転載元:最適な時間の戻し方
もし仮に時間を巻き戻す能力を持っているとして、それがなんだというんだろうか?
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そんなものなんの役にも立ちやしない。
いや、役には立つのかもな。
それでも、この能力を持つことによって、失うものの方がきっと多い。
「あぁ! ふうせん〜」
甲高い泣き声が耳に響いた。
どうやら子供が風船から手を離して飛ばしてしまったらしい。
仕方がない、そう思いながらいつものように念じる。
時間を戻るのは、そう難しいことじゃない。
ただ、少し手に力を入れ、そうして念じる。
戻れ、と。
ほら、戻った。簡単でしょ?
少年が風船を離す瞬間まで戻る。
それだけで本当に簡単に、風船は俺の手に収まった。
「わぁ! ありがとう、お兄ちゃん」
「いいよ。もう離すなよ?」
「うん!」
そう言うと、少年は勢いよく走り去っていった。
と、まあ、時を戻す力なんてこんな風に使うのが関の山。
これ以上の使い方なんて、身を滅ぼすだけだ。
「優しいんですね」
突然聞こえた声が俺に向けられていると気づいたのは少ししてからだった。
振り向くと同い年くらいの女の子が立っていて、結局俺は変な間の後に言葉を返す。
「別に、ただ風船をとっただけだろ? たいしたことじゃない」
「でも、時間を戻してまでわざわざとってあげるなんて……やっぱり優しいですよ」
彼女の言葉に、心臓がドキンと跳ねたのがわかった。
俺の聞き間違いか?
だとしたら自分の聴力には不安を隠せないが、それならいいんだ。
でも現実はそう簡単にはいかなかった。
「なにいってるん――」
「だから、戻したじゃないですか、時間」
どうやら聞き間違いではないらしい。
聴力への自信は取り戻せたが、代わりに他の問題が発生したみたいだ。
「戻りましたよね? 見てましたよ。タイムリープってやつですね」
「なんで……なんでわかったんだ?」
声が震えているのが自分でもわかる。
生まれた時から持っていたこの能力、今まで誰かにばれたことなんてなかった。
というより誰も気づいてなかったんだ、時間が戻ったなんて認識できたやつは、今まで一人もいなかった。
それなのにどうして?
「簡単なことですよ。私もできるんです、時間の巻き戻り。だからわかりました、あなたが時間を戻ったことも。というより、あなたと一緒に私も戻ったんです、勝手にですけど」
彼女は事なげにそう言ったけれど、俺は到底信じる事ができなかった。
時間を戻すなんて……とは言わない。現に俺だってできるしな。
でも、俺以外にできる人には会った事がない。
「信じられませんか?」
「少し」
嘘。本当はだいぶ。
「どうすれば信じてくれますか?」
「いま、戻してみてくれよ。俺が時間を戻した事が君にわかるなら、その逆も成り立つはずだ」
彼女の話が本当ならだが。
「それは無理です」
「どうして?」
「もう戻ってるからです」
一瞬彼女が何を言ってるのか理解できなかった。
彼女の答えは思ったよりも大胆で、俺の想像を遥かに超えるものだった。
「私、一年後から来たんですよ」
ニコニコしながら話す彼女に、言葉が詰まる。
どういう反応をしたらいいかわからない。
「驚きました?」
「驚いたというより信じられない」
「なんでですか?」
「一年も戻すなんて聞いたことがない」
「あなた以外にこの能力を持ってる人がいるんですか?」
「いない」と思わず口から漏れてしまう。
「だったらわからないですよね」
彼女の言うことはもっともなのかもしれない。
だとしても、やっぱり信じることはできなかった。
一年も時を戻る。考えたことはあるけど、いつもやってみようとは思えなかった
「なんで一年も時を戻ったんだ?」
信じられないと言いながら、結局俺は彼女が時を戻った前提で話し始めていた。
まあでも、多分それでいいんだ。
そうでもしないと話が進まない。
「信じることから始めよう」なんて誰かが言ってただろ?
そういうことだ。
「嫌になったんです。受験とか進路とか、そういうの考えるの。高校三年生の夏は私には息苦しすぎたんです」
彼女は重いものを全て吐き出すように息をついた。
「だからここはパーっと戻っちゃおうかなー、と思いまして……」
あっさりと、ただただあっさりとそうはにかむ彼女は、何故だか美しく見えた。
受験、進路。 その言葉に、夏休みに入る前担任に渡された、進路希望調査用紙を思い出す。
未だ役割を果たすことなく白紙のままのその紙は、俺を縛り付けるようにポケットに押し込まれていた。
「真っ白なキャンパスにはなんでも描ける」
そんな言葉は嘘だ。
いくら白くたって、色付ける絵の具がなければ何もできない。
あいにく俺はそんなもの持ち合わせてなかった。
あの能力で俺は生まれた時に色を奪われたんだ。
俺だけじゃない、みんな色を奪われて生きている。性別、年齢、学歴、その他諸々、たくさん色を奪われて、それで自由だなんてよく謳えたもんだ。
そんな中で急に真っ白な未来を押し付けられて、何かを描けなんて言われて、そんなことできるわけがない。そんな白は黒と大差ないんだ。
進路なんて見えなくて、俺たちは白という闇に飲み込まれている。
光を求めて、夜明けを求めてどれだけもがいても抜け出せずに。
だから俺には彼女の気持ちが痛いほどわかる。
「ええと……信じてくれました?」
伏し目がちに聞く彼女に、俺は二つ返事でイエスと返していた。
さっきまであんなに疑っていたのに、たったそれだけのことで、確証なんてなくても俺はいつの間にか彼女を信じきっていた。
単純かな?
きっとそうなんだろうな。
彼女は「そうですか、よかった」と息を吐くと、続けてまたとんでもないことを言い出した。
「じゃあ、そんな優しいあなたにお願いがあるんです」
「お願い?」
その少し上がった口角に俺はもっと注意するべきだったのかもしれない。
「はい、簡単なお願いです」
だけど、残念ながらもう遅かった。
もう、彼女の口は開かれてしまった。
「私とデートしてください」
*
「さ、次行きましょう。ほら、早く早く」
そう言うと彼女は、俺の手を引いて歩き出した。
ここにきてからノンストップで、絶叫マシン、絶叫マシン、絶叫マシン……と俺の胃はもう限界を迎えていた。
もう言わなくてもわかると思うけど、俺たちは遊園地に来ている。
なんでこんなことになったか、それはもう単純に彼女のあの一言が原因だ。
『私とデートしてください』
そう言うと彼女は、有無を言わせず俺を市内の遊園地まで引っ張っていった。
「受験とか忘れて、パーっと遊びたいんです」
だそうだ。
まぁ、何も言わないでついてく俺も俺だけどさ。結局俺も、どこかで煩わしいものから逃げたい気持ちがあったんだろうな。
そうして地獄の絶叫マシンパレードが始まったわけだ。それにしてもなんで彼女は大丈夫なんだろうか?
俺の三半規管はずっとSOSを告げているのに、彼女は平然としている。
もっとも、テンションの方は全然平然としてなかったが。
何に乗っても楽しそうに、まるで初めてのようにすら思えるくらいはしゃいでいた。
「次はこれにしましょう」
気がつくと次の目的地に到着していたようだ。
次に彼女のお眼鏡にかかったのは、メリーゴーランドのようだった。
「これでいいのか?」
さっきまであんだけ絶叫マシンに乗っていたのに、突然静かな乗り物を選ぶもんだから思わず聞いてしまう。
「なんでですか?」
「いや……なんていうか少し子供っぽいかなって……」
そう言うと驚いたことに、彼女は少しショックを受けている様子だった。
「いや、別にいいんだけどさ」
余計なことを言ったかとあわてて訂正をする。
そもそも俺からしたら、ゆるい乗り物の方がありがたい。
「じゃあ、乗りましょう」
「俺はいいよ、外で見てるから」
「ダメです。いっしょに、ね?」
結局じっと見つめる彼女に耐えられず、俺は白馬の王子様になることになった。
いや、ごめん自分で言っててなんだけど気持ち悪いな。
訂正しよう。
メリーゴーランドに乗ることになった。
そうして乗ったメリーゴーランド一つにしても、彼女はそれだけで楽しそうで、それを見たらなんだか、来て良かったなと俺も思った。
それからたくさんの乗り物を回って、閉園時間も近づく頃にはすっかり空も暗くなっていた。
「あー、楽しかった。今日はありがとうございました。まさか、本当についてきてくれるとは思わなくて、嬉しかった……あなたのおかげで本当に楽しかったです」
「いや、俺こそありがとう。俺もすごい楽しかった。本当、久しぶりに……」
進路のことも能力なことも忘れられた。
それができる時間がどれだけ貴重なことか。
全部彼女のおかげだ。
「最後にあれ乗りましょう、あれ」
指のさす先には、イルミネーションで輝いた観覧車が廻っていた。
中に入ると、上から今日乗ったたくさんの乗り物が見えて、今日は本当に楽しかったなと改めて思う。
彼女と過ごした時間は本当に楽しかった。
楽しかった、できればずっとこうやって何も考えないで過ごしたい。
それでも、やっぱりこれは聞かなきゃいけないことなんだろう。
だから俺は聞く。
目の前で楽しそうに下を見る彼女を、現実に引き戻すように……
「なあ」
「はい」
「あれ嘘だろ? 受験とか忘れてパーっと遊びたいって。本当はもっと何か別の理由、あるだろ?」
彼女の顔が一瞬で強張った。
一息置いて彼女はやっと声を出す。
「本当ですよ。私はそういう人間なんです」
「嘘だ」
たった一日だけど、そんな短い時間でも彼女がそんなことだけで一年も時間を巻き戻るようには思えなかった。
それに、今日彼女はたくさん笑っていたけど、ふとした時にその笑顔が陰るときがあった。
きっと彼女は何か理由があって時間を戻ったんだ。
「君が時間を戻った理由はわからないけどさ、俺ができることだったら協力する。だから話してくれないか? 君の力になりたいんだ」
俺なんかには似合わない言葉だけど、それでも彼女の力になりたい気持ちは本当だ。
「ふぅ」と息を吐くと、彼女は諦めたように視線を落とした。
「あれ、見えますか? 病院。あそこの807号室が私の監獄なんです」
彼女の静かな声が個室に響く。
「小さい頃からずっと病気で、私はあそこに閉じ込められてました。一年後の……つまり今の私は大丈夫なんですよ。手術もしましたし、もう大丈夫なんです」
彼女は精一杯、元気そうに振る舞った。
「でも、この時期の私は結構危ない状況で、少し荒んでました。
それで、北海道におばあちゃんがいるんですけど、そのおばあちゃんが来てくれたんです。北海道からわざわざ。それなのに私はおばあちゃんに冷たくしたんです。この頃の私は自分だけが辛いと思い込んでて、みんなに当たって最低ですよね」
彼女の顔は辛そうに歪んでいた。俺は余計なことをしているんだろうか? それでも一度聞いた以上、俺には最後まで聞く責任がある。
「私は本当に馬鹿でした。これがおばあちゃんに会える最後とも知らないで、そんなことしたんです。それから手術の話が来ました。そして手術が終わって、おばあちゃんに謝りに行こうとしたときに聞かされたんです。私がおばあちゃんに当たった一週間後に……
もう身体も限界に近かったみたいなんです。それなのに私は……そうまでして来てくれたおばあちゃんに…… 手術を控えてる私には内緒にしてたみたいです。おばあちゃんにもう会えないって知った時、私はとりかえしがつかないことをしたんだって、やっと気づいたんです」
「そんな時、時間を巻き戻る力に気づきました。原因はわからないけど、とにかく私はおばあちゃんに謝らなきゃと思って、あの日の次の日に戻ってきたんです」
「どうして冷たくした日に戻らなかったんだ?
その事実ごと消しちゃえばいいんじゃないのか?」
「それは、違う気がしたんです。私がおばあちゃんにひどいこと言ったのは事実ですから。それをなかったことにしちゃいけないと思ったんです。しっかり受け止めて謝らないとって……」
誠実な考え方だ。
でもそれは、自分を傷つける考え方でもある。
「でも、結局無理でした。北海道まで行きたいって言ったら、自分の身体のことわかってるのって言われちゃいました。今の私は大丈夫なんですけどね。それで喧嘩して病院を飛び出して来たんです。そこであなたにあって、つい病気が治ったらやりたいと思ってたことを……
そんなんだからダメなんですよね」
「そんな……ダメなんかじゃ……」
「いいんです、きっと罰なんですよ。おばあちゃんにあんなにひどいこと言って、それをもう一度やり直そうなんて思っちゃいけなかったんです。罪人はおとなしく檻に戻ります。
今日は本当にありがとうございました。生まれて初めてでした。あんなに楽しかったの」
観覧車はいつの間にか終点に到着していた。
「待っ――」
扉を開けて出て行こうとするその手を、俺はつかめなかった。
俺なんかになにができる?
そう思うと俺は彼女を追いかけることができなかった。
夜の遊園地に俺は一人取り残された。
*
つまらない。
この世界は本当につまらない。
毎日毎日決められたように生きている。
死んだように毎日毎日生きている。
『生きてる』とはなんなんだろうか?
心臓が動いてること? 脳が思考してること?
もし生きてることが、活力に溢れていることだとしたら、きっと俺は死んでいる。
夢も目標もなにも持ち合わせないで、ただ呼吸をしてるだけ、そんなの死んでることとなんら変わりない。
俺はなんのために生きてるんだろうか?
たった一人の女の子の望みすら叶えられない、こんな窮屈な世界で、俺はなんのために……
俺の進路調査書はまだ白紙だ。
遊園地を出て家に帰っても、ずっと彼女のことが頭を離れてくれなかった。
彼女の笑顔が、しぐさが、声が、そして最後の少し悲しそうな顔がこびりついて離れない。
どうして世界はこんなにつまらないんだ。
どうして世界は彼女に優しくないんだ。
つまらない。
窮屈な世界がつまらない。
理不尽な世界がつまらない。
なにもできない俺がつまらない。
なにもできないでずっとうじうじしてる俺が一番つまらない。
だったら俺はどうすればいい?
