Galaxy S8を触って思うこと。iPhone 8のハードルを上げる未来感、国内対応への期待と悩ましさ
そして短冊へ
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サムスンがニュヨークのイベント Unpacked 2017 で発表したスマートフォン、Galaxy S8 / S8+ のファーストインプレッションをお伝えします。
Galaxy S8は、サムスンが毎年前半と後半に投入するダブルフラッグシップのひとつSシリーズ最新作。もう一方のNote7が昨年のバッテリー爆発騒ぎで欠番扱いになったため、S8はサムスンにとって一年ぶりのフラッグシップであり、例年以上に注目される責任重大な製品です。
Gallery: Galaxy S8 / S8 Plus 実機 サイズ比較ギャラリー | 36 Photos
最大の特徴は、左右だけでなく上下の余白も細い「インフィニティ・ディスプレイ」。無限は大げさですが、最近のスマホにしては珍しく、ひと目で印象に残ります。
上下に伸びて表示面積が広くなった一方で、縦横比が18.5:9、つまり2:1以上の縦長のため相対的に幅が細く、大画面なのに持ちやすいのも特徴。
Galaxy S8の画面は対角5.8インチ、大きい方のGalaxy S8+ は6.2インチ。かなり大きな本体をイメージしますが、どちらも昨年の Note7 (5.7インチ)より本体は小さくなっています。
そのほかの特徴は、サムスンのデジタルアシスタント Bixby (ビクスビー)搭載、Qualcom Snapdragon またはサムスンExynos 最新プロセッサの採用。また 360度カメラ 新Gear 360 や、S8をデスクトップPCライクに変身させるドック DeXステーションまで、豊富なデバイスやサービスとの連携など。詳しい仕様や特徴は発表記事をご覧ください。
速報:Galaxy S8 正式発表。ほぼ全部画面の超狭額、超縦長の新時代スマホ
半歩先の未来から来たスマホ。未知数の部分も多数
まずは最大の特徴である画面について。Galaxyシリーズはもともと画面占有率 (前面の面積における実ディスプレイ部分の比率)が高いスマートフォンでしたが、今回は上下の余白、おでことあごの部分も細くなりました。
狭額設計はサムスンが従来から採用してきた左右曲面ベゼルレスのほか、シャープのEDGESTや、最近では小米 Mi Mix など珍しいものではありません。S8と同時期では、LGの G6 も狭額かつ縦長です。
しかし S8は上下の余白が実際に細いだけでなく凹型にえぐれていること、また上下でシンメトリなデザインを採用することで、実際の画面占有率以上に広く見せることに成功しています。
このインフィニティ・ディスプレイについて、サムスンは「Unbox your phone」の掛け声で四角い枠から外れたことをアピールしたり、従来の四角い本体に四角い画面が入った長方形を時代遅れの「2000年代」と煽るなど差別化を図っています。
しかしS8でも、アプリによっては仮想ナビゲーションボタンやメニューで表示領域の上下が真横にカットされることも多く、その場合はわりと普通の四角い画面に見えます。
下部のホームや戻るボタンは必要に応じて表示される仮想ボタンになりましたが、背景が黒だと、これまでの Galaxy edge シリーズとあまり変わりません。
しかしそれでも、従来のスマホとの画面の差は歴然。スマホの機種に興味がない人でも、パッと見で違いに気づくインパクトがあります。
大きく変わったのは画面だけ、すなわち見た目だけ、とも言えますが、表示にも操作にも画面を使うスマホにとって、画面の広さは最大の性能差。見た目は性能だからこそ、見た目が重要です。
小ネタ。ホームボタンは戻ると履歴を逆に設定できます。
大画面、かつ持ちやすい。プラス派にもホールド重視にも
