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大多数のPCでは4K表示不可能?液タブCintiq Pro 16の表示問題についてワコムに聞いた:橋本新義レポート - Engadget 日本版

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大多数のPCでは4K表示不可能?液タブCintiq Pro 16の表示問題についてワコムに聞いた:橋本新義レポート

「USBタイプC端子経由の映像信号」規格の複雑さも絡み、ややこしい話に

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ペンタブレットの大手メーカーであるワコムが3月30日に正式発表した、液晶タブレット『Cintiq Pro 16』。4K解像度と広色域(Adobe RGBカバー率94%)に対応した16インチ液晶に、定評あるワコムの高級タブレットとしてのペン入力精度(とくにオン加重の軽さ)を併せ持つ製品として、イラストレーターや写真家などから期待されていたモデルです。
発売は4月18日で、Web直販価格は18万1440円(税込)。

ところが発表の少し前に、4K表示に必要な条件が非常に厳しいことが公式FAQページで掲載。乱暴に言えば「現状では多くのPCで事実上不可能」なほど厳しいことから、購入を検討していたイラストレーターなどの間で、動揺を伴った話題となりました。

筆者はワコムの広報担当者に対して、同機の仕様などを中心にいくつかメールで質問をしてみたところ、「現在開発者に確認中」としつつも、回答をいただくことができました。とくに重要な点をまとめると『現状では、4K表示は動作検証を取った機種以外では基本的に不可能という扱い。Wacom Linkの4K対応モデルやファームウェア面などの改修は未定』ということになります。

ワコムとの一問一答




まずは、今回筆者から送った質問と、ワコム広報の回答から先に紹介しましょう。これらの話の前提となる「本機の動作条件」とはどういったものか、という話は後で記載します。

なお質問を送ったのは3月30日で、回答をいただいたのは3月31日。合わせて現状では、取り急ぎ広報室で回答可能なものとしている旨、また回答中にある「開発担当に確認している」箇所は、回答があった後に続報をいただける旨のコメントを受けています。ここは留意が必要です。

Q.1 Cintiq Pro 16の4K表示対応に必要となる信号の条件に関して。当方の認識では、「DisplayPort 1.2(相当)+タブレットなどのUSB信号(2.0相当)をUSBタイプC形状の端子から出力できる機器」であればOKのように思えるが、現状で公開された対応PCはThunderbolt 3対応モデルに限られており、混乱が見られる。

A.1 4K表示の条件に関しては、現在開発担当に確認をしております。USB Type-C(ALT mode)およびThunderbolt 3は、パソコンとWacom Cintiq ProをType-Cケーブル1本で直接接続する場合の必要規格です。その場合、Wacom Linkは接続(経由)不要です。

Q.2 今回公開された条件では、事実上デスクトップPC(とくに単体ビデオカード搭載PC)は、ほぼ4K表示が不可能となってしまうように思えるが、この認識で正しいのか。

A.2 はい。現在のところ弊社で4K表示に関する動作確認をしているのは下記のPCです。
・Apple MacBook Pro (Late 2016)
・サードウェーブ raytrek debut! NUC-S7


Q.3 そもそもCintiq Pro 16での4K表示において、リフレッシュレートはどこまでの対応か。

A.3 Cintiq Proでは、対応しているリフレッシュレートは60Hzです(30Hzは対応しておらず、表示できません)。

Q.4 Cintiq Pro 16を2K解像度(WQHD)で使う場合、スケーリングなどはどういった処理となるのか(「全画面拡大」や「外周ブランクのドットバイドット」など)。

A.4「全画面拡大」の表示になります。設定を行えば、ドットバイドットで表示することも可能です。

Q.5 2K解像度の表示で使う場合、タブレットとしての精度への影響などは考えられるか。
(注:これは念のための質問。ノートPCなどのタッチパネルでは、表示画素と入力検出画素が1対1となっていることが多く、万が一にも表示解像度にタブレット解像度が引っ張られると、ユーザーへの不利がかなり大きくなるため)

A.5 ペンの精度に影響はございません。

Q.6 御社のMobileStudio Pro 16では、保証外とはいえ、Wacom Link経由(いわゆる液晶タブレットモード)での4K表示が可能だったと記憶している。今回Cintiq Pro 16で不可能になったのはなぜか。

A.6 製品間での動作の違いについては、現在開発担当に確認をしております。

Q.7 もし可能であれば、Wacom Linkやその他の改修、あるいはファームウェアアップデートで修正対応をする予定はあるか。またWacom Linkの改良版をリリースする計画はあるか。

A.7 改良版やアップデートの予定は現段階では未定です。

質問と回答は以上です。この問題に関心のある方からすると「4K表示に対応するのは動作確認を行なった機種のみ」や「表示リフレッシュレートは60Hzのみ」という点、そして「Wacom Linkの改良やアップデートは現状では未定」という点は、かなり注目できる情報ではないでしょうか。

4K表示が目玉の機種だが「大半のPCでは4K表示不可」に


さて次に、どうしてイラストレーターなどの間でこんなに話題となったのか、また上記の質問と回答はどういった点に関して触れているのか、といった点を説明しましょう。まずは冒頭で紹介した、公式FAQページをご覧ください。



Wacom Cintiq Pro 16 で4K解像度を表示する際の注意点(ワコム公式サイト)

