世界を愛する魔王さま【ミリマス】
ですが、今日はわたしにとっては『特別な朝』になります
今日はわたしの15回目の誕生日、この村では15になると一人旅立つことが許されるという掟があるのです
昔から『外の世界』への憧れが強かったわたし、今日という日をどれだけ待ち望んだことでしょう
旅の支度は一ヶ月前からしてあります、村のみなさんに挨拶して早く『外の世界』へ……
あら……
「貴方は?」
光差す窓辺には小さな妖精さん、何でも妖精さん曰くわたしはいつか多くの人たちを導く『選ばれし者』だそう
生まれて15年 わたしは平凡極まりない毎日を過ごしてきて、自分が特別な何かだと思ったことなどありませんが……
何にせよ旅立ちの日に妖精さんに会うなんて、わたしはとても幸福者ですね
妖精さんはわたしの旅を祝福してくれました、妖精さんの加護があるわたしの旅は、きっと素晴らしいものとなるのでしょう
そう、この時は思っていたのです……
旅立つ前、わたしが『外の世界』に期待していたもの、輝かしき世界、素晴らしき笑顔、溢れんばかりの愛
それは何処を探してもありませんでした
『外の世界』でわたしが見たものは人の憎しみ、怒り、そして乾いた大地に只飲み込まれるいくつもの涙……
そこの人々は毎日隣の強国の兵士に虐げられ、辛い日々を送っていました
村の人たちは誰もが優しく、良い方ばかりです
この村に生まれた、ただそれだけで何故ここまで辛い目に合わなければならないのでしょうか? わたしには理解することが出来ませんでした
妖精さんはわたしのことを『選ばれし者』と言ってくれました
本当にわたしが『選ばれし者』なら……
周辺の町村を巡り、そこに僅かに眠る反乱の種火に火を付けました
それは一つではまさに風前の灯、小さいものだったでしょう しかし数が集まることによりそれは大きな"うねり"となり、その大火は大国をも飲み込むのです
わたしは革命の旗手となり、見事自由を勝ち取ることに成功したのです
この時わたしは思いました、わたしは『選ばれし者』だったのだ と
成し遂げた後わたしが見たものは、かつての強国が没落し虐げられる様でした
革命の灯はその役目を終えた後も消えること無く、人々の鬱憤、憎しみを糧により強く大きく燃え上がるのでした
かつて弱者だったはずの村人はその優しさを"痛み"を忘れ、笑顔のまま狂気を降り下ろします
またある日、わたしはこう呼ばれました『魔王』と
再び放浪の旅を始めたわたしは考えました、どうしてこうなってしまったのか と
わたしは間違っていなかったはずです、人々の切なる願いを聞き、『選ばれし者』としての使命を果たした…… そのはずなのに……
わたしがあの時したことは人々の『怒り』を煽っただけ、だからあのような悲劇が起きてしまったのです
愛無き世界に平和などあり得ません、愛こそが優しさであり幸せであり、唯一の真理だったのです
旅の途中、愛の無い者たちをごまんと見てきました
彼らに愛が無いのならわたしが愛を与えてあげたらいい
そう、なんて簡単だったのでしょう 世界を愛で満たすのなら、わたしが世界を愛せば良かったのです
わたしは再び立ち上がりました、世界を愛すため、そのために世界を統べる『魔王』となるために……
ここにはかつて『覇王』と呼ばれた方の覇道を導いた聖剣が眠るとあります
薄暗く、時折襲いかかる罠をくぐり抜け、わたしは最深部へと辿り着きました
そこには噂通り一本の剣が刺さっていました、おそらく『選ばれし者』のみがあの剣を引き抜くことが出来るのでしょう
わたしは『選ばれし者』なのです 迷い無く剣の元へと踏み出そうとすると…… 懐かしき方と再会しました
「あら…… 妖精さん」
「旅は順調かい?」
「ええ、妖精さんの加護がありましたからこうして無事、旅を続けていられてますよ~♪」
「ふふ、旅立ちの日とは見違えるようだ」
「そうですか~?」
