Appleは3月、赤いiPhoneや新型iPadの発売と同時に、プログラミング言語学習アプリ「Swift Playgrounds」の日本語対応を発表しました。今まで英語がネックだった教育現場でも、Swiftを活用したプログラミング学習が期待されます。
しかしアプリの日本語対応は、最低限のスタート地点。今後はいかに子どもたちにプログラミングの概念やコーディングの楽しさを教えられるか、教師の指導スキルの向上も求められます。一足先にSwift Playgroundsを活用した授業を展開する関西大学初等部4年生のクラスを取材しました。
この日の学習テーマは「関数」。プログラミング学習担当の堀先生は、運動会で踊ったダンスを生徒たちに再現させることから始めました。
音楽に合わせ楽しく踊る生徒たち。右手を出して、左手を出して......とすべての動きは「命令」(コマンド)であり、そのひとかたまりが関数(授業では「ファンクション」と表現)であることをまずは生徒たちに感覚でとらえてもらいます。
次に生徒たちが取り組むのは「オリジナル・ネックレスづくり」。母親にネックレスをプレゼントすると仮定し、ペアになって積み木を使いネックレスを作ります。
完成したらタイトルをつけ、iPadで撮影。それぞれが作品を発表する際は、大阪ならではのボケとツッコミで教室内は大盛り上がりでした。
この積み木で作ったネックレスも、「ひとまとまりにして名前をつけた命令の集まり」=関数です。実はこのダンスの例もネックレスの実践も、Swiftの教え方を学べるプログラム「Everyone Can Code」内にある教師用ガイドにあるもの。
iBooksから誰でも無料でダウンロードできるので、学校の教師だけでなく、プログラミング塾の講師から企業の研修担当者まで、誰でも自由にSwiftの教え方を学ぶことができます。取材時は英語版のみでしたが、3月に日本語対応しました。
生徒たちに関数の概念を伝えたあとは、実際にSwift Playgroundsを使ってコーディングしていきます。こちらも取材当時はまだ日本語化されておらず、生徒は英語版を使用。
すでにある選択肢の中から命令をタップし実行することでキャラクターが動くので、英語を完璧に理解しなくても感覚で進めていけるようです。ゲーム感覚で学べるためか、生徒たちは夢中で取り組んでいました。
堀先生はプログラミング学習について、「物事を多面的に見たり、論理的に組み立てたりする素地を養いたい」「プログラミングをきっかけに、創造する喜びを伝えたい」と意欲を見せます。
しかし日本ではプログラミング教育は始まったばかり。教え方のノウハウが蓄積されていない点は課題のひとつです。「プログラミングの概念を教えるとき、こちらの伝え方が少しでもズレると生徒の捉え方が変わってくるので気をつけています」と堀先生はコメント。機器の充実はもちろん、教師のコミュニケーション能力の高さが求められます。
たとえば堀先生は教師用ガイドを一部アレンジし、小学生にもとっつきやすいよう工夫していました。ガイドではiPadのアプリでネックレスを作るところを、お母さんの絵を印刷して、その上に積み木のネックレスを作らせるよう変更。実際に手を動かすことで、子どもたちのクリエイティビティも刺激しています。
プログラミング教育は始まったばかりで、現場でも教師が試行錯誤しながら教えている状況が伝わってきます。文科省は2020年に日本の小学校でプログラミング教育必修化を掲げていますが、指導者育成は必須条件。
教師がプログラミング言語を理解し、コーディングの経験がなくとも自信を持って教えられるようにならなければいけません。「Everyone Can Code」のような"教え方を学ぶ"仕組みづくりが重要です。