラマン、チャールズ・マーティンと魚類学者のW・H・ロングリー博士が、アメリカ、フロリダ州ドライ・トルトゥーガス諸島の沖で撮影したホグフィッシュという大型の熱帯魚を撮影したものだ。
image credit:nationalgeographic
水深約4.5メートル。それでも暗かったため、ストロボ用にマグネシウムの粉を持ち運んだところ、それが暴発してロングリー博士は大やけどを負ったという。こちらも命がけの撮影だったようだ。
ちなみに世界で初めて写真に人が写ったのは1838年、フランス・パリのブールバードデュ寺院のある通りで、それは偶然の出来事だった。(世界で始めて写真に写った人)
via:reddit・neatorama・boingboingなど/ translated konohazuku / edited by parumo
▼あわせて読みたい
ネットが普及したからこそ見られる。世界の初めてを写した9の写真
宇宙写真からねつ造、コラまで。カメラがとらえた歴史の瞬間、初めての写真
レオナルド・ダ・ヴィンチが発明したホラー漂う潜水服
太平洋の海底に今も眠る日本軍の遺物、ミクロネシア・チューク諸島の最新写真と機体判別された「二式水戦」
世界初、写真撮影された死刑執行シーンとそのサイドストーリー(アメリカ)
この記事が気に入ったら
いいね!しよう
いいね!しよう
カラパイアの最新記事をお届けします
「画像」カテゴリの最新記事
「歴史・文化」カテゴリの最新記事
この記事をシェア :
人気記事
最新週間ランキング
1位 3379 points | わざと誤った情報を流し人を混乱に陥れる心理的攻撃「ガスライティング」を仕掛けるひとが使う11の方法 | |
2位 3286 points | 実は甘えん坊だった。飼育員のお姉さんにおじぎとカシカシで親愛の情を見せ、撫でてもらってご満悦のハシビロコウ。 | |
3位 1892 points | 「これおいしいよ!食べてみて!」犬は自分にとってのごちそうを仲間に分け与えることが判明。親しい相手には特に(オーストリア研究) | |
4位 1700 points | うわぁああん、モヤモヤする!几帳面殺しなズレのある画像まとめ | |
5位 1693 points | 筋肉マッチョなのに超セクシー。ハイヒールでキャットウォーク。今一番旬なフィリピン人男性 |
スポンサードリンク
コメント
1. 匿名処理班
タイトルの「1988年」→「1899年」でわ?
2.
3. 匿名処理班
この時代に水深50mに30分も留まるなんて今だと宇宙遊泳するような難易度じゃないか?
4.
5.
6. 匿名処理班
アマモのような浅瀬に生息する海草が映ってるから水深50メートルも有る場所には思えない。
7. 匿名処理班
太陽光は、届かないから真っ暗の中フラッシュというか、撮影用の灯りだけが光だったんだろうな
8. 匿名処理班
技術の進歩には犠牲が付ものとは云うけれど
本当に大変なんだなぁ。
情熱がないと続かない。
9. 匿名処理班
何をするにしろ先駆者の情熱はすごいね
10. 匿名処理班
水の中でマグネシウム粉末に白目むきました。
あ〜あ、やっちゃったな、って。
11. 匿名処理班
あはは、水中でマグネシウムw
笑っちゃった
12. 匿名処理班
1988年ってつい最近やん!って度肝を抜かれた
あと動画の「どうしたのかな?」に吹いた