日常の繰り返しにうんざりな日々、ふと窓の外を眺めては、どこか知らない場所に旅したい、できればずっと住んでみたい。と妄想が加速する。だがしかし、花の都、憧れの都市と言われるロンドン、パリ、東京を思い描いた瞬間に、今ある貯金でどれくらい滞在することができるのだろうと現実に引き戻される。
だが世界には、現在のほどほどの収入でも王様のような暮らしを送れる場所が存在する。ここでは、ナムベオ(Numbeo)とエクスパティスタン(Expatistan)が作成した生活費インデックス(Cost of Living Indexes)に基づき、2017年度版の最も安く暮らせる場所ベスト10を紹介しよう。なお金額は1ドル/110円で換算した。
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これらのリストはあくまでも物価の安さが観点である。治安や政治的安定は全く別問題だということを御考慮いただきたい。
10. メキシコ
ソンブレロ、テックスメックス、アステカ文明、ドラッグ&バイオレンスで有名なメキシコ。メキシコシティは長い歴史と活気ある文化を誇り、60もの先住民族がいる。そして、もちろん、とても物価が安い。
ナムベオの試算では、メキシコでの生活費はアメリカより60パーセント安い。首都でなければ、街の中心で3ベッドルームアパート(日本の3LDKあるいは3DKに相当)を月52,800円で借りることができる。2,200円もあれば、上等なレストランで2人分の食事がとれる。交通機関も440円以下だ。
これはもちろん外国での稼ぎがあってこそだ。地元の購買力で言えば、メキシコは中程度の国で、メキシコ国内で稼ぐなら倍の感覚になると思えばいい。
9. チュニジア
チュニジアを北アフリカの宝石と言ったら、言い過ぎだろうか。小さな砂漠の国で、1,000万人が暮らしている。いくつかの古代の都市は非常に美しい。
『スター・ウォーズ』の第1作に登場したタトゥイーンが撮影された場所と言えば、どれほど印象的な場所かご理解いただけることだろう。にぎやかな街の中心であっても1ベッドルームアパートを月17,600円で借りることができる。
一方で不安もある。リビアと国境を接しているのだ。リビアではカダフィ政権崩壊後、ISやアルカーイダなどの民兵組織が勢力を広げ、旅行者の殺傷事件が起きている。
2015年には、チュニジア第三の都市スースの5つ星ホテルを武装グループが襲撃し、外国人を含む38名が殺害された。各国政府からは渡航を控えるよう注意が出されている。
8. モルドバ
モルドバと言われて、どこにあるかすぐに分かった人はいるだろうか? ルーマニアとウクライナに挟まれた東欧の国だ。ついでに親ロシア派との紛争も続いている。
モルドバ東部は1990年代に武装グループに占拠され、沿ドニエストル共和国として事実上独立状態にある。紛争による死者はしばらく出ていないが、未だヨーロッパの最貧国である。
一方で、旧ソ連の建築様式、厳しい冬、プーチン大統領によって併合される可能性といったことを気にしないのであれば、行ってみる価値はある。
生活費がアメリカより62パーセント安いことに加え、ワイン生産量は世界最大の国の1つで、修道院の地下には200キロものトンネルが伸びており、ワインがたっぷり貯蔵されている。さらに首都キシナウはヨーロッパ有数の娯楽の街としての評判を得つつある。
7. ネパール
ネパールの素晴らしい山岳風景は旅行者を魅了する。世界最大級の山々の頂は雪に覆われており、仏教の寺院が点在。謎めいた山村やゾウに乗れることも魅力的だ。
お金について話すと、少々奇妙なことになっている。ナムベオによるとメキシコよりもわずかに高いようだが、エクスパティスタンでは首都カトマンズをモルドバのどの都市よりも安いと評価。そこで大事をとってここにランクインさせた。
だが実際の暮らしは必ずしもバラ色ではない。2015年、カトマンズで起きた地震によって1万人が命を落とし、街並みは壊滅的な被害を受けた。
被害総額はネパールのGDPの50パーセントにも達し、復興はほとんど進んでいない。お金を落としてくれる旅行者は地元の人から歓迎されるだろうが、永住となると早計かもしれない。
6. シリア
かつて世界で最も美しい場所の1つと言われたのは伊達ではない。時の始まりからそこにあるような山々や谷、曲がりくねった川、古代の城や都市を特徴とする国である。
混乱の最中にある同国であるが、200キロ近い海岸線は奇跡的にも戦禍を逃れることができた。生活費はアメリカより63パーセント安い。
もちろん比較的安全な沿岸沿いであっても今現在はおいそれと向かうべき場所ではない。2011年以来の内乱のせいでおよそ25万人が犠牲となり、家を失った人は400万人に達する。
ISやアルカーイダなどがクルド人民兵組織、アサド政権、その他100もの反乱派と争い、上空からはロシア軍が爆撃を加えている。だが、こうした恐ろしい戦争ですら永遠ではない。いつの日か、中東で最も悲惨な国にかつての美しさが甦ることを祈ろう。
5. アゼルバイジャン
カスピ海沿岸に位置し、豊かな石油資源に恵まれる”火の国”と呼ばれる国。オイルマネーに物を言わせたガラスの塔が立ち並ぶが、イルハム・アリエフ大統領は民主主義活動家の投獄を趣味とする独裁者だ。コーカサス地域のドバイとでも言える豊かな国である一方、家賃は16,500円以下である。
一体なぜこうした対照的な状況になっているのだろうか?
