国王「どうか我が国をお救い下さい!」ゴリラ軍師「ウホホッ!」
- 2017年04月17日 23:40
- SS、神話・民話・不思議な話
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兵士「陛下、大変です!」
国王「どうしたのだ?」
兵士「隣国の軍勢が、我が国へ進撃を開始致しました!」
国王「な、なんだと!?」
兵士「すでに敵は国境まで迫っており、このまま侵入してくることは間違いないでしょう」
国王「おのれ……隣国め、ついに牙をむいたか!」
兵士「軍を率いて、国境近くの砦で守りを固めております」
兵士「しかし、あの砦は守りに適しておりませんし、なにより隣国軍の方が兵力は上です」
兵士「いかに将軍が優れた武人でも、隣国軍を跳ね返すのは至難かと……」
国王「うむ……そうだな」
国王「将軍の勇猛さに知略が加わらなければ、この国は滅びることとなろう」
国王「こうなっては仕方あるまい」
国王「ゴリラ軍師殿のお力を借りるしかない!」
国王「そうだ、森の奥深くで暮らす、“森の賢者”とも称される伝説の軍師のことだ」
国王「先代王の時代から、あの方には何度も我が国の危機を救ってもらっている」
兵士「ならば私が森へ――」
国王「いや、ここは余自ら出向かねば失礼にあたろう」
国王「おぬしは砦に戻り、このことを将軍に伝えてくれ」
兵士「かしこまりました!」
国王「…………」
国王(たしか、このあたりに住まわれていたはずだが……)
国王「――いた!」
国王「ゴリラ軍師殿!」
ゴリラ軍師「ウホ?」
ゴリラ軍師「ウッホッホ、ウホホホッ」
国王「実は我が国に、隣国が攻め寄せて参りました」
ゴリラ軍師「ウホホホッ」
国王「隣国軍を撃退するには、どうしてもあなたのお力が必要です」
ゴリラ軍師「ウッホホ、ウホホ」
国王「どうか我が国をお救い下さい!」
ゴリラ軍師「ウホホッ!」
斥候「敵軍は、まずは奇襲強襲に特化した少数部隊でこちらを攻撃する模様です」
斥候「しかし、その小部隊がどこにいるのか……まだ把握できておりません」
将軍「そうか……」
将軍(小部隊で先制攻撃を仕掛け、我らが崩れたところを本隊で一気に叩くつもりだな)
将軍(狙いは分かっていても、どこから攻撃が来るか読めなければ意味がない)
将軍(ゴリラ軍師殿はまだか……!)
兵士「将軍! ゴリラ軍師殿がやってきました!」
将軍「おおっ、丁重にお迎えしてくれ!」
将軍(おおっ、なんと見事なゴリラなのだ。神々しさすら感じる)
将軍「あなたが伝説のゴリラ軍師殿ですか」
ゴリラ軍師「ウッホホ、ウホホホホ」
将軍「私がこの軍の将です。あなたの知略で、我々を導いていただきたい!」
ゴリラ軍師「ウッホホ、ウホウホ」
将軍「ではさっそく、ご相談したいことがございます」
ゴリラ軍師「ウホホ」
将軍「ゴリラ軍師殿は、どちらに潜んでいるとお考えになられますか?」
ゴリラ軍師「ウ」
将軍「右ですか!」
将軍「ようし、砦の右側に兵を出す! 敵の先行部隊を叩き潰すのだ!」
兵士「ははっ!」
敵兵「申し上げます!」
敵兵「奇襲をかけるための先行部隊が反撃を喰らい、敗走いたしました!」
敵将軍「なに!?」
敵将軍「うむむ、奴らにあの部隊がどこにいるかを見抜く索敵能力があったとは……」
敵将軍「ならば次の手だ!」
敵将軍「奴らが立てこもる砦近くの平原に陣取るぞ!」
兵士「将軍、敵軍が砦近くの平原にて陣を構えております!」
将軍「ふむう、ここは一戦交えて、隣国軍の出鼻をくじきたいところだが……」
兵士「となれば、我が軍の精鋭である騎兵隊を向かわせますか?」
将軍「それがもっともだ……と思うが、念のためゴリラ軍師殿に判断を仰いでみるか」
将軍「ゴリラ軍師殿、歩兵隊と騎兵隊、どちらを出撃させるべきですか?」
ゴリラ軍師「ホ」
将軍「歩兵ですか! ……分かりました、歩兵隊出撃!」
歩兵A「あいつら、平原に馬をひっかけるためのヒモを仕掛けてやがったぜ!」
歩兵B「騎兵隊が出撃してたら、危うく全滅するところだったな!」
歩兵C「さっすが、ゴリラ軍師様だ!」
歩兵A「ここは俺たち歩兵の晴れ舞台だ! 大暴れしてやろうぜ!」
ガキンッ! ザシュッ! キンッ! ザンッ! キィンッ!
