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プレイステーション3、国内出荷完了へ。10年戦ったPS3を振り返る - Engadget 日本版

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プレイステーション3、国内出荷完了へ。10年戦ったPS3を振り返る

ファミコンは20年製造してました

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現役最後のプレイステーション3、CECH-4300C の製品ページに「近日出荷完了予定」の文字が加わりました。

2006年11月11日の発売以来、公約どおり「10年戦って」きたプレイステーション3が、日本国内では市場在庫のみで流通を終えることになります。



PS3の国内発売は2006年11月11日。新型ゲーム機の発売日に行列はつきものですが、プレイステーション3の場合は大成功したPS2後継機としての期待に加えて、当時の最新技術だったブルーレイドライブの部材調達に失敗し生産数が極端に少なかったことから、懐かしの「物売るってレベルじゃねーぞ!」騒ぎに代表される苛烈な争奪戦がありました。


最初期の生産の問題をクリアしたのちも、PS3は様々な課題に直面した製品でした。製造コストが売価を上回る逆ザヤ状態は、本体を売ってソフトで稼ぐプラットフォームビジネスでは珍しくありませんが、PS3の場合は差額が大きく、解消は搭載プロセッサのシュリンクや再パッケージを経た2009年度。

それでも価格としては高価だったこと、野心的なCELLプロセッサを導入したことで開発環境の整備が間に合わず高品質なソフトも揃わなかったこと、前世代の負け組であったマイクロソフトが Xbox 360で必死の努力をしてきたこと、ソニーとしても好調なPS2ビジネスからの切り替えタイミングをはかっていたことなどから、発売後しばらくは販売台数の足踏み状態が続きました。

当時はソニー本体各部門の業績も非常に厳しかった時代。描画性能では大幅に劣る任天堂の Wii が一発当てて社会現象的な売れ行きを示したことから、アナリストや経済紙からは低迷の印象が強く、決算発表会では毎回のように「巨額赤字のゲーム部門をどうするのか、このペースで回収できるのか、中長期的に健全なビジネスなのか」と問い詰められる状況でした。ゲーム部門出身の平井氏がソニーグループの代表になり、PS4が好調な現在からは想像し難い時代です。

PS3在庫は230万台、65nm化やや遅れ、逆ザヤ解消は「今期かなり厳しいかな」 (2007年)

ソニー 業績説明会QA PS3の逆ザヤは08年度も解消せず、Wiiを数で追いかけない (2008年)

当時の業績説明会で出たステキ回答 by CFO大根田さんは「Wiiに対してヘッドトゥヘッドでコンピートする戦略はとっておりません」。Wiiとは違い、PS3は高性能を活かして「リアルタイムでオンラインをエンジョイするカスタマー」向けである、など。


その後はサードパーティー・ファーストパーティー含むゲームソフトの拡充、技術のソニーが本領を発揮した小型薄型低消費電力化・低価格な新型本体投入、開発環境の改善もあり盛り返し、Xbox 360に対してHDゲーム機の2強状態を確立しました。

プレイステーションのお膝元である日本では Xbox 360 は歴然と弱く、また欧州でも文化的に米国と似た英国を除きプレイステーションのブランドが強くマイクロソフトは嫌われているため、「PS3とXbox 360はいずれ劣らぬライバルだった」と言われてもうわあ独自の世界観の人が来ちゃったよとしか思えませんが、世界での累計普及台数で見れば両者とも1億に届かぬ8600万台前後。

要するに、マイクロソフトのお膝元でありビデオゲーム業界の最大市場である米国で、小手調べ的な初代Xboxを踏まえて投入されたXbox 360が大躍進したことを示します。



当時の言い方で「HDゲーム機」が仲良く競争する一方、Wii は社会現象的なヒットとなり、PS3 / Xbox 360どちらも上回る1億台超。ソフトの売上はともかく、本体普及台数でみればPSもXboxも及ばぬ世代王者でした。

(蛇足。ゲーム機の台数競争はメーカーが気にすることであってプレーヤーには無関係、ただゲームを楽しめばいい、という言い方はひとつの見識ではあり、世界で売れていようがいまいが、評論家が褒めようがけなそうが個人的な体験としてのゲームの楽しさは変わりません。

とはいえプラットフォームが競争に敗れれば事業として継続が怪しくなり、大好きなゲームの続編が出なくなったり、出ても自分の地域では遊べなかったり、ローカライズやサーバ対応がなくなったりと散々な目に遭うのは、長く遊んできたゲーマーならご存知のとおりです。)



