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【モバマス】棟方愛海「頂上決戦ッッッ!!」|エレファント速報:SSまとめブログ

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【モバマス】棟方愛海「頂上決戦ッッッ!!」

1: ◆K1k1KYRick 2017/02/09(木) 18:55:38.99 ID:IqX/moEAo

師匠がお山に登りまくる話です



2: ◆K1k1KYRick 2017/02/09(木) 18:56:13.79 ID:IqX/moEAo

「うう……寒い……もう自分がどこにいるのかすら分かんないよ……」

グリーンランドの最高峰、ギュンビョルン山の中腹で

愛海は山影に隠れて吹雪く中、辛うじて生きていた。

彼女は不注意な言動で叶えられてしまったギュンビョルン山の登頂を

イヴ・サンタクロースたちと一緒に目指していた。

しかし途中で天候は大荒れとなり、彼女は

イヴや木場真奈美とはぐれてしまったのだ。

愛海は恐怖と孤独で弱弱しく呟く。

彼女が遭難した事は既に仲間や登山隊へ伝わっているだろうが

その前に愛海の小さな命の火が消えかけようとしていた。

「あー……眠たくなってきた……
 死ぬ前に菜帆さんの柔らかいお山をまた登りたかったなぁ……
 いや、里美さんの立派なお山を登りたかったな……
 あっ、やっぱり雫さんの絶景エベレストを……
 あー……考えているとみりあちゃんや光ちゃんの
 成長期のお山も捨てがたい……」



3: ◆K1k1KYRick 2017/02/09(木) 18:56:40.40 ID:IqX/moEAo

「フンッ!! ハッ!! フンッ!! ハッ!!」

「ああ……何か幻覚まで見えてきた……
 こんな所で乾布摩擦しているパーマ頭のおばさんがいるわけないのに……」

「フンッ!! ハッ!! フンッ!! ハッ!!」

「……って、ええええええ――! こっちに近づいてくる――!」

愛海が見たパーマ姿の中年女性はピンク色の全身タイツに裸足の状態で

腰を抜かしていた愛海に手を差し出した。

「おや、なんだいお嬢ちゃん。こんな所で何をしてるんだい?」

「それはこっちのセリフだよ! おばちゃんこそ、な、何してるの……?」

「ワタシかい? ほら、見たら判るだろう。ただの乾布摩擦だよ」

「こんな極寒の地で乾布摩擦する人なんていないよ!」

「ワタシくらいワールドクラスになると
 このくらいの刺激が丁度肌に心地良くなるもんなのさ」

相手の非常識さに思わず突っ込んだ愛海は

とにかく生きている人間を見つけた安堵からか

体力が残り僅かだったからか、急に疲れと眠気がどっと湧いてきた。

愛海「ああ……もうだめ……!」



4: ◆K1k1KYRick 2017/02/09(木) 18:57:09.91 ID:IqX/moEAo

「ん……ここは……」

愛海がふと目を覚ましてみるとそこは真っ白な雪山の坂ではなく洞窟の中だった。

床には厚い絨毯が敷かれていて、愛海の体には

少し加齢臭のする毛布がかけられていた。

風かないからかどこか暖かい。

ゆっくり立ってしばらく歩くと、生臭い匂いがする。

恐る恐る奥を覗いてみると、あのパーマ姿の女性が何やら獣を捌いていた。

「気がついたかい?」

謎の女性は腕を獣血だらけにしながら、怯える愛海に尋ねた。

「アンタがいきなり倒れるもんだから、慌てて別荘まで運んだわ」

「あの……ありがとう、ございます」

「お安い御用だわ」

「それにしても……洞窟の中なのに
 体がさっきからポカポカしているんだけど……」

「ああ。そりゃああんたの体に流れる六脈に、ワタシが気を送り込んだからさ。
 あとはワタシの言う通りに気の鍛錬をすれば
 凍傷にもならずに一年中裸で過ごせるようになるわ。はっはっはっ!」

獣の解体だけでなく気功まで体得しているこの女性に

愛海は計り知れないものを感じた。

北極圏に近いこの雪山で薄布一枚で過ごしている所からも只者ではない。

そんな事を考えていると、愛海の腹がぐぅっと鳴った。



5: ◆K1k1KYRick 2017/02/09(木) 18:57:36.21 ID:IqX/moEAo

「はっはっは! お腹が空いているようだね。ほら、ちょっと待ってなさい。
 今からあったまるスープ作ってあげるからね……ハァッッ!!!」

――シュボッッッ!

