ラケタ(ロシア語でロケットの意)は、ソ連製の初の商業生産ハイドロフォイル、つまり水中翼船だ。冷戦時代に絶賛開発がすすめられたものの、他の機械的な巨船と同様、使われなくなった現在、錆びついて亡骸のような姿となり眠っている。
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1957年、最初にお目見えしたとき、今ではレトロなこれらの水中翼船は、未来を予感させる興奮を与えてくれた。
1970年代始めまで生産されていた。当時、ソ連製輸送機として、「カスピ海の海の怪物」(KM)などの大型地面効果翼機「ルン」型エクラノプランなどが登場したが、ほとんど実験段階の域を出なかった。
image credit: baseguru – website/Instagram; the Raleta graveyard
ソ連時代の伝説の設計士ロスチスラフ・アレクセーエフは、高速船の造船に貢献し、航空機設計者のアンドレーイ・トゥーポレフや、ロケット開発者セルゲイ・コロリョフなどと肩を並べる人物である。
ラケタは水中翼の技術を利用した船で、水中から出るときの船体への水の抵抗を減らして加速することができる。
image credit: baseguru – website/Instagram; the Raleta graveyard
プロトタイプのラケタ1は、Krasnoye Sormovo造船所No.112で作られた。
ここは、ソ連でもっとも古く名のある造船会社で、ロシアで5番目の大都市ニジニ・ノヴゴロドのソルモフスキー地区にある。1957年8月25日にヴォルガ川で進水し、7時間で260マイル(418キロ)運行した。
image credit: baseguru – website/Instagram; the Raleta graveyard
のちにラケタは、メテオール型やコメタ型のように、より大きく高速に設計され、ヴォルガ川の水面を進む威厳ある存在の象徴となった。
人気があったため、アレクセーエフのこの有名な発明船が製造中止になった後も、川船や水中翼船の型を示す単語としてラケタという言葉はロシアの土地の言語にずっと長いこと残っている。
image credit: baseguru – website/Instagram; the Raleta graveyard
状態のいいラケタを手に入れるには、30〜40万ドルかかるという。しかし、ソ連のほかの優秀なエンジニアリング技術の例にもれず、冷戦後のソ連崩壊による社会的・政治的大変動のせいで、多くのすばらしい船がスクラップヤード行きを余儀なくされ、ラケタの場合も船の墓場に打ち捨てられた。
image credit: baseguru – website/Instagram; the Raleta graveyard
都会の探索者や写真家たちが、見捨てられた船の残骸が無造作に積みあがっている、広大なヴォルガなどロシアの河川敷にやって来るようになった。
ここでは、残骸や無人の建物の間で、船たちが静かに朽ち果てている。これらの中にはメテオールもひっそりと隠れていて、その姿は戦後何十年もの間、レトロと未来を併せ持つノスタルジアを呼び覚ませてくれている。
image credit: baseguru – website/Instagram; the Raleta graveyard
こうした船の残骸は、ムルマンスク州ザオゼルスクの閉鎖された町の近くでも見ることができる。
ここは、1958年にソ連の原子力潜水艦の北部基地として建設された町だが、今は誰もいない現代建築の集合住宅と、錆びついた線路が交差する朽ちた造船所があるだけだ。
image credit: baseguru – website/Instagram; the Raleta graveyard
ラケタは比較的広く輸出され、ヨーロッパの河川で活躍した。現在でも操業できる状態のものも残っている。
しかし、ロシアの廃れた造船所で苔むしている、ほかの多くの印象的な船と同様、これら旧ソ連の水中翼船は、最後の最後まで水面に優雅な彩りを添えていると言っていいだろう。
image credit: baseguru – website/Instagram; the Raleta graveyard
via:urbanghostsmedia/ translated konohazuku / edited by parumo▼あわせて読みたい
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コメント
1. 匿名処理班
シルフィー「カスピ海の怪物ー♪」
2. 匿名処理班
いやー、ソ連当時の最先端の乗り物や兵器は本当に絵に描いたようなレトロサイファイワールド。アメリカももちろん凄いんだけど、ソ連はいつでもデザインや発想が突拍子もない、実の性能は別としてw
3. 匿名処理班
なんとも言えないレトロフューチャー感
4. 匿名処理班
原潜シービュー号みたいや
5. 匿名処理班
巻頭カラー「これが2017年の未来だ!!」
「みてごらん、ひろし君、これが40年後の未来のソ連だよ」
「うん博士、みんな錆び付いてるね・・・」
6. 匿名処理班
やっぱ国力不足が悪いんや!
7. 匿名処理班
エクラノプランや幻のシャトルもそうだけど、何故これらを博物館に入れないんだろう?
8. 匿名処理班
生活に必要が無いものは、利用されなくなるのは仕方ない
9. 匿名処理班
一瞬原子力潜水艦シービュー号のカタチが頭を過ぎった...。
10. 匿名処理班
一周回って斬新なデザインで未来的なデザインだな。スターウォーズに出てくる宇宙船っていってもわからなかったかも
11. 匿名処理班
俺に金があればこういうのを家に改造したい
12. 匿名処理班
ミクロ決死隊が、思い浮かんだ
13. 匿名処理班
かっこいいな、追従者が居ないのは コストかなんかの問題かな?悪天候に弱いとか?
14. 匿名処理班
どうしてソビエトっていう国はいつもロマンのありまくる物ばかり作るんだろう。憧れる。
15. 匿名処理班
※13
その通りで湖とか波の無い所でしか運用できない。
日本でも水中翼のついたミサイル艇を導入したけどろくに使い物にならなかったな。
16. 匿名処理班
これ日本にも一隻あったんですけどね…
2000年ぐらいに解体されたそうで
17. 匿名処理班
※15
その使い物にならないジェットフォイルは大島とか韓国まで行きますが…
自衛隊で延命しない理由は建造時には想定外の警備任務に一切向いてなかったってだけ
18. 匿名処理班(クロトワ)
火の7日間の前に作られたやつでしょ?
ウソか本当か知らねえが
星まで行ってたとかなんとか…
19. 匿名処理班
>>12
ミクロの決死圏、な。
確かにプロテウス号のイメージがあるね。
20. 匿名処理班
隅田川の水上バスヒミコみたいな前面展望。
高速だからスリル満点だったろうな…
21. 匿名処理班
スタートレックで辺境惑星のシャトルとして出てきても違和感無いな