釣り人が夢見る理想のヴィクトリア湖
10万年以上の間、地殻変動や侵食に耐えた湖を「
古代湖」と呼びます。
普通の川や湖は長い年月を掛けて誕生と消滅を繰り返しているので独自の進化を遂げた生き物や進化を止めた生き物はそこで消滅してしまいます。環境に適応し移動を続けたのが今の魚たちなのです。
しかし
「古代湖」ではそこにしか生息しない固有種が繁栄し、その多くは悠久の時を越えて近い姿のまま現代を生きているのです。古代湖には「ダーウィンの箱庭」とも呼ばれる多種多様な生物環境があります。
やっぱり大きいナマズが沢山いるのかな?見た事の無い熱帯魚がめっちゃいるはず!シクリッドの凄い色のヤツ!肺魚?陸に上がって両生類になる前の姿を留め1.5mを越える巨体を持つ肺魚?自分を含め釣り人たちは
かっこいいフォルムの古代魚に目がないのです。
現実のヴィクトリア湖
タンザニア側を中心に貧困が進み、ヴィクトリア湖周辺や島々にはバラックが目立ちます。
飛行機を降りると、
日本人は偽入国審査官や詐欺ガイドにもれなく話しかけられるでしょう。
釣り場に近い村を拠点とし、出来るだけ長い時間釣りを楽しみたいところですが、ヴィクトリア湖周辺の村はマリFナが蔓延、病院はなく殺人も・・・という
北斗をほうふつとさせる村が点在しています。
釣りをするには彼らにお金を渡して船を用意する必要があり、操船やポイントへの案内は現地の漁師たちにお願いする事になりますが、現地の漁師達は
ヴィクトリア湖で年間5000人が命を落としています。
赤道直下に位置するヴィクトリア湖は水温が高いため、雲や雷を伴う嵐が発生しやすいのです。
世界的に見ても珍しい程に極端な天候の変化をするので予測が非常に難しく、現地では天気予報を受信する技術も整備が進んでいないので、アフリカ漁師のオンボロ船では大嵐に巻き込まれれば転覆は免れません。
■箱庭の崩壊 ダーウィンの悪夢
お目当ての固有種も、1950年代の植民地政府による「ナイルパーチ」の放流によって200種が絶滅、現在では外部から「外来ティラピア」が放流され、固有種であるティラピアの数を減らしています。
日本でもお馴染み
「アメリカザリガニ」も大繁殖しているのだとか・・・すっごい強いので日本アメリカを越え
ワールドワイドに侵略地を広げているようです。
固有種の豊富なヴィクトリア湖は「ダーウィンの箱庭」と呼ばれ研究者達にとっても憧れの地でしたが皮肉な事に「
ダーウィンの悪夢」という映画まで作られてしまう結果となりました。
現実的なヴィクトリア湖への挑戦
ヴィクトリア湖へ旅行に出かける方は日本からも結構な数いらっしゃいます。
怪魚系の方は現地で釣りもされていますし、テレビ取材も行われた事があるのでやってはいけない事、行ってはいけない場所を知っている事に加え途上国への海外旅行経験やガイドは必須ですが、
先人達の知恵を借りて現地で釣りをする事は出来そうです。
少しずらせばそれなりに発展したちょっとマシ程度に安全な地域や空港があります。同水系の川が流れる地域には高級ホテルも。アフリカの観光は発達しているのです。
国によって落差が激しいのもアフリカの特徴と言えます。ある程度の冒険も釣り人の憧れではあるのですが安全面を優先せねばなりません。
ヴィクトリア湖で釣れる憧れの怪魚
「
ナイルパーチ」はブラックバスをパワーアップさせたような生態の魚で、
世界の侵略的外来種ワースト100に指定されていますが、その姿は日本幻の魚「
アカメ」に近いフォルムで太古のパワーを感じさせる魚体を持っています。
自分を含め、素人怪魚ファンにとって
ナイルパーチは憧れの存在です。魚が好きな方ほど、どんな背景を持っていてどんな魚なのかは良くご存知かと思いますが、釣ってみたいし、かっこいい。
まだ残っている固有種との出会いも含め、ヴィクトリア湖への旅はまだまだ釣り人の憧れであると言えそうです。
アフリカンフィッシュの味も気になりませんか?
筆者は釣った魚の食味が非常に気になります。筆者は釣り人であると共に美味しいお魚ハンターでもあるのです。アカムツが好きです。読んでいただいている方の中にも、遠く離れたアフリカのお魚料理に興味がある方がいらっしゃると思います。旅行に行ったら筆者はまず間違いなく食べるでしょう。
でもナイルパーチは食べないかも。しかし実は、日本人はナイルパーチの味を知っているんです。
ナイルパーチの切り身はケニアの対日輸出第1位の輸出品。給食やレストランで提供される白身フライ用の切り身として流通しています。2003年以降、日本ではスズキの名前で販売する事が禁止されましたが(スズキ目の魚は凄く多いです、味も似ています)
「名無しの白身フライさん」はOKなんです。楽○でも「ナイルパーチ 切り身」で買えます。
ヨーロッパ・・・フィッシュアンドチップス・・・
ヴィクトリア湖周辺の漁師達はナイルパーチ漁やナイルパーチの加工工場で働いて生計を立てており、ヨーロッパを中心に日本にも輸出されています。
現地での労働は凄く賃金が安いと思います。トラブルも起きているはずです。生態系の破壊と引き換えに仕事とお金、もっと言えば
生きる事にも繋がっているナイルパーチは人間の生活の為に必要な魚であるとも言えます。
クッソ安い憧れの怪魚、ヴィクトリア湖の固有種達、命を落とした漁師、貧困とマリFナ・・・今白身フライさんの事を考えるとそれがナイルパーチなのかは分からないけど、色々な事が浮かんで、自分にとって都合の良い夢を見ていても、そういう社会の中で生きているっていうことなんだなぁ・・・と少し悩んでしまいます。
ブラックバス
日本でもブラックバスによって「ダーウィンの悲劇」に近い事が起きていて、釣り人的には複雑・・・皆さんは日本固有の生態系を破壊する外来種についてどのように...
そういえば、ブラックバスも白身フライの魚に似たような味でした。ナイルパーチ現地で食べてもこんな感じなんだろーなー
アメリカザリガニもうまいんだよなー
本当に恐ろしいのはナイルパーチやアメリカザリガニよりもやっぱり「人間」なのでありました。
※管理人より
次回はロシアの湖、バイカル湖編!ロシアは湖もやっぱりおそロシア。乞うご期待!(来週更新予定)