そんなことわかるはずがなかった。
わかるはずがないけど、それでも俺は部屋を飛び出して、走った。
わからないからひたすら走った。
頭の中にあるのは彼女のことだけ。
彼女のことだけ、それだけ考えてただ走る。
それがなんだか心地よい。
それがきっと俺の答えだから、
だからこれはきっと俺なりの、
つまらない世界への反撃だ。
*
深夜の病院は入り口の扉も厳重にしまっていて、本当に監獄みたいだった。
さあ、これから囚われの姫を助け出そう。
息を吸って、手にしたバットを振りかざす。
ガラスの割れる音と同時に、警報ベルの音が鳴り響いた。
けたたましく鳴るベルの中、俺は八階まで走った。
途中誰かに遭遇したら、時間を戻す。
ただ、それだけで俺は無敵だ。
ゲームで言うなら、チート。
上等だ、姫を助けるためならチートだっていいだろ?
腕からは血が流れていた。どうやらドアを割ったときガラスが刺さったらしい。
時間を戻したのに傷が治らないなんて、何故だかわからないが、本当に不便な能力だ。
昔からそう、俺はずっとこの不便な力と生きてきた。
それでも、今はこの不便さのおかげで、俺は前に進みながら時間を戻ることができる。
時間の違和感に気付けるのは、俺と……彼女だけ。
今だけはこの力に感謝をしよう。
807号室、番号をしっかり確認して檻の扉を開ける。
檻のなかで彼女は、不安そうに布団に潜っていた。
「行こう」
目を丸くしてこちらを見る彼女に声をかける。
「……行こうって……どこに」
「北海道」
「何言ってるんですか。無理ですよ、そんなの」
「無理じゃない」
「そもそも時間だってもう間に合わないし」
「俺なら戻せる」
そう言って手に力を込める。
「ほら、戻せた」
俺が病院に飛び込む前まで時間を戻すと、警報ベルの音は鳴り止んだ。
「そんなのずるいですよ。行きたくなっちゃう。まだ、間に合うかもって……思っちゃう」
「間に合うよ」
「本当にいいんですか?」
「ああ、だから行こう」
「あり……がとうございます」と泣き笑う彼女はやっぱり綺麗だった。
囚われの姫を助け出せ。
クエストクリアだ。
*
「これ、なんですか?」
病院を出ると、止めておいた車を見た彼女が声を漏らした。
「軽トラ」
「運転できるんですか?」
「うん」
「免許は?」
「夏休みの初めに取った」
時間を戻したらいくら失敗しても一発合格だ。
「なんで軽トラ?」
「父親の趣味」
「もういいだろ? 早く行こう」
一問一答大会を終えて、車に乗り込もうとすると、彼女に手を掴まれた。
「あ、ちょっと待っててください」
そう言うと彼女は一人、車に乗り込んでいった。
「じゃーん、どうですか?」
少しして飛び出してきた彼女は、病院服から白いワンピースへと着替えていた。
「持ってたんだ、着替え」
「はい。急いでたんで、適当ですけど。それよりどうですか? 感想は?」
「似合ってるよ」
黒い髪に白いワンピース、透き通った彼女にぴったりの格好だと思う。
麦わら帽子をかぶせたいくらいだ。
「えー、ちゃんと見てくださいよ、ほら、もっと」
「見てるって。かわいいよ」
そう言うと彼女は俯いて黙ってしまった。
少し赤くなった頬が見える。
恥ずかしがるなら、言わなきゃいいのに。
「じゃ、行こっか」
仕方ない、と思い俺から声をかける。
「そうですね、なんかワクワクします」
顔あげた彼女の目は本当に透き通ってる。
いいじゃないか。姫を助け出した後は、冒険の始まりだ。順序が逆な気もするけど、それでいい。
エンジンをかけて、まずは東へ。
退屈な日々を、星も見えないこんな夜を抜け出そうと、彼女を連れて飛び出した。
*
「いります? これ」
走り始めて一時間くらい経った頃、彼女が謎のオレンジ色の物体を食べ始めた。
「何それ?」
「干しみかんです」
「おいしいの?」
「おいしいですよ。健康にもいいです」
「はい、どうぞ」と言って輪切りにされたみかんを、口に押し込んできた。
「どうですか?」
「……俺は普通のやつのほうが好きかな。やっぱり新鮮って感じがするし」
本音を言うと乾いた感じが、好みとは言えなかった。どちらかというと嫌いだ。
でも、わざわざそんなこと言う必要はない。
「そうですか……でも、だったらおばあちゃんはみかん農家なんで、食べれますよみかん。まあ、今は旬じゃないですけど」
「楽しみにしとくよ」
そんななんてことない話をしながらしばらく走って、何回か時間を戻す。
ガソリンが切れた頃がちょうどいい、時間の戻しどきだ。
「本当便利ですよね、時間を戻したらガソリンも戻るなんて」
感心したかのように、彼女は話す。
「便利なことなんてほんの少しだよ、こんな能力ないほうがいい」
「なんでですか? こんなに便利なのに」
「なんでもだよ」
そうだこんな能力ないほうがいい。
こんな力があるから、俺は……
今は考えるのはよそう。
今、この力を使っているのは事実だ。
それでも俺はないほうがいいと思うけど。
「パーキングエリア、入ろうか」
考えすぎた頭を冷やすためにと、提案する。
それに少し心配なこともあった。
彼女も異論を唱えることはなく、俺たちは一旦休憩することにした。
*
深夜にパーキングエリアは人も少なく、独特の雰囲気を纏っていた。
「体、本当に大丈夫なの?」
ベンチに待たせておいた彼女に、カフェオレを渡しながらそうたずねる。
病気はもう治ったとさっきは言っていたが、正直それが本当か心配だった。
「大丈夫ですよ。本当に治ったんです。だから心配しないでください」
「じゃああの薬は?」
さっき彼女が干しみかんを取り出した時、バッグの中にたくさんの薬が入っているのが目に入った。
心臓をぎゅっと握られたかのような気分だったよ。あのたくさんの薬は、彼女の病気の大きさを思い起こさせるには十分だった。
「見ちゃったんですか…… でも大丈夫ですよ、あれは手術の後も飲まなきゃいけないんです。けど、あれだけ飲んでれば大丈夫ですから、だから本当に心配しないでください」
「ならいいけど……」
それでもやっぱり、彼女の妙な笑顔が少し不安だ。
「それよりさっきのどういう意味ですか? 時間を戻す能力なんていらないって」
どうやら今度は、彼女が問いただす番らしい。
彼女は真剣な顔つきで俺の目を見ていた。
「別に、そのままの意味だよ。こんな能力いらないだろ?」
「何かあったんですか?」
「別に何もないよ」
「嘘です」
どうやら俺は彼女の目に弱いらしい。
その透き通った目で見つめられると、隠し事なんてできるがしない。
それでも俺は精一杯の虚勢を張って、「あくまでこれは例え話だ」と切り出した。
小学生の男の子がいた。
その子は野球のチームに所属していて、あんまり上手くないけど、それでも野球が大好きだった。
ある日の大会、彼のチームはあまり強くなかったから、初勝利がかかった試合だ。
三点差で劣勢の中、最終回二死満塁、バッターは彼。
まるでマンガみたいなシーンだ。
ここで決めればヒーロー。
結果は三振。
彼は何もできなかった。
チームメイトは彼を責めることはしなかった。
それでも彼は悔しかったんだ。
何もできなかった自分がどうしても許せなかった。
彼は毎日練習した。
みんなが帰った後も一人でずっと素振り。
そんな日が何日が続いた頃、彼は自分が練習している近くに、いつもある女の子がいることに気づいたんだ。
その女の子は同じクラスだけど、あんまり話したことのない子だった。
女の子は「頑張ってね」と言って、彼を応援してくれた。
一人でずっと練習している彼が、気になっていたらしい。
それからたまに女の子は差し入れをもってきてくれるようになったりして、二人の距離はだんだん縮まっていった。
そんなある日、彼は自分にある力があることを思い出すんだ。
彼は時間を戻すことができた。
彼は迷わず時間を戻した。
自分が三振したあの、打席まで。
彼は思いっきりバットを振った。
練習した全てを出すように。
逆転サヨナラ満塁ホームラン。
彼はヒーローになった。
チームメイトもみんな喜んでくれて、彼は嬉しかった。
彼にはこの喜びを一番にあの子に伝えたいと思ったんだ。
彼は走った。
辛いときに応援してくれたあの女の子の所に。
もちろん、時間を戻したんだ、女の子がそのことを覚えてるはずがなかった。
いや、覚えてるなんて言い方もおかしいな。
そんなことはなかったことになったんだ。
彼は気づいたよ、自分がどんなことをしたのか。
そっけない女の子の態度は彼を傷つけるには十分だった。
もちろん女の子が悪いんじゃない、彼が、いや時間を戻す能力なんてものが悪いんだ。
彼は自分しか覚えてない記憶を永遠に、独りで持ち続けなきゃいけない。
それはとても辛いことだ。
彼がその女の子と話すことは、それ以来一回もなかった。
「そんな辛い思いをするから、こんな力は入らないと?」
ずっと黙って話を聞いてくれていた彼女が、ようやく口を開いた。
「例え話だって言ったろ。俺の話じゃないから断言はできない。それでも、俺ならそんな能力はいらない」
「でも、私は忘れませんよ」
彼女が俺の手に自分の手を重ねた。
「私なら忘れません。一緒に戻れるんだから、忘れたりなんかしません。だから安心して……ね?」
まっすぐな瞳でよどみなく、彼女の言葉が伝わってきた。
俺はなんて言えばいいんだろう?
「そろそろ行きましょうか」
言葉を返せないでいる俺を見かねたのか、彼女が俺の手を引いて、車に向かおうとする。
彼女に手を掴まれると、なんだか安心してついていけた。
忘れないでいてくれる彼女なら、俺の孤独を受け止めてくれる気がしたんだ。
だから俺もそんな彼女の力になりたい。
そう思った。
結局俺は、手を引かれるまま車に乗り込んだ。
*
もうどれくらい走っただろうか?
途中何回か休憩したが、意識がだんだんと朦朧としてくる。
それくらい走った。
「あ! 入りましたよ、北海道」
横から彼女の元気な声が聞こえた。
辺りを見回すとほとんど何もなく、なんとなく懐かしい感覚に襲われた。
心の奥深くにある何かをノックされた気分だ。
そんな気分に眠気もあわさって、返事が少しぞんざいになってしまう。
「眠いんですか?」
それをぴったり言い当てるように、彼女がこちらを見た。
「少し」
「休憩します?」
「いや、ここまで来たんだし、あと少しだろ?」
それにもう夜明けも近い。
まあ、時間を戻せばいいだけなんだけどさ。
それでも、なんとなくこのまま行きたい気がした。
「そうですか。ありがとうございます。だったら一つお願いがあるんですけど……」
「お願い?」
彼女のお願いというと、少し不安だ。
出会った時のことを思い出す。
「後ろ行ってもいいですか? 荷台。一度乗ってみたかったんですよね。ここら辺ならもう危なくないと思うんですけど……」
「別にいいけど…… 気をつけろよ?」
「はい!」
そう言って目を輝かせる彼女を見ると、子供っぽいところもあるんだなと思う。
「あ、これかけてください。私のお気に入りの曲です。眠気も吹き飛びますよ」
彼女はCDをプレーヤーに入れ、曲を三つ飛ばして車を降りると、荷台乗り込んで行った。
そうして走り出すと同時に、再生が始まった。
「聴いたことない曲だな」
「未来の曲です。といってもほんの少し先なだけですけど。どうですか?」
「ああ、好きだよ」
引き込まれそうになった。
この曲の中に、世界に、疾走感に。
この曲と俺と彼女とで走ってる気がした。
どこまでも、どこまでも……
今ならどこまででも走れる、そんな気がする。
「太陽!」
彼女の声が響く。
外を見ると、満天の星空が太陽に押し出されるように白み出していた。
その光に向かってアクセルを踏む。
もうきっと止まれない。
あの光の先に俺たちの明日がある、そんな気がするんだ。
「すごいですよ! 光に向かって走ってる。ここが夜明けの最前線。私たち最前線を走ってる」
興奮した彼女の声が後ろから耳に届いた。
その声に押されるように、俺は走る。
パーキングエリアで買った、もうぬるくなってしまった水を口に含んで、走る。
生の実感。
いま、多分俺は最高に生きてる。
光を目指して。
俺たちは最前線を飛ばしてる。
*
「ふぅぅぅぅー」と彼女が、到着してから三回目の深呼吸をした。
畑だらけの中でポツンと建てられた家に向かって、三歩、進んで、また三歩、戻る。
彼女はそんな作業を何回も繰り返している。
「大丈夫?」
「すみません。わかってるんです、行かなきゃって、それでも、ちょっと怖くて……」
ひどいことを言った人に謝りに行く。
その人が許してくれるとわかっていても、やっぱり怖いものは怖いんだろう。
そんなのあたりまえだ。
俺だって同じ状況なら、きっと怖い。
足も止まる。
だけどこれは、俺がどうにかできることじゃない。きっと彼女が自分で進まなきゃいけないんだ。なんとなくそう思う。
それに彼女の足は止まってない。
懸命に進もうとしている。
ここから先は彼女の時間だ。
だったら俺にできることは一つ。
「大丈夫。時間なら俺が何回だって戻せる。だからいくらでも悩めばいい」
「ありがとうございます。じゃあお言葉に甘えて」
それから彼女はたくさん悩んで、考えて、そして一歩踏み出した。
一歩、また一歩と。
「行ってきます」
そう残して進む彼女を、俺はなんだか羨ましく思えた。
きっとあれは俺にはできないことだ。
そうして彼女は俺を置いて進んでいく。
俺はどうなんだろう?
そろそろ答えを出すべきだ。
それでも、やっぱり俺の進路調査書は真っ白で、未来は真っ暗だった。
*
全てを終えて戻ってきた彼女は、なんだか大きく見えた。
「もういいのか?」
「はい、いろいろありがとうございました」
その潤んだ目を目ていると、胸が苦しくなる。
彼女だってわかってるんだろう、ここで別れることがどういうことか。
もう二度と会えない。
それはどれだけ悲しいことなんだろう。
十七歳の少女にそれを選択させることは、どれだけ残酷なんだろう。
だけど、俺たちには何もできない。
時間を戻せても寿命は戻せない。
つくづく俺は無力だ。
俺は精一杯の、絞り出した力で、彼女を引き寄せた。
「すみません。ずるいなぁ、ホント」
そうして彼女は泣いた。
涙は人を強くするんだろうか?
俺にはわからない。
それでも、きっとこの涙に意味はある。
そう思う。そう……思いたい。
「本当に、ありがとうございました。思いっきり泣いたらすっきりしました」
その笑顔は虚勢なんだろうか?
