こんにちは、セブ山です。
先日、居酒屋で飲んでいた時に、隣の席でアラフォー女とおそらく仕事上の後輩だと思しき20代の前半の女の子が飲んでいました。
別に聞き耳を立てていたわけではなく、隣の席との距離が近かったので、嫌でも会話が聞こえてきました。
会話の中で、彼女たちはすごく気になることを言っていて、僕はそのことが頭から離れません。
それは、その若い女の子がミニスカートを履いているのを見て、アラフォー女が言った「いいわねぇ、私がミニスカート履いたら犯罪よぉ~!」という発言です。
これについて、みなさんはどう思われますか?
はたして、本当にアラフォー女がミニスカートを履いたら犯罪なのでしょうか?
いくらアラフォー女性とはいえ、ミニスカートを履く権利くらいはあるのでは…?
というわけで今回は、弁護士の石崎先生にお話を伺ってきました。
法律的な観点から「アラフォー女がミニスカートを履くこと」について掘り下げて考えてみたいと思います。
アラフォー女がミニスカートを履いたら何罪に該当するのか?
「石崎先生、本日はよろしくお願い致します」
「はい、よろしくお願い致します」
「さっそくお聞きしたいのですが、アラフォー女がよく言う『私がミニスカート履いたら犯罪よ~!』は、その発言の通り、本当に罪になるのでしょうか?」
「うーん、そうですね、ミニスカートに関係する罪として、最初に思い浮かべるのは『公然わいせつ』ですが、公然わいせつは『誰でも見られる場所で、わいせつな格好をする(わいせつな行為をする)』に適用される罪です。なので、それがわいせつかどうかが論点になります」
「わいせつかどうかの基準って何なんですか?」
「わいせつかどうかは、かなりざっくりといえば局部が出ているかどうかです。ミニスカートの場合は、局部は出ていないですよね?」
「そうですね。いくらミニだとはいえ、局部が出ていたらスカートとはいえないですよね」
「その場合は、公然わいせつにはあたらないですね」
「なるほど。じゃあ、アラフォー女のミニスカートは罪にはならない?」
「しかしながら、軽犯罪法というものも存在します」
「軽犯罪法?」
「軽犯罪法というのは、立ちションをしちゃダメ、使わなくても他人の鍵をもってちゃダメというもので、さまざまな軽微な秩序違反行為に対して定められた法律です」
「ほうほう」
「その法律の中に『公衆の目に触れるような場所で公衆にけん悪の情を催させるような仕方でしり、もも、その他身体の一部をみだりに露出した者』という項目があります」
「もも! ミニスカートは太ももくらいは出てますよね!」
「そうなんです。太ももを『なに、あれ』と街行く人たちに言われるくらいさらけ出していたとしたら、それは軽犯罪法違反になるかもしれません」
「じゃあ、実際にミニスカで捕まった女性はいるんですか?」
「毎年一定数、立件されていますが、残念ながら『ミニスカを履いていたから捕まった』というケースは、私が聞く限りありません」
「いないんですか!? じゃあ、どうしてこんな法律があるんですか?」
「実は軽犯罪法は、戦後まもなく出来た法律で、闇市などの治安が悪い場所でうろついていた人を取り締まったり、秩序を守る役目で作られた法律なんです」
「なるほど! そういう背景が!」
「なので、時代に合っていない法律なんです。だって、渋谷など若者の街では、夏になるとチューブトップを着たり、ホットパンツを履いて平気でセンター街を闊歩している人もいますが、そういう人たちが捕まったという話は聞かないですよね」
「たしかに」
「つまり、本件に関しては軽犯罪法に該当するかもしれませんが、今の時代で適用されるのは難しいと思いますし、それによって捕まるというのも考えづらいですね」
「でも、先生! 『けん悪の情を催させる』という一文がありますが、汚いババアがミニスカを履いて、不快な気持ちになるような太ももを露出していたら、それは明らかに、けん悪の情を催させているのでは?」
「うーん、しかし、誰が見ても『嫌だな』と感じる状態は難しいでしょうね」
「どうしてですか?」
「セブ山さん、この世には熟女に興奮する人もいるんです。汚いおばさんであればあるほどそれに興奮する人もいる。誰が見ても明らかに『けん悪の情を催させる』という状況を作りだせない限り、法律ではどうすることもできません」
「なるほど…」
「じゃあ『私がミニスカート履いたらもう犯罪~!』という発言は間違っているわけですね」
「はい、間違っています。正しくは『私がミニスカートを履いたら、公衆にけん悪の情を催させることになるので、軽犯罪法に触れるおそれがあるぅ~!』ですね」
「なるほど、勉強になりました! アラフォー女のみなさんはぜひ、次からそう言ってください!」
もしもミニスカートが風でめくれてアラフォー女の局部が露出してしまったら?