兵士「我が軍が優勢です!」
兵士「しかし、兵力は敵の方が上ですので、油断はできません!」
将軍「もう一押し、が欲しいところだな」
将軍「ゴリラ軍師殿、ここで兵の士気をさらに上げたいのですが、どうすべきでしょうか?」
ゴリラ軍師「ウホホホホ」ボコボコボコ
将軍(胸を叩いている……なるほど!)
将軍「後方支援の者は、太鼓を叩いて最前線の兵士たちを鼓舞するのだ!」
ワァァァ……! ワァァァ……!
兵士「太鼓のおかげで、こちらがみるみる敵軍を追い詰めていきますよ!」
将軍「さすがゴリラ軍師殿だ」
将軍「今日のところはこれで攻撃をしのげた、と見てよさそうだな」
ゴリラ軍師「ウッホウッホ」ボコボコボコ
ワイワイ…… ガヤガヤ……
将軍「戦いは明日も続く! 今日のところはゆっくり休んでくれ!」
兵士「将軍」
将軍「どうした?」
兵士「先ほどの戦いで、重要な情報を知っていそうな敵軍の兵士を捕虜にしたのですが……」
兵士「どんなに責め立てても何も吐かないのです」
将軍「気になるな……分かった、すぐに向かおう」
兵士「このとおり、口が堅いのです」
将軍「たしかにこいつは、何か重要な情報を持っていそうではあるな」
将軍「ゴリラ軍師殿、いかがいたしましょう?」
ゴリラ軍師「ホホ」
将軍「……頬を叩くんですね! その手があったか!」
ゴリラ軍師「ウホホ」
将軍「右頬ですね! 分かりました!」
将軍「知っていることがあるなら、全て吐いてしまえ!」ベチッ
捕虜「……わ、分かった! 右の頬を叩くのだけはやめてくれ!」
捕虜「全て吐く……全て吐くよ!」
兵士(さすがゴリラ軍師殿、捕虜の拷問もお手の物とは……)
将軍「夜襲だと!?」
兵士「しかし、昼間に退却したばかりだというのに……」
捕虜「昼間、あっさりと撤退したのも戦略のうちなのさ」
捕虜「油断して砦で休んでるあんたらを、全滅させるためのな!」
将軍「…………!」
将軍(危ないところだった……)
将軍(捕虜からこの情報を聞き出せていなければ、この国の命運は尽きていた……)
兵士「ははっ!」
将軍「しかし、これでもまだ敵軍が有利だろう」
将軍「なにか打つ手はないのか……」
ゴリラ軍師「ホウ」
将軍「砲!?」
将軍「そうか、この砦には大砲が一門だけある! あれを使えば……!」
将軍(ゴリラ軍師殿は、私以上に我が軍のことを把握しておられる……!)
将軍「大砲の準備はまだか!?」
砲手「準備できました!」
将軍「よし!」
砲手「しかし、大砲の弾は貴重です。あまり乱発することはできません」
将軍「たしかに……何発撃つかは重要だな」
将軍「何発ぐらい撃つべきでしょうか?」
ゴリラ軍師「ホウホウホウ」
将軍「三発ですね!」
砲手「はいっ!」
将軍「一発目、発射!」
砲手「点火!」
ドゴォン!
ズガァァァァァンッ!!!
敵兵「大砲です! 奴ら大砲を撃ってきました!」
敵隊長「夜襲が読まれていたというのか……! いったいどうして……!」
ドゴォォォォォンッ!!!
敵隊長「うわぁぁぁっ!」
敵兵「ひいいいっ!」
バゴォォォォォンッ!!!