でも、何よりも美しかった。
「ああ、行こっか」
そうして進み出そうとすると、
突然、彼女が視界から消えた。
慌てて辺りを見渡すと、頭を抱えてうずくまる彼女を見つけた。
「おい! どうした?」
思わず声を荒げる。
よくない想像が、頭を巡る。
「だ、大丈夫……です」
「大丈夫なわけないだろ!」
また大きな声を出してしまう。
何やってるんだ、俺は。
こんな時まで何もできないのか?
彼女が話せるようになるまでとにかく待つしかなかった。俺にはそれしかできなかった。
「す……みません。もう平気です」
「本当に? なんなら少し休んで……」
ようやく話せるくらいにはなったみたいだが、汗がしたたる顔は、どう見ても大丈夫には見えない。
「本当に平気です。それより急がないと」
「急ぐ?」
「はい、最後にもう一つ、わがまま言いたいんですけどいいですか?」
「いいよ。なんでも聞く。だから少し安静に――」
「よかった……じゃあ、お願いです。
私と一緒に、ヒーロになりましょう」
彼女の言葉に、俺はあることを思い出す。
そうだ、俺はすっかり忘れていた。
彼女のお願いには、警戒すべきだってことをさ。
*
「テロ?」
「はい」
「テロってあの。ドカーンってやつ?」
「ドカーンってやつです」
我ながら馬鹿な表現だ。
彼女の話を聞きながら、俺たちは北海道にある遊園地に向かっていた。
「さっき、思い出したんです。今日のお昼、あそこの遊園地でテロがおきます」
「本当に?」
日本でテロ。現実味がわかなかった。
「未来人の予言ですよ、リアルジョンタイターです。信じられませんか?」
まあ、彼女がそう言っている以上、信じるしかない。
「わかったよ。それにしても、二日連続で遊園地に行くことになるとは思わなかったな」
「いいじゃないですか、楽しくて」
「楽しみに行くんじゃないだろ?」
「そうですね。でも、私たちならできますよ。だって、時間を戻せるんですよ? 無敵です。見せてやりましょうよ、この力も役に立つって」
無敵。
心躍る響きだ。
彼女に注意しておきながら、俺もなんだか楽しくなってきていた。
そうか俺は無敵なんだ。
でも、それは時間を戻す力があるからじゃない。
俺が無敵なのは彼女と一緒だからだ。
だから俺はどんなことだってできる。
*
「近づくな! 近づいたら、こいつがどうなるかわかるな?」
遊園地に入ると、幸か不幸かすぐに目の前で事件はおきた。
なんとも展開の早いことだ。
それにしても、人質ってもう少し考えて選ぶものじゃないんだろうか?
胸の名札によると、絶賛人質中なのは磯崎さんというらしい。遊園地のスタッフだろう。
二十代後半くらいの男性で、それなりに背も高く、人質にするにはあまり適してない。
まあ、でも、そんなことどうでもいいんだけどさ。
少し手に力を込める。
もう何回もやってきたことだ。
すんなりと、彼が人質にとられる前に時間を戻す。
これで彼は人質から解放だ。
もう人質にされたことも覚えてないだろうな。
そうして彼女の方を向くと、無言で頷く。
そろそろヒーロになる時間だ。
犯人の方に向き直り、時間を戻しながら走る。
1秒ごとに時間を戻して、俺だけが進む。
時間を戻すために力を込めた右手を、握り拳へと昇華させる。
まただ。
生の実感。
いま、確実に生きてるだろうという、感覚。
彼女と一緒に行動して、何回も感じてきた。
いま、この刹那の中で、やっと気づいた。
生きるってことがどういうことか。
心臓が動いてるだけじゃない、
呼吸してるだけでもない、
脳が働いてるだけでもない、
それだけじゃないんだ。
自信を持って言える、彼女と一緒にいる今なら言える。
俺は生きていると。
頭に浮かんだのは、あの白紙の進路調査書。
俺はあの紙に書くのは、とても大切な自分の進路のことだって思ってた。
与えられた色を使って、自分なりの進路を描かなきゃいけないって、そう思ってた。
自分の将来をどうするか?
そう聞かれてると、ずっと思ってた。
でも、きっと違うんだ。
あの紙に書くのはそういうことじゃない。
あの紙で聞かれてるのは、たった一つだけ。
YesかNoで答えられる、簡単な質問。
「自分の将来に責任を持ってあげられますか?」
たったそれだけ。
自分の将来に責任を持つ覚悟はできたか、それを聞いてるだけ。
だからあんな紙に書くことはなんだってよくて、ミュージシャンでも会社員でも、スポーツ選手だって、本当になんでもいいんだ。
ただ覚悟を持ったか。
大事なのはそれだけ。
なんなら、希望を書く欄すらいらない。
枠をはみ出して、紙いっぱいに大きく書けばいい。
自分の色で。
自分の色がないなら、誰かに分けて貰えばいい。
それはいつかきっと自分の色になるから。
刹那の時も終わりが近づき、俺は拳を振る。
それと同時に、目一杯息を吸って宣言しよう。やっと気づいた大事なことを。
先生、俺の進路は未定です。
*
「何考えてるんですか! あの人爆弾とか持ってたんですよ。それをあんな……危険すぎます」
犯人に一発お見舞いしてから、俺たちは能力を駆使して車へ走った。
そのまま現場に残ったら、面倒くさいことになりそうだったしな。
そうして車に乗り込むと同時に、彼女がすごい剣幕でそうまくし立てた。
「ごめん……」
「あんなことして、怪我でもしたらどうするんですか! 」
「でも、君だって、頷いたじゃん」
つい、反論してしまう。
「それは……あんなことすると思わなかったから…… もっと慎重にいくと思うじゃないですか。相手はテロリストですよ?」
「なんか、つい……いけるかなって」
いま思うと無鉄砲だったなと、思わず苦笑する。
でも、あの時は本当になんでも出来る気がしたんだ。
「それに実際、できた」
俺の言葉に呆れたのか、彼女が「ふぅ」と息を吐いた。
そうして目があう。
どっちが先だっただろう。
わからないけど、どちらかの口から小さな笑い声が漏れた。
そうしたらもう二人とも止まらなかった。
目を合わせて、車内に笑い声が響く。
「海行きたいです、海」
しばらくして、彼女がそう切り出した。
「わがまま、さっきので最後じゃなかったのかよ?」
「いいじゃないですか。ほら、早く行きましょう」
「まあ、いいけどさ」
もう彼女のわがままには慣れっこだ。
ここまできたらいくらでも付き合おう。
どこまでも、一緒に……
*
「わたしあなたに会えてよかったです」
軽トラの荷台に座った彼女が、海を見つめながらつぶやいた。
「どうしたんだよ? 突然」
「あなたのおかげで、おぼあちゃんにまた会えて、やりたいこともたくさんやれて、最高の一日でした」
「だから、どう――」
心臓が止まるかと思った。
きゅっと握られたように。
あの時、彼女が持ち歩いてる薬を見てしまった時のように。
不安が心をめぐって、恐怖に押しつぶされそうで……声が上擦る。
「お、おい、どうしたんだよ……なんだよ、それ」
彼女の体が透けていた。
比喩でもなんでもない、文字どおり、消えて無くなってしまうかのように、半透明に。
「ああ、そろそろみたいですね」
自分の手を見つめて、彼女が落ち着いた声を出す。
「そろそろって、なにがだよ。どういうこだよ、説明してくれよ」
「臓器移植すると、ドナーの記憶がレシピエントに移るって話知ってますか?」
「は?」と口から声が漏れたのが自分でもわかった。
なんの話をしているんだ?
移植? 記憶? ドナー? レシピエント?
どういうことだよ?
頭が追いつかなかった。
「これ」と彼女が自分の胸に手を当てた。
「これ、私の心臓じゃないんです。移植された他の誰かの心臓なんです」
言葉が出ない。出せない。
なにを言ったらいいかわからなかった。
「私、この時期危ない状況だったって言ったじゃないですか? あれ、結構深刻な状態だったんです。だけど、突然臓器移植の話が来たんです。いままで、いくら待っても来なかったのに、急に。ホント不思議ですよね」
そこでふと彼女が目を伏せる。
「喜んでいいことじゃないってわかってるんですよ。心臓を移植できるドナーが見つかったってことは、誰かが亡くなるってことですから。だけど、駄目ってわかってても、それでも私は嬉しかったんです。まだ、生きれるって、すごい……嬉しかった…… そうして私は生き延びました」
ピースがはまってしまった感覚があった。
わかりたくないのに、なぜだかわかってしまった。彼女がこれからなにを言うのか。
「もちろん、ドナーの情報は私にはわからなかったんですけど、さっき思い出したんです。臓器に記憶が宿るって本当にあるんですね。びっくりです。その人はさっきあそこの遊園地で、人質になって亡くなるはずだったんです」
繋がってしまった。
全てが……
きっとその人は助かったんだろう。
さっきの俺たちの行動で。
でも、だとしたら彼女は……
「どうして!」と自然と声をあげていた。
「どうして…… ほっとけばよかったじゃないか? そうしたら君は、……生きられた」
最低なことを言っているのはわかってる。
それでも、俺は彼女に生きてて欲しかった。
「無理ですよ」
他人のことなんか気にしないで、自分のことだけ考えてればいいじゃないか。
どうして……そんな、他人のことを……
「だって、私その人のこと大好きになっちゃってましたから」
彼女はそう微笑むと、俺の方に一歩近づいた。
「この心臓に宿ったのは記憶だけじゃありませんでした。この心臓には……時間を戻る力も一緒に宿ってたんです」
こんどこそ思考が止まった。
目の前が真っ白になった。
彼女はなにを言っているんだ?
「この心臓、あなたのなんですよ。私、ずっと前からあなたに助けてもらってたみたいです」
「なん……で」
そのかすれた声は自分の口から出たのに、自分の耳に馴染まなかった。
なんだよ、それ。
なんで、そんな……
彼女が死ななかったら、俺が死んでた?
誰だよ、こんな筋書きを考えた奴は。
どうして、そんなひどいことができるんだよ。
「不思議ですよね。私と出会わなくても、あなたは北海道に来て、遊園地に行ってたんですよ。しかもあなた人質ですからね。笑っちゃいますね」
「笑えるわけないだろ! どうして……俺なんかを助けたんだ」
俺なんかを助けなければ彼女は……
「さっきも言ったじゃないですか。私、あなたのこと大好きになっちゃいました。見捨てるなんて、無理です」
「でも……」
「いいんですよ。どうせもともと助からない命だったんです。少しだけど、いい夢が見れました」
「だったら、俺が死ねばいい。俺が死ねば、君は――」
彼女が手を振り上げるのが見えた、次の瞬間、鈍い音が響いて、頬に痛みが走った。
「許さないよ! 次そんなこと言ったら……私、許さないから」
彼女の頬には涙が伝っていた。
どうして俺は彼女をこんな顔にさせてしまうんだろう。
どうして俺は彼女に何も言ってあげられないんだろう。
どれだけ考えても、適切な言葉は思い浮かばなかった。
「駄目ですよ、そんなこと言ったら、生きてください。しっかりと、私の分まで」
「でも……俺は、君がいないと……」
「大丈夫です。あなたなら、大丈夫」
彼女の体は、もうほとんど見えないくらい薄くなっていた。
「そろそろ、お別れみたいです。あ、これどうぞ。遊園地ミッションクリア報酬です」
そう言って彼女はカバンから干しみかんを取り出した。
「待って」と口にしたいのに、言葉が出ない。
「好きでしょ? みかん」
「俺が好きなのは、普通のみかん」
なんでくだらないことだけが、口から出る。
俺が言いたいのはそんなことじゃなくて……
「そうだ! 最後に一つ苦情があるんですけど」
涙と笑みが混ざった顔で、彼女はこっちを見つめる。
「この心臓おかしいんですよ。あなたを見てるとドキドキするんです。もう、どうしょうもないくらいドキドキ。おかしいですよね、あなたの心臓なのに。……実は相当ナルシストなんじゃないですか?」
「そんな……わけ……ないだろ」
もう自分でも出ているのかわからないくらい、かすれた声。
それでも彼女はしっかりと聞いてくれた。
涙と一緒に笑みがこぼれて、こんな時間がもっと続けばいいのにと思う。
どうか、終わらないで、いつまでも。
でも、その願いが叶うことはなかった。
「冗談です。じゃあ本当にありがとうございした」
「待っ――」
「大好き」
そう残して、彼女は消えてしまった。
本当にあっけなく消えてしまった。
もうどこにも彼女はいない。
二度と会えない。
車の中には、CDと干しみかんだけが残されていた。
*
この世界は間違ってる。
たった一人の女の子すら救えない世界は、なんのためにあるんだ?
彼女を救えないこんな力になんの意味がある?
俺はこんな力なんていらなかった。
昨日を変える力なんていらないから、
そんな力なんていらないから、ただ、彼女と笑える明日が欲しかった。
彼女が消えてから何時間も経って、あたりもすっかり暗くなったのに、俺は一歩動くことができずにいた。
真っ暗な海辺に独り。
彼女がいなくても大丈夫なんて、嘘だ。
彼女がいなきゃ、俺は歩くことすらできない。
こんな世界ならいっそ壊してくれればいいんだ。
俺が死ぬしかない。
結局いくら考えても、それしか思い浮かばなかった。
彼女は駄目って言ったけど、それでも俺にはそれしかない。
俺のこんな使えない能力を、唯一役立てるにはそれしかないんだ。
空を見上げると、北斗七星がひときわ輝いていた。
そうだ、あの魁星に誓おう。
たとえ彼女を裏切ることになったとしても、それでも俺は彼女を救うと。
彼女を少しでも思い出そうと、彼女が残していった干しみかんを手に取った。
それで、俺はやっと気づいた。
ああそうか、俺はずっと勘違いをしていた。
つくづく俺はバカだな。
結局悩む必要なんてなかった。
俺はきっとこのために生まれてきたんだ。
この時のために、この忌まわしい力を持って生まれてきた。
恥ずかしげもなく言うなら、
俺は彼女のために生まれてきたんだ。
俺はいままでずっと、間違って力を使ってた。
今回初めて、正しく力を使おう。
これが、最適な時間の戻し方だ。
俺の願いはただ一つ彼女を救うこと、それだけ。たった一つの願いくらい叶えてしまおう。
今日の日をいつか思い出したときに後悔しないように、そのために……
この身をかけてでも。
手に力を入れ、決意を込めてみかんをかじると、渇いた喉に果汁が染み渡った。
*
長い夢を見ていた気がする。
とても幸せな夢。
ずっと、できればいつまでも夢を見ていたかった。
ずっと彼と一緒に……
耽る意識の中で、私は気付く。
あれは夢じゃない。
私は確かに彼と過ごした。
この感情は夢なんかじゃない。
ぼやける意識の中、重いまぶたを開く。
ここはどこだろうか?
