厨二心をくすぐる天使と悪魔
旧約・新約聖書を参考に描かれた天使や悪魔が掲載されています。天使も悪魔も崇高なイメージがあり、個人的にはもはや神に近いような高みの存在のように思うので、「幻想動物」として括られていることにどうにも違和感を感じてしまいます。動物・・・なんでしょうかね。
ガブリエルきた!と思ってしまう有名なお名前です。ユダヤ教でもイスラム教でも重要視されている天使で、キリスト教の4代天使のひとりです。小生はタロット占い師なので、タロットの絵柄も思い出します。聖母マリアに受胎告知を行った天使として芸術界でも有名ですが、身体が火でできており、ソドムとゴモラの街に地獄の火を降らせて壊滅させたという怖い一説もあるのだそう。この説はこの事典で知りました。生まれてくるまでお腹の中の赤ん坊をずっと見守る優しい天使です。 サマエル
サマエル:幻想動物事典P152
挿絵では骸骨の姿で描かれており、ポージングがとてもカッコいいです。なぜ骸骨かと言えば、ユダヤ教やキリスト教では悪魔であり「死の天使」とも呼ばれているためです。そのため剣や弓矢を持った骸骨で描かれることが多く、モーセが死んだ時に迎えに行ったのがサマエルだとされています。名前は「神の悪意」という意味があり、アダムとイブに知恵の実を食べるようにそそのかしたのはサマエルだという説もあります。 ベルゼブブ某漫画を思い出してしまう、悪魔の中ではお馴染みのお名前ではないでしょうか。名前の由来が「蝿の王」という意味であることから、文字通り巨大な蝿の姿で描かれることが多いようです。
地獄の最高君主で、地獄の支配権があります。ルシファーと同一視されることもあり、「失楽園」でもルシファーの次の位に鎮座しており、その姿も表情も威厳があって大変立派なのだそうです。 ミカエルこちらも有名な天使ですね。神が最初に創ったとされる最上級の大天使です。
戦士としても大変強く有能で、サタンが天界に謀反を起こした時にサタンを天国から地獄に投げ落としたのはミカエルであるとされています。イスラム教では翼の色はエメラルドで、髪の毛はサフラン色、髪の毛の一本一本には百万の顔と口があるそうです。(いっせいにしゃべりだしたりするのでしょうか)神の元に死者を連れて行ったり、死者の魂を天秤で量ったり、毎日大忙しのようです。 メフィストフェレスメフィストフェレス:幻想動物事典P303
某アニメを思い出しそうです。悪魔の中でも有名で、ファウスト博士と契約して魂を手に入れたとされています。
毛むくじゃらでクチバシと翼があるとされていますが、人間にも化けることが出来ます。化けるといってもコウモリの翼が背中にあり、あご髭も長く、足元にはロバの蹄があるのですぐバレそうです。彼のさまざまなテクニックで誘惑され悪魔の契約を結んでしまうと、契約した人間は最後は地獄に落ちてしまうので全く得はありません。気を付けましょう。 この限りでなく、他にもソロモンの72人の悪魔なども掲載されています。そ行には『ソロモン王の悪魔』という全体像について書かれた項目もあります。ソロモン自身は幻想動物ではなくあくまで人間なので載っていません。また、現代では萌えキャラとしてその名を知ることもあるかと思いますが、あくまで資料に記載されているとおりの姿となっています。けして萌えない姿ですので過度な期待にご注意下さい。
水木先生でお馴染みの妖怪たち
妖怪といえば水木しげる先生の絵が思い浮かびますね。私は水木先生以外に妖怪の絵を見たのはこの事典が初めてです。事典にはお馴染みの妖怪たちが数多く掲載されています。妖怪となると動物に近いものが多いので幻想動物と呼ばれるのも納得できる気がします。
油すまし
油すまし:幻想動物事典P16
熊本県天草諸島の峠道に出現する妖怪です。名前の通り油瓶を持ってすました顔で出現します。おじいさんのような姿ですが、頭部が異常に大きいのが特徴です。すましているかと思えば、「このへんに昔油すましが出たらしいよ」と彼の噂話をしている人の後ろから「今もでるぞ!」と叫んで驚かしたりもするそうです。なぜ油なのか、そして日中はどこに隠れているのかは不明なのだそうです。
