半導体メーカー クアルコムが、同社の所有する特許技術へのロイヤルティに関して米アップルから提訴されている件で、クアルコムはアップルの主張を否定し、さらにカリフォルニア州の裁判所にアップルを相手取った訴訟を新たに起こしたことを発表しました。
クアルコムは2017年1月、アップルから米国で「不正なライセンスモデルによって不当な額のロイヤルティを要求された」「クアルコムからアップルに支払われるはずの10億ドルが未払い」などとして訴えられ、また中国でもアップルとの間で2件の独禁法違反について争っています。アップルは他に「クアルコムが特許技術ごとではなく販売する製品の単価に応じたロイヤルティを求めてくる」とも主張しています。
これに対するクアルコムの姿勢は「アップルはクアルコムと取り交わした契約合意に反し、事実を歪めた主張をしている」と一貫しており、今回も基本的にこれまでの主張に沿った内容でアップルを提訴しています。
提訴にあたって公開した139ページにおよぶ資料では、クアルコムは35の項目でアップルの主張に反論しています。たとえば2016年8月の段階で独禁法違反を疑う韓国規制当局からの調査に対し、アップルが「iPhone 7には他社製モデムチップを用意できていない」と伝えたのが虚偽の説明だったこと(実際はインテルのモデムを用意していた)や、そのインテル製モデムチップとクアルコム製チップの性能差に関して、アップルからあたかも同じような性能であるかのように装うよう要求されたことなども記されています。
アップルとクアルコムといえば、長年iPhoneやiPadの内蔵モデムチップで共栄の道を歩いてきた仲間のはず。特にiPhoneにおいてはアップルが膨大な数のモデムチップを要求し、クアルコムはそれに応えてきました。それがここへ来て殴り合いのケンカになっている理由は、もしかするとアップルが iPhone 7 /7 Plusからクアルコムに加えてインテル製のモデムチップを採用したことも原因にあるかもしれません。
アップルはiPhone生産ラインの不具合による供給ストップのリスクを分散する意図から、CPUをサムスンとTSMCが、ディスプレイをシャープ、JDI、LGが供給する体制を敷いています。同様の考え方から、やhり重要なパーツであるモデムチップに関しても、インテルを加えることで供給の安定を図ったと考えられます。
ただ、クアルコムはアップルだけに限らず、Androiod端末メーカーにもSnapdragonシリーズで大きな影響力を持っています。近年はその独占的立場から不当なロイヤルティ請求で訴えられることも多く、2年前に中国で、昨年末には韓国で罰金を課せられていました。米国の連邦取引委員会もまた、クアルコムの独占的立場を利用した手法を非難しており、今回の反撃がどの程度有効なのかは、やや疑問が残るところです。
[Image : Handout / Reuters]