せっかく目を開いたのに、真っ暗だ。
天国? 地獄?
ここはどこ?
暗いのは苦手だ。
もっと言うなら、小さい頃から夜が嫌いだった。独りの夜が嫌い。
お見舞いに来てくれたりしていた人が、夜になると帰っていく。それがどうしようもなく嫌だった。私からみんなを奪う夜が、嫌いだった。
その頃からずっと、私の隣にいた『死』
死ぬってどういうことなんだろう?
生きるってどういうことなんだろう?
わからないけど、もっと生きたかったなと思う。
ああ、なんだろう、急に実感が湧いてきた。
そっか、
「私、死んじゃったんだ」
思わず声に出してしまった。
別に誰かが反応してくるわけでもな――
「そんなわけないだろ」
え?
私、とうとうおかしくなっちゃったみたい。
だって、ここにいるはずがない。
だって、私は死ん――
「死んでないよ。生きてる。しっかり生きてる」
真っ暗な上に、視界が霞んでよく見えない。
それでも目をこすって、涙を拭って、声の方を見る。
本当におかしいな。
なんで?
どうして?
なんて疑問が頭のなかを蠢めく。
それでも、そんな疑問はすぐに吹っ飛んでしまった。
「おはよう」
その声だけで、私の頭のなかは埋め尽くされてしまったから。
彼がそこにいた。
確かにそこに座ってる。
もう二度と聞けないと思ってた。
もう二度と会えないと思ってた。
私は泣いてるんだろうか?
それとも笑ってるのかな?
わからない、もう感情はぐちゃぐちゃで、わけがわかないけど、とりあえずこれだけは言っておかなきゃいかない。
「おはよう……ござ……い……ます」
*
私の目が確かなら、ここは観覧車の中だ。
彼に初めて会った時に行った遊園地。
その観覧車のなかだ。
「ああ、ここ? なんか止まっちゃったんだよね、観覧車。停電かなんかじゃないな? 真っ暗だし。でも一番高いところで止まるって、ラッキーじゃない?」
やっと慣れてきた目で声のする方を向くと、やっぱり彼はここにいる。
いるはずがないのに。
「そんなことじゃなくて…… どうして、あなたここにいるんですか? どうして、私の目の前に。まさか、あなたも死んじゃったんじゃ……」
「違うよ。さっきも言ったろ? 君は生きてる。もちろん俺もだ」
「でも…… あなたが生きてるなら、私が生きれるわけ……」
彼が死なないと、私は心臓を移植できない。
彼が生きてるってことは、私が死んでるってことのはずだった。
「戻した」
「え?」
何を? 時間を?
でも、そんなことしても……
「そんなことしたって…… 時間を戻したって私が助かるわけ……」
「時間を戻したんじゃない。いや、時間を戻したと言えばそうなんだけどさ、でもただの時間じゃない。俺は、君の心臓の時間を戻したんだ」
もう、言葉も出なかった。
彼が何を言っているのかわからなかった。
「ほら、これ」と言って彼が何か袋を取り出す。
中に入っていたのは、私があげた干しみかんだった。
彼はそれを私の前に差し出す。
その、次の瞬間。
それは起きた。
私は確かにこの目でそれを見た。
自分の目を疑ったけど、それでも、これはどうやら真実らしい。
干しみかんは私の前で、普通のみかんへと姿を変えた。
「食べる? 好きでしょ? みかん」
「私が好きなのは、……干しみかん……です」
*
俺はずっと勘違いをしていた。
俺は自分の能力を『時間を戻す力』と言いながら、その実『時間を戻る力』だと思っていた。
俺が時間を戻って行く力だと思っていたんだ。
でも、違った。
よくよく考えたらおかしいんだ。
時間を戻ったのに、怪我は治らないし、服も戻らない。
だったらこの力はなんだ?
そう思った時、答えは簡単に出た。
この力は文字どおり、『時間を戻す力』なんだ。
自分以外のすべての時間を戻す力。
俺は時間を戻っていたんじゃなくて、俺以外の時間を戻していたんだ。
だから彼女は戻らなかった。
俺が身につけてるものの時間も戻らないなら、俺の心臓を身につけていた彼女も、戻らないんだろう。
そう考えたら、全ての線が繋がった。
俺の力は時間を戻す力だった。
そうして次に考えたのが、「ものの時間を個別に戻せないか?」だ。
そうして干しみかんを手にとって、それだけを戻すように手に力を込めた。
あんまり驚きはなかった。
きっとどこかで、なんとなくできるって信じてたんだ。
俺の手には普通のみかんが握られていた。
希望がみえた。
そう思ったよ。
一筋の光。
真っ暗な暗闇に差し込んだ光。
そうして俺は彼女の心臓の時間を戻した。
彼女の心臓が病に蝕まれる、その前まで。
もちろん俺と出会った時の彼女には、二度と会えないことはわかっていた。
あの時の彼女は、もうなかったことになってしまったわけだから。
でも俺はそれで良かった。
彼女が生きてさえいてくれれば、それで良かったんだ。
だから彼女に会うことは諦めていた。
でも、そんなある日気づいてしまった。
あの時の彼女は、なかったことになったわけじゃないんじゃないかって。
彼女が残していった、干しみかんとCDが証明したんだ。
彼女が時間を戻したことで、起きたことはなかったことになってなかった。
そもそも彼女が時間を戻さなければ、俺は死んでいるはずだった。
でも彼女が時間を戻したから、彼女は死んだ。
彼女が死んだら、彼女が時間を戻すことはない。
パラドックス。
それがどっちに転ぶかはわからなかったけど、なんとなく確信できた。
彼女の意識は消えたんじゃなくて、一年後に戻っただけだって。
そう思ったらもう諦めるなんてできなかった。
一パーセントでもいいから、また彼女に会えるなら、会いたい。そう思った。
*
「そうしてまた、君に会えた」
それがどれだけ嬉しかったか。
そんなの言うまでもない。
今日、また彼女に会えたことは、紛れもない奇跡だ。
俺の長い話を、彼女は静かに聞いてくれていた。前にもこんなことがあったなと、なんだか懐かしい。
「たぶん、私はいろんなこと言わなきゃいけないと思うんです。あなたに、謝らなきゃいけないし、お礼を言わなきゃいけないし…… それにたくさん言いたいこともあるんです。でも……やっぱり一番言いたいのは、これなんです」
なんだか暑い。
夏だからだろうか。
多分それだけじゃない。
「大好きです」
その言葉に彼女がまたいなくなってしまうんではないかと、少し不安になる。
だけどそんな不安は杞憂だった。
彼女はしっかりそこにいる。
そこで生きている。
なんて素晴らしいんだろう。
彼女がいるこの世界は、とても色鮮やかに見えた。
「俺も……」と口からこぼれる。
彼女が、彼女がいるこの世界が、
「大好きだ」
*
「なんで遊園地なんですか? しかも今、夜明け前ですよね? どうやって入ったんですか?」
いつまでたっても止まったままの観覧車を不審に思ったのか、彼女が訪ねた。
「さっきまでの君が来たいって言ったんだ。遊園地に入るのは力を使えば簡単だった」
「会ってたんですか? 記憶が戻る前の私に?」
「一週間前からだけどな」
やっぱり彼女にこの一年間の記憶はない。
当たり前のことだけど、少し胸が痛む。
そうしてさっき託された物を思い出した。
これも俺の、忘れちゃいけない記憶だ。
「これ、三十分前の君から。君に渡してくれって頼まれた」
手にした茶色い封筒を彼女に渡す。
中身は知らない。
結局、最後まで教えてくれなかった。
「なんて書いてあるんだ?」
中身を見た瞬間に、動きが止まった彼女が気になって声をかける。
「……内緒です」
いたずらっぽく笑う彼女に、少し見惚れてしまった。
「……名前、なんていうんですか? まだ、聞いてませんでした」
確かにそうだなと思う。
俺たちはずっと、名前も知らないまま一緒にいた。
一年越しの自己紹介なんて、なんだか笑える。
今更、少し気恥ずかしいな。
「藍月 涼介」
自分の名前なのに、なんだかおかしな感じがする。
「涼介さん…… あなたに、ぴったりですね」
彼女に言われるとなんだか照れ臭い。
彼女の一言一言が耳に響いて、それがとても愛おしい。
本当はもう知ってるけど、「君は?」と迷わず尋ねる。
彼女の口からしっかり聞きたい。
彼女は、少しもったいぶるかのように間を置いた後、ようやく口を開いた。
「私は、柑露寺 蛍です」
「……柑露寺 蛍」
その名前はすんなりと、口から滑るように出た。彼女が呼ぶ俺の名前も、耳によく馴染んだ。
観覧車の窓からは朝日が差し込んできていた。
眩しい、朝を告げる合図が。
ああ、やっと夜が終わる。
俺たちの長い長い夜が。
心臓の音が聞こえた。
二人の心臓の音が、重なって、響く。
今まで一番、最高に実感する。
俺たちは生きていると。
もう、何回目だろうか?
この生の実感は、全部彼女がくれたものだった。
あの日を思い出す。
後悔しないようにと、一筋の光を目指して前を向いたあの日を。明日に向かったあの日を。
「涼介さん」と彼女が沈黙を破った。
「次はどんなわがまま、聞いてくれます?」
「なんでもいいよ」
「やった」
いつの間にか観覧車は動き始めていた。
これを降りたらどこに行こうか?
どこだっていい。どこだって行ける。
彼女となら、どこまでだって行ける。
彼女となら、どこまででも生きて征ける。
あの日感じたその思いは、間違ってなかった。
光を目指してどこまででも行こう。
精一杯、後悔しないように、前を向いて。
そうして夜が明けた。
これでこの話はおしまいです
ここまでつきあってくださった方はありがとうございます
なにかありましたらツイッターまでお願いします
http://twitter.com/yuasa_1224
前に書いた「十年前から電話がかかってきた」「死から始まる恋もある」などもよろしくお願いします
また、ツイッターで番外編みたいなものをやろうと思っているので見ていただけると嬉しいです
乙でしたー
ニュー速VIP@おーぷん2ちゃんねるに投稿されたスレッドの紹介でした
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1: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)20:05:12 ID:526
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2: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)20:06:19 ID:526
そんなものなんの役にも立ちやしない。
いや、役には立つのかもな。
それでも、この能力を持つことによって、失うものの方がきっと多い。
3: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)20:06:55 ID:526
「あぁ! ふうせん〜」
甲高い泣き声が耳に響いた。
どうやら子供が風船から手を離して飛ばしてしまったらしい。
仕方がない、そう思いながらいつものように念じる。
時間を戻るのは、そう難しいことじゃない。
ただ、少し手に力を入れ、そうして念じる。
戻れ、と。
ほら、戻った。簡単でしょ?
4: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)20:07:45 ID:526
少年が風船を離す瞬間まで戻る。
それだけで本当に簡単に、風船は俺の手に収まった。
「わぁ! ありがとう、お兄ちゃん」
「いいよ。もう離すなよ?」
「うん!」
そう言うと、少年は勢いよく走り去っていった。
5: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)20:08:15 ID:526
と、まあ、時を戻す力なんてこんな風に使うのが関の山。
これ以上の使い方なんて、身を滅ぼすだけだ。
6: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)20:08:59 ID:526
「優しいんですね」
突然聞こえた声が俺に向けられていると気づいたのは少ししてからだった。
振り向くと同い年くらいの女の子が立っていて、結局俺は変な間の後に言葉を返す。
「別に、ただ風船をとっただけだろ? たいしたことじゃない」
「でも、時間を戻してまでわざわざとってあげるなんて……やっぱり優しいですよ」
7: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)20:09:46 ID:526
彼女の言葉に、心臓がドキンと跳ねたのがわかった。
俺の聞き間違いか?
だとしたら自分の聴力には不安を隠せないが、それならいいんだ。
でも現実はそう簡単にはいかなかった。
8: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)20:10:15 ID:526
「なにいってるん――」
「だから、戻したじゃないですか、時間」
どうやら聞き間違いではないらしい。
聴力への自信は取り戻せたが、代わりに他の問題が発生したみたいだ。
9: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)20:10:40 ID:526
「戻りましたよね? 見てましたよ。タイムリープってやつですね」
「なんで……なんでわかったんだ?」
声が震えているのが自分でもわかる。
生まれた時から持っていたこの能力、今まで誰かにばれたことなんてなかった。
というより誰も気づいてなかったんだ、時間が戻ったなんて認識できたやつは、今まで一人もいなかった。
それなのにどうして?
10: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)20:11:28 ID:526
「簡単なことですよ。私もできるんです、時間の巻き戻り。だからわかりました、あなたが時間を戻ったことも。というより、あなたと一緒に私も戻ったんです、勝手にですけど」
彼女は事なげにそう言ったけれど、俺は到底信じる事ができなかった。
時間を戻すなんて……とは言わない。現に俺だってできるしな。
でも、俺以外にできる人には会った事がない。
11: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)20:11:53 ID:526
「信じられませんか?」
「少し」
嘘。本当はだいぶ。
「どうすれば信じてくれますか?」
「いま、戻してみてくれよ。俺が時間を戻した事が君にわかるなら、その逆も成り立つはずだ」
彼女の話が本当ならだが。
12: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)20:12:53 ID:526
「それは無理です」
「どうして?」
「もう戻ってるからです」
一瞬彼女が何を言ってるのか理解できなかった。
彼女の答えは思ったよりも大胆で、俺の想像を遥かに超えるものだった。
14: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)20:13:15 ID:526
「私、一年後から来たんですよ」
ニコニコしながら話す彼女に、言葉が詰まる。
どういう反応をしたらいいかわからない。
15: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)20:13:41 ID:526
「驚きました?」
「驚いたというより信じられない」
「なんでですか?」
「一年も戻すなんて聞いたことがない」
「あなた以外にこの能力を持ってる人がいるんですか?」
「いない」と思わず口から漏れてしまう。
「だったらわからないですよね」
彼女の言うことはもっともなのかもしれない。
だとしても、やっぱり信じることはできなかった。
16: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)20:14:20 ID:526
一年も時を戻る。考えたことはあるけど、いつもやってみようとは思えなかった
「なんで一年も時を戻ったんだ?」
信じられないと言いながら、結局俺は彼女が時を戻った前提で話し始めていた。
まあでも、多分それでいいんだ。
そうでもしないと話が進まない。
「信じることから始めよう」なんて誰かが言ってただろ?