これを乱暴ながら端的に解説すると「4K解像度で表示できるPCは、USBタイプC端子を搭載するノートPCの、さらに一部(※4K/60HzのDisplayPort信号がUSBタイプC端子から出力できる)に限定される」ことになってしまうのです。

合わせて言えば、ケーブルにも機能判別情報を伝送できるチップが搭載されたいわゆる『E-Marked Cable』が必要になります。

さて、なぜこうした複雑な話となっているのか、技術的な背景を中心に、箇条書きでまとめてみました。

  1. Cintiq Pro 16で4K表示をする場合、映像入力はUSBタイプC端子経由でのDisplayPortが必要となる。同機の拡張端子はUSBタイプC×3基のみ。つまり単体のDisplayPort端子は搭載しない。
  2. これでは実用度が低いため、同機にはUSB 2.0とDisplayPortを入力し、USBタイプCとして出力する変換ユニット『Wacom Link』(ワコムリンク)が付属する。しかし今回のFAQで、これを経由した状態では4K表示が非対応となり、ディスプレイ解像度は2560×1440までと公開された。
  3. Wacom Linkは特殊なデバイスのため、現状では基本的に代替製品が存在しない(ただしWacom Linkはワコム独占技術が使われているわけではないため、今後対抗製品が登場する可能性はある)。
  4. これらの条件から、本機は「DisplayPortとUSBを同時に使えるUSBタイプC端子」を搭載した機種を直結しない限り、4K表示は不可能。この時点で事実上、大半のデスクトップPCが不可能ということになった。とくに単体のビデオカード(グラフィックスボード)を備えたPCでは、さらに厳しい。イラストレーターや写真家は大容量メモリや高性能CPUを要求すべく高性能なデスクトップPCを使っている方が比較的多く、その点からこの仕様は大きな話題となった。
  5. また、USBタイプC端子を搭載するPCでも、上記のような「DisplayPortが同時に使える」仕様かを公開している機種は非常に少なく、調査が難しい。実際には比較的多くの機種でこうした仕様となっているが、購入前の調査などは難しいことから、いきおい「実際に試してみるまでわからない」事態となる。

▲ワコムのFAQページ『USB Type-Cとワコム製品を使用する際の注意点について』 より。さらっと書いている「USBタイプCのオルタネートモードに対応しているかの確認」が難しい

状況としては、このような感じとなります。




なお余談ですが、実は「DisplayPortとUSBを同時に使えるUSBタイプC端子」には、DisplayPort規格を策定する団体であるVESAが『DockPort-Enabled DisplayPort』という名称をつけています。しかしほとんど使われていません(デルの搭載機に関して紹介した下記記事を参照ください)。

DockPort対応USB-Cで拡張らくらく、ワコムペン対応。デルがAtom x版Win 10タブの8型と10型モデルを発売

このロゴが普及していれば、多少は対応PCの判別が楽になったのに......というのが、若干もどかしいところです。

閑話休題。このように本機の問題は、USBタイプC周りの混乱も伴い、かなりややこしいことになっています。

いずれにせよ重要な点は「4K表示できるPC本体が非常に少ない」という点、そして「デスクトップPCでは大半が不可能(とくに単体ビデオカード搭載機種ではなおさら)」「不可能な機種の場合は、画面表示が2K(2560×1440:WQHD)解像度に制限される」という点です。

こうした複雑な仕様が絡み合った結果「4K表示が売りで、待っていた方は当然そこを期待していたのに、蓋を開けてみればごくごくわずかのPCだけでしか4K表示ができないほど本体側への制限が多かったので、期待していた方々が困惑している」というわけです。これこそが、動揺を伴った話題となった理由です。

既発売の姉妹機ではWacom Link経由の4K表示が可能


さてこの事態のややこしさは、これだけにとどまりません。2016年11月より発売されているPC一体型モデル『Mobile Studio Pro 16』(通称「モバスタ」)の仕様では、Cintiq Proと同じWacom Link経由で4K表示が可能と読める記述があったためです。

モバスタは、Cintiq Pro 16にPCを一体化したかのような仕様のクリエイター向けノートPCです。同機種はUSBタイプC端子、あるいはWacom Link(ただしCintiq Proとは異なり、別売り)を経由してPCを接続することで液晶タブレットとしても使える『デスクトップモード』を備えます。
しかしモバスタでは、Wacom Link経由でも4K表示が可能とされていたのです(ただし一方で同機種のFAQページでは、若干わかりにくいですが「Wacom Link経由ではDisplayPortでも2K解像度まで」とも読める記載もあります)。

Wacom MobileStudio Proを液晶ペンタブレット(デスクトップモード)として使用する際の注意点 (ワコム公式FAQページ)

またモバスタは既発売ですが、実際にWacom Link経由で4K表示が成功したという報告もあります。こうした事情が、この話をさらに複雑化しているわけです。

筆者が質問した中でのQ.6は、こうした事情に関して尋ねたもの。このあたりは続報を待たないとなりませんが、状況証拠からすると、「Wacom Link経由での動作検証中に4K表示ができない想定外の環境が多く発見されたことから、公式では非対応を謳うことにした」というパターンの可能性も、それなり以上の確率で考えられます。

USBタイプC過渡期ゆえの問題か、それともタイプC仕様のカオスが招いた結果か



▲ある意味で今

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