「でも、先生! いくらミニスカートを履いたくらいでは捕まらないとしても、局部が出てしまうくらいのミニスカートはダメなんですよね?」
「はい。公然わいせつになります」
「しかし、もしも風でめくれてしまい、たまたまアラフォー女の局部が露出してしまったら、どうなんでしょうか?」
「法律において、故意か故意でないかは非常に重要なポイントですが、このケースでいえば、いくら『故意でなかった』と主張しても、風が吹けば簡単に局部が見えてしまう状態であったことは、故意ではなかったとは認めづらいですね。少なくとも未必の故意です」
「なるほど。じゃあ、その局部が、すごく美しい局部だった場合はどうですか?」
「ん? どういう意味ですか?」
「局部が出てしまったとしても、それが『わいせつ』でなければ、公然わいせつにはならないですよね? だから、この世のものとは思えないほど美しい、まるでオーロラのような局部だった場合は、公然わいせつにはならないのでは?」
「局部はいくら美しくても局部です。たしかに『わいせつ性』についてはよく論争にはなるんです。それが『芸術かどうか』という点で」
「なるほど。『わいせつ性』と『アート』の境目を見極めるのは難しいですもんね」
「ただ、一般的にはやはり理由を問わず、局部は局部ですね」
「それが『圧倒的にわいせつじゃない局部』だったとしてもですか?」
「セブ山さん、そんな局部があったらそれはもう局部じゃないです」
「たしかに局部は、ちょっとグロいくらいの方が興奮しますもんね」
「そういう話はしていないです」
アラフォー女がスッピンで歩くと猥褻物陳列罪になるのか?
「せっかくなので、もうひとつお聞きしてもいいでしょうか?」
「はい、もちろんです」
「先ほどのミニスカの件と同じく、『私がスッピンで歩いたら猥褻物陳列罪で捕まっちゃう』というアラフォー女がたまにいますが、本当にスッピンで歩いて猥褻物陳列罪で捕まることってあるのでしょうか?」
「そもそも、猥褻物陳列罪は『物(文章や絵など)』に適用される罪なので、顔面がいくらわいせつであろうと、適用されることはないですね」
「そうだったんだ。じゃあ、スッピンで歩いて何かの罪に問われることはあるんでしょうか?」
「うーん、先ほどの軽犯罪法も『しり』や『もも』についての法律なので、いくらスッピンがブスであっても、何かの罪に問われるというのは考えにくいですね」
「でも、先生! 『けん悪の情を催させる』という一文が僕はひっかかります! 誰が見ても明らかにけん悪の情を催させるブスなら、スッピンで歩いていたらダメなのでは?」
「それもやっぱり『誰が見ても明らかなブス』という顔面は存在しないわけじゃないですか」
「そっかぁ」
「仮に、ブスであることで投獄された人がいたとしても、刑期を終えて、刑務所から出てきた瞬間に、また捕まりますよね。それは、やはりおかしいですよね」
「たしかに! じゃあ、いくらスッピンがブスでも罪で問われることはないんですね」
「はい、ブスは犯罪ではないので」
「よかった! スッピンがクソブスのみなさん! いくらブスでも罪になることはないらしいですよ! 安心してください!」
「石原さとみに似ているってよく言われます」とほざくブスを、石原さとみ本人が訴えることは可能か?