そういうことだ。
17: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)20:14:51 ID:526
「嫌になったんです。受験とか進路とか、そういうの考えるの。高校三年生の夏は私には息苦しすぎたんです」
彼女は重いものを全て吐き出すように息をついた。
「だからここはパーっと戻っちゃおうかなー、と思いまして……」
あっさりと、ただただあっさりとそうはにかむ彼女は、何故だか美しく見えた。
18: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)20:15:22 ID:526
受験、進路。 その言葉に、夏休みに入る前担任に渡された、進路希望調査用紙を思い出す。
未だ役割を果たすことなく白紙のままのその紙は、俺を縛り付けるようにポケットに押し込まれていた。
19: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)20:15:42 ID:526
「真っ白なキャンパスにはなんでも描ける」
そんな言葉は嘘だ。
いくら白くたって、色付ける絵の具がなければ何もできない。
あいにく俺はそんなもの持ち合わせてなかった。
あの能力で俺は生まれた時に色を奪われたんだ。
俺だけじゃない、みんな色を奪われて生きている。性別、年齢、学歴、その他諸々、たくさん色を奪われて、それで自由だなんてよく謳えたもんだ。
20: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)20:16:25 ID:526
そんな中で急に真っ白な未来を押し付けられて、何かを描けなんて言われて、そんなことできるわけがない。そんな白は黒と大差ないんだ。
進路なんて見えなくて、俺たちは白という闇に飲み込まれている。
光を求めて、夜明けを求めてどれだけもがいても抜け出せずに。
21: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)20:16:49 ID:526
だから俺には彼女の気持ちが痛いほどわかる。
「ええと……信じてくれました?」
伏し目がちに聞く彼女に、俺は二つ返事でイエスと返していた。
さっきまであんなに疑っていたのに、たったそれだけのことで、確証なんてなくても俺はいつの間にか彼女を信じきっていた。
単純かな?
きっとそうなんだろうな。
彼女は「そうですか、よかった」と息を吐くと、続けてまたとんでもないことを言い出した。
22: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)20:17:25 ID:526
「じゃあ、そんな優しいあなたにお願いがあるんです」
「お願い?」
その少し上がった口角に俺はもっと注意するべきだったのかもしれない。
「はい、簡単なお願いです」
だけど、残念ながらもう遅かった。
もう、彼女の口は開かれてしまった。
23: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)20:17:38 ID:526
「私とデートしてください」
24: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)20:18:25 ID:526
*
「さ、次行きましょう。ほら、早く早く」
そう言うと彼女は、俺の手を引いて歩き出した。
ここにきてからノンストップで、絶叫マシン、絶叫マシン、絶叫マシン……と俺の胃はもう限界を迎えていた。
25: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)20:19:21 ID:526
もう言わなくてもわかると思うけど、俺たちは遊園地に来ている。
なんでこんなことになったか、それはもう単純に彼女のあの一言が原因だ。
『私とデートしてください』
そう言うと彼女は、有無を言わせず俺を市内の遊園地まで引っ張っていった。
「受験とか忘れて、パーっと遊びたいんです」
だそうだ。
まぁ、何も言わないでついてく俺も俺だけどさ。結局俺も、どこかで煩わしいものから逃げたい気持ちがあったんだろうな。
26: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)20:19:50 ID:526
そうして地獄の絶叫マシンパレードが始まったわけだ。それにしてもなんで彼女は大丈夫なんだろうか?
俺の三半規管はずっとSOSを告げているのに、彼女は平然としている。
もっとも、テンションの方は全然平然としてなかったが。
何に乗っても楽しそうに、まるで初めてのようにすら思えるくらいはしゃいでいた。
28: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)20:20:55 ID:526
「次はこれにしましょう」
気がつくと次の目的地に到着していたようだ。
次に彼女のお眼鏡にかかったのは、メリーゴーランドのようだった。
「これでいいのか?」
さっきまであんだけ絶叫マシンに乗っていたのに、突然静かな乗り物を選ぶもんだから思わず聞いてしまう。
「なんでですか?」
「いや……なんていうか少し子供っぽいかなって……」
29: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)20:21:16 ID:526
そう言うと驚いたことに、彼女は少しショックを受けている様子だった。
「いや、別にいいんだけどさ」
余計なことを言ったかとあわてて訂正をする。
そもそも俺からしたら、ゆるい乗り物の方がありがたい。
「じゃあ、乗りましょう」
「俺はいいよ、外で見てるから」
「ダメです。いっしょに、ね?」
30: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)20:23:04 ID:526
結局じっと見つめる彼女に耐えられず、俺は白馬の王子様になることになった。
いや、ごめん自分で言っててなんだけど気持ち悪いな。
訂正しよう。
メリーゴーランドに乗ることになった。
そうして乗ったメリーゴーランド一つにしても、彼女はそれだけで楽しそうで、それを見たらなんだか、来て良かったなと俺も思った。
31: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)20:23:45 ID:526
それからたくさんの乗り物を回って、閉園時間も近づく頃にはすっかり空も暗くなっていた。
「あー、楽しかった。今日はありがとうございました。まさか、本当についてきてくれるとは思わなくて、嬉しかった……あなたのおかげで本当に楽しかったです」
「いや、俺こそありがとう。俺もすごい楽しかった。本当、久しぶりに……」
進路のことも能力なことも忘れられた。
それができる時間がどれだけ貴重なことか。
全部彼女のおかげだ。
32: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)20:24:09 ID:526
「最後にあれ乗りましょう、あれ」
指のさす先には、イルミネーションで輝いた観覧車が廻っていた。
33: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)20:24:27 ID:526
中に入ると、上から今日乗ったたくさんの乗り物が見えて、今日は本当に楽しかったなと改めて思う。
彼女と過ごした時間は本当に楽しかった。
楽しかった、できればずっとこうやって何も考えないで過ごしたい。
それでも、やっぱりこれは聞かなきゃいけないことなんだろう。
だから俺は聞く。
目の前で楽しそうに下を見る彼女を、現実に引き戻すように……
35: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)20:25:28 ID:526
「なあ」
「はい」
「あれ嘘だろ? 受験とか忘れてパーっと遊びたいって。本当はもっと何か別の理由、あるだろ?」
彼女の顔が一瞬で強張った。
一息置いて彼女はやっと声を出す。
「本当ですよ。私はそういう人間なんです」
「嘘だ」
たった一日だけど、そんな短い時間でも彼女がそんなことだけで一年も時間を巻き戻るようには思えなかった。
それに、今日彼女はたくさん笑っていたけど、ふとした時にその笑顔が陰るときがあった。
きっと彼女は何か理由があって時間を戻ったんだ。
36: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)20:26:42 ID:526
「君が時間を戻った理由はわからないけどさ、俺ができることだったら協力する。だから話してくれないか? 君の力になりたいんだ」
俺なんかには似合わない言葉だけど、それでも彼女の力になりたい気持ちは本当だ。
「ふぅ」と息を吐くと、彼女は諦めたように視線を落とした。
37: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)20:27:08 ID:526
「あれ、見えますか? 病院。あそこの807号室が私の監獄なんです」
彼女の静かな声が個室に響く。
「小さい頃からずっと病気で、私はあそこに閉じ込められてました。一年後の……つまり今の私は大丈夫なんですよ。手術もしましたし、もう大丈夫なんです」
彼女は精一杯、元気そうに振る舞った。
40: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)20:27:59 ID:526
「でも、この時期の私は結構危ない状況で、少し荒んでました。
それで、北海道におばあちゃんがいるんですけど、そのおばあちゃんが来てくれたんです。北海道からわざわざ。それなのに私はおばあちゃんに冷たくしたんです。この頃の私は自分だけが辛いと思い込んでて、みんなに当たって最低ですよね」
彼女の顔は辛そうに歪んでいた。俺は余計なことをしているんだろうか? それでも一度聞いた以上、俺には最後まで聞く責任がある。
41: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)20:28:46 ID:526
「私は本当に馬鹿でした。これがおばあちゃんに会える最後とも知らないで、そんなことしたんです。それから手術の話が来ました。そして手術が終わって、おばあちゃんに謝りに行こうとしたときに聞かされたんです。私がおばあちゃんに当たった一週間後に……
もう身体も限界に近かったみたいなんです。それなのに私は……そうまでして来てくれたおばあちゃんに…… 手術を控えてる私には内緒にしてたみたいです。おばあちゃんにもう会えないって知った時、私はとりかえしがつかないことをしたんだって、やっと気づいたんです」
42: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)20:29:03 ID:526
「そんな時、時間を巻き戻る力に気づきました。原因はわからないけど、とにかく私はおばあちゃんに謝らなきゃと思って、あの日の次の日に戻ってきたんです」
「どうして冷たくした日に戻らなかったんだ?
その事実ごと消しちゃえばいいんじゃないのか?」
「それは、違う気がしたんです。私がおばあちゃんにひどいこと言ったのは事実ですから。それをなかったことにしちゃいけないと思ったんです。しっかり受け止めて謝らないとって……」
誠実な考え方だ。
でもそれは、自分を傷つける考え方でもある。
43: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)20:29:47 ID:526
「でも、結局無理でした。北海道まで行きたいって言ったら、自分の身体のことわかってるのって言われちゃいました。今の私は大丈夫なんですけどね。それで喧嘩して病院を飛び出して来たんです。そこであなたにあって、つい病気が治ったらやりたいと思ってたことを……
そんなんだからダメなんですよね」
「そんな……ダメなんかじゃ……」
「いいんです、きっと罰なんですよ。おばあちゃんにあんなにひどいこと言って、それをもう一度やり直そうなんて思っちゃいけなかったんです。罪人はおとなしく檻に戻ります。
今日は本当にありがとうございました。生まれて初めてでした。あんなに楽しかったの」
44: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)20:30:14 ID:526
観覧車はいつの間にか終点に到着していた。
「待っ――」
扉を開けて出て行こうとするその手を、俺はつかめなかった。
俺なんかになにができる?
そう思うと俺は彼女を追いかけることができなかった。
夜の遊園地に俺は一人取り残された。
45: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)20:31:08 ID:526
*
つまらない。
この世界は本当につまらない。
毎日毎日決められたように生きている。
死んだように毎日毎日生きている。
『生きてる』とはなんなんだろうか?
心臓が動いてること? 脳が思考してること?
もし生きてることが、活力に溢れていることだとしたら、きっと俺は死んでいる。
46: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)20:31:30 ID:526
夢も目標もなにも持ち合わせないで、ただ呼吸をしてるだけ、そんなの死んでることとなんら変わりない。
俺はなんのために生きてるんだろうか?
たった一人の女の子の望みすら叶えられない、こんな窮屈な世界で、俺はなんのために……
俺の進路調査書はまだ白紙だ。
47: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)20:31:57 ID:526
遊園地を出て家に帰っても、ずっと彼女のことが頭を離れてくれなかった。
彼女の笑顔が、しぐさが、声が、そして最後の少し悲しそうな顔がこびりついて離れない。
48: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)20:32:22 ID:526
どうして世界はこんなにつまらないんだ。
どうして世界は彼女に優しくないんだ。
つまらない。
窮屈な世界がつまらない。
理不尽な世界がつまらない。
なにもできない俺がつまらない。
なにもできないでずっとうじうじしてる俺が一番つまらない。
49: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)20:32:41 ID:526
だったら俺はどうすればいい?
そんなことわかるはずがなかった。
わかるはずがないけど、それでも俺は部屋を飛び出して、走った。
わからないからひたすら走った。
50: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)20:33:01 ID:526
頭の中にあるのは彼女のことだけ。
彼女のことだけ、それだけ考えてただ走る。
それがなんだか心地よい。
それがきっと俺の答えだから、
だからこれはきっと俺なりの、
つまらない世界への反撃だ。
51: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)20:34:11 ID:526
*
深夜の病院は入り口の扉も厳重にしまっていて、本当に監獄みたいだった。
さあ、これから囚われの姫を助け出そう。
息を吸って、手にしたバットを振りかざす。
ガラスの割れる音と同時に、警報ベルの音が鳴り響いた。
けたたましく鳴るベルの中、俺は八階まで走った。
52: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)20:34:41 ID:526
途中誰かに遭遇したら、時間を戻す。
ただ、それだけで俺は無敵だ。
ゲームで言うなら、チート。
上等だ、姫を助けるためならチートだっていいだろ?