世界累計で1億5000万台以上を販売した絶対王者である先代PS2の領土を失い、Xbox 360にまさかの大躍進を許し、世間の話題は Wii のカジュアルでソーシャルな遊びに奪われた、と評価すれば、たしかに散々な三代目です。

しかし一方で、当然売れると慢心して独自の新技術CELLを一気に普及させようとしたPS3を反省して、PS4は開発しやすく調達しやすいゲームファーストな設計にしたこと、この世代に苦難に耐えてパブリッシャー・デベロッパーとの関係を強化したことが、現在の大躍進につながったともいえます。

王者に挑み世界ではイーブンに持ち込んだはずのXboxはといえば、大帝国マイクロソフト固有のランダムイベント「本社の方針変更」を引いてしまったうえに、技術的に優れているのだから当然売れると慢心して独自の新技術 Kinect を一気に普及させようと欲を出し、キラーアプリもないまま、ライバルのPS4より100ドル高い定価で勝負を挑んだ挙句、今世代では本国ですらPS4に大きく水を開けられています。

Wii で天国、Wii Uで地獄を見た任天堂といえば、今月発売されたばかりのSwitchでは先祖から大事に継承してきたIPと、Wii U世代に新たに仕込んだイカを武器にしつつ、「持ち歩けるソーシャルな据え置き機」なる新機軸で逆襲を狙っています。まこと栄華は移ろうものです。




生産・出荷期間と現役で戦えていた期間が一致するかは難しいところですが、PS3はたしかに国内だけでも10年以上出荷が続きました。同じ2006年に発売された Wii は後期の失速もあり、ソフト互換の後継機Wii Uにバトンタッチして2013年終了。PS3の先手をとるべく2015年発売のXbox 360は、2016年4月までの約10年。

ついでに調べると、初代プレイステーションは1994年イチニッサンの12月3日から、廉価版PS Oneの生産終了の2006年3月まで12年戦ってました。

任天堂ファミリーコンピュータは1983年の発売から、なんと2003年まで20年間も正規に製造。最近は純正の復刻版クラシックミニが品切れになったり、互換品が1000円そこらで買えるなど、なにが何だか分かりません。



以上、同じ世代のライバルとの関係を中心に、PS3の十年を振り返ってみました。

(余談の余談。計1億件以上の個人情報を漏らしたPSN流出事件もソニーのゲーム部門としては歴史的な大事件ですが、あれはサーバ側の管理技術がお粗末なまま個人情報を扱っていたセキュリティ体制の問題であって、PS3に起因するものではありません。逆風にはなりましたが。)

速報:ソニー PlayStation Network / Qriocity 漏洩事件 記者会見 (2011年)
「世の中では知られている脆弱性だったが、SNEIのサーバ担当者は知らなかった」




PS3で思い出に残るゲーム、革新的だったゲーム、予告されながら最後まで出なかったゲームについて語ればキリがありませんが、敢えてひとつ、ゲームタイトル以外で魅力を挙げるとすれば、伝統的なゲーム機にはなかった新しい技術、新しい機能への挑戦が多かった点があります。PS3のパワーをPSPで扱えるリモートプレイ、ゲーム機の哲学で日本のテレビ録画に(再)挑戦したTorne / Nasne など。



(PS3向け「Life with PlayStation」は2012年に終了済み。平井社長肝いりのプロジェクトであるLife Space UX に似合いそうな構想でした。)


こうした新技術による新しい体験といえば、ソニーはPS4登場直前の2012年、クラウドゲーミング技術のGaikaiを買収。PS4世代に結実するシェアプレイや、独自のストリーミングゲームサービス PlayStation Now を展開してきました。

ソニー、クラウドゲーミングのGaikaiを約300億円で買収 (2012年)

クラウドゲームは回線環境を選ぶものの、サーバ側さえ進化すれば、ローカルはそのまま最新技術のゲームが遊べることが特徴。年内にはPS4ゲームの追加も告知されています。

PS4ゲームがPlayStation Now対応。本体を買わずPCで定額遊び放題に

PS3はこのPS Nowに対応していますが(日本除く)、残念なことに今年の夏をもって、PS Now はPS4 とWindows 以外のサポートを終了する予定です。

ソニー、PS Now対応機器を大幅縮小。PS3、Vita、Vita TV、ブラビアやBDプレーヤは切捨て、PS4とWindowsに注力して継続

PS3にもしPS Now クライアントとしての余生があれば、「10年経ったPS3から買い換えなくても、最新のPS4ゲームがクラウド経由で遊べる」すごい時代になっていたかもしれません。

国内生産が終了しても、思い出の名作や駄作を楽しめるゲーム機としては、稼働する限り現役です。

Source: Sony
関連キーワード: playstation 3, ps3, ps4
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