首都バクーはロンドンのような大都市であるが、実はそれ以外の場所はどこも羊飼いがいて、月平均所得28,600円程度でどうにか生活するようなド田舎なのだ。
そう考えると、16,500円の家賃でも白昼の強盗のような額に思えてくるだろう。それでも少なくともあなたなら、文字通り火の上にある山、”ファイアマウンテン”が鎮座する国で暮らすことができる。
4. ジョージア(グルシア)
コーカサス地域に興味があるならジョージアがオススメだ。アゼルバイジャンのイスラム文化とは違い、主にキリスト教が信仰されている。にも関わらず、主にアルメニアへの嫌悪感が原因で、両国は歴史的な同盟国である。
しかし北方のロシアとの関係は異なり、アゼルバイジャンがロシアとそこそこ友好関係にあるのに対して、ジョージアは2008年に侵攻を受けている。
それ以来、南オセチア地域は事実上ロシアの支配下にある。さらに数年前アブハジア自治共和国が独立を宣言。モスクワがこれを承認している。つまり首都トビリシが実効的に支配している地域は、実際よりずっと狭いということだ。
それでも手付かずの自然、険しい山々、時間から置いていかれたような山村は魅力的だ。しかもビールが80円ほどで手に入る。これちょっと重要なことだ。
3. パキスタン
波乱に富んだ人生を送りたいのならば、パキスタンに行くといい。首都カラチは世界最大のバイオレンス・メガシティだ。同国の経済の中心地でありながら、強盗や誘拐が頻発し、イスラム過激派によるテロも発生している。
事実、続発する死亡事件を受けて、パキスタン政府は、外国人に対して、警備隊を用意し、旅行計画を提出しない限りは、1都市に滞在することを義務付けた。こうした現実を知りながら、なおここでの暮らしへの興味が薄れないのであれば、家賃は8,470円と言っておこう。慰めにもならない慰めである。
それでも万が一、あなたが渡航することになれば、地球で最も歴史ある国の1つに行くことになる。ムガル帝国の要塞、イギリス植民地時代の名残、世界最大級のイスラム式モニュメントなどを楽しむことができる。
2. ウクライナ
ナムベオによると、ウクライナではヨーロッパ一安いマクドナルドのセットが食べられるらしい。ビッグマック、ポテト、ドリンクのセットが275円以下だ。何もこれだけの理由でウクライナを目指そうと言っているわけではないが、大切であることは確かだ。そして生活費はアメリカより65パーセント安い。
しかしウクライナ人にとっては意味がない。同国の平均月収は22,000円程度。このためウクライナの地域購買力は、ジンバブエやモルドバをも下回る、下位10以内にランクインされてしまっている。また東部の紛争では約3年で1万人が命を落とした(他の地域と同じく、ここでもロシアが関与している)。
一方で酷い格差、とんでもない冬の寒さ、領土危機に耐えられるのならば、ウクライナは息を飲むほどに美しい場所だ。西部には恐ろしげな山脈がそびえ、リビウとキエフという古代から続く都市があり、笑えるほどに美男美女揃いである。
1. インド
おそらく地上で最も安い国のひとつだろう。レストランはミドルクラスでも2人で1,100円以下で食事が楽しめる。タクシーは110円以下でも1時間は待ってくれる。家賃も月11,000円を若干上回る程度。
南部の都市ティルヴァナンタプラムなら、月の水道光熱費はたったの2,200円だ。月収11万円に満たずとも、王様のような暮らしを送ることができる。
しかも世界有数の風光明媚な地であることも忘れてはならない。タージマハル、ヒンドゥー教の聖地ヴァーラーナシー、ヒマラヤ、植民地時代のヒルタウン、悠久のガンジス、黄金の寺院、ボリウッド、カレー、親切な人々など、見どころの枚挙にいとまがない。
無論、光だけではない。ショッキングな格差、極端な貧困、疫病、民族間の紛争、パキスタンとの核戦争のリスクなど、暗い側面もある。そこにわざわざ移り住む価値が本当にあるのか? それを確かめるのはあなた自身だ。
via:10 Cheapest Countries to Live In/ translated hiroching / edited by parumo
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コメント
1. 匿名処理班
予想はついてたけど…治安は安くないってことだね!?
