喪黒福造「野党での国会とは大変ですなあ」
喪黒「ただのセールスマンじゃございません」
喪黒「私の取り扱う品物は心……人間のココロでございます」
喪黒「この世は老いも若きも男も女も、心の寂しい人ばかり」
喪黒「そんな皆さんのココロのスキマをお埋めいたします」
喪黒「いいえ、お金は一銭もいただきません」
喪黒「お客様が満足されたら、それがなによりの報酬でございます」
喪黒「さて、今日のお客様は――」
左沢 赤蔵(76) 衆議院議員
オーッホッホッホッホッホ……
左沢「与党連立政権の暴走は勢いを増し、我が党の党勢は衰えるばかりであります」
学生A「あ、アカの左沢だ。いつまで通ってるんだろう。この前もゾンビ当選だったし」ヒソヒソ
学生B「今期で終わりだろ、あのアカのじいさんは」ヒソヒソ
左沢「失敬な!我が党の党勢は衰えてはいるものの、私は衰えておりません!」
学生A「うわ、気づかれた…」
学生B「早く逃げよ、あんまりいたらアカに洗脳されちまう」
左沢「……はあ」
左沢「とは言うものの私の目指した共産革命もこれまでか…」
左沢「我が人生とはなんだったのだろうか…」
喪黒「すいません、そこのあなた」
左沢「私ですか?」
喪黒「ええそうです、そこのあなた。あなた○○病院はご存知ない?」
左沢「あ、ああ○○病院ならうちの党の関係病院でその隣の建物を事務所として貸していただいてますよ。良ければお送りしましょうか」
喪黒「ホホッ、よろしいんですか。それは幸運です。」
左沢「さ、行きましょう、すぐそこですよ」
左沢「あ、私のことご存知でしたか。ありがとうございます。いや、昔からなんですが歩かないとどうも落ち着かないのです」
左沢「学生運動をやっていた頃の名残りですかねえ。あの頃は楽しかった」
喪黒「ほう、今は楽しくないのですか?議員にまでなられているのに」
左沢「我が党は恥ずかしながら、単独で法案すら出せないほど落ちぶれましてね、楽しくない反対戦術しかできないのです」
喪黒「では党を移られたりしないんですか、例えば民自党とか」
左沢「あなたは私をバカにしてるんですか?私は革命のために一生を捧げてきましたから、相手も自分もそんなことを認めませんよ!」
喪黒「ホホッ、いや失礼しました では今いらっしゃる社連党を離れる気はないのですね」
左沢「もちろんです、もう年も年ですしね」
左沢「あ、もう着きました。ここが○○病院です。どこかお悪いんですか?」
喪黒「ホッホッホ、ちょっと食べ過ぎましてね、メタボと言うやつです」
左沢「ハハ、そうですか、お体にお気をつけて」
喪黒「ああ、ちょっとお待ち下さい。私、こういうものです」スッ
喪黒 福造 ココロのスキマお埋めします
左沢「喪黒さんですか、珍しい名字ですね。では私は、これで」タッタッ
喪黒「……」
左沢「この審議不充分で、えー法律を通すのが横暴だと、えー私は、言いたい!」
野次「野党が審議拒否したんじゃないのか!?」
与党議員「そうだ!」 「そうだー!」 「その通り!」
左沢「なんだ今の野次!今の野次したもん名乗り出ろ!社連党は断固として審議に出席している。事実誤認だ!」
左沢「……これで私の演説を終わります。ご静聴、ありがとうございました」…パチ
左沢「いやあ昔が懐かしい、当時は仲間が150人はいたのに…」
党首「社会主義国家も軒並み崩壊しましたから、もう夢を抱く有権者は…」
左沢「まあ私はなんとか夢を抱きつつ生きていますが、この老いぼれで終わりでしょうな」
左沢「さてと…まあそんなにすることもないが…」
秘書「先生、お客様がお見えです。」
左沢「ああ、誰だね?」
秘書「えーと確か…」
喪黒「喪黒ですう。」
左沢「あ、ああ、あのときの。珍しい名字ですからこの老いぼれでも覚えてますよ喪黒さん」
左沢「でもどうしていらっしゃったんですか?この党には政治的根回しをする力ももうありませんよ」
左沢「いやあ、そんなこと…」
喪黒「お辛いですよねえ。そこであるものをご用意しました。」
左沢「これは耳栓と眼鏡ですか?私も与党は好きではありませんが、野次は国会の花ですから、甘んじて受けるつもりです」
喪黒「いえいえ、こちらはただの耳栓と眼鏡ではありません。『革命的』耳栓と眼鏡でございます」
左沢「いやあ喪黒さんいくらなんでもそりゃないですよ。いくら社連党員でも今はもう革命という言葉に取り憑かれちゃいません」
喪黒「まあ、これはただで差し上げます。それとこれはささやかな献金です」
