第二次世界大戦へと突き進んでいた時代、アメリカでは孤立主義が台頭していた。中には移民をアメリカへの脅威だとみなす者もいた。
そんな中発行されたのが、「アメリカ:多くの国々から集った1つの国民の国家(America–A Nation of One People From Many Countries)」と題された地図である。これは1940年、反不寛容評議会(Council Against Intolerance)から発行されたものだ。
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インディアンを除き、全アメリカ人あるいはその先祖は他の国々からやってきた
地図にはこのイラストを担当したエマ・ボーンのこんなメッセージが入っていた。「インディアンを除き、全アメリカ人あるいはその先祖は他の国々からやってきた」
反不寛容評議会は、アメリカが常に様々な国や宗教的背景を起源とする国であったことをアメリカ人に思い出させるために、この仕事をボーンに依頼した。
ボーンのイラストは、州境を消し、1つの国を提示することで、アメリカならではの民族的・宗教的多様性を明らかにしている。
赤いリボンは、西部の日本人から東部のイタリア人まで、移民グループの集まりや彼らが定住した地域を示している。
左下の巻物には、文学・科学・産業・芸術の分野における著名なアメリカ人の名が列挙されている。中にはガーシュインやアインシュタインなど、地図が発行された年にアメリカ人となった人物も見られる。当時、地図は国の一体性を揺るがせかねない偏見と戦うため以外にも、教育用ポスターとしても利用された。
地図は、ここ数十年で広まってきた考え方の比較的初期の例である。つまり、アメリカを強くしたのはその多様性であり、違いは排除されるべきではなく、賞賛されるべきである、という理念だ。
州の境目がないアメリカ合衆国
「この類の地図が特に一般的だったということはありません。このサイズならなおさらです」と話すのは、サザンメイン大学のイアン・フォウラー氏だ。
様式的には1920年代から30年代にかけてのイラスト地図のものを拝借しているが、その地図のメッセージは非常にユニークだという。
1930年代後半から40年代半ばにかけて、反不寛容評議会の教育部門は、書籍・マニュアル・ポスターなど、各種資料を作成していた。
この評議会は、ユダヤ人左翼だった作家ジェームズ・ウォーターマン・ワイズによってニューヨークに設立された組織で、「アメリカの理想・英雄・伝統をアピールして、偏見と戦うこと」を目的としていた。
「州の境目がない合衆国を示すことで、その目的を果たしました」とフォウラー氏。「地図は移民の歴史を用いて、文化的多様性の強みを認知させ、アメリカに存在する多様性を視覚的に示しました」
ボーンはまた同時代の宗教についても強調し、さらにアイダホ州のじゃがいもやメイン州のロブスターといった具合に、各州の特産品も列挙している。
働く人々の姿は、アメリカの繁栄を生み出す上で、いかに移民が貢献したのかを示すためのものだ。
「大切なことは、地図上の誰もが作業に従事していることです。おそらく移民が、当時の国粋主義者や孤立主義者の間のステレオタイプな見方だった”怠け者”などではない、ということを示す意図があるのでしょう」
しかしそうした強みを訴える地図であっても、アフリカ系アメリカ人の扱いには苦労しており、ネイティブアメリカンに至っては一切スペースが割かれていない。
このことから、詩人ラングストン・ヒューズは、自分が所有する地図の南部に描かれた綿農夫の付近にKKKや燃える十字架についての注釈を記した。地図はエレノア・ルーズベルトの目にも留まり、彼女は後に新聞コラムの「マイ・デイ」に好意的な文章を載せている。
「残念なことに、移民のことを邪悪とみなし、アメリカが直面する問題の身代わりにしようとする傾向は、この国の歴史にずっと昔から見られ、今でも社会や政治における発言を汚染しています」とフォウラー氏はコメントする。
via:The Powerful 1940 Map That Depicts America as a Nation of Immigrants/ translated hiroching / edited by parumo
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コメント
1. 匿名処理班
なるほど、傍観を決め込んでいたアメリカを戦争に介入させたのは移民主義の仕業ってことだな。
2. 匿名処理班
インディアンも現在カナダにいるイヌイット以外は後から渡ってきた連中だけどな
3. 匿名処理班
『移民で』成功したのではなく『移民が』成功した国それがアメリカ
皮肉にもこの地図は、そのことを容赦なく教えてくれている
4. 匿名処理班
アメリカインディアン居留地は現在はアメリカの原子力発電所の大部分がある所なんだよね。居留地の財政の問題もあるし、居留地とされた所が荒野みたいな所が多かったから
放射性廃棄物の最終処理場も置かれてるし、ネバダの砂漠の核実験場は居留地の隣り
居留地が定められた頃、アメリカ政府によるインディアン学校が作られてそこから帰ってきた子ども達によるアル中、自殺、家庭内暴力が問題になってて、今もその尾を引いている
当時からこの方針に反対している人達は白色人種側にもいたし、努力したけど上手くいかなかったのが辛いね
インディアンって元は森林付近に住んでた人も多くて農耕も盛んだったけど、段々白色人種によって西の方の荒涼とした土地に追いやられていったのが西部劇の舞台でもある
居留地(白色人種側と友好関係を築いていた所は比較的良好な土地をあてがわれた)は荒野みたいな所で狩猟や畑作に適していない所が多く、更には自活が禁じられていて例え狩りや畑ができる土地でもそれを行うのは御法度だった。政府から食料を与えられる代わりに抵抗は禁ずるとされてたのだけど、後に補助金を減らす為にカジノ経営を居留地で行うよう政府が勧めて今の居留地の問題、アル中でやる気ない人々とここで起こる犯罪を解消するのを難しくしてしまった。今のインディアンは見た目はただのアジア系アメリカ人に見えるけど(服装がそうなので)、文化というものは血統ではなく環境によってつくられるということがよくわかる
5.
6. 匿名処理班
その移民達が、バーベキューという偉大な食文化を作ってくれた。
バーベキューピットボーイズ万歳!!
7.
8. 匿名処理班
でもどうなんだろう、正直世界情勢見てると他国の人が理解できるとは思えない
奪い取ったら自分のもの、って感覚が根強いよね。
日本だってアイヌだの琉球だの遡ったら略奪の歴史だからなあ
9. 匿名処理班
黒人の公民権が確立したのは戦後なんだけどね
口だけではいくらでも言える
それに今の不法移民の問題とは関係ない
10. 匿名処理班
そんなことまで言い始めたら東京西部の人間はいつまでも田舎者さんのままだろう
11. 匿名処理班
アメリカにおいては移民は悪と論じると、先住民以外は全て悪になってしまうジレンマ。
12. 匿名処理班
移民?
13.
14. 匿名処理班
いやいやいや、「移民は脅威」だろ。
アメリカの歴史そのものが物語ってるじゃないか。
15. 匿名処理班
トランプ大統領は移民を悪とはしていない
違法移民は送還するといっているだけなのに反トランプ派は事実を捻じ曲げてる
違法移民をなし崩しに合法移民とした悪い大統領がいたからね
16.
17. 匿名処理班
確かに排外主義の正当化のゴールは自滅ということはナチスを見てもポルポトを見ても日赤を見ても言える。それがどんな形を取るにせよその方向にいく危険はあるという意識は必要
18. 匿名処理班
合法な移民と密入国を同一視するのは違うんじゃない
19. 匿名処理班
移民うんぬんの理屈よりも、現在の不法移民の侵略行為をどうにかしないといかんぞアメ公は 生きるか死ぬかだ