2. 匿名処理班
ここでこれを言うのは野暮かもしれないけどこのレポはちょっとロシア嫌いなのかな
シリアへの爆撃はアメリカも同時に行っている。モルドバの旧ソ連の建築様式を気にしなければとは老巧化やメンテとはまた違った意味なのだろうか
しかし、外国人にとっては滞在費が安くても地元の人々にはそうでなかったり苦しかったりする生活というのはきついね
3. 匿名処理班
当然ながら金かかる所はみんな住みたがるからこそ金がかかるわけですわな
4. 匿名処理班
とても面白い参考になる記事でした!
ウクライナ、ブルガリア辺りに住んでみたくなった。
5. 匿名処理班
ウクライナ美女が外国人と結婚したがったり
外国で稼ごうとするのがよく理解できる。
自国が安全でなく収入も見込めなく希望が少ないのだろう。
6. 匿名処理班
紛争地域や治安不安地域が安いのは道理
7. 匿名処理班
物価が安い≒貧しいってだけのランクだな…
シリアなんて治安が悪いってレベルじゃないし、住みたいと思えないわ
8.
9. 匿名処理班
結局のところ治安だのインフラだの
いろいろ条件つけてみるとあんま値段変わらんというオチでは
10. 匿名処理班
※1
治安どころか水電気ガス電話含めたインフラ全般整備されてる国も限られてる
11. 匿名処理班
平和って金が掛かるんだなぁ…
12. 匿名処理班
案の定と言うか全部訳ありな国なのね……
13. 匿名処理班
キエフ10年以上前に住んでたけど結構物価高いぞ。家賃も高いし外食は特に。
バクーは確かになんでも安いわ
14. 匿名処理班
上のどこにも行きたくないけど、特にいきなり爆撃機やミサイルが飛んでくる国は問題外だな
15. 匿名処理班
こう言うの見る度思うけど、日本の外で暮らしていける自信がないわ
16. 匿名処理班
どこの国も物価や安くても安全や社会保障がやばい
など欠点もあるし、普通に暮らせる日本が一番
いいかもしれん
17. 匿名処理班
どこも怖くて暮らせないよ
ちょっと予算は高くなるけど、やっぱり日本人なら無難にタイだね
バンコクなら日本食レストランもたくさんあるし、病院は日本語通訳もいるし、日本語通訳がいる動物病院もあるよ。余裕があるならサービスアパートにしてメイドさんに毎日掃除しに来てもらえばよいよ
18. 匿名処理班
日本でもタイ行こうぜ物価安いしええでとか昔はやったけど
今そんなもんでもないのかな
19. 匿名処理班
チュニジアとシリアは是非行きたい国だったけど、我が家に猫が来てくれたので、どこにも行かなくていいやと思えるようになった。
どうかずっと、少しでも長くそう思っていられますように。
20. 匿名処理班
エチオピアが無いので却下
21. 匿名処理班
アゼルバイジャンは人が素朴。田舎の村とか行くとロバに跨る少年とか見れる。そして飯が不味い。
グルジアは景色最高、飯最高。ワインが安くて美味い。方やイスラムの国、方やキリスト教の国。国境一つ超えただけでこうも文化が違うのかと思ったわ。
22. 匿名処理班
ラオスはビエンチャンなら治安は比較的良いし、
物価も安い。観光ポイントも色々あるので長期
滞在でも楽しめると思う。食事も安いし
美味しい(ラオス料理はタイのイサーン料理に
すごく似てる)。
ただ、ご飯は必ずもち米(タイ米のもち米)な
ので、苦手な人には辛いかもしれないw
23. 匿名処理班
ヨハネスブルクがおすすめ
24. 匿名処理班
治安・武力的な脅威もさることながら、
うかつに病気や怪我できない国ばかりだな・・・。