ハンガリー王国の貴族で、吸血鬼伝説のモデルとなった女性がいる。バートリ・エルジェーベト(1560年8月7日-1614年8月21日)は、「血の伯爵夫人」という異名を持つ歴史上もっとも殺人を犯したとされる人物だ。
1585年から1609年の間、バートリはおびただしい数の若い娘たち(多くは農民)を幽閉、拷問して、殺害した。バートリの残虐な犯罪の根源について歴史家たちは長いこと論争してきたが、なぜ彼女がトランシルバニアの由緒ある貴族から、血の伯爵夫人に変わってしまったのか、だれにもはっきりしたことはわからない。
それでも、彼女の罪は明白だ。逮捕された日、バートリのまわりには死体が累々、幽閉された瀕死の娘たちがたくさん見つかったという。
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バートリーは15歳のときに、ハンガリーでも指折りの富豪フェレンツ・ナーダシュディ伯爵と結婚。結婚祝いに伯爵からチェイテ城をもらい受けた。
バートリによる殺人はほとんどがこの城内で行われたが、少なくともほかの4か所の所有地でも残虐な殺しを行ったという。
伯爵が妻の血への渇望について知っていたかどうかはわからない。結婚生活の大半、伯爵は戦争に明け暮れて不在。戻ってくると子作りにはげんで、再び城を後にした。
伯爵が1604年に亡くなるまでに、ふたりの間には5人の子供ができた。
伯爵は死の間際、自分の財産と妻のことを親友のジェルジ・トゥルゾーに託した。バートリがなにかおかしいと最初に気づいたのは彼だった。
自分の勘が正しかったことを、トゥルゾーは知るよしもなかった。
ある時、粗相をした侍女を折檻したところ、その血がエルジェーベトの手の甲にかかり、血をふき取った後の肌が非常に美しくなったように思えた。
そのことがあってから、若い処女の血液を求め、侍女を始め近隣の領民の娘を片っ端からさらっては生き血を搾り取り、血液がまだ温かいうちに浴槽に満たしてその中に身を浸す、という残虐極まりない行為を繰り返すようになった。その刑具として「鉄の処女」を作らせ、用いたと言われている。
24年の間にバートリは、650人もの女性たちを殺し、彼女たちの手を焼いたり、顔や腕の皮膚を食いちぎったりして拷問し、凍えさせたり飢えさせて死に至らしめることに喜びを見い出していた。
噂では、バートリは若さを保つために処女の生き血風呂に入っていたというが、真偽のほどは定かではない。
300人以上の証人が、血の伯爵夫人に不利な証言をした。彼らは目撃者や生存者だけでなく、娘たちをさらってきてバートリに差し出した共犯として起訴された者もいた。
一般人ならば、このような犯罪を犯したらすぐに処刑されるはずだが、バートリは貴族ゆえに命だけは救われた。しかし、1614年に死ぬまでチェイテ城に幽閉されたという。
バートリはとにかく血が流れることを好んだ。被害者の皮膚をかじって血肉を喰らう行為、淫乱で黒魔術を好み悪魔崇拝をしたという証言から、吸血鬼のイメージが付加されるようになった。
via:Legend Has It That This Woman Killed More Than 650 Victims In Her Day/ translated konohazuku / edited by parumo
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コメント
1. 匿名処理班
ベルばらの番外編で知って、そのあと澁澤龍彦の本で読んだ
2. 匿名処理班
ベルばらオスカル「退治しておいたぞ」
3. 匿名処理班
この手の陰惨な話ばかり集めた小説を読んだ事があるけどこの人と青髭の2人は抜きん出て残虐だったな
青髭は対象が子供だった上に殺し方がまた残虐すぎてここに書けないくらい
今の時代不況だなんだ言ってるけどこの時代に生まれてきた事を感謝しないといけないね
4. 匿名処理班
この話の詳細は「孔雀王・退魔聖伝」で知りました。
5. 匿名処理班
メアリー・チューダーも相当極悪
カクテルで有名なブラッディー・マリーの名を遺した
イギリスの女王。プロテスタント弾圧で死の床
であっても命令出して約300人焼き殺した
ストレスとかいろいろ原因あったみたいだけど
怒らせると女性のほうが冷酷になるみたいだ
6.