左沢「……ありがとうございます、こちらは党として厳粛に使わせていただきます。」
喪黒「ホッホ、では私はこれで帰ります。そうだ但し、その耳栓と眼鏡をおつけになるとしたら、国会の中だけにしてください。」
左沢「流石に国会で耳栓はつけられませんよ」
左沢「えー我が党としてはあーこの法案を素通りさせるのはえー断じてえー許せない行為で、あります」
左沢「これで我が党の演説を終わります」シーン
左沢「……」
左沢「全く、なんで立進党の奴らは審議に出んのだ…」
左沢「…喪黒さんに頂いた眼鏡でもつけてみるかな」
左沢「…ん?これは…見える!見えるぞ、30年前の仲間が!」
左沢「これは□□さん、これは△△さん、あれは若いときの党首、あれは… すごいぞ!」
左沢「うん?若い私がなぜか映らんな?当時の映像そのままでなく、再現してるんだろうか?しかしこりゃあ凄い」
左沢「しかし、音声は今のままか。…ん?もしかして。」
左沢「この耳栓をつければ…」
左沢「!?… 思った通りだ!当時の演説を忠実に再現している。素晴らしい!」
左沢「確かにこれがあれば喪黒さんの言うとおり少しは辛さも和らぐかもしれんな…」
ピロピロピロピロピロピロ
左沢「もしもし、喪黒さんですか?いやあ驚きましたよ。まさか往年の仲間の勇姿がまた見られるとは」
喪黒「それはよかった。セールスマン冥利に尽きますよ。ホッホッホ」
左沢「こんな老いぼれにあんな良いものを下さって。本当にありがとうございます、それでは。」ガチャ
ナチスナイカクブッツブセ、ドンドン
左沢「…それにしても秘書君、ちょっと外が騒がしすぎないか」
秘書「まあいいじゃないですか、先生。学生とはこんなものですよ。先生にもこんな頃があったでしょう?」
左沢「まあ、そうなんだが、何やらハイカラでいけすかんのだよ。ラップだのマイクだの数の割にうるさすぎる。」
左沢「しかし…こういう学生がいるのもいいものだろう。ちょっと散歩がてらに…」
秘書「承知しました。いつ頃戻られますか?」
左沢「30分後かな。ヨッコラセっと。」
ドンチャンドンチャンドンチャンチャン
左沢「やってるねー。だがこの塩梅だと500ってとこかね?」
左沢「すまない、そこの君これは何の集会だね?」
青年「レイシストで現代のヒトラーの現首相退陣要求集会だ、爺さん」
青年「それとさあ、あんまり爺さんにいられると若者の集会って印象崩れんだよね」
青年「爺さんはどっかいけよ全く、ペッ」
左沢「むっ、最近のもんは私のことも知らんのか!私は代議士の左沢赤蔵だぞ!」
青年「ヘッ、あの社連党の。あんたみたいなロートルは審議拒否でもしてたらいいのによ。」
左沢「君はなんてことを言うんだね!?国会は議論してこそだ!私は与党は嫌いだが審議拒否で法案を素通りさせるような軟弱な真似はせん!」
左沢「あの頃の学生運動を、もう一度だけ、見たい…」
学生達「安保粉砕!安保粉砕!」
左沢「あのときの熱気はすごいもんだな… 国会前に30万なんて今では考えられんな。ハハハ…」
左沢「あれは… 機動隊と我々との衝突か。忘れもせん6月15日だな」
号外!号外!岸首相退陣せり!岸首相退陣せり!
左沢「ほう、もう退陣か… あの頃は退陣まで長いように思えたが…、年は取りたくねえなあ…」
左沢「喪黒さん?どうしてここに… いえ、理解しています。約束を破ったと仰りたいんでしょう?」
喪黒「そうです、左沢さん。あなたは約束を破られた。」
喪黒「でも、あなたは反省していらっしゃるでしょうから、議員のままにして差し上げます。」
喪黒「ドーーーン!」
………
左沢「こちら、離党届です。申し訳ないね党首。」
党首「左沢さん!なんで…!なんで、民自党なんかに…」
左沢「私も気づいたんだよ、社会主義なんて馬鹿らしいってね。」カッカッ
党首「あんたは夢を抱きつづけるんじゃなかったのかい!?」
党首「それにこの党はあんたなしでは成り立たないんだ!」
党首「左沢さん!…」
喪黒「自分の道を歩み続けて人生を棒に振る人も多くいる中」
喪黒「左沢さんは多くの人に受け入れてもらえる道を見つけられて嬉しいでしょうねえ」
喪黒「オーホッホッホッホッホッ……」
元スレ
喪黒福造「野党での国会とは大変ですなあ」
http://vipper.2ch.sc/test/read.cgi/news4vip/1496147647/
喪黒福造「野党での国会とは大変ですなあ」
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