53: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)20:35:05 ID:526
腕からは血が流れていた。どうやらドアを割ったときガラスが刺さったらしい。
時間を戻したのに傷が治らないなんて、何故だかわからないが、本当に不便な能力だ。
昔からそう、俺はずっとこの不便な力と生きてきた。
それでも、今はこの不便さのおかげで、俺は前に進みながら時間を戻ることができる。
時間の違和感に気付けるのは、俺と……彼女だけ。
今だけはこの力に感謝をしよう。
54: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)20:35:54 ID:526
807号室、番号をしっかり確認して檻の扉を開ける。
檻のなかで彼女は、不安そうに布団に潜っていた。
55: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)20:37:48 ID:526
「行こう」
目を丸くしてこちらを見る彼女に声をかける。
「……行こうって……どこに」
「北海道」
「何言ってるんですか。無理ですよ、そんなの」
「無理じゃない」
「そもそも時間だってもう間に合わないし」
「俺なら戻せる」
そう言って手に力を込める。
「ほら、戻せた」
俺が病院に飛び込む前まで時間を戻すと、警報ベルの音は鳴り止んだ。
57: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)20:38:09 ID:526
「そんなのずるいですよ。行きたくなっちゃう。まだ、間に合うかもって……思っちゃう」
「間に合うよ」
「本当にいいんですか?」
「ああ、だから行こう」
「あり……がとうございます」と泣き笑う彼女はやっぱり綺麗だった。
58: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)20:38:33 ID:526
囚われの姫を助け出せ。
クエストクリアだ。
59: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)20:39:07 ID:526
*
「これ、なんですか?」
病院を出ると、止めておいた車を見た彼女が声を漏らした。
「軽トラ」
「運転できるんですか?」
「うん」
「免許は?」
「夏休みの初めに取った」
時間を戻したらいくら失敗しても一発合格だ。
「なんで軽トラ?」
「父親の趣味」
60: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)20:40:57 ID:526
「もういいだろ? 早く行こう」
一問一答大会を終えて、車に乗り込もうとすると、彼女に手を掴まれた。
「あ、ちょっと待っててください」
そう言うと彼女は一人、車に乗り込んでいった。
61: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)20:41:19 ID:526
「じゃーん、どうですか?」
少しして飛び出してきた彼女は、病院服から白いワンピースへと着替えていた。
「持ってたんだ、着替え」
「はい。急いでたんで、適当ですけど。それよりどうですか? 感想は?」
「似合ってるよ」
黒い髪に白いワンピース、透き通った彼女にぴったりの格好だと思う。
麦わら帽子をかぶせたいくらいだ。
「えー、ちゃんと見てくださいよ、ほら、もっと」
「見てるって。かわいいよ」
そう言うと彼女は俯いて黙ってしまった。
少し赤くなった頬が見える。
恥ずかしがるなら、言わなきゃいいのに。
62: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)20:41:43 ID:526
「じゃ、行こっか」
仕方ない、と思い俺から声をかける。
「そうですね、なんかワクワクします」
顔あげた彼女の目は本当に透き通ってる。
いいじゃないか。姫を助け出した後は、冒険の始まりだ。順序が逆な気もするけど、それでいい。
63: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)20:42:20 ID:526
エンジンをかけて、まずは東へ。
退屈な日々を、星も見えないこんな夜を抜け出そうと、彼女を連れて飛び出した。
64: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)20:42:54 ID:526
*
「いります? これ」
走り始めて一時間くらい経った頃、彼女が謎のオレンジ色の物体を食べ始めた。
「何それ?」
「干しみかんです」
「おいしいの?」
「おいしいですよ。健康にもいいです」
「はい、どうぞ」と言って輪切りにされたみかんを、口に押し込んできた。
66: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)20:43:12 ID:526
「どうですか?」
「……俺は普通のやつのほうが好きかな。やっぱり新鮮って感じがするし」
本音を言うと乾いた感じが、好みとは言えなかった。どちらかというと嫌いだ。
でも、わざわざそんなこと言う必要はない。
「そうですか……でも、だったらおばあちゃんはみかん農家なんで、食べれますよみかん。まあ、今は旬じゃないですけど」
「楽しみにしとくよ」
67: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)20:43:43 ID:526
そんななんてことない話をしながらしばらく走って、何回か時間を戻す。
ガソリンが切れた頃がちょうどいい、時間の戻しどきだ。
「本当便利ですよね、時間を戻したらガソリンも戻るなんて」
感心したかのように、彼女は話す。
「便利なことなんてほんの少しだよ、こんな能力ないほうがいい」
「なんでですか? こんなに便利なのに」
「なんでもだよ」
そうだこんな能力ないほうがいい。
こんな力があるから、俺は……
68: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)20:43:57 ID:526
今は考えるのはよそう。
今、この力を使っているのは事実だ。
それでも俺はないほうがいいと思うけど。
「パーキングエリア、入ろうか」
考えすぎた頭を冷やすためにと、提案する。
それに少し心配なこともあった。
彼女も異論を唱えることはなく、俺たちは一旦休憩することにした。
69: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)20:44:20 ID:526
*
深夜にパーキングエリアは人も少なく、独特の雰囲気を纏っていた。
「体、本当に大丈夫なの?」
ベンチに待たせておいた彼女に、カフェオレを渡しながらそうたずねる。
病気はもう治ったとさっきは言っていたが、正直それが本当か心配だった。
70: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)20:44:37 ID:526
「大丈夫ですよ。本当に治ったんです。だから心配しないでください」
「じゃああの薬は?」
さっき彼女が干しみかんを取り出した時、バッグの中にたくさんの薬が入っているのが目に入った。
心臓をぎゅっと握られたかのような気分だったよ。あのたくさんの薬は、彼女の病気の大きさを思い起こさせるには十分だった。
71: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)20:44:58 ID:526
「見ちゃったんですか…… でも大丈夫ですよ、あれは手術の後も飲まなきゃいけないんです。けど、あれだけ飲んでれば大丈夫ですから、だから本当に心配しないでください」
「ならいいけど……」
それでもやっぱり、彼女の妙な笑顔が少し不安だ。
72: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)20:45:25 ID:526
「それよりさっきのどういう意味ですか? 時間を戻す能力なんていらないって」
どうやら今度は、彼女が問いただす番らしい。
彼女は真剣な顔つきで俺の目を見ていた。
「別に、そのままの意味だよ。こんな能力いらないだろ?」
「何かあったんですか?」
「別に何もないよ」
「嘘です」
どうやら俺は彼女の目に弱いらしい。
その透き通った目で見つめられると、隠し事なんてできるがしない。
73: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)20:46:24 ID:526
それでも俺は精一杯の虚勢を張って、「あくまでこれは例え話だ」と切り出した。
74: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)20:47:08 ID:526
小学生の男の子がいた。
その子は野球のチームに所属していて、あんまり上手くないけど、それでも野球が大好きだった。
ある日の大会、彼のチームはあまり強くなかったから、初勝利がかかった試合だ。
三点差で劣勢の中、最終回二死満塁、バッターは彼。
まるでマンガみたいなシーンだ。
ここで決めればヒーロー。
76: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)20:48:06 ID:526
結果は三振。
彼は何もできなかった。
チームメイトは彼を責めることはしなかった。
それでも彼は悔しかったんだ。
何もできなかった自分がどうしても許せなかった。
彼は毎日練習した。
みんなが帰った後も一人でずっと素振り。
77: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)20:49:26 ID:526
そんな日が何日が続いた頃、彼は自分が練習している近くに、いつもある女の子がいることに気づいたんだ。
78: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)20:49:51 ID:526
その女の子は同じクラスだけど、あんまり話したことのない子だった。
女の子は「頑張ってね」と言って、彼を応援してくれた。
一人でずっと練習している彼が、気になっていたらしい。
それからたまに女の子は差し入れをもってきてくれるようになったりして、二人の距離はだんだん縮まっていった。
79: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)20:50:17 ID:526
そんなある日、彼は自分にある力があることを思い出すんだ。
彼は時間を戻すことができた。
彼は迷わず時間を戻した。
自分が三振したあの、打席まで。
80: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)20:50:37 ID:526
彼は思いっきりバットを振った。
練習した全てを出すように。
逆転サヨナラ満塁ホームラン。
彼はヒーローになった。
81: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)20:50:58 ID:526
チームメイトもみんな喜んでくれて、彼は嬉しかった。
彼にはこの喜びを一番にあの子に伝えたいと思ったんだ。
彼は走った。
辛いときに応援してくれたあの女の子の所に。
82: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)20:51:28 ID:526
もちろん、時間を戻したんだ、女の子がそのことを覚えてるはずがなかった。
いや、覚えてるなんて言い方もおかしいな。
そんなことはなかったことになったんだ。
彼は気づいたよ、自分がどんなことをしたのか。
83: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)20:52:07 ID:526
そっけない女の子の態度は彼を傷つけるには十分だった。
もちろん女の子が悪いんじゃない、彼が、いや時間を戻す能力なんてものが悪いんだ。
彼は自分しか覚えてない記憶を永遠に、独りで持ち続けなきゃいけない。
それはとても辛いことだ。
彼がその女の子と話すことは、それ以来一回もなかった。
84: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)20:53:07 ID:526
「そんな辛い思いをするから、こんな力は入らないと?」
ずっと黙って話を聞いてくれていた彼女が、ようやく口を開いた。
「例え話だって言ったろ。俺の話じゃないから断言はできない。それでも、俺ならそんな能力はいらない」
85: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)20:53:25 ID:526
「でも、私は忘れませんよ」
彼女が俺の手に自分の手を重ねた。
「私なら忘れません。一緒に戻れるんだから、忘れたりなんかしません。だから安心して……ね?」
まっすぐな瞳でよどみなく、彼女の言葉が伝わってきた。
俺はなんて言えばいいんだろう?
86: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)20:53:45 ID:526
「そろそろ行きましょうか」
言葉を返せないでいる俺を見かねたのか、彼女が俺の手を引いて、車に向かおうとする。
彼女に手を掴まれると、なんだか安心してついていけた。
忘れないでいてくれる彼女なら、俺の孤独を受け止めてくれる気がしたんだ。
だから俺もそんな彼女の力になりたい。
そう思った。
結局俺は、手を引かれるまま車に乗り込んだ。
87: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)20:54:34 ID:526
*
もうどれくらい走っただろうか?
途中何回か休憩したが、意識がだんだんと朦朧としてくる。
それくらい走った。
88: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)20:55:27 ID:526
「あ! 入りましたよ、北海道」
横から彼女の元気な声が聞こえた。
辺りを見回すとほとんど何もなく、なんとなく懐かしい感覚に襲われた。
心の奥深くにある何かをノックされた気分だ。
そんな気分に眠気もあわさって、返事が少しぞんざいになってしまう。
89: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)20:55:46 ID:526
「眠いんですか?」
それをぴったり言い当てるように、彼女がこちらを見た。
「少し」
「休憩します?」
「いや、ここまで来たんだし、あと少しだろ?」
それにもう夜明けも近い。
まあ、時間を戻せばいいだけなんだけどさ。
それでも、なんとなくこのまま行きたい気がした。
90: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)20:56:23 ID:526
「そうですか。ありがとうございます。だったら一つお願いがあるんですけど……」
「お願い?」
彼女のお願いというと、少し不安だ。
出会った時のことを思い出す。
「後ろ行ってもいいですか? 荷台。一度乗ってみたかったんですよね。ここら辺ならもう危なくないと思うんですけど……」
91: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)20:56:47 ID:526
「別にいいけど…… 気をつけろよ?」
「はい!」
そう言って目を輝かせる彼女を見ると、子供っぽいところもあるんだなと思う。
「あ、これかけてください。私のお気に入りの曲です。眠気も吹き飛びますよ」
彼女はCDをプレーヤーに入れ、曲を三つ飛ばして車を降りると、荷台乗り込んで行った。
92: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)20:57:05 ID:526
そうして走り出すと同時に、再生が始まった。
「聴いたことない曲だな」
「未来の曲です。といってもほんの少し先なだけですけど。どうですか?」
「ああ、好きだよ」
引き込まれそうになった。
この曲の中に、世界に、疾走感に。
この曲と俺と彼女とで走ってる気がした。
どこまでも、どこまでも……
今ならどこまででも走れる、そんな気がする。
93: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)20:57:50 ID:526
「太陽!」
彼女の声が響く。
外を見ると、満天の星空が太陽に押し出されるように白み出していた。
その光に向かってアクセルを踏む。
もうきっと止まれない。
あの光の先に俺たちの明日がある、そんな気がするんだ。
94: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)20:58:09 ID:526
「すごいですよ! 光に向かって走ってる。ここが夜明けの最前線。私たち最前線を走ってる」
興奮した彼女の声が後ろから耳に届いた。
95: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)20:58:22 ID:526
その声に押されるように、俺は走る。
パーキングエリアで買った、もうぬるくなってしまった水を口に含んで、走る。
生の実感。
いま、多分俺は最高に生きてる。
96: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)20:58:37 ID:526
光を目指して。
俺たちは最前線を飛ばしてる。
97: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)20:59:52 ID:526
*
「ふぅぅぅぅー」と彼女が、到着してから三回目の深呼吸をした。
畑だらけの中でポツンと建てられた家に向かって、三歩、進んで、また三歩、戻る。
彼女はそんな作業を何回も繰り返している。
98: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)21:00:16 ID:526
「大丈夫?」
「すみません。わかってるんです、行かなきゃって、それでも、ちょっと怖くて……」
ひどいことを言った人に謝りに行く。
その人が許してくれるとわかっていても、やっぱり怖いものは怖いんだろう。
そんなのあたりまえだ。
俺だって同じ状況なら、きっと怖い。
足も止まる。
99: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)21:02:26 ID:526
だけどこれは、俺がどうにかできることじゃない。きっと彼女が自分で進まなきゃいけないんだ。なんとなくそう思う。
それに彼女の足は止まってない。
懸命に進もうとしている。
ここから先は彼女の時間だ。
だったら俺にできることは一つ。
100: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)21:03:37 ID:526
「大丈夫。時間なら俺が何回だって戻せる。だからいくらでも悩めばいい」
「ありがとうございます。じゃあお言葉に甘えて」
それから彼女はたくさん悩んで、考えて、そして一歩踏み出した。
一歩、また一歩と。
101: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)21:04:37 ID:526
「行ってきます」
そう残して進む彼女を、俺はなんだか羨ましく思えた。
きっとあれは俺にはできないことだ。
そうして彼女は俺を置いて進んでいく。
俺はどうなんだろう?
そろそろ答えを出すべきだ。
103: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)21:07:12 ID:526
それでも、やっぱり俺の進路調査書は真っ白で、未来は真っ暗だった。
104: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)21:09:22 ID:526
*
全てを終えて戻ってきた彼女は、なんだか大きく見えた。
「もういいのか?」
「はい、いろいろありがとうございました」
その潤んだ目を目ていると、胸が苦しくなる。
彼女だってわかってるんだろう、ここで別れることがどういうことか。
105: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)21:11:22 ID:526
もう二度と会えない。
それはどれだけ悲しいことなんだろう。
十七歳の少女にそれを選択させることは、どれだけ残酷なんだろう。
だけど、俺たちには何もできない。
時間を戻せても寿命は戻せない。
つくづく俺は無力だ。
106: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)21:12:39 ID:526
俺は精一杯の、絞り出した力で、彼女を引き寄せた。
「すみません。ずるいなぁ、ホント」
そうして彼女は泣いた。
涙は人を強くするんだろうか?
俺にはわからない。
それでも、きっとこの涙に意味はある。
そう思う。そう……思いたい。
107: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)21:13:09 ID:526
「本当に、ありがとうございました。思いっきり泣いたらすっきりしました」
その笑顔は虚勢なんだろうか?