7. 匿名処理班
この伝説、犠牲者の遺体をはじめとして「直接的な証拠」は見つかってないとか聞いたけど? そもそも過去に読んだ文献には、彼女に子供がいたことすら書かれていなかったし。
いろんな部分が眉唾に感じるんだけど、さて…?
8. 匿名処理班
本人は行為を一切否定、加担者の証言は拷問による取調べ、捜査の背景にはお家騒動もからんでると実際どこまで本当か分かってないんだよな。
中世の貴族兼シリアルキラーは結構いるけどバートリーだけやたら具体的だし。
9. 匿名処理班
確か、王族に繋がる大貴族だったので小部屋に幽閉…窓と扉は漆喰で塞ぎ、明かりはなし。
食事は扉に開けた小さな入り口から差し入れる。
で、15年ぐらい生きていた…。
亡くなった後の部屋はそれはひどい悪臭で、使用に耐えるものではなく封印された。
だの、
壁は糞尿が擦り付けられていた。
だのと本に書いてあったような…。
まあ、伯爵が生存時から居城に軟禁されていたようなものだったとも書いてましたね。
夫不在のため社交にも出れず、 又夫も社交会に出ることを許さなかったので、田舎の居城で閉じ籠ってたとか
10. 匿名処理班
ジルドレェの「名誉回復のために所領を掘り返したら史実の数十倍の児童の遺骨が出てきて名誉回復の会が頭を抱えた」って話も嘘くせぇよな。いくら調べてもソースが見つからん
噂の発端になったツイート見ても「俺も伝聞なんだけどね」とか言ってたし
11. 匿名処理班
最近ではすっかり萌えキャラと化してしまったのう
12. 匿名処理班
昨日『ゴーストハント』大人買いして読んだばかり
その中のひとつにこの人のエピソードがあって
あまりにタイムリーで驚愕した
13. 匿名処理班
こういう残忍で凄惨な人物がアイドルみたいなキャラにゲームでるような今は平和なんだとつくづく思う
14. 匿名処理班
アイドルみたいなのはエリザベートバートリーのころねw
血の〜のころは名前もカーミラになってアイアンメイデン鎖で縛って担いでるし。
15. 匿名処理班
ちょっと前に若い血に若返り効果があるって研究結果の記事があってこの人思い出してある意味効果としては正しかったのか?って思ったけど、今ぐぐったらその研究結果否定されてた
16. 匿名処理班
夫の遺産相続の問題で、再婚を希望した彼女を政治的に潰そうとしたってのが真相みたいだけどね
実際、バートリの凶行に対する証言は「バートリの召使い達を拷問して自白させた」って資料にあるくらいだしw
17. 匿名処理班
※12
今の時代は決して平和なんかじゃないと思うが?俺らの住む先進国のみが「平和」と言えるんだぞ。
しかもその「平和」を維持するために後進国の人々は地獄を見てるわけで。
ここでどうこう言った所で何かが変わるとは思えんが、ちょっと認識が甘くないか?
18. 匿名処理班
Fateで知った
19. 匿名処理班
名前のカナ文字が、バートリ、バソリー、バートリー、それからエリザベートとかエリジェベートと、書籍で色々違うんだが、統一してほしいですな
20. 匿名処理班
※8
彼女は他家から嫁いだ女性だったのと、夫没後に再婚しようとしたら、夫側の親戚達が自分達の財産の取り分がへってしまうと大反対されたり、政治的にハプスブルクと敵対してたりと結構、敵だらけな状況だったのは確かな様子。
何か事件はあったかもしれないとは思うけど、結構内容は盛られてたと思う。
21. 匿名処理班
この人とかジルドレとかは、政治的な理由で殺人鬼に仕立て上げられたんじゃないかなぁ…とか思ってしまう
ヴラド・ツェペシュも結構な名君だったみたいだし
22. 匿名処理班
島田荘司の小説で読んだな
しかし血液風呂なんか用意するには一回に50人分以上の血液がいりそうだけど
24年で650人、1年あたり27人程度の犠牲者
伝説はかなり脚色されていると思う
23. 匿名処理班
※17
植民地政策真っ盛りならいざ知らず、後進国への支援も行っている中で一方的に先進国のみが利を貪っている訳でもないのでは?