一反木綿
妖怪といえばこれ!鬼太郎さんの相棒として有名ですね。一反の名の通り、体長は約11mもあります。この長さを生かし、どこからともなく現れて夜道を歩いている人に絡みついてしまいます。
鹿児島県では人を殺してしまうこともあるそうで、穏やかな幻想動物ではないようですね。昔ある侍が切りつけたところ刀に血が残っていたそうで、動物であると確認されたという話があります。しかし誰も捕まえたことはなく、すぐに消えてしまうのだそうです。便利な体ですね。 河童:幻想動物事典P82
こちらもとても有名な妖怪ですね。日本各地の川や湖沼などで生息中です。地方によっては猿猴(えんこう)やメドチ、ガワッパとも呼ばれています。河童の頭の上には皿があり、皿の中の水がなくなると死ぬという致命的な特徴は全国共通で、指が3本で水搔きがあるという特徴もあります。
いたずら好きで、子供を川に引っ張り込んだり尻子玉を抜かれるという話が伝わっています。河童も気になりますが、尻子玉の存在も気になります。こちらの挿絵の河童は可愛らしさに溢れながらちょっとセクシーなポーズをとっています。イチオシです。
子泣き爺(ゴギャナキ)徳島県の妖怪です。山の中で赤ん坊のように「おぎゃあおぎゃあ」と泣いており、うかつに抱っこをすると突然重くなり離れなくなるという困った妖怪です。もちろん顔はおじいさんなので良く見れば分かります。
他にもゴギャナキと呼ばれる妖怪もおり、徳島県や高知県の山の中に現れます。こちらも抱き上げると重くなるのは同じですが、一本足なのでまた違いがあるようです。ゴギャナキが泣くと地震が起こるとも言われています。子泣き爺界にも種類があるようですね。 それはやめて・・・ちょっと迷惑な幻想動物たち
幻想動物には怖いもの、害があるもの、人智を超えたものなど様々ですが、中には存在理由が良く分からない謎のものもあります。その中でも人間からすると「迷惑なんですけど」と言いたくなる幻想動物を紹介します。 転ばし
転ばし:幻想動物事典P143
日本各地に生息し、夜道で出現する妖怪の一種です。九州や四国ではハンマーのような形状で転がっており、岡山県では薬缶状の物が、香川県では飼い葉桶が転がってくるそうです。ガラガラ転がってきて人を転ばせたり驚かせるのが目的なのは共通です。
特に致命傷というわけでもなく、なぜこのようないたずらをするのか・・・。遭遇したら立ち止まり、冷静に避けましょう。釣瓶落とし井戸の釣瓶のように、突然上からどさっと落ちてきて人を脅かす幻想動物です。妖怪ではなく怪火(あやしび)なのだそうです。寂しい場所にある木のそばに出現し、落ちてきた後は上下を繰り返します。
人の頭のものと青白い毬状のものの他にも火のバージョンもあり、釣瓶火と呼ばれます。古い樹木の精であると今昔百物語評判に書かれているのですが、そんな昔からこんな迷惑なことを・・・とつい思ってしまいます。 待ち犬、送り犬待ち犬:幻想動物事典P291
兵庫県の山道で歩く人間のあとを静かについてくる犬です。狼に近い種で、ハスキー犬がついてくると考えると少し萌えます。転んだりすると襲い掛かって来る危険なものもありますが、人間が無事に帰れるように他の動物から守ってくれるものもあります。無事家についたら握り飯とわらじを与えると去っていきます。
長野県や岐阜県に出現するとされる待ち犬は、送り犬とは反対に歩いて行く人の前に現れます。人が通り過ぎてしまうと頭を飛び越して前へ回り、時々振り返ってこちらを見ます。振り返るハスキー犬はやはり萌えます。もし同時に出現してしまったら・・・もののけ姫の世界観を大いに味わいましょう。
おいてけ掘現在の東京都墨田区にあたる江戸本所の七不思議の一つとされています。隅田川で魚を釣った人が持ち帰ろうとすると水の中から「置いてけ~置いてけ~」という声がするという怪異です。
言うとおりに水の中に魚を何匹か投げてやると声はしなくなり、無視して帰ると帰り道でトラブルがあると言います。平和な江戸町民の晩のおかずを奪う、ずるいヤツが隅田川に住んでいるようです。
