なぜUS配列キーのみ? RAMスロットがあるけど増設は可能? LG gramの秘密に迫る:橋本新義レポート
「なんで16GBメモリで5万円も掛かるんだ」という方はぜひ注目
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3月7日にLGエレクトロニクス・ジャパンから発表になった、軽量ノートPC『LG gram』シリーズ。製品紹介記事でレポートしたように、初代15インチモデルの特徴である軽さを引き継ぎつつも、あえて若干の重量増でバッテリー駆動時間とのバランスを図り、さらに13インチ版と14インチ版も加えたシリーズとなりました。
この点だけでもかなり特徴的なのですが、実は詳細に見ていくと、昨今日本で発売されているモバイルノートPCでは非常にユニークな――条件に適したユーザーにとっては超貴重な――仕様が散見されるモデル。
というのも視点を変えると「日本の量販店で『吊るし』で買えるUSキー配列モデル」であり、「自己責任であれば、軽量なモバイルノートPCでは貴重なメモリやSSDが容易に交換できる」機種でもあるためです。
Gallery: LG ノートPC LG gram | 34 Photos
今回は、事前説明会にてLG gramの製品説明を担当した、LGエレクトロニクス・ジャパンの森 斗志也氏( プロダクトマーケティングチーム次長:上写真)をはじめ、発表会で同機を説明した担当者に、これらの隠れた特徴に関して尋ねた回答を紹介します。
なお、本体仕様の詳細は、下記の関連記事を参照ください。
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US配列キーのみという大胆な販売戦略の理由は?
▲13インチ版と14インチ版のキーボード配列。変形キーなどは比較的少ない印象です
まずは、US配列キーボードのみに絞った理由から。これは、日本語配列を優先して(ローカライズ体勢が整うまで)製品投入を遅らせるより、なるべく速く製品を投入し、日本でもgramブランドを定着させることを優先したから、とのこと。
さて、事情を知らない方のために解説しましょう。他のノートPCメーカーでは、日本向けモデルはJIS配列をベースにした、いわゆる日本語配列のキーボードを搭載して発売されるのが一般的です。
しかしLG gramは、第1世代となる『15Z960-G』の時点から、英語版モデルから配列を変えず、そのまま日本で販売。今回の第2世代モデルでもこの路線を継承するという、ある意味で大胆な販売戦略をとっているのです。
15Z960-Gは、ヨドバシカメラやビックカメラグループなどでも販売されたため、一部US配列支持者からは『大手量販店店頭で即座に買えるUS配列キーボードノートPC』としても知られていました。
▲15インチ版のキー配列は右側にテンキーが配置されるタイプ。初代モデル『15Z960-G』と同仕様です
ただし同機では、軽量ではあるものの15型だけあって本体が大きな点や、キー配列もテンキー搭載となっている点など、モバイルノートとしては良くも悪くもクセがありました。しかし、今回の13インチ版と14インチ版は変形キーなども少なく、非常に素直なUS配列となっているのも特徴。
視点を変えれば「US配列はマスト」という方にとっては「国内量販店で『吊るし』で買える、USキー配列のWindowsモバイルノート」という希有な存在でもあるのです。モバイルノートPCでもUS配列でなくては、という方はぜひチェックしてみて欲しいところです。
なお、15Z960-GをUS配列と気づかずに購入した方からのクレームなどがなかったのか気になりますが、LGエレ側は「現状ではユーザーから困ったという報告は見られません」とのコメントがありました。
ただし今世代では、LGエレ側も慣れていないユーザーへの対策として、パームレスト部に「日本語変換早見表」と称したガイドシールを付けています。これは購入時に貼られていますが、必要がなくなった場合、剥がすのは容易な接着剤を使っているとのこと。
またキーボードのローカライズコストが少ないためか、内外価格差も比較的小さくなっているのも隠れた特徴。米国では13インチ版のCore i5/RAM 8GB/SSD 256GBモデルが999.99ドルで、14インチ版のCore i5/8GB/256GBモデルが1199.99ドルです(リンクは米国LGエレの製品紹介ページ)。