「ひいっ!? 指パッチンで薪に火がついた!?」

「さぁさ、スープが出来るまで鍛練しておくんだよ。
 いいかい、方法を教えるとだね、まずは丹田に意識を集中させてから呼吸を……」

愛海は暇なので教えられた通りに、気の鍛練に励んだ。

修行していると体が確かに暖かくなり、活気に満ちていく。

女性によると、これはかの達磨大師が伝えた易筋経の内功らしい。

達磨大師が武術の奥義を仏教の教えとリンクさせて修めたこの書は

南北少林寺拳法の武功の基礎となるもので

非常に奥が深く、完全な体得は容易ではないようだ。

そんな気功を何で知っているのか、ますます女性の謎が深まりつつあるが

命を助けてもらった愛海は感謝しつつも、真面目に気を練っていく。

しばらくして女性の様子を見ると、まだあの肉を煮込んでいる途中だ。

待っている間に彼女は洞窟内をキョロキョロと見て回った。



6: ◆K1k1KYRick 2017/02/09(木) 18:58:05.17 ID:IqX/moEAo

キッチンと寝室の他にこの洞窟にはあと一部屋あった。

そこは壁一面に世界中の様々な書籍が並べられていた。

武芸書だけではなく、歌劇、歌曲等のものも散見できる。

その中で、愛海は隠されるようにして置かれた、ある書物と出会った。

「……これは!」

上から落ちてきて開いた状態になったその書物に愛海は目を奪われた。

そこには相手の胸に手を当てて立っている男の姿が描かれていた。

最初は大昔の猥褻図書かなと思っていたが、それにしては

様々な角度で相手の胸や尻に飛び込んで掴みにかかる図柄ばかりでおかしい。

ひょっとしてこれは何らかの奥義書では、そう思った愛海は手に取った本の表紙を見た。

「『竜爪襄山功擒拿術指南』……?」



7: ◆K1k1KYRick 2017/02/09(木) 18:58:31.76 ID:IqX/moEAo

「おばちゃん! この中国語の本に何が書いてあるか読める!?」

「ああ、勿論だとも。ここにある本はワタシのコレクション。
 読めもしない本なんか一冊もないわよ」

「じゃあ、あたしこれを習いたい!」

愛海は件の女性に『龍爪擒拿術』と表紙に書かれた本を見せて尋ねた。

とりあえず件の本と似た内容の本を差し出したのは

いきなりあんな図が載っている武芸書について話しても

まともに教えてくれないと思ったからである。

「ふむふむ……龍爪功かい、擒拿術(掴み技)の一種だね。
 不殺の武芸を身に付けたいなんて洒落てるじゃないか。
 お安い御用だわ。……それ、アザラシのスープが出来たわ。
 なあに食べてからでも充分に間に合う。みっちり教えてやるからね」