24. 匿名処理班
メタル好きなら一度はググってる名前。個人的にはHammerheartが好き。いわゆるヴァイキングメタル、フォークメタルの源流だと思う。
25. 匿名処理班
欧州ではハンガリーだけが日本と同じ姓名の順番なんだけど、それをきちんと表記してるパルモたんさすがです。
26. 匿名処理班
このことから命は生まれながらに不平等だということが学べるね
27. 匿名処理班
さすがに全て冤罪で無実と言われると?だな。話1/10でも極刑に値するのは間違いないし
28. 匿名処理班
貴族は、ほっとくと子供産んでどんどん増えていって領地がなくなるから、ちょいちょい王族などに滅ぼされてるよね。理不尽な理由をつけられ、拷問されて皆殺しみたいな。これもその一環だったんかな?
29.
30. 匿名処理班
ベルばらって書きにきたら既に書き込まれていて安心した
31. 匿名処理班
今でも似たような情報操作あるもんね
「大勢の人を虐殺した」という情報は世論を納得させるために昔から使われていたんだね
32. めしねこ
残虐な行為があったとしても確実な証拠がないと
なかったことにされるって怖いことだよ。
無くなった人達が浮かばれん。
33. 匿名処理班
セラミューにも登場してたな。あのシリーズが一番好きだったのに、あのシリーズだけDVD化されなかった・・・。
34. 匿名処理班
中世色のまだ濃いこのころのハンガリー社会を、今の倫理観で考えても仕方ないが、
たとえ数人数十人でも、アンチエイジング化粧品(血)欲しさに殺した(殺させた)人妻。
同じ貴族(敵対)につるし上げられて、ようやく幽閉までこぎつけたが、
敵対勢力でさえ、名門バートリ家の女性を死刑にはできなかった、そんな時代です。
35. 匿名処理班
XJAPANの曲
ROSE OF PAINの歌詞がこの人をモチーフに作られたというので
学研ポケットムーシリーズの怪奇人間を古本で買って読んでみた18の夜
36. 匿名処理班
そもそも、英語Wikiじゃハンガリー独立運動に熱心な人物で、ハプスブルグ家にはめられた被害者って結論になってるね。
日本Wikiの記述は殺人鬼と決めつけていて異常だわ。
英語の方は、生き血風呂も悪質な都市伝説って結んでる。真面目に生い立ちとか経歴、政治活動についてとかも書いていて、あっちの方がよっぽど信頼の置ける記述だろうね。
だいたい、血ってむちゃくちゃ腐りやすいんだから、そんなモノに浸かったら感染症で全身疥癬だらけになるよ。
37. 匿名処理班
24年間で650人だと毎年27人が行方不明なんだけど、トランシルバニアのド田舎でこのペースで娘がいなくなるのは、ちょっと目立ちすぎるんでないかしら。娘が一人もいなくなってしまったりしない?
38. 匿名処理班
個人的には『本当は恐ろしいグリム童話』の青髯に出てくる、新妻のその後の行動に似てるなぁーと思った。確かこんな感じだった気がする。
39. 匿名処理班
wiki情報から
※16
彼女の逮捕や取り調べにはバートリ一族の者も加わっていて、敵対勢力により証言が誇張された可能性はあるけど事実無根と考える研究者は殆どいないみたい
40. 匿名処理班
※22
16だが
確かに支援はしている。しかし、現実は全て上位階級がカネを吸収している。
国民の大半である低所得者層が幸せで無いのなら、とても平和とは言いがたい。
ウィッグだってあれ労働者達の髪の毛を抜いたものに色塗ってるだけなんでしょ?映像見たがかなりエグい