時は1960年代、冷戦で緊迫していた時代である。アメリカ中央情報局(CIA)は、ワシントンD.C.にあったソビエト連邦大使館近くでロシア人を監視する極秘計画を立案した。
スパイ猫を使うという作戦だ。そう、彼らは猫に外科手術でマイクと無線機を仕込んでソ連大使館に潜り込ませ、その動きを探り出そうとしたのだ。そのプロジェクトのコードネームは「アコースティックキティ(音響猫)」という。
スポンサードリンク
巨額な予算を投じ猫に装置を埋め込むというトンデモ計画
J.T. リチェルソンの著書、トップシークレットによると、「猫を切開し、電池を入れ、配線をつないだ」と1960年代のCIA長官事務補佐官ヴィクター・マーケッティが証言したという。「尻尾はアンテナ代わりだった。連中はバケモノを作り出したんだ」
さらには猫がうっかりネズミに気をとられるなど、注意散漫になることを防ぐため、空腹を感じなくするための手術まで施されていた。
最初のアコースティックキティを生み出すまでに、CIAは1,000万ドル(36億円)を投じたらしい。
最初のミッションで予期せぬ事態が
初のミッションで、CIAエージェントは平凡なバンの後部ドアからアコースティックキティを放ち、その行く末を熱い眼差しで見守った。
ところが悲しいことに、猫は大使館に向かって突進し、10メートルも行ったところで、出し抜けに通過したタクシーに轢かれて死んでしまった。
「みんなバンの中に座り固唾をのんで見守っていた。で、猫は死んでしまった」とマーケッティは回想する。
結局、CIAはプロジェクトを中止した。
ジョージ・ワシントン大学所蔵の記録によると、そこに費やされる「エネルギーと想像力」にもかかわらず、猫をスパイとして鍛え上げるのは「現実的ではない」と結論づけたのだそうだ。まあ、そうだろう。
Pen Camera and Acoustic Kitty | Top Secret Weapons Revealed
アメリカのスパイ大作戦
スパイと聞いてイメージするものは、ペンに仕込んだ銃やブリーフケースのカメラ、あるいは靴に仕込んだマイクといった奇想天外なガジェットの数々だろう。だが、政府による最も印象的な監視工作は、ありふれた通信ネットワークのインフラに仕組まれるものだ。
そうしたネットワークは外交上の味方であろうと敵であろうと見境ない。アメリカには敵を監視するだけでなく、同盟国や自国民をも熱心にスパイしてきた歴史がある。
つい最近も内部告発サイト「ウィキリークス」が、米中央情報局(CIA)によるハッキング技術に関する内部資料の公開し話題となった。
スマホやPC、ルーターやスマートテレビなど、様々な機器にマルウェア(悪意のあるソフト)を仕込み、盗聴や監視を続けているという驚きの事実が明らかとなった。
アメリカが常に技術的優位を保ってきたのはそういったスパイ活動によるものなのかもしれない。
例えば、1862年にリンカーン大統領が陸軍長官エドウィン・スタントンに広範な監視権限を与えたとき、そこには「電線網全体の制御」と「膨大な通信・ジャーナリズム・政府・個人」を追跡する手段が含まれていた、とニューヨークタイムズは報じている。
スタントンの権限はジャーナリストが報じるニュースに影響を与えるほど巨大なもので、議会聴問会で「電信の検閲」を取り上げる必要性を説く声が高まるようになる。
あるいは第二次世界大戦中のアメリカの軍当局が、国内外へ送信された電報の全記録を提出するよう同国の3大電信企業を説得したやり方。あるいはNSA(アメリカ国家安全保障局)がアンゲラ・メルケル独首相の電話を盗聴した当時。あるいは1980年代と90年代、アメリカが数百万人の国民からの無数の電話をこっそりと盗聴していた当時。
こう考えることもできる。もし科学技術が通信のために存在するのだとしたら、それはおそらく盗聴にも利用されてきたということだ。今言っているのは、政府が猫やイルカや鳩をスパイとして訓練していた事実のことである。
もちろんアメリカだけではない。2013年にフランスのラジオで、元仏外務大臣のベルナール・クシュネルが「正直に言えば、我々も盗聴している」と発言したそうだ。「誰もが他人に聞き耳を立てている。だが、我々にはアメリカと同じ手段がない。羨ましいね」
こうしたスパイについての暴露情報に対する怒りは消費者向けの欺瞞でもある、とコメンタリーマガジンに記したのはマックス・ブートだ。
NSAは要人をスパイしているか? おそらくは。では、あなたはアメリカをはじめとする同盟国の首脳をスパイするだろうか? おそらくは。ただ、あなたにはNSAのようにそれを実行する手段と能力がないだけだ。もしあれば、やっているだろうvia:theatlantic・wikipediaなど/ translated hiroching / edited by parumo
▼あわせて読みたい
犯人はCIA? アメリカでCIAが絡んでいると噂されている10人の不可解な死
それは禁断のシークレット。スパイに関する10の事実
ハッカー集団「アノニマス」が暴いた最も衝撃的な10の秘密
監視社会が加速する。2017年に起こるかもしれない10のこと
CIA vs. KGB 冷戦時代のスパイ戦
この記事が気に入ったら
いいね!しよう
いいね!しよう
カラパイアの最新記事をお届けします
「知る」カテゴリの最新記事
「歴史・文化」カテゴリの最新記事
この記事をシェア :
人気記事
最新週間ランキング
1位 7180 points | 幻の島アトランティスの遺物か?2600年前の難破船から、伝説のオリハルコンらしき合金が回収される(イタリア) | |
2位 4250 points | 物質の新形態。「時間の結晶」の生成に成功。量子コンピューターの突破口にもなる可能性(米研究) | |
3位 3619 points | 【放送事故】真剣に国際政治について語っている最中の出来事だった。生放送中に第一、第二の刺客が! | |
4位 3074 points | 巨大ヒトガタがショッピングモールの上空に現る!?恐怖で逃げ出す人や拝みだす人続出(ザンビア)※続報あり | |
5位 2656 points | 触手マニア必見。頭足類の触手と顎板の解剖学的違いを説明するイラスト |
スポンサードリンク
コメント
1. 匿名処理班
1号機が事故でクルマに轢かれたので、36億円かけたプロジェクトを中止します、っておかしな話じゃないか?
その猫1匹に、36億円全部詰め込んだわけでもないだろうに。
2. 匿名処理班
あなたの使っているスマフォを製造している工場が、中華人民共和国にある場合
バックドアが…
3. 匿名処理班
なんなら換気扇の音に混じったり締め切った窓の隙間からとかシャワーの水音に乗ってにゃあにゃあ鳴いてもええんやで
4. 匿名処理班
The Ten Million Dollar Kitty(1000万ドルのねこ)
5. 匿名処理班
机上の空論を実践しようとして猫の命を無駄にしたようにしか見えない
6. 匿名処理班
愚かな・・・・
NNNをスパイにしようなどとは
奴らはもう
いたるところで
我々下僕を監視していると言うのに
7. 匿名処理班
どうせ今でもマイクロチップ埋め込むんだから虐待とも思わない
8. 匿名処理班
ものすごい量のネコジェノサイドが発生したということですね
9. 匿名処理班
犬ならアメポチと疑われるから猫にしたんだろうな。w
10. 匿名処理班1名参上即撤退
国を守護る為にはしょうがない
11. 匿名処理班
バカだななぜ猫にした…最も任務に向かない動物だろ