8: ◆K1k1KYRick 2017/02/09(木) 18:58:58.15 ID:IqX/moEAo

それから愛海は嵐が止むまで昼に女性から竜爪功を学び続けた。

そして夜、女性が寝た事を確認すると、こっそりと起きて

例の竜爪襄山功を独学で読み解いて鍛錬した。

こっそりと学ぼうとしたのは、あの女性が釘を刺したからである。

「いいかい、これと名前が似ている
 竜爪襄山功って武芸書だけは学んではいけないよ」

しかし愛海はあえてそれに逆らった。

あのお山を掴む技ばかり載っているあの武芸書は

まるで天が自分に与えるために存在させたのではないか

と思うほどに魅力に満ちていた。

昼に習った竜爪功の鍛錬が基礎になっているからか

この竜爪襄山功の修行は驚く程すんなりと身についてくる。

愛海は寝るのも忘れてそれらの武芸を研鑽した。

読み慣れない中国語は昼間に女性から学び

分からない所は熱意と挿絵でカバーして勉強していく。

女性によって注がれた易筋経に由来する優れた内力のお陰で

思いの外早く経典の武芸が着実に血肉となっていった。

そして僅か半月という恐ろしいスピードで幾らかの武芸を会得してしまったのである。

勿論そうなるまでには稀代のアルピニスト棟方愛海の

並々ならぬ登頂に対する情熱があった。



9: ◆K1k1KYRick 2017/02/09(木) 18:59:24.31 ID:IqX/moEAo

「さて……嵐も去ったし、そろそろこの山にもお別れをしようかい」

「今までありがとうございました」

「いいともいいとも。ところで、『武芸』は身に付いたかい?」

女性は鋭い目を向けて愛海に尋ねた。

恐らく龍爪功の事だろうと愛海は動揺を隠しつつ答えた。

「はい、師匠。いくつかは完璧に武芸を身に付けられました」

「……。……そうかい。あれだけの研鑽を積んだんだ。
 半月であれだけ身に付いた人間はお嬢ちゃんで二人目だわ」

愛海は謎の女性と一緒に下山した。

女性とはふもと近くで別れたが、最高の内功を身につけた今の愛海にとって

ギュンビョルン山の厳しい環境など屁でもなかった。

彼女は鼻歌を歌いながら何食わぬ顔で斜面を降りていく。



10: ◆K1k1KYRick 2017/02/09(木) 18:59:50.61 ID:IqX/moEAo

「ブリッツェン、愛海ちゃんは見つかりましたか」

ブリッツェンに橇を引かせて空から見ていたイヴは

半月ほど前から嵐の中で空を駆けて愛海を探し続けていた。

もっとも、ずっと洞窟内に引きこもっていたから見つかるはずもなかった。

せっかく彼女たっての願い事を叶えたのに

それで遭難させて、万が一に死なせては悔やみきれない。

そんな彼女は晴れ間の見えた真白の雪山の斜面を歩いていく人影を発見した。

すぐに橇を下ろして件の人影――愛海に声をかけた。

「愛海ちゃん!? 無事でしたか!?」

「イヴさん?」

「はい、そうです! ごめんなさい、貴女の夢を
 叶えるはずが、こんなことになって……」

「……。フフフフフ……」

「愛海ちゃん? ……」

「随分と捕獲(たべ)てなかったからね……まずは腹ごなしと行こうか」

顔を上げた愛海は猛禽類に似た、鋭い視線を向け、垂れていた両腕をさっと構えた。

「えっ、愛海ちゃ……キャアアアアアアア!」



11: ◆K1k1KYRick 2017/02/09(木) 19:00:16.25 ID:IqX/moEAo

数日後の日本では、棟方愛海が奇跡の下山を果たした

というニュースが事務所を沸かせていた。

「遭難したって聞いた時には血の気が引いたわ。
 プロデューサーさん有休中なのにもしもの事があったらと思うと……」

沢田麻理菜は、愛野渚を相手に愛海についていろいろと話していた。

「もう真奈美さんたちと再会して帰国を始めたらしいですよ。
 捜索隊まで出したのにまだ登山の特番を続けるなんて出来ませんし」

その時だった。事務所のドアが開いたかと思うと

いきなり二人の人影が倒れ伏した。

「えっ、真奈美さん!?」

「どうしたの!? それに、愛結奈まで……何があったの!」

二人はぐったりと床に倒れ伏したまま、ようやくわずかに愛結奈口を開いて一言囁いた。

「……逃げ……て……」

「愛結奈さん!? 逃げるって、どういう事!?」

まだ二人に尋ねている中、部屋には小柄の美少女が入ってきた。

言うまでもなく棟方愛海である。



12: ◆K1k1KYRick 2017/02/09(木) 19:01:19.82 ID:IqX/moEAo

いや、そんなはずがない――彼女を一瞥した麻理菜と渚は否定した。

眼前に立って微笑む愛海からは、身の程を知らぬいつもの蛮勇さは微塵もなかった。

血肉の味を知り、貪欲に獲物を求め喰らう

猛禽類のような好戦的な瞳が光っていた。

「愛海ちゃん……これは……?」

渚を庇いながら麻理菜は一歩進んで尋ねた。

しかし今の二人は、蛇に睨まれた蛙も同然だった。

逃げる力のない哀れな生き物は、ただただ捕食者を前にして

食されるのを待つだけだ。

「……ふふふ、麻理菜さんに渚さんか……帰国してから
 愛結奈さんたちしか登ってないし、丁度いい……
 二人まとめて、いただこう!」

愛海は言うが早いか、電光石火の早業で手を伸ばし、麻理菜と渚の乳房を一度に掴んだ。

「龍爪襄山功――『叔宝在井』!」

「「ああああああ――っ!」」
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    コメント一覧

      • 1. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
      • 2017年02月09日 23:58
      • 本田SS荒れてるんでこっちに飛び火しないといいけど
      • 2. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
      • 2017年02月10日 00:00
      • ヘレン大勝利! 希望の未来へレディ・ゴーッ!!

    はじめに

    コメント、はてブなどなど
    ありがとうございます(`・ω・´)

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