最新スマホが注目を集めがちな「Mobile World Congress 2017」ですが、このイベントの主催は通信事業者の業界団体であるGSMA。「Congress(会議)」という名が示しているように、キャリアやベンダー、メーカーが一堂に会し、新たな取り組みを決めていく場になっています。そうした事情もあって、MWCには、世界各国からキャリアの首脳陣が集まります。
今年も日本からは、ドコモの吉澤和弘社長、KDDIの田中孝司社長、ソフトバンクグループの孫正義社長らが、スペイン・バルセロナに駆けつけていました。そのうちの1人、ドコモの吉澤氏にMWCの成果やそれを踏まえた今後の取り組みについて、インタビューでうかがうことができました。ここでは、その模様をお届けしていきます。
形になりつつある5G通信やセルラーIoT、Xperia Touchの意外な使いみち?:ドコモ吉澤社長インタビュー
MWCの成果から今後のサービスまで
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――まずは、MWCの成果を教えてください。
吉澤氏
5Gの標準化の加速というところで、オペレーター、ベンダーが22社共同で発表をすることができました。2019年の大規模トライアルに向け、標準化を早めるということです。それ以外では、IoT向けの「カテゴリーM」の話もありますが、こうした歩調を合わせるところに、我々も貢献できています。
ここ(MWC)に来て確認できたのは、去年ぐらいまでは5Gといっても少しコンセプト的なところがありましたが、かなり現実のための技術が具体的に見えてきたということです。そういうステージに入ったのだということを確認できました。標準化を前倒ししたこともあり、今後は、実際のモノやサービスに落とし込んでいくのだと思います。
――ドコモは「NB-IoT」や「LoRa」も開始する予定です。IoTもMWCのトレンドの1つでしたが、こちらはどういったシナリオでしょう。
吉澤氏
セルラーIoTはもうすぐ始めます。ここ3年間ぐらい、LoRaも含めたセルラーIoTは準備してきていて、開発も完了しつつあります。それでスタートを切るということです。
――まずは法人からということよろいですか。
吉澤氏
基本的には法人向けで、対コンシューマーには「+d」の「B2B2X」のソリューションとして提供することになります。具体的な話は今進めているところなので、もう少しお待ちください。
IoTの世界はビジネスとして、いくつかのパターンがあると思います。ただ、難しいのは、低速でいいたくさんのモジュールからの通信に、あまりお金を取るわけにはいかない。B2B2Cであれば、真ん中のBの人が、これをどう包含してサービスとしてCに提供するかがカギになると思います。それを使うために、1カ月いくら通信料をください......にはなりにくいのではないでしょうか。▲IoTの一環としてドコモブースでは「+d」の取り組みを紹介
一例ですが、スマートウォッチを買うときなどに、そういった通信費も含めてしまい、デバイスと合わせて一式いくらというのはありえるでしょう。たとえば、5年間、これだけ使えていくらと最初から決めて、あとは何も取らないというモデルはあると思います。
――2年、3年先の将来像が垣間見えた一方で、今現在の話として、MWCではスマホの新製品も発表されました。この中で、気になったものはありましたか。
吉澤氏
発表されたもののなかだと、XperiaはCMOSセンサーにメモリをつけ、スローモーション撮影できるのがおもしろいなと思いました。あるいは、そのメモリを使って、人の手だと遅れてしまうような瞬間の写真が撮れる。あれは、すごくおもしろいですね。
ソニーさんは、プロジェクターを使った「Xperia Touch」も出されていましたが、ああいったものは、携帯電話の発展系としてありなのではないでしょうか。また、ファーウェイさんのP10のカメラも、カラーとモノクロを組み合わせてキレイな写真が撮れる。ネットワークが高速化する中で、スマホの映像がキレイに見えたり、写真がキレイに取れたりというところには、進化があると思いました。
▲吉澤氏の注目した「Xperia XZ PREMIUM」。ドコモからの発売はあるか?▲ドコモスマホとしてはご無沙汰だが、ファーウェイの「P10」にも注目しているという
ただ、ウェアラブルはあまりありませんでしたね。次のデバイスがどうなるか。人が持つものがどうなるのか、ちょっとまだ先は見えません。今回の展示で、5年先、10年先を見据えたものはなかったですからね。
個人的には、Xperia Touchは業務用にもいいなと思いました。今は(ドコモショップの契約業務を)タブレットでやっていますが、ああいった画面で処理ができれば、テーブルの上でもできます。
▲Xperia Touchは法人向けにも使えるという吉澤氏
――近未来的なドコモショップですね(笑)
吉澤氏
ただ、そのまま壁に写すとプライバシー情報が丸見えになってしまうので、そこは考えなければいけませんが(笑)
――冬モデルでは、MONOが好調だとうかがいました。MWCを見ても、ミッドレンジモデルが増えている印象もあります。ここについては、いかがでしょうか。
吉澤氏
次がMONOのブランドになるかどうかは別にして、そういったものは考えています。我々としては、フラッグシップとミドルレンジということで、ミドルレンジにはもう少し力を入れたい。
MONOは本当に調達の価格がうまくいきました。プラットフォームは、元々あったグローバルモデルで、それを改良して安くできました。ある程度お手頃に入手でき、だからといって悪いものではなく、ベースはしっかりしている端末だと思います。▲MWCにもミッドレンジモデルは多かった。写真はWikoの「WIM」
――先ほどのIoTとも通じますが、最近はMVNOも増え、純増数が以前のような競争の指標にならなくなりました。吉澤社長は次の軸は何になると考えているのでしょうか。
吉澤氏
加藤(元社長)のときからずっと言っていますが、競争とは顧客獲得競争ではありません。サービスや付加価値。今はそれをいかに提供するかの競争になっています。私どものもので言えば、dマーケットを含めたスマートライフのサービスがあります。そういったところをいかに使っていただけるか。収益規模もある程度の率で伸びているということは、お示ししていきます。
そのためには、いい品質の端末も必要ですし、ネットワークもそれだけのデータが流れるようにしなければなりません。そういった品質、容量を確保していくということですね。DAZN(ダ・ゾーン)も、僕はぜひやりたかった。ちょっとあれ(Jリーグ生中継の不具合)がありましたが......。次回は絶対ないようにと、パフォーム社にも話をしているところです。ああいったことで、スマホ、タブと視聴の多様化、感染の多様化はどんどん提供していきますし、それは必要なことだと考えています。