でも、何よりも美しかった。
「ああ、行こっか」
そうして進み出そうとすると、
突然、彼女が視界から消えた。
109: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)21:14:27 ID:526
慌てて辺りを見渡すと、頭を抱えてうずくまる彼女を見つけた。
「おい! どうした?」
思わず声を荒げる。
よくない想像が、頭を巡る。
110: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)21:14:56 ID:526
「だ、大丈夫……です」
「大丈夫なわけないだろ!」
また大きな声を出してしまう。
何やってるんだ、俺は。
こんな時まで何もできないのか?
彼女が話せるようになるまでとにかく待つしかなかった。俺にはそれしかできなかった。
111: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)21:16:22 ID:526
「す……みません。もう平気です」
「本当に? なんなら少し休んで……」
ようやく話せるくらいにはなったみたいだが、汗がしたたる顔は、どう見ても大丈夫には見えない。
「本当に平気です。それより急がないと」
「急ぐ?」
「はい、最後にもう一つ、わがまま言いたいんですけどいいですか?」
「いいよ。なんでも聞く。だから少し安静に――」
「よかった……じゃあ、お願いです。
私と一緒に、ヒーロになりましょう」
112: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)21:16:38 ID:526
彼女の言葉に、俺はあることを思い出す。
そうだ、俺はすっかり忘れていた。
彼女のお願いには、警戒すべきだってことをさ。
113: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)21:17:11 ID:526
*
「テロ?」
「はい」
「テロってあの。ドカーンってやつ?」
「ドカーンってやつです」
我ながら馬鹿な表現だ。
114: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)21:17:30 ID:526
彼女の話を聞きながら、俺たちは北海道にある遊園地に向かっていた。
「さっき、思い出したんです。今日のお昼、あそこの遊園地でテロがおきます」
「本当に?」
日本でテロ。現実味がわかなかった。
「未来人の予言ですよ、リアルジョンタイターです。信じられませんか?」
まあ、彼女がそう言っている以上、信じるしかない。
115: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)21:18:11 ID:526
「わかったよ。それにしても、二日連続で遊園地に行くことになるとは思わなかったな」
「いいじゃないですか、楽しくて」
「楽しみに行くんじゃないだろ?」
「そうですね。でも、私たちならできますよ。だって、時間を戻せるんですよ? 無敵です。見せてやりましょうよ、この力も役に立つって」
116: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)21:18:49 ID:526
無敵。
心躍る響きだ。
彼女に注意しておきながら、俺もなんだか楽しくなってきていた。
そうか俺は無敵なんだ。
でも、それは時間を戻す力があるからじゃない。
俺が無敵なのは彼女と一緒だからだ。
だから俺はどんなことだってできる。
117: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)21:20:41 ID:526
*
「近づくな! 近づいたら、こいつがどうなるかわかるな?」
遊園地に入ると、幸か不幸かすぐに目の前で事件はおきた。
なんとも展開の早いことだ。
118: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)21:21:06 ID:526
それにしても、人質ってもう少し考えて選ぶものじゃないんだろうか?
胸の名札によると、絶賛人質中なのは磯崎さんというらしい。遊園地のスタッフだろう。
二十代後半くらいの男性で、それなりに背も高く、人質にするにはあまり適してない。
まあ、でも、そんなことどうでもいいんだけどさ。
119: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)21:21:25 ID:526
少し手に力を込める。
もう何回もやってきたことだ。
すんなりと、彼が人質にとられる前に時間を戻す。
これで彼は人質から解放だ。
もう人質にされたことも覚えてないだろうな。
120: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)21:21:54 ID:526
そうして彼女の方を向くと、無言で頷く。
そろそろヒーロになる時間だ。
犯人の方に向き直り、時間を戻しながら走る。
1秒ごとに時間を戻して、俺だけが進む。
時間を戻すために力を込めた右手を、握り拳へと昇華させる。
121: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)21:22:28 ID:526
まただ。
生の実感。
いま、確実に生きてるだろうという、感覚。
彼女と一緒に行動して、何回も感じてきた。
いま、この刹那の中で、やっと気づいた。
生きるってことがどういうことか。
122: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)21:22:45 ID:526
心臓が動いてるだけじゃない、
呼吸してるだけでもない、
脳が働いてるだけでもない、
それだけじゃないんだ。
自信を持って言える、彼女と一緒にいる今なら言える。
俺は生きていると。
123: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)21:23:18 ID:526
頭に浮かんだのは、あの白紙の進路調査書。
俺はあの紙に書くのは、とても大切な自分の進路のことだって思ってた。
与えられた色を使って、自分なりの進路を描かなきゃいけないって、そう思ってた。
自分の将来をどうするか?
そう聞かれてると、ずっと思ってた。
124: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)21:23:37 ID:526
でも、きっと違うんだ。
あの紙に書くのはそういうことじゃない。
あの紙で聞かれてるのは、たった一つだけ。
YesかNoで答えられる、簡単な質問。
「自分の将来に責任を持ってあげられますか?」
たったそれだけ。
自分の将来に責任を持つ覚悟はできたか、それを聞いてるだけ。
126: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)21:24:01 ID:526
だからあんな紙に書くことはなんだってよくて、ミュージシャンでも会社員でも、スポーツ選手だって、本当になんでもいいんだ。
ただ覚悟を持ったか。
大事なのはそれだけ。
127: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)21:24:33 ID:526
なんなら、希望を書く欄すらいらない。
枠をはみ出して、紙いっぱいに大きく書けばいい。
自分の色で。
自分の色がないなら、誰かに分けて貰えばいい。
それはいつかきっと自分の色になるから。
128: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)21:24:54 ID:526
刹那の時も終わりが近づき、俺は拳を振る。
それと同時に、目一杯息を吸って宣言しよう。やっと気づいた大事なことを。
129: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)21:25:12 ID:526
先生、俺の進路は未定です。
130: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)21:25:35 ID:526
*
「何考えてるんですか! あの人爆弾とか持ってたんですよ。それをあんな……危険すぎます」
犯人に一発お見舞いしてから、俺たちは能力を駆使して車へ走った。
そのまま現場に残ったら、面倒くさいことになりそうだったしな。
そうして車に乗り込むと同時に、彼女がすごい剣幕でそうまくし立てた。
131: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)21:26:16 ID:526
「ごめん……」
「あんなことして、怪我でもしたらどうするんですか! 」
「でも、君だって、頷いたじゃん」
つい、反論してしまう。
「それは……あんなことすると思わなかったから…… もっと慎重にいくと思うじゃないですか。相手はテロリストですよ?」
「なんか、つい……いけるかなって」
いま思うと無鉄砲だったなと、思わず苦笑する。
でも、あの時は本当になんでも出来る気がしたんだ。
132: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)21:26:43 ID:526
「それに実際、できた」
俺の言葉に呆れたのか、彼女が「ふぅ」と息を吐いた。
そうして目があう。
どっちが先だっただろう。
わからないけど、どちらかの口から小さな笑い声が漏れた。
そうしたらもう二人とも止まらなかった。
目を合わせて、車内に笑い声が響く。
133: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)21:27:18 ID:526
「海行きたいです、海」
しばらくして、彼女がそう切り出した。
「わがまま、さっきので最後じゃなかったのかよ?」
「いいじゃないですか。ほら、早く行きましょう」
「まあ、いいけどさ」
もう彼女のわがままには慣れっこだ。
ここまできたらいくらでも付き合おう。
どこまでも、一緒に……
134: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)21:28:02 ID:526
*
「わたしあなたに会えてよかったです」
軽トラの荷台に座った彼女が、海を見つめながらつぶやいた。
「どうしたんだよ? 突然」
「あなたのおかげで、おぼあちゃんにまた会えて、やりたいこともたくさんやれて、最高の一日でした」
135: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)21:28:23 ID:526
「だから、どう――」
心臓が止まるかと思った。
きゅっと握られたように。
あの時、彼女が持ち歩いてる薬を見てしまった時のように。
不安が心をめぐって、恐怖に押しつぶされそうで……声が上擦る。
136: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)21:30:52 ID:526
「お、おい、どうしたんだよ……なんだよ、それ」
彼女の体が透けていた。
比喩でもなんでもない、文字どおり、消えて無くなってしまうかのように、半透明に。
137: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)21:31:26 ID:526
「ああ、そろそろみたいですね」
自分の手を見つめて、彼女が落ち着いた声を出す。
「そろそろって、なにがだよ。どういうこだよ、説明してくれよ」
「臓器移植すると、ドナーの記憶がレシピエントに移るって話知ってますか?」
「は?」と口から声が漏れたのが自分でもわかった。
なんの話をしているんだ?
移植? 記憶? ドナー? レシピエント?
どういうことだよ?
頭が追いつかなかった。
138: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)21:31:57 ID:526
「これ」と彼女が自分の胸に手を当てた。
「これ、私の心臓じゃないんです。移植された他の誰かの心臓なんです」
言葉が出ない。出せない。
なにを言ったらいいかわからなかった。
139: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)21:32:23 ID:526
「私、この時期危ない状況だったって言ったじゃないですか? あれ、結構深刻な状態だったんです。だけど、突然臓器移植の話が来たんです。いままで、いくら待っても来なかったのに、急に。ホント不思議ですよね」
そこでふと彼女が目を伏せる。
140: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)21:32:42 ID:526
「喜んでいいことじゃないってわかってるんですよ。心臓を移植できるドナーが見つかったってことは、誰かが亡くなるってことですから。だけど、駄目ってわかってても、それでも私は嬉しかったんです。まだ、生きれるって、すごい……嬉しかった…… そうして私は生き延びました」
ピースがはまってしまった感覚があった。
わかりたくないのに、なぜだかわかってしまった。彼女がこれからなにを言うのか。
141: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)21:33:01 ID:526
「もちろん、ドナーの情報は私にはわからなかったんですけど、さっき思い出したんです。臓器に記憶が宿るって本当にあるんですね。びっくりです。その人はさっきあそこの遊園地で、人質になって亡くなるはずだったんです」
繋がってしまった。
全てが……
きっとその人は助かったんだろう。
さっきの俺たちの行動で。
でも、だとしたら彼女は……
142: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)21:33:26 ID:526
「どうして!」と自然と声をあげていた。
「どうして…… ほっとけばよかったじゃないか? そうしたら君は、……生きられた」
最低なことを言っているのはわかってる。
それでも、俺は彼女に生きてて欲しかった。
「無理ですよ」
他人のことなんか気にしないで、自分のことだけ考えてればいいじゃないか。
どうして……そんな、他人のことを……
143: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)21:33:43 ID:526
「だって、私その人のこと大好きになっちゃってましたから」
彼女はそう微笑むと、俺の方に一歩近づいた。
144: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)21:33:58 ID:526
「この心臓に宿ったのは記憶だけじゃありませんでした。この心臓には……時間を戻る力も一緒に宿ってたんです」
145: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)21:34:46 ID:526
こんどこそ思考が止まった。
目の前が真っ白になった。
彼女はなにを言っているんだ?
「この心臓、あなたのなんですよ。私、ずっと前からあなたに助けてもらってたみたいです」
146: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)21:35:11 ID:526
「なん……で」
そのかすれた声は自分の口から出たのに、自分の耳に馴染まなかった。
なんだよ、それ。
なんで、そんな……
彼女が死ななかったら、俺が死んでた?
誰だよ、こんな筋書きを考えた奴は。
どうして、そんなひどいことができるんだよ。
147: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)21:35:34 ID:526
「不思議ですよね。私と出会わなくても、あなたは北海道に来て、遊園地に行ってたんですよ。しかもあなた人質ですからね。笑っちゃいますね」
「笑えるわけないだろ! どうして……俺なんかを助けたんだ」
俺なんかを助けなければ彼女は……
148: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)21:36:40 ID:526
「さっきも言ったじゃないですか。私、あなたのこと大好きになっちゃいました。見捨てるなんて、無理です」
「でも……」
「いいんですよ。どうせもともと助からない命だったんです。少しだけど、いい夢が見れました」
150: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)21:37:26 ID:526
「だったら、俺が死ねばいい。俺が死ねば、君は――」
彼女が手を振り上げるのが見えた、次の瞬間、鈍い音が響いて、頬に痛みが走った。
「許さないよ! 次そんなこと言ったら……私、許さないから」
彼女の頬には涙が伝っていた。
151: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)21:38:22 ID:526
どうして俺は彼女をこんな顔にさせてしまうんだろう。
どうして俺は彼女に何も言ってあげられないんだろう。
どれだけ考えても、適切な言葉は思い浮かばなかった。
152: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)21:38:50 ID:526
「駄目ですよ、そんなこと言ったら、生きてください。しっかりと、私の分まで」
「でも……俺は、君がいないと……」
「大丈夫です。あなたなら、大丈夫」
彼女の体は、もうほとんど見えないくらい薄くなっていた。
153: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)21:39:06 ID:526
「そろそろ、お別れみたいです。あ、これどうぞ。遊園地ミッションクリア報酬です」
そう言って彼女はカバンから干しみかんを取り出した。
「待って」と口にしたいのに、言葉が出ない。
「好きでしょ? みかん」
「俺が好きなのは、普通のみかん」
なんでくだらないことだけが、口から出る。
俺が言いたいのはそんなことじゃなくて……
154: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)21:39:25 ID:526
「そうだ! 最後に一つ苦情があるんですけど」
涙と笑みが混ざった顔で、彼女はこっちを見つめる。
「この心臓おかしいんですよ。あなたを見てるとドキドキするんです。もう、どうしょうもないくらいドキドキ。おかしいですよね、あなたの心臓なのに。……実は相当ナルシストなんじゃないですか?」
155: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)21:39:44 ID:526
「そんな……わけ……ないだろ」
もう自分でも出ているのかわからないくらい、かすれた声。
それでも彼女はしっかりと聞いてくれた。
涙と一緒に笑みがこぼれて、こんな時間がもっと続けばいいのにと思う。
どうか、終わらないで、いつまでも。
でも、その願いが叶うことはなかった。
156: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)21:39:59 ID:526
「冗談です。じゃあ本当にありがとうございした」
「待っ――」
「大好き」
157: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)21:41:06 ID:526
そう残して、彼女は消えてしまった。
本当にあっけなく消えてしまった。
もうどこにも彼女はいない。
二度と会えない。
158: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)21:41:19 ID:526
車の中には、CDと干しみかんだけが残されていた。
159: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)21:42:01 ID:526
*
この世界は間違ってる。
たった一人の女の子すら救えない世界は、なんのためにあるんだ?
彼女を救えないこんな力になんの意味がある?