豆腐小僧雨の日に豆腐を持って現れる妖怪です。この名前で映画にもなりましたね。実際にはちょっとタチが悪く、差し出した豆腐をしきりに食べるように勧めてきます。
坊主頭に編み笠をかぶっており、子供なので断るのも悪いと思って食べてしまうと、体中からカビが生える病気になってしまうそうです。現代なら抗真菌薬で治るかもしれませんが、梅雨の時期はとてつもなく迷惑な妖怪ですね。食べ物は大事に扱ってほしいものです。 夏に知っておきたい海の幻想動物
海女房~温羅:幻想動物事典P46~47
日に日に気温も高くなり、今年も海の恋しい季節となって参りました。そんな海にまつわる幻想動物をご紹介します。これで海で遭遇してもばっちりですね。 海坊主日本では妖怪だとされていますが、世界中の海に生息しています。坊主頭の巨人の姿が特徴で、舟をひっくり返したり飲み込んだりします。船が襲われた時は積み荷の一番大事なものを投げれば助かると言われており、何だか試されている気がします。岩手の海には女に化ける海坊主が出るそうです。一緒に泳ごうと誘われ海に入ると飲み込まれてしまうそうです。知らない人についていくのはやめましょう。 海和尚海坊主の一種で、「海尚魚」とも書きます。顔は人間でスキンヘッド、体は赤くスッポンの形をしています。体長は1.5m前後あり、なんと漁の網にかかると言います。
漁師が海和尚に出会うのは不吉という言われがあることから殺そうとすると、腕を前に組んで涙して命乞いしたという言い伝えがあります。腕は人間なのかカメなのか、気になるところですね。若狭湾では捕まえたら酒を飲ませて離したという記録があります。 海座頭三陸の海に棲む海坊主の一種です。手に杖と琵琶を持った琵琶法師の姿で海の上を歩き回ります。時には舟を転覆させたり漁師を脅かしたりしますが、海座頭の言ったとおりにすれば何もしないで去るときもあるそうです。海坊主が出現しなくなった頃に出現し始めるので、旬な時期が違うようです。でも入れ代わり立ち代わりはちょっと迷惑な気もします。 海小僧静岡の海に棲む河童の一種です。釣り人の垂らす糸を水中からつたって海面に顔を出し、釣り人に微笑みかけます。おかっぱの少年姿なので、気付かない釣り人もいそうですね。他にも波小僧と呼ばれる精霊もいます。波の精霊で親指くらいの大きさであることから海小僧とは違うようですね。 海女房人間の女性と同じように見えますが、体中がウロコで覆われています。日本各地に生息しており、なんと陸上でも生活出来て言葉も話せます。
岩手の漁師の奥さんが時化(しけ)で戻らない夫を心配していたところ、海女房が現れて風呂敷から時化でなくなった夫の首を持ってきたそうです。ショックを受けた奥さんは海に身を投げてしまったのですが、その奥さんも海女房になってしまったとか。岩手の海は色々出ますね。 七人ミサキ高知県に出現する集団です。海で死んだ霊の集まりだとされます。いつも7人で一列に歩いており、遭遇した人は死んでしまいます。死んだ人は列の最後尾に加わり、一番前の一人が成仏していなくなります。こうしていつも7人で歩いています。
他にも七人童子や七人同志、七人同行といった似たような死霊集団が各地にいます。物騒な世の中です。 ちなみに海坊主~海女房までは五〇音順で紹介されているため、同じ見開きページに掲載されています。実に潮の香りのするページです。海に行かれる際は彼らの存在に気を付けて思いきりエンジョイして下さい。 本中の幻想動物は全部で1002項目ありますが、1002項目中ネコは8種で案外少なめ、犬は18種でまあまあ、羽根が生えてる動物は60種で良く出てくる印象でした。ヒト型は半分程度で、様々な動物型があるほか、ポルターガイストのような心霊現象やイエティなどのUMA、キメラやホムンクルスなどのもはやアニメ的に萌えるしかない幻想動物まで掲載されており、とても楽しめる内容となっています。ぜひとも一度開いて幻想動物の世界を味わってみて下さい。