敵兵「どんどん撃ってきますよ!」
敵隊長「く、くそっ! このまま連発されたらこっちが危ない! 撤退、撤退だぁっ!」
将軍「ふう、どうにかなったな」
将軍「しかし、やけにあっさり撤退したものだな」
兵士「立て続けに三発の大砲を放ったことで、こちらが大量に大砲を持っていると勘違いしたもようです」
将軍「なるほど……またしてもゴリラ軍師殿の采配があたったというわけだ」
将軍「だが、まだ勝利が決まったわけではない」
将軍「日が昇れば、再び決戦になるだろう。それが文字通り、勝負を決める戦となる!」
兵士「ははっ!」
ゴリラ軍師「ウッホッホ」
兵士「敵軍が再び現れ、全軍で陣形を敷いております」
兵士「昨日のように罠を張っている様子もありません」
将軍「真っ向勝負というわけだな」
将軍「逆にいえば、向こうはそれだけ兵力に自信があるというわけだ……」
将軍(こちらはどういう陣形で臨むべきか……)
ゴリラ軍師「ウホホッ」
将軍「さて……この決戦、我が軍はどういう陣形にすべきでしょう?」
ゴリラ軍師「ホォーゥオー!」
将軍「鳳凰の陣形……!」
将軍(我が国の古の名将が生み出したといわれる、伝説の陣形じゃないか!)
将軍「私も将のはしくれ、鳳凰の陣形は知っております」
将軍「すぐさま兵士たちに鳳凰の陣形を取らせましょう!」
ゴリラ軍師「ウホホッ、ウホホホッ」ボコンボコン
将軍(おお……ゴリラ軍師殿が興奮しておられる。この戦……勝てる!)
将軍「全軍に今から私が指示するとおりに陣形を作れ、と伝えろ」
兵士「はっ!」
キィンッ! ドシュッ! ギンッ! ザシィッ! キィン!
兵士「隣国軍の方が数が多いにもかかわらず、我が軍が優勢です!」
将軍「さすがは鳳凰の陣形、といったところか」
将軍(伝説とはいえ、今では実用性がない陣形といわれていたが、そんなことはなかった)
将軍(ゴリラ軍師殿はそのことをちゃんと見抜かれていたのだな……)
敵将軍「くっ、計算外だ! まさか奴らがこれほどの底力を持っていたとは……!」
敵将軍「こうなれば……最後の手だ!」
敵将軍「敵の将軍に二人きりで話し合いたい、と書状を送れ!」
敵兵「話し合い? そんなことをしてどうするおつもりですか?」
敵将軍「決まっているだろう?」ニヤ…
将軍「…………」
敵将軍「このたびの戦、我が国が負けを認めよう」
敵将軍「侵略行為についても反省している」
敵将軍「というわけで、和平の条件について貴公と話し合いたい。さ、こちらへ来てくれ!」
将軍「……いかがでしょう?」
ゴリラ軍師「ウホ」
将軍「やはり嘘ですか」
敵将軍「なんで分かったの!?」
将軍「この卑怯者がぁっ!」ブンッ
ザシュッ!
敵将軍「ぎゃはぁぁぁ……っ!」ドザッ
ワァァァ……! ワァァァ……!
兵士「隣国軍が撤退していきます!」
将軍「うむ、この戦……我が軍の勝利だ!」
ワアァァァァァ……!
将軍「ありがとう、ゴリラ軍師殿!」サッ
ゴリラ軍師「ウホホホッ」ガシッ
将軍「いだだだだだだだだっ!」ミシミシミシ…
ゴリラ軍師「ホッ」パッ
将軍「痛かった……!」
兵士「だ、大丈夫ですか!」
将軍(私も握力には自信があるのに、危うく握手した手を潰されるところだった……)
将軍(知略もパワーも備えた軍師……それがゴリラ軍師殿なのだな)
国王「ゴリラ軍師殿、我が国存亡の危機を救っていただき、本当に感謝しています」
国王「あなたのために山ほどの金銀財宝を用意しました。どうか森へお持ち帰り下さい」
ゴリラ軍師「ウホホホッ」パシッ
ゴリラ軍師「ウッホウッホウッホ」モグモグ…
国王「…………」
国王(金銀財宝には目もくれず、バナナ一本だけ持って森へ帰ってしまった……)
国王(なんと欲のないお方よ……)
国王(これからもどうか我が国の平和を守って欲しい……森の賢者、ゴリラ軍師!)
― 完 ―
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国王「どうか我が国をお救い下さい!」ゴリラ軍師「ウホホッ!」
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国王「どうか我が国をお救い下さい!」ゴリラ軍師「ウホホッ!」
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