セキュリティゆるゆるすぎ。
春5月。燦々と降り注ぐ朝の光の中、われわれ共同取材班は海に出ました。目的は魚ではありません。
トランプ氏の高級会員制クラブ「マー・ア・ラゴ」の沖合約250mに5mのモーターボートを停め、じゃがいもバズーカ状の全長60㎝のアンテナを向けると、1分もしないうちにこの日の漁果が引っかかりました。
暗号化が手薄なWi-Fiネットワーク3件。「5分もあればハックできるな」と思いましたが、やめておきました。
それから数日後。ニュージャージー州ベッドミンスターの「トランプナショナルゴルフクラブ」敷地内に車で入り、例のアンテナを取り出してクラブハウスに向けて構えてみると、今度も引っかかりました。暗号化ぬきのWi-Fiネットワーク2件。「誰でもパスワード抜きにログインできるな」と思いましたが、なんとか堪えました。
さらにドナルド・トランプ一族が経営するワシントンD.C.の「トランプ・インターナショナル・ホテル」とバージニア州スターリングのゴルフクラブで試してみた結果わかったのは…
・暗号化がザル、暗号化がゼロのWi-Fiネットワークがある
・パスワード制御なしのワイヤレスプリンターがある
・旧式で脆弱なソフトウェアのサーバーがある
・機密データを保管したバックエンドのデータベースのログイン画面も暗号化されていない
…というお粗末な実態です。
情報窃取はもちろんのこと、高度なハッカーはWi-Fiネットワークの脆弱性を突破口にパソコンやスマホを乗っ取り、そこから敷地内の会話の録音も可能になってしまいます。「この種のネットワークを狙っているのは取材班だけじゃない。外部の侵入者がうようよ群がっていると思った方がいい」と、デジタルセキュリティ会社Immunity, Inc.のCEOのDave Aitelさんは感想を語っていました。