「でも、ブスは犯罪ではない、とは言いましたが、先日、僕は『石原さとみに似ているってよく言われます』とほざくブスに会ったんですよ」
「はい」
「それって石原さとみさんに対する侮辱罪ではないのでしょうか? もし、石原さとみさんがそのブスを訴えたら勝てますか?」
「なるほど。侮辱罪ですか。うーん、侮辱罪にはあたらないでしょうね。侮辱というは、評価に関してのものなので」
「どういう意味ですか?」
「たとえば、『石原さとみはブスだ、バカだ』という発言は、明らかな侮辱ですよね」
「はい、侮辱です」
「でも、『石原さとみに似てるってよく言われます』というのは事実についてのものなので、侮辱にはならないです」
「いや、事実じゃないですよ! 全然似ていないブスでした!」
「この場合の、事実というのは『真実』とは違います。『石原さとみに似てるってよく言われます』という発言には、(ブスだ、バカだといった)評価が入っていないですよね」
「発言に『ブスだ、バカだ』といった評価が入っていない限り、どうやっても侮辱罪にはならないんですか?」
「そういうことです。しかしながら、『誰かが何かをした』『誰かに~と言われた』というのは、事実について発言しているので、侮辱よりも名誉棄損にあたるかもしれません」
「名誉棄損…?」
「そうです。侮辱と名誉棄損は、そういう違いがあります。そして、名誉棄損の方が罪が重いです」
「えっ、じゃあ『石原さとみに似ているってよく言われます』とほざくブス(通称・ブス原さとみ)は、より重い罪で罰せられるかもしれないんですか!?」
「その可能性はあります」
「きたきたきた!」
「このケースの論点は、ブスが『石原さとみに似てるってよく言われます』と言うことで石原さとみさんの名誉が棄損されるかどうかであって、実際に似てるかどうかは関係ないんです」
「えっ!? ちょっと待ってください! ブスが石原さとみに似ているかどうかは関係ないんですか?」
「関係ないです」
「そんなバカな!」
「じゃあ仮に、佐々木希さんが『石原さとみに似てるってよく言われます』と言っても何の問題もないわけですよね?」
「たしかに。似てはいないけど、石原さとみさんの名誉棄損にはならないですね」
「ですよね。つまり、周囲の人たちから、日ごろからブスとして認識されている方が『石原さとみに似てるってよく言われます』といえば、それは石原さとみさんの名誉棄損になる……かもしれない、という話です」
「なるほどぉ」
「『しかし、そこまでのブスがいますか?』という問題は残りますよね」
「そうかぁ。結局、最後は『主観の問題』になってしまうんですね」
「そうなんですよ。誰が見ても100%のブスなんていないんですよ。美醜の問題は、人によっても違うわけですから」
「じゃあ、仮に、ブス庁が出来て、公式に認められたブスなら訴えられる可能性はあるということですか?」
「ん? すみません、『ブス庁』というのは?」
「『あなたはブスですよ』ということを国の公式な決定事項として認める行政機関です」
「そうですね。仮に、そういった機関があり、明らかに石原さとみに劣っていると認められている人が『石原さとみに似ているってよく言われます』と言うのは、名誉棄損になりますね」
「おおっ! それなら名誉棄損として認められますか!」
「はい、それだけ材料が揃っていれば、石原さとみさん本人が、国公認のブスを名誉棄損で訴えることは可能でしょう」
「やったー! 法律が勝った!」
「ただ、『ブス庁』は『無い』ですからね」
「ちくしょー! なんで無いんだよー!」
「それでは先生。最後にひとつだけ質問させてください」
「はい、なんでしょうか?」
「この記事は名誉毀損にはならないですか? 大丈夫ですかね…?」
「ブスな人の固有名詞は挙げていないので大丈夫です。私たちが話しているのは、概念としてのブスの話なので」
「それを聞いて安心しました」
「よかった…ミニスカートを履いてはいけないアラフォー女やスッピンで歩いてはいけないブスはいないんだ…」
(ハッピーエンド)