<玩具屋めぐって20年> オロチです。ファミコン・レトロゲーム集めに東海地方の玩具屋・ゲーム屋を巡って20年以上になります。
結婚してから数年間のブランクを経て最近、再開したんだけど、当然のことながら、この20年間で玩具屋・ゲーム屋さんをとりまく環境は大きく様変わりしましたね。一番の変化はやっぱり「昔ながらの玩具屋さん」をほとんど見かけなくなってしまったことでしょうか……
僕が廻っていたとき、東海地方に玩具屋・ゲーム屋は300店舗以上はありました。そのうち昔ながらの玩具屋は僕の知る限り5、60軒くらいあったと思います。でもその8割が最初の5、6年でつぶれましたね。まさにリアルタイムで
毎週どこかの玩具屋がつぶれていたといっても過言じゃないスリリングな状況でした。
※イメージ図 by いらすとや あれは岡崎だったかな。店内がやたら臭いことで有名な個人経営のゲーム屋さんありました。なぜかというと店で大量の犬や猫が飼われてたんです。店内はもはやカウンターとショーケースくらいしかなくて、あとはがらーんとしてて、
犬猫がのさばっているという謎のゲーム屋さんでした(笑)
15年くらい前にその店長さんに聞いた話では、個人店でゲームを扱うには契約料などが高くて儲からないとのことです。したがって、現在、残っている昔ながらの玩具屋さんは、ベビー用品に特化していたり、プラモデルやカードゲームなどゲーム以外のホビー用品に特化していたりする店舗が多いですよね。
<名古屋郊外の玩具屋で> さて、今回、行ってきたお店はそんな数少ない「昔ながらの玩具屋」のひとつでした。場所は名古屋郊外です。しかしながら最近まで僕は(タイミングとか色々な事情により)そのお店に入ったことがなかったんです。
初めてその店に入ったのは2年前だったかな。たまたま通りがかったので寄ってみました。ガラス戸を開け薄暗い店内に入ると、まずは、なわとびなどお遊戯系玩具がお出迎えしてくれます。カウンター周りはプラモデルの塗料などホビー用品で、店の奥がベビー用品でした。中央にショーケースがあり、その中にはパズルや電子ゲームが入っていました。残念ながらファミコンなどビデオゲーム系は見当たらなかったです。ちなみに電子ゲームは
バンダイのLSI系が5,6種類。とくに欲しくなかったので、ひとしきり眺めてから、結局、家族が欲しがっていたフラフープを買って帰りました。700円くらいだったでしょうか。
店番はおばちゃんでした。とくに愛想がいいというわけでもなかったですが、不愛想でもなかったです。ごく普通の対応でした。
そして先日が2回目です。
今回も通りがかったらたまたま開いていたので寄ってみることにしました。店内に入ると奥から出て来たのは70代くらいの白髪の男性。たぶん前回、店にいたおばちゃんのご主人かな。僕はまっさきに電子ゲームが入っていたショーケースのところへ行きました。ラインナップは2年前と変動ありませんでした。すると一番下にバンダイの「パーフェクト麻雀」を発見。
さっそく「これ、いくらですか」と聞くと
「は?」と返ってきました。
どうやら聞こえなかったらしい。
「これ、いくらですか、バンダイの麻雀のやつ……」
もう1度、指さしながら言うと店主のおじさんは
「高いよ」とだけ言いました。まあ、定価で言えば、当時、これはファミコンよりも高かった高級電子ゲームでしたからね。あながち間違いじゃない……
<店主が言い放った悲しいひとこと>「高いのかあ」
僕はそう言って物色を再開しました。思えば、この時点で何かを察しなければならなかったのかもしれません。きっと長いブランクで、その辺りの勘がなまっていたのでしょうね。今までいろんな玩具屋さんを巡って来ました。中にはぜんぜん売る気のない玩具屋さんもありましたよ。「ファミコンソフトありますか」と聞くと「奥にあるけど買わないなら見せない」というお店もありました。見ないと買うかどうか決められないよ!(笑)
3分後くらいに僕は再び店主のおじさんに声をかけました。
同じくバンダイの「ハイパーオリンピック・チャレンジ5」を指さして「これはいくらですか?」と聞いたのです。ちなみに2年前は3000円の値札がついていたような憶えがあります。すると店主のおじさんは