「はい、この剣を手にした者は『覇王』となれるのでしょう?」
「君は知らないのかい? 『覇王』のその後を」
「もちろん、知っていますよ この世界の常識ですから~♪」
何でも覇王さんは妖精さんの祖と共にこの世界を創りましたが、この剣を取った瞬間に狂王と化し世界を自分ただ一人のものにしようとしたそう
妖精さんの祖は覇王さんのもとを去り、人々と手を取り協力して覇王と戦ったそう
世界の『全て』を敵に回したとしても抵抗を続ける覇王さんでしたが、流石に敵わず覇王さんは全身を焼かれ、五体を引き裂かれ滅んだそうです
そして滅びる直前、覇王さんは世界を『割った』 だからこの世界は今でも統一されず、小競り合いを続けている と
「はい、それしか道は無いですから~」
「その結果世界の『全て』を敵に回して身を引き裂かれようとも?」
「わたしは覇王さんのようになりませんよ~ 世界を『愛』で支配するつもりですから~♪」
「本気で言っているのかい?」
「当然ですよ~ わたしは『選ばれし者』ですから、この『愛』をもって世界中を『愛』で包み込むつもりです~」
「ふふっなんて傲慢だ、まるで『魔王』だ」
「よく言われます~」
いざ引き抜くとなると少し躊躇する気持ちもあります、もしあのお伽噺のようにわたしが狂王となってしまい、愛するもの達に憎しみの牙を向けられたら……
それでも、わたしはやらなければならないのです この世界に残された希望はわたししか居ないのですから
「はぁっ!」
剣はあっさりと抜け、わたしはそれを天へと掲げました
その時、薄暗い洞窟に天から一筋の光が差し、わたしを照らしました
「ど、どうしたんだい?」
「『声』が…… 聞こえて……」
「『声』……?」
なるほど…… そうだったのですね……
「消えなさい」
軽い…… まるでわたしの為に用意されたような剣
それを振るい、妖精さんを退けます
「と、朋花…… ?」
「今すぐわたしの目の前から消えなさい、そうしないのなら……」
「貴方のその美しい羽根をもぎ取り、可憐な四肢を引き裂き、骸を燃やし尽くします」
「…… どうやら本当に狂ってしまったようだね、『魔王』朋花」
「『狂った』……?」
「『目が覚めた』のですよ♪」
わたしは剣を突き、妖精さんの喉を貫きました
やはり、わたしはならなければならないようです 『覇王』…… いいえ『魔王』に
『選ばれし者』の宿命として……
>>18
魔王役 天空橋朋花(15) Vo
本編はコミカルな雰囲気だったけど期待してます
痩せ細った地には『奇跡』という名の『愛』を与え
紛争の起きる地には『救済』という名の『愛』を与え
順調に世界をわたしの手の中に収めていきました
もちろん、わたしは狂王になどなりません、誰一人傷付けず 全ての子豚ちゃんに平等に『愛』を与えます
骸の上にふんぞり返るつもりはありません、わたしがなりたいのは全てを統べる『魔王』なのですから~♪
全ての子豚ちゃん達を平等に扱い、恒常的な平和を与え、計画的に富を増やしていくのです
これでわたしの計画の第一段階は達成…… そう思われたのですが……
「せ、聖母さま! ご報告があります!」
「亜利沙さん…… わたしのことは聖母では無く『魔王』と呼ぶように…… 何度言わせれば気がすむのですか?」
「は、はい!
コメント一覧
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- 2017年02月26日 22:56
- 百合子主役でないとここまでダークになるんだな
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- 2017年02月26日 22:56
- ぶー! ぶー!
-
- 2017年02月26日 23:17
- ぶひぶひ
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ぶひぶひ!!