俺はこんな力なんていらなかった。
160: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)21:43:03 ID:526
昨日を変える力なんていらないから、
そんな力なんていらないから、ただ、彼女と笑える明日が欲しかった。
161: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)21:44:28 ID:526
彼女が消えてから何時間も経って、あたりもすっかり暗くなったのに、俺は一歩動くことができずにいた。
162: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)21:44:44 ID:526
真っ暗な海辺に独り。
彼女がいなくても大丈夫なんて、嘘だ。
彼女がいなきゃ、俺は歩くことすらできない。
こんな世界ならいっそ壊してくれればいいんだ。
163: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)21:44:59 ID:526
俺が死ぬしかない。
結局いくら考えても、それしか思い浮かばなかった。
彼女は駄目って言ったけど、それでも俺にはそれしかない。
俺のこんな使えない能力を、唯一役立てるにはそれしかないんだ。
164: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)21:45:34 ID:526
空を見上げると、北斗七星がひときわ輝いていた。
そうだ、あの魁星に誓おう。
たとえ彼女を裏切ることになったとしても、それでも俺は彼女を救うと。
165: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)21:46:05 ID:526
彼女を少しでも思い出そうと、彼女が残していった干しみかんを手に取った。
それで、俺はやっと気づいた。
ああそうか、俺はずっと勘違いをしていた。
つくづく俺はバカだな。
166: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)21:46:35 ID:526
結局悩む必要なんてなかった。
俺はきっとこのために生まれてきたんだ。
この時のために、この忌まわしい力を持って生まれてきた。
恥ずかしげもなく言うなら、
俺は彼女のために生まれてきたんだ。
俺はいままでずっと、間違って力を使ってた。
今回初めて、正しく力を使おう。
これが、最適な時間の戻し方だ。
167: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)21:46:58 ID:526
俺の願いはただ一つ彼女を救うこと、それだけ。たった一つの願いくらい叶えてしまおう。
今日の日をいつか思い出したときに後悔しないように、そのために……
この身をかけてでも。
168: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)21:47:14 ID:526
手に力を入れ、決意を込めてみかんをかじると、渇いた喉に果汁が染み渡った。
170: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)21:48:13 ID:526
*
長い夢を見ていた気がする。
とても幸せな夢。
ずっと、できればいつまでも夢を見ていたかった。
ずっと彼と一緒に……
171: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)21:48:40 ID:526
耽る意識の中で、私は気付く。
あれは夢じゃない。
私は確かに彼と過ごした。
この感情は夢なんかじゃない。
172: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)21:49:11 ID:526
ぼやける意識の中、重いまぶたを開く。
ここはどこだろうか?
せっかく目を開いたのに、真っ暗だ。
天国? 地獄?
ここはどこ?
174: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)21:49:28 ID:526
暗いのは苦手だ。
もっと言うなら、小さい頃から夜が嫌いだった。独りの夜が嫌い。
お見舞いに来てくれたりしていた人が、夜になると帰っていく。それがどうしようもなく嫌だった。私からみんなを奪う夜が、嫌いだった。
175: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)21:49:55 ID:526
その頃からずっと、私の隣にいた『死』
死ぬってどういうことなんだろう?
生きるってどういうことなんだろう?
わからないけど、もっと生きたかったなと思う。
ああ、なんだろう、急に実感が湧いてきた。
176: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)21:50:25 ID:526
そっか、
「私、死んじゃったんだ」
思わず声に出してしまった。
別に誰かが反応してくるわけでもな――
「そんなわけないだろ」
え?
177: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)21:50:47 ID:526
私、とうとうおかしくなっちゃったみたい。
だって、ここにいるはずがない。
だって、私は死ん――
「死んでないよ。生きてる。しっかり生きてる」
真っ暗な上に、視界が霞んでよく見えない。
それでも目をこすって、涙を拭って、声の方を見る。
178: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)21:51:05 ID:526
本当におかしいな。
なんで?
どうして?
なんて疑問が頭のなかを蠢めく。
それでも、そんな疑問はすぐに吹っ飛んでしまった。
179: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)21:51:34 ID:526
「おはよう」
その声だけで、私の頭のなかは埋め尽くされてしまったから。
180: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)21:51:48 ID:526
彼がそこにいた。
確かにそこに座ってる。
もう二度と聞けないと思ってた。
もう二度と会えないと思ってた。
181: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)21:52:03 ID:526
私は泣いてるんだろうか?
それとも笑ってるのかな?
わからない、もう感情はぐちゃぐちゃで、わけがわかないけど、とりあえずこれだけは言っておかなきゃいかない。
182: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)21:52:20 ID:526
「おはよう……ござ……い……ます」
183: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)21:52:59 ID:526
*
私の目が確かなら、ここは観覧車の中だ。
彼に初めて会った時に行った遊園地。
その観覧車のなかだ。
「ああ、ここ? なんか止まっちゃったんだよね、観覧車。停電かなんかじゃないな? 真っ暗だし。でも一番高いところで止まるって、ラッキーじゃない?」
やっと慣れてきた目で声のする方を向くと、やっぱり彼はここにいる。
いるはずがないのに。
184: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)21:53:22 ID:526
「そんなことじゃなくて…… どうして、あなたここにいるんですか? どうして、私の目の前に。まさか、あなたも死んじゃったんじゃ……」
「違うよ。さっきも言ったろ? 君は生きてる。もちろん俺もだ」
185: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)21:53:43 ID:526
「でも…… あなたが生きてるなら、私が生きれるわけ……」
彼が死なないと、私は心臓を移植できない。
彼が生きてるってことは、私が死んでるってことのはずだった。
186: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)21:54:01 ID:526
「戻した」
「え?」
何を? 時間を?
でも、そんなことしても……
187: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)21:54:20 ID:526
「そんなことしたって…… 時間を戻したって私が助かるわけ……」
「時間を戻したんじゃない。いや、時間を戻したと言えばそうなんだけどさ、でもただの時間じゃない。俺は、君の心臓の時間を戻したんだ」
もう、言葉も出なかった。
彼が何を言っているのかわからなかった。
188: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)21:54:37 ID:526
「ほら、これ」と言って彼が何か袋を取り出す。
中に入っていたのは、私があげた干しみかんだった。
彼はそれを私の前に差し出す。
189: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)21:54:52 ID:526
その、次の瞬間。
それは起きた。
私は確かにこの目でそれを見た。
自分の目を疑ったけど、それでも、これはどうやら真実らしい。
干しみかんは私の前で、普通のみかんへと姿を変えた。
190: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)21:55:11 ID:526
「食べる? 好きでしょ? みかん」
「私が好きなのは、……干しみかん……です」
191: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)21:56:01 ID:526
*
俺はずっと勘違いをしていた。
俺は自分の能力を『時間を戻す力』と言いながら、その実『時間を戻る力』だと思っていた。
俺が時間を戻って行く力だと思っていたんだ。
192: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)21:56:17 ID:526
でも、違った。
よくよく考えたらおかしいんだ。
時間を戻ったのに、怪我は治らないし、服も戻らない。
だったらこの力はなんだ?
そう思った時、答えは簡単に出た。
193: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)21:56:43 ID:526
この力は文字どおり、『時間を戻す力』なんだ。
自分以外のすべての時間を戻す力。
俺は時間を戻っていたんじゃなくて、俺以外の時間を戻していたんだ。
194: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)21:57:07 ID:526
だから彼女は戻らなかった。
俺が身につけてるものの時間も戻らないなら、俺の心臓を身につけていた彼女も、戻らないんだろう。
そう考えたら、全ての線が繋がった。
俺の力は時間を戻す力だった。
195: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)21:57:50 ID:526
そうして次に考えたのが、「ものの時間を個別に戻せないか?」だ。
そうして干しみかんを手にとって、それだけを戻すように手に力を込めた。
あんまり驚きはなかった。
きっとどこかで、なんとなくできるって信じてたんだ。
俺の手には普通のみかんが握られていた。
196: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)21:58:14 ID:526
希望がみえた。
そう思ったよ。
一筋の光。
真っ暗な暗闇に差し込んだ光。
そうして俺は彼女の心臓の時間を戻した。
彼女の心臓が病に蝕まれる、その前まで。
197: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)21:58:29 ID:526
もちろん俺と出会った時の彼女には、二度と会えないことはわかっていた。
あの時の彼女は、もうなかったことになってしまったわけだから。
でも俺はそれで良かった。
彼女が生きてさえいてくれれば、それで良かったんだ。
198: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)21:58:48 ID:526
だから彼女に会うことは諦めていた。
でも、そんなある日気づいてしまった。
あの時の彼女は、なかったことになったわけじゃないんじゃないかって。
彼女が残していった、干しみかんとCDが証明したんだ。
彼女が時間を戻したことで、起きたことはなかったことになってなかった。
199: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)21:59:10 ID:526
そもそも彼女が時間を戻さなければ、俺は死んでいるはずだった。
でも彼女が時間を戻したから、彼女は死んだ。
彼女が死んだら、彼女が時間を戻すことはない。
パラドックス。
それがどっちに転ぶかはわからなかったけど、なんとなく確信できた。
彼女の意識は消えたんじゃなくて、一年後に戻っただけだって。
200: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)21:59:26 ID:526
そう思ったらもう諦めるなんてできなかった。
一パーセントでもいいから、また彼女に会えるなら、会いたい。そう思った。
201: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)21:59:48 ID:526
*
「そうしてまた、君に会えた」
それがどれだけ嬉しかったか。
そんなの言うまでもない。
今日、また彼女に会えたことは、紛れもない奇跡だ。
202: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)22:00:13 ID:526
俺の長い話を、彼女は静かに聞いてくれていた。前にもこんなことがあったなと、なんだか懐かしい。
「たぶん、私はいろんなこと言わなきゃいけないと思うんです。あなたに、謝らなきゃいけないし、お礼を言わなきゃいけないし…… それにたくさん言いたいこともあるんです。でも……やっぱり一番言いたいのは、これなんです」
203: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)22:00:35 ID:526
なんだか暑い。
夏だからだろうか。
多分それだけじゃない。
「大好きです」
204: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)22:01:15 ID:526
その言葉に彼女がまたいなくなってしまうんではないかと、少し不安になる。
だけどそんな不安は杞憂だった。
彼女はしっかりそこにいる。
そこで生きている。
なんて素晴らしいんだろう。
彼女がいるこの世界は、とても色鮮やかに見えた。
205: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)22:01:34 ID:526
「俺も……」と口からこぼれる。
彼女が、彼女がいるこの世界が、
「大好きだ」
206: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)22:02:39 ID:526
*
「なんで遊園地なんですか? しかも今、夜明け前ですよね? どうやって入ったんですか?」
いつまでたっても止まったままの観覧車を不審に思ったのか、彼女が訪ねた。
207: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)22:03:14 ID:526
「さっきまでの君が来たいって言ったんだ。遊園地に入るのは力を使えば簡単だった」
「会ってたんですか? 記憶が戻る前の私に?」
「一週間前からだけどな」
やっぱり彼女にこの一年間の記憶はない。
当たり前のことだけど、少し胸が痛む。
208: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)22:03:34 ID:526
そうしてさっき託された物を思い出した。
これも俺の、忘れちゃいけない記憶だ。
「これ、三十分前の君から。君に渡してくれって頼まれた」
手にした茶色い封筒を彼女に渡す。
中身は知らない。
結局、最後まで教えてくれなかった。
209: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)22:03:51 ID:526
「なんて書いてあるんだ?」
中身を見た瞬間に、動きが止まった彼女が気になって声をかける。
「……内緒です」
いたずらっぽく笑う彼女に、少し見惚れてしまった。
210: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)22:04:07 ID:526
「……名前、なんていうんですか? まだ、聞いてませんでした」
確かにそうだなと思う。
俺たちはずっと、名前も知らないまま一緒にいた。
一年越しの自己紹介なんて、なんだか笑える。
今更、少し気恥ずかしいな。
211: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)22:04:26 ID:526
「藍月 涼介」
自分の名前なのに、なんだかおかしな感じがする。
「涼介さん…… あなたに、ぴったりですね」
彼女に言われるとなんだか照れ臭い。
彼女の一言一言が耳に響いて、それがとても愛おしい。
212: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)22:04:50 ID:526
本当はもう知ってるけど、「君は?」と迷わず尋ねる。
彼女の口からしっかり聞きたい。
彼女は、少しもったいぶるかのように間を置いた後、ようやく口を開いた。
「私は、柑露寺 蛍です」
213: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)22:05:10 ID:526
「……柑露寺 蛍」
その名前はすんなりと、口から滑るように出た。彼女が呼ぶ俺の名前も、耳によく馴染んだ。
214: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)22:05:31 ID:526
観覧車の窓からは朝日が差し込んできていた。
眩しい、朝を告げる合図が。
ああ、やっと夜が終わる。
俺たちの長い長い夜が。
215: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)22:06:00 ID:526
心臓の音が聞こえた。
二人の心臓の音が、重なって、響く。
今まで一番、最高に実感する。
俺たちは生きていると。
もう、何回目だろうか?
この生の実感は、全部彼女がくれたものだった。
216: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)22:06:16 ID:526
あの日を思い出す。
後悔しないようにと、一筋の光を目指して前を向いたあの日を。明日に向かったあの日を。
217: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)22:06:34 ID:526
「涼介さん」と彼女が沈黙を破った。
「次はどんなわがまま、聞いてくれます?」
「なんでもいいよ」
「やった」
218: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)22:06:57 ID:526
いつの間にか観覧車は動き始めていた。
これを降りたらどこに行こうか?
どこだっていい。どこだって行ける。
彼女となら、どこまでだって行ける。
彼女となら、どこまででも生きて征ける。
あの日感じたその思いは、間違ってなかった。
219: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)22:07:19 ID:526
光を目指してどこまででも行こう。
精一杯、後悔しないように、前を向いて。
220: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)22:07:37 ID:526
そうして夜が明けた。
221: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)22:10:32 ID:526
これでこの話はおしまいです
ここまでつきあってくださった方はありがとうございます
なにかありましたらツイッターまでお願いします
http://twitter.com/yuasa_1224
前に書いた「十年前から電話がかかってきた」「死から始まる恋もある」などもよろしくお願いします
また、ツイッターで番外編みたいなものをやろうと思っているので見ていただけると嬉しいです
224: 名無しさん@おーぷん 2017/03/12(日)22:44:27 ID:G0B
乙でしたー
ニュー速VIP@おーぷん2ちゃんねるに投稿されたスレッドの紹介でした
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