スマホにとってもっとも重要なのは表示兼入力装置である画面、画面の大きさは性能、といえばもちろん「大画面より持ちやすさ派」から物言いがつきます。しかし Galaxy S8 / S8+ は、「縦長にすればスリムなまま表示面積を稼げる」というシンプルな理屈で、ホールド性は変わらないまま相対的に大画面になりました。ある意味、持ちやすさとスリムさが最大の訴求点かもしれません。S8とS8+を並べてみれば「小さい方」「大きい方」になりますが、縦横比の違いと相対的なスリムさもあって、単体で持つとS8+でもファブレット級!の大きさには感じません。逆にノーマルのS8は、持ちやすいけれど画面の印象では広く、従来の大型スマホのような感覚。
18.5:9、表示領域で約2:1という縦長のために、従来のスマホの「16:9で5.5インチ」基準とは、手にしてみるとかなり感覚が違います。他社のスマートフォンも含め、小さい方と大きい方があったら常に大画面派、または常に小型派だったという人も、実際に手にしてサイズ感を確認すると、S8に関しては転向する可能性があるかもしれません。
スタイルについていえば、新鮮でフューチャリスティックな前面に対して、背面はいかにも旧来の GALAXY。さすがのサムスンも前面にはロゴを置く場所がなくなりましたが、背中には健在です。
指紋センサは中央のカメラレンズ右側。右手で持った場合に人差し指が来る場所。どう考えてもレンズに指がかかる位置なのは疑問ですが、S8は Note7 譲りの虹彩認証や顔認証も備えるため、指紋アンロックが必須というわけではありません。虹彩認証は、通常の持ち方で認識デモを試した範囲ではスパッとすばやく認識できました。
指紋センサの位置はかなり高め。短冊のように縦長のスマホなので、習慣で下の方を持つと指紋センサには指が届きません。指紋を使う状況は限られるはずですが、下端を持つ人は持ち変えて指を伸ばす必要があります。
(ファーウェイ端末でおなじみの、指紋センサを撫でてナビゲーションや通知オープンには非対応。そもそも指紋センサが高い位置で、中間あたりを持たないと届かないために対応していても微妙なところですが、縦長で届きにくい通知やクイック設定を開く技としては何かが欲しかったところです)。
そのほか:
・S8から、サムスンの独自UX も意外と変わっています。メディア向けに配布されたデザイン本によると、「light and line」なる新コンセプトで、標準アプリのアイコンもシンプルな線で描かれた新スタイルに。
しかし、カラフルで丸っこい背景は変わっていないこと、Googleなどサムスン以外のアプリアイコンは当然ながら変わらないため、ギャラクシーユーザー以外にはパッと見で変わった印象はないかもしれません。
サムスンが配布したデザイン本より。light and lineコンセプトの新アイコンデザインスケッチ。
・縦長の画面が活きる画面分割は、Android 7.0 ヌガー標準の分割表示のほか、独自のスナップ表示にも対応。スナップはアプリの特定の部分だけを範囲指定して、ほかのアプリを使っているあいだ画面の上部に常時表示する機能。動画のPinPのように、アプリの任意部分を切り出せるイメージ。
・スナップ表示を実際に試してみると、縦長のS8には非常に適した印象。要は従来のスマホと同じ広さでメインのアプリを使いつつ、余った部分に別アプリの必要な場所だけ表示できる。
ヌガーの標準のマルチウィンドウは、狭くなった画面にアプリのメニューバーやらUI部品が詰め込まれて、肝心のコンテンツが見えにくくなる場合も多い。スナップならば、要らないオビを無視して必要な部分だけマルチにできる。
どのアプリのどこを切り出すか、スナップするまでの操作の手間などもあるものの、わざわざスマホで複数アプリを同時に使いたい人にとっては、頻繁にタスクを行き来する必要がない良い機能。
・ヌガー標準のマルチウィンドウでも縦長アスペクト比は有利。マルチウィンドウの定形アピール文として「動画を見ながらTwitterやチャットもできます!」がありますが、実際には読むのはともかく発言しようとすると、ソフトウェアキーボードが大きすぎて使いづらくなりました。