また「は?」と聞き返してきました。聞き返すのがデフォルトなひとかな。とくに気にせず「これです、バンダイのハイパー……」言いかけたとき「それも高いよ」と切り捨てるように言われました。
さすがに一瞬、カチンとなりましたが、大人なので「高いってどれくらいですか。5000円くらい?」と冷静に食い下がりました。すると店主のおじさんは「もっと高い」とぶっきらぼうに返しました。
「1万円くらい?」
「それよりは安い」
「8000円くらいですか?」
「それくらい」
「そうですか……」
ここまでやりとりしたあと、店主のおじさんは呆れたような表情をして、思いがけない言葉を口にしたのです。
「うち商品はインターネットでは売れないよ」
<誰のための商売か> 玩具屋・ゲーム屋をめぐって20年。本当にいろんな出会いがあったけど、こんな悲しい言葉をかけられたのは初めてでした。つまり店主のおじさんは
僕のことを転売屋だと思っていたわけですよね。で、うちにはインターネットで高く売れるようなものは無いから、さっさと帰ってくれという意味ですよね。思わず絶句ですよ。
アラフォーの男が一人、平日の昼間にふらっと入って来たわけですから、まっとうな勤め人じゃないと思われるのは仕方ないですよ。おそらく、そのような輩はたいてい転売屋だったのでしょう。何も知らない店主から1円でも安く買い叩いて、マニアに1円でも高く売ってやろうっていう貧乏根性丸出しなやつもいたのかもしれません。さぞかし厭な思いさせられたんでしょうね。お察しいたします……
僕は何とも言えない気持ちになりつつも平静を装い「ありがとう」と言って店を出ました。外には冷たい風が吹いていました。
2年前は普通に買い物できたのに、みじめなものです。僕はこのとき
何て言ったら正解だったのでしょうか?
まさか、コレクション部屋の写真を見せて「僕はコレクターです」と言えば良かったのでしょうか。それとも店主からすれば僕みたいなやつも対象外だった可能性もあります。たとえば、これも15年くらい前の話。とある個人経営の古本屋の店長さんが言ってました。「東京ではファミコンソフトにはプレミアがついているらしい。でもうちは
近所の子どもたちのために商売してるから、プレミアはつけない」と
。※1 ※1 当時は、古本屋でもよく中古ファミコンソフトを取り扱っていました。 今回の玩具屋さんもそんなスタイルだったのかもしれません。ことわっておくと、僕は他人の商売にとやかく言うほど暇じゃありません。でも、それならそれでもっと言いようがあったろうに……
ここで思い出したのはレトロゲームの
海外流出問題です。様々な意見がある中で「外人だろうが何だろうが
商売なんだから売れれば何でもいいじゃないか」という意見が多く見られました。面白いことにこの意見、今回のお店の対応とまったく逆なんですよね……
商売人の皆が皆、売れれば何でもいいって思ってるわけじゃないってこと。
そもそも転売屋の何がいけないのかというと、感情的にはわかったような気がしていても、即座に「これだ」という言い切れない自分がいます。ダフ屋とか買占め行為とか、明らかに迷惑な連中はわかりやすんですけどね。たとえば、今では業界大手の「まんだらけ」は、まだ誰も注目してなかったときに、全国をめぐって古い漫画を買い集めたのが始まりだと言われています。それって転売屋と本質的に何が違うんですか?
そんなようなことを考えさせる出来事でした。とにかく僕は店主のおじさんから嫌われてしまったようです。誰なら売ってくれて、誰ならダメだったのか。せめて境界線を知りたかったというのが本音ですね……
- 関連記事
-
親子連れで、実際に子供が来て「これが欲しい」と言われれば、店主は拒否できないでしょう
いわゆる「おもちゃ屋」の性分(サガ)という奴かと。お父さんの「お古」で
遊んでます、と言われれば、尚のこと
もしくは「昔、来てた」「子供の頃、来てた」で、
「おじさん、社会人になって久しぶりに来ました。あの頃は親に買って貰ってたけど、
今は自分の稼いだお金で買えるようになりました。あの時、買って貰えなかったんで、
これ、下さい」
で、いけるかな。転売屋が「いけない」なら、ストーリー、思い出補正なんじゃないかな
店側にも、それは必要なのかもしない…。。。。
「嘘」と言うのは簡単だけど、ある意味、エンディングを向かえる人に対してなら、
「方便」でもいいんじゃないのかなー