高価ながらコスパはDeluxeより上?
ただし実際の発売時期が問題か
さて、冒頭で「価格と発売時期で評価が分かれる」といった話をしましたので、まずはここからチェックしましょう。
価格は、
上位版となるRAM 8GB/ストレージ 128GBのモデル(ZS571KL-BK128S8)は9万9800円(税別)、下位となるRAM 6GB/ストレージ 64Gモデル(ZS571KL-BK64S6)でも8万2800円(同)。仕様は豪華ではありますが、とくに上位モデルはスマートフォンとしても高価なことは否めない、というのが正直なところ。
今回は日本での発表が非常に早く、原稿執筆時では米国や台湾での価格がまだ公開されていない状態。そのため内外価格差は現状では不明です。
ただし興味深いのが、下位モデル(~BK64S6)と、従来最上位となるZenFone 3 Deluxe ZS570KLとの比較。同機の原稿執筆時実売価格は税込で9万6000円前後なので、実はBK64S6のほうが若干ですが安価となります。SoCは同じSnapdragon 821でRAMも6GBと同量。ストレージはZS570KLが256GBとより大きいものの、画面解像度はフルHDと、BK64S6のほうが有利なのです。
こうした点を考慮すると、コストパフォーマンス的には本機のほうがZS570KLより有利とも考えられます(もちろん優先する要素が、画面解像度かストレージ容量かによっても分かれますが)。
発表時期の早さと合わせると、本機に関しては日本重視シフトが敷かれているのやもしれません。
しかし一方で発売時期は「2017年夏」と、若干幅を持たせた予定です。これは今回の発表が、ソフトウェア開発法人への呼びかけを兼ねたものであったことも要因としてありそうです。そのため実際に登場した際のお買い得度は、登場したタイミングで他メーカーから発売されている可能性がある、Snapdragon 835搭載機の価格動向などにも左右されるでしょう。
Tango対応アプリの動作も
Phab 2 Proより軽快
さて、ZenFone AR最大の特徴であるGoogleのAR技術(Google Tango)とVR技術(Google Daydream)への対応ですが、今回の発表会はTangoの紹介にフォーカスしたものでした。
これはTangoのほうが対応機種が少ないため、より大きな特徴となる(日本での市販機ではレノボの『Phab 2 Pro』1機種のみ)である点に加え、DaydreamはGoogleの対応ヘッドセット『Daydream View』の日本発売が不明という点が理由。
そうした事情もあってか、VRアプリのデモは汎用のヘッドセットと外箱で実施されました。外箱というのは、付属するレンズなどを組み上げることで、簡易ヘッドセットとしても使える設計となっているため。
実はこの外箱ヘッドセット、同種の仕組みを取るスマートフォンの中では付属レンズなどがかなりしっかりとしたもののため、意外と侮れない体験ができます(といっても簡易製品ゆえ耳掛けなどはないため、VRアプリ体験中は手などで押さえ続けていなければなりませんが)。
一方、Tango対応アプリに関しては、株式会社リビングスタイルが提供する家具配置シミュレーションアプリ『RoomCo AR for Tango』を中心としたデモでの紹介。
デモでは、洋室を模した空間に仮想のチェアを配置し
、Tango対応アプリの特徴である「チェアを壁に当てると移動しなくなる」(=壁や床を三次元的に認識している)点や、「仮想チェアの前に人や物体が立てる」(=物体の距離を測定して表示優先度を決めている)点などを打ち出しました。
上2つの写真では、実際に仮想チェアの前にぬいぐるみや人を配置した状態ですが、輪郭部が荒くなっているものの、優先度は実際の配置に合わせて表示されています。
なお本機でTangoアプリを試して感じたのが、以前筆者が見たPhab 2 Proでの動作に対して、3Dモデルの移動など、比較的重めの処理がよりスムーズなこと。
Phab 2 ProのSoCはSnapdragon 652のTangoカスタム仕様とされていますが、さすがに本機が搭載するSnapdragon 821と比べると性能は低いため、そのあたりが表れたものと思います。
また他のTangoアプリとしてはARドミノゲーム『DOMINO world』や、ちょっとかわいい「ローポリ風」恐竜と遊べる『Dinosaurs Among Us』など、既にGoogle Playで配布中のタイトルを紹介。