2:1に近いと、動画を出しつつもうひとつのアプリとキーボードが出しっぱなしにできます。動画を消化しつつ、ストレスのない広さでブラウズや別アプリ操作ができるのも便利です。
・縦長すぎて画面上端に指が届かない、片手操作がしづらい問題については、ほかの大画面スマホと同じく片手モードがあります。設定に潜る必要なく、ホームの3回タップまたは右下・左下隅からスワイプする動作でオン、余白をタップして解除。左右の切り替えも1タップ。
iPhone 6以降のPlusでも、ホームボタンをダブルタッチすると画面の上半分がずるっと落ちてきてタッチできる機能がありますが、それと似たような機能です。こちらは縮小のまま操作を続けることもできます。
ただ、通知やクイック設定だけを確認するにはジェスチャ、確認、戻すの手間になります。なにか一工夫欲しいところです。
・鳴り物入りで登場したデジタルアシスタント Bixby は、側面に専用のキーを用意して会話操作に対応。コンテキストに応じた必要な情報が現れるという Bixby ホーム、サムスン製の対応アプリならば大部分の操作が声でできるなど、手厚い対応です。
しかし短時間の試用では、ユーザーごとの利用パターンを学習するサジェストや、実際の利用シナリオでのアプリ間連携などの実力は判断不能。こちらは実機をある程度使ってからの別稿に譲ります。
サムスン「他とは違う」AI音声アシスタントBixby発表。まずGalaxy S8に搭載、いずれはIoT家電にも対応拡大
サムスンは Bixby をスマホのハンズフリー操作に留まらず、いわゆるIoTやスマートホーム家電も含めた将来のコンピューティングインターフェースと位置付けています。
ニューヨークの旗艦店 Samsung 837 では、ドア部分に大型の液晶ディスプレイを備えた冷蔵庫が Bixby に対応しており、庫内の画像や期限切れ食品のリマインダといった機能のデモができました。(音声は準備できていてかったのか機能せず)。
タッチから会話などナチュラルなUIへの流れは、アマゾンのAlexaを筆頭にますます強くなっています。Bixby も遅まきながらこのトレンドにキャッチアップする狙いですが、懸念は日本国内での有用性。日本語対応はできるとして、アプリ側の細かな対応、連携機器まで考えると、家電も含めてサムスンが強い市場とは違った状況になることも考えられます。
次期 iPhone 含め、スマホ新世代が楽しみになる製品
Bixbyなど今後のお手並み拝見の部分も多いものの、端末としては間違いなく、未来に片足を突っ込んだ系の製品です。スマートフォンやデジタルガジェット一般に対して、日進月歩のテクノロジーを文字どおり手の中に実感できることに価値を感じる人であれば、「ほぼ全部が画面のスマホ」という、数年前まではコンセプトデザインや未来予想図だったものが、実在の製品として手の中にあるだけでも楽しめます。
インフィニティディスプレイといっても普通に枠はあり、まだまだ完全にすべて画面になったわけではありません。また縦長アスペクト比も、単純な情報量の多さやマルチタスクとの相性はあるものの、一度使えば従来のスマホに戻れなくなるほどではありません。
しかしS8をしばらく触ってからこれまでのスマホに戻ると、これまで意識していなかった余白がつい気になってしまい、ああ「2000年代」のスマホなのかこれ、と思えてしまう呪いのような力があります。
超狭額に超縦長といえば、サムスンと同じくディスプレイパネルメーカーであるLGも、一足先に G6 を発表済みです。少しでも画面を大きくするベゼルレスと、持ちやすさを維持する縦長化は今後の業界の流れになると予想されています。
サムスンがハイエンド市場における最大の仮想敵とみなすアップルのiPhoneも、タイミングについては諸説ありつつ、曲面有機ELディスプレイで超狭額縁になるとの予測が一般的です。
もし本当にそうなるなら、常にトレンドセッターであり続けてきた......わけでもないけれどそのイメージを保ってきたアップルがどう出る