GRANBEATのボディはアルミ削り出し。重さは234gです。オーディオプレイヤーとしての安定感と高級機としての重厚感を感じさせてくれますが、スマートフォンとしてはやや重い部類と言えます。とはいえ、ハイレゾ対応DAPを使う人はこれくらいの重さは許容範囲と言えます。
「GRANBEAT」のスマホとしての機能は、一般的なAndroidスマホと同じで、カメラ機能などもSONY製6MP ExmorRSセンサーとF値2.0のレンズで、4K動画も撮影可能とオマケレベルではない十分な性能です。OSは、Android 6.0 (Marshmallow)を搭載。最新のAndroid 7.0 (Nougat)ではありませんが、バグフィクスが完了した「枯れた」バージョンとも言えます。ハイレゾプレイヤーとスマートフォンとしての通話やWeb閲覧、SNSなどがメインの使い方、という人であれば十分とも言えます。
音楽再生に特化した基板設計
スマートフォンは携帯電話ですから、電波を発します。またBluetoothやWi-Fiも電波を使用した無線規格です。こういった電波や電源などは、音楽再生にノイズなどの影響が出ると言われています
。このため、重度のオーディオ愛好家はマイ電柱を建てるなどするほど。そんなこだわりの部分ですが、GRANBEATでは、基板を分割、回路をゾーン配置することでノイズ低減に勤めています。
まず、Android(スマホ)基板とオーディオ基板が物理的に分けられているほか、Android基板から入力された電源をオーディオ基板の「電源回路出力ゾーン」の電源回路でDC/DC変換し、クリーニングします。
入力された信号は、隣のデジタル変換ゾーンにてDACおよびヘッドホンアンプによりデジタル信号をアナログ変換します。しかも、DACとアンプは2つずつ搭載されている贅沢な仕様です。
そして、最後のヘッドホン出力ゾーンで、整えられたクリーンな信号が出力されてゆくという流れです。
実際に聴いてみたところ、WAVなどの非圧縮音源、可逆圧縮のApple LossLessではもちろん、AACなどの非可逆圧縮された音源においてさえ、「これは圧縮音源だったっけ、非圧縮音源だったっけ?」と表示を確認するくらいに音質が向上したように感じました。
バランスとアンバランス両対応イヤフォンジャック
スマホとしてユニークなのは、3.5φ3極のステレオミニジャック(アンバランス)だけでなく、2.5φ4極のバランス接続ジャックが備わっている点。アンバランスでは、Rch、Lch、グランド(左右共有)の3極のところをRch+、Rch−、Lch+、Lch−の4極で接続することで、ノイズの影響が受けにくくなる利点があります。
今までのオーディオプレイヤーが3極ステレオミニジャックが主流だったのは、それで十分良い音が出せるからと推察されます。ですので、オーディオプレイヤー専用機でさえないスマートフォンであるGRANBEATにバランス接続端子があるのはある意味「過剰な性能」とも言えます。
実際に他のハイレゾ対応スマートフォンは、ソニーモバイルの「Xperia XZ」やASUSの「ZenFone 3」などいくつか存在しますが、バランス端子まで備わっているのは今の所これだけでは?全くどうかしているとしか思えない造りです。(褒め言葉)
正直なところ、(展示会などで試聴機を聴く機会はあったが)筆者はバランス接続で聴くのは、初めてと言っても良いレベルのバランス処女。良い機会でしたので、一緒に借りたバランスケーブル同梱のハイレゾ対応ヘッドホンPioneer「SE-MHR5」にて、アンバランスとバランスで聴き比べてみました。
アンバランスで接続は、普通に良い音を楽しめましたが、バランス接続で試したところ、音の表情が変わったことに驚きました。ステレオ感も増し、それぞれの楽器の音がこんなにも明瞭に聴き分けられるのか?という驚きです。
「SE-MHR5」はとても良いヘッドホンでしたが、例えるなら、3.5φのヘッドホン端子で聴く場合は、キレイに磨き上げられた窓から外の景色を見てる感じとすると、バランス接続で聴く場合は、その窓すら開け放って、ガラス越しでないリアルな風景を見ているような感じだと思いました。
ハイレゾ音源の場合、その差がより際立ちます。例えばギターを弾く際のピックと弦が離れる瞬間のかすかな鳴りだとかがそうです。バイオリンの開放弦での余韻、オーケストラやバンド演奏のそれぞれの楽器の演奏、AIFFやWAVなどの非圧縮音源と比べるより明瞭になる場面もありました。
また、CDではカットされる非可聴域のデータが存在します。これによって実際に耳では聴き取れないものの場の空気感というか、雰囲気が増すように感じました。とはいえ、音質が良くなる(表現が広がる)ということはデータ量も増えます。24bit/96KHzのハイレゾ音源は、CD音源(16bit/44.1kHz)に対して約3.2倍。24bit/192KHzでは6.5倍のデータ量となります。
128 GBの内蔵ストレージはスマートフォンとしては大容量と言えます。ハイレゾ音源は1曲100MBを超えるものも少なくないので、大容量ストレージは嬉しいです。また、最大256GBまでのmicro SDカード(SDHC, SDXC)に対応しているので、より多くの楽曲を持ち運ぶこともできます。
バッテリー容量は3,000mAhと大容量で、ハイレゾ音源を通勤通学の行き帰りに聞き、スマホとして通話やSNSなどを楽しんでも余裕があります。クアルコムの急速充電機能Quick Charge 3.0をサポートしていますので、バッテリー残量が少ない状態からそこそこ使える状態までの充電が素早く行えるのも嬉しい機能です。
注意すべきは、USBの役割を充電専用か、データ転送をONにするかなどを設定するという点。データ転送をONにしないと、楽曲管理アプリを使用しても曲ファイルを転送できない(デバイスとして認識されない)のでした。Androidユーザとしては標準機能なのかもしれないですが、iPhoneユーザには馴染みがないので最初の同期まで、やや苦労しました。
デュアルSIMはそれなりに便利
デュアルSIM(nano SIM×2)は、SIMスロット1が4GLTE、3G対応。SIMスロット2が3G、2G対応。デュアルスタンバイに対応し、同時待ち受けができます(同時に通話できるのは1回線のみ)。
auには対応していませんが、docomoとSoftbankの回線には対応しています。Softbankは、Sprintという表示になっているのが味わい深いです。
着信の場合、どの番号にかかってきたのか表示されますし、発信の場合には、どの番号を使用して発信するかを選べます。
例えば、4G LTE対応のスロット1にデータSIMを入れて、スロット2に通話用の格安SIMを入れるなどで、通話とデータ通信をそれぞれお得なプランで使用すると言ったこともできますし、仕事とプライベートの電話番号を一つのスマホで使い分けると言ったこともできるでしょう。
iPhoneユーザとしてはAndroidの操作そのものに慣れが必要だと感じますが、Google Playを使用してアプリをダウンロードする、電話の受発信をする、標準の音楽再生機能やHF Playerを操作