13インチ版は日本版より基本性能が高いモデルのため単純比較はできませんが、日本版はCore i3/4GB/180GBモデルで12万円。14インチ版はほぼ同仕様で14万8000円と、現状のドル円レートと比べてもそこまで高くはないのでは、という範囲に収まっています。
保証外であればメモリやSSDのアップグレードが可能
説明会でもう一つ注目したのが、メモリの交換ができるのでは? という点です。
説明会では、プレゼンでの内部構造の写真や、バッテリーやマザーボードなどの主要パーツ展示がありましたが、「13/14/15Z970 Main B/D PCB」とシルク印刷で描かれたマザーボードには、RAM用のスロットである『SO-DIMMスロット』が搭載されていたのです(さらにその右上にはSSD用のM.2スロットもあります)。
これに対するLGエレ側の回答は、「メモリ増設は本体を開けることになってしまうため、gramでは保証外となってしまいます。そのため推奨はできません。しかしアクセスはゴム足の下にある隠しネジから底面カバーを外すことで可能で、韓国などではメモリ交換を試してみた動画なども投稿されています」という、大人なものでした。
ということなら......と動画を探してみたところ、韓国のハードウェアサイトcdmaniiなどがメモリ増設の手順を紹介する動画を投稿していました。
▲cdmaniiによる新15インチ版『15Z970』の底面カバー外しとメモリ交換手順
▲cdmaniiによる13インチ版『13Z970』の底面カバー外し手順。マザーボードはやはり共通のようです
これらを見る限り、確かに底面カバーを開けるだけで内部にまるまるアクセスできる模様。さらにcdmaniiは、「M.2 SSDを標準のシリアルATA版からNVMe版に交換した」動画までも投稿しており、「これはもしや、下手な大型ノートPCよりやりたい放題なのでは」という印象さえ受けます。
▲同じくcdmaniiによる15インチ版『15Z970』のNVMe SSD交換実験。SSD側(プレクスター M8Pe)のフル速度ではないものの、1GB/秒以上が出ています
なお、LG gramのメモリ仕様にはDDR4Lと記載されている箇所もありますが、これらの動画を見る限り、SO-DIMM側のメモリはDDR4が使えるようです(というより現状では、DDR4LのSO-DIMMはまだ市販されていません)。
【22時20分追記】SO-DIMMに関してDDR4なのかがわかりにくい、という意見がありましたので、メモリスロット部のピン部拡大写真を追加しました。左端のピン付近には「259」という数字が振られていますが、これがDDR4 SO-DIMMの目安となります(総ピン数が260ピン)。DDR3L SO-DIMMですと総計が204ピンとなるため、このピンをカウントする数字は「203」となります。
というわけで保証切れ上等というタイプの歴戦Engadget読者にとっては、「1kgを切る(13型と14型)ノートPCでありながら、メモリやSSDが柔軟にアップグレード可能」な存在でもあるわけです。
昨今の薄型ノートPCではメモリスロットがなく、そのため8GBから16GBにメモリを増設しようとするとそれだけで4~5万円アップとなることも珍しくありません。
しかし本機が採用するDDR4 SO-DIMMであれば、16GBでもわずか1万2000円前後で購入できますし、SSDも昨今は価格上昇中ですが、NVMe対応機種でも安価なインテル600pなどであれば、512GB版が実売2万8000円前後で購入可能と、手頃な価格でアップグレードが可能。
アップグレード作業ができるユーザーにとっては、このコストメリットは決して小さくはないはずです。
▲本体の薄さに関しても、SO-DIMMスロットや内部構造を見た後では、「拡張可能でここまで薄いのか」と、別の感慨が出てきます
このようにLG gramは、軽量かつバッテリー駆動時間も重視したモバイルノートというだけでなく、「量販店で間違ってJIS配列キー仕様を買う心配がなく」「保証の点さえ目をつぶれば内部にまるごとアクセスでき、メモリやSSDがアップグレードし放題」という、歴戦の本誌読者にとってはある意味で「とんでもない」特徴を持ったノートPCでもあるのです。
こうしたポイントを知ると、第一印象がまるで変わって見える、という方も多いのではないでしょうか。