(登場してから間もない仕様にありがちな)将来の予定ではなく、「現状でTango対応アプリが30タイトル以上公開されている」点を強調する手法での、地に足の着いたアピールとなりました。個人的には好ましい姿勢です。
ASUS一押しのトライカム機構で
本体は3 Deluxeに近い小ささ
さて本機をハードウェア的に見た際の特徴となるのが、Tangoで必要となる赤外線の深度測定カメラとモーショントラッキングカメラ、そしてリアカメラを含めた3基のカメラ機構を、一体型モジュールのように配置したASUS TriCam(トライカム)システムです。
ASUSではこの実装方法により3基のカメラを搭載しつつも、5.7インチ画面搭載機として妥当なサイズに収めている点をアピールします。
実際に、同社製品で同じ画面サイズとなる、ZenFone 3 Deluxe(ZS570KL)と本機を比べてみましょう。本機の本体サイズは縦長状態で約77.7×158.98×4.6~8.95mm、重さは170gですが、ZS570KLは約77.4×156.4×7.5mmで約172g。
本機は厚さこそ最厚部1.4mmほど増えていますが、幅や高さの増加はごくわずかで、重量に関しては本体素材の差こそあれ、本機のほうが軽くなっています。
なおZS570KLは、5.7インチ画面のスマートフォンとしては昨今の水準よりコンパクトとされているモデル。こうした比較からも、本機に対するASUSのアピールは一定以上の説得力があります。
実際に外観をチェックしてみても、冒頭で紹介したようにグリップ感は「しっくり度の高い」もの。このあたりは、ZenFone 5や2で採用された中央部が盛り上がるアーチ型背面の継承や、背面に貼られたレザー(こちらはZenFone Zoomの上位機を連想させます)の効果が貢献していそうです。
またカメラ部の飛び出しは、あるにはありますがかなり控えめ。デザインはさすがに仰々しいですが(これはむしろ特徴としてわかりやすくしている面もありそう)、そこを除けば「特殊用途モデル感」は薄いと感じました。
メイン(リア)カメラ部の仕様や基本性能といった点でZenFone 3 Deluxeに見劣りする箇所がほぼない点と合わせて、むしろTangoはおまけと考え、高性能スマートフォンとして使っても良さそうな印象です。
このあたりはASUS側が狙っているところでもありますが、このあたりに関して本機はかなりの成功度と言えるでしょう。
なお、昨今のZenFoneでのトレンドとも言える指紋認証センサーは、カメラの関係で背面に搭載場所がない点などから、大画面モデルであるZenFone 3 Ultraと同じくホームボタン(物理的に押せるタイプです)に内蔵されるスタイルとなっています。
WQHD解像度の有機ELパネルは
有機EL慣れしていても驚く鮮やかさ
そして実機を見て印象的だったのは、WQHD解像度(2560×1440)有機EL(スーパーAMOLED)画面の鮮やかさです。昨今有機ELパネルは、VR用途で求められる残像感の少なさなどから高級スマートフォンで採用例が多くなっていますが、本機を一目見た際の印象は、数ある有機EL画面搭載モデルの中でも非常に鮮烈です。
とくにくっきりとしたコントラストの強さは、掲載した写真からでさえも感じられるはず。これらはいい意味で、SamsungのGalaxyシリーズを彷彿とさせるもの(スーパーAMOLEDという名称を使っていることからパネルはおそらくサムスン製であり、そもそも兄弟的なところはありますが)。
もちろん、ZenFoneシリーズの画質モード設定ユーティリティ『Splendid』も搭載。発表会場でのデモ機は有機ELパネルの色域とコントラストを活かす『スーパーカラー』モードとなっていましたが、それを差し引いても第一印象の鮮やかさは強い印象を残します。
実際に色域(表示可能な色の範囲)も公称で「NTSC比100%超」と、広めである点をアピールします。
一方で(やはり)有機ELパネルならではのコントラストの強さが前面に出るため人を選ぶ側面もありますが、そうした点が好みに合うならば、ぜひとも実際に確認して欲しい画面です。
またVRヘッドセット装着時で問題となる残像感などに関しても、さすがに有機ELパネルだけあり優秀